NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2016 戦略的省エネルギー技術革新プログラム フェーズ名:実用化開発 <ダイナミックストレージシステムを活用する 住宅の省エネに関する技術開発> 事業実施法人名:ジェイ建築システム(株) 共同研究先:東京大学 生産技術研究所 加藤研究室 研究開発期間:平成27年1月~平成28年9月 1-1.研究開発の背景 2 1.1 狙う市場とその状況、課題 ・民生部門の大規模なエネルギー消費量の縮小 ・新築住戸の省エネ化だけでなく既存住宅の有効活用 ・未利用エネルギー(太陽エネルギー)の有効活用 ■ 現状の住宅市場は・・・ 「万件」 6,000 5,000 住宅数 (左目盛) 一世帯当たり住宅数 (右目盛) 世帯数 (左目盛) 「号/世帯」 1.2 1.1 4,000 「万件」 70 60 「%」 60 住宅改修工事件数 (左目盛) 既存住宅ストック数に占める割合 (右目盛) 新設住宅着工数に占める割合 (右目盛) 40 50 3,000 30 1.0 40 2,000 0.9 1,000 0 0.8 1948 1958 1963 1968 1973 1978 1983 1988 1993 1998 2003 2008 ・増加する施工数 ・住宅ストックの増加 50 20 30 10 20 0 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 ・住宅改修工事数は少ない ■ 省エネルギー化の実現のためには・・・ ・新築住宅だけでなく、既存住宅に適用可能であること ・未利用エネルギーを活用できる住宅システム ・断熱改修数は少ない 1-2.研究開発の目的、目標 従来の蓄熱技術 ・太陽熱を基礎に蓄熱し、室内へ供給 ↓ ・PCMなどを床に用いる研究例※がある。 ↓ ・しかしながら基礎からの熱損失は存在する 課題点 ・蓄熱する場所である、基礎からの熱損失が大きい。 ・温度分布が生じて、室内温熱環境への影響がある。 提案技術の概要 ・未利用エネルギー(太陽エネルギー)を有効活用 ・新築・中古問わず適用可能な住宅システム ダイナミックストレージシステム(DSS)の提案 3 2-1.研究開発体制 4 技術開発責任者 J建築システム (提案者) ・ダイナミックストレージシステムの基本計画、設計、普及 ・実験住宅の設計、施工、管理 ・省エネルギー効果の確認 共同研究 東京大学生産技術研究所 加藤研究室 ・ダイナミックストレージシステムの技術開発 ・机上シミュレーション、実測、検証 2-2.研究開発内容 5 壁体の内外に配した2重通気層に換気用空気を流通させ、外皮からの熱損失をDI で減少させるとともに、未利用エネルギー(太陽熱や屋外冷気)を屋外側通気層 で回収し、室内通気層内で蓄熱して有効利用も図るシステム DSS 熱損失を低減する ダイナミックインシュレーション(DI) ・外皮からの熱損失を低減 ・太陽エネルギーを効率的に回収 ・壁体を通過した外気は温められて蓄熱層へ DS 取得した熱エネルギーを効率よく蓄放熱する ダイナミックストレージ(DS) ・PCMによる蓄熱 ・室温変化を安定化 ・暖冷房負荷のピークシフト ・基礎に蓄熱しないため熱損失を減少 DIとDSを組み合わせて最適制御を行う DI ※矢印の色 温度の低い状態(青い矢印) 温度の高い状態(赤い矢印) ダイナミックストレージシステム(DSS) ・DI、DSへ効率的な風量での送風 ・外気の粉じんを回収し清浄化(0.5回/hの換気) 2-2.研究開発内容 【通気経路】 ① DI通気層は全方位において上昇気流とし、新鮮外気を導入し小屋裏を介して全熱交換器へ送る。 ② 全熱交換器から西及び北面のDS通気層を通り床下に送風する。その際、配置したPCMに蓄熱する。 ③ 床下から南及び東面のDS通気層、室内を通して小屋裏部の全熱交換機を通して外気に排気する。 2-2.研究開発内容 外皮において室内から室外へ逃げる貫流熱を、特殊な通気構造を持ったDI層によって 熱回収し室内に再供給する。 従来の外皮に比べて損失熱量を1/2程度まで低減する。 新鮮外気はDI層から供給されるため、従来型の給気口は不要とできる。 7 2-2.研究開発内容 8 DIの研究開発 DI壁の設置範囲 ①二重通気層を持つDI壁の研究開発 ②最適な空気流量の研究 ③実物件に設置可能なDI壁の開発 ④実物件に設置可能なDI窓の開発 DSの研究開発 ①最適な蓄熱材(PCM)の融解・凝固の検討 ②PCMを封入する容器の形状・素材の研究開発 DI窓 ③実物件に設置可能なDS部材と蓄熱材量の研究開発 夏期DSの設置範囲(壁) (冬・夏期用) ④集熱板の研究開発 ①空気制御基板の開発 ②動力(ファン)の検討 ③DSSの性能評価 ④最適なDSSの設置条件の研究 冬 期 DS DSSの研究開発 1階平面図 の 設 置 範 囲 ( 壁 ) DI窓 2階平面図 2-2.研究開発内容 9 外壁側と室内側に通気層を設けてDIとDSを実現したDSS(寒冷地冬仕様) 寒冷地と温暖地の夏季・冬季の運用方法 寒冷地の冬仕様 ※図中の赤い矢印は空気の流通を表す 通気経路 ①胴縁と外層材の間から天井部の全熱交換器へ通り、エアサイクルボードと石膏ボードの空間を経由し、地下蓄熱槽へ。 ①’天井部に入る段階で室温よりも大きかった場合は全熱交換器を経由せず、 ②地下から出た空気は、二階の吸込口より全熱交換器を通じて外部に排気される。 2-2.研究開発内容 提案技術の独自性、優位性 ・ダイナミックインシュレーション技術により、外皮の温度勾 配を減衰させ、実質的な熱損失を劇的に減少させる。 ・ダイナミックストレージは、蓄熱過程でボトルネックとなる 温度分布を自然の力で制御して軽減させる。 ・トータルシステム(DSS)としては、外部に熱を損失させる ことなく、効果的な蓄熱が可能となる。 技術開発の課題 ・ライフサイクルを考慮した上で省エネを実現させる ・DI技術を適用した壁面及びDSSの住宅への適用方法 ・潜熱蓄熱材(PCM)の融点・凝固点温度 ・解析を通じ、地域別の適用可能性の検証 10 2-2.研究開発内容 研究開発の目標 【ダイナミックインシュレーション:DI】 • 屋外側通気層に給気用外気を流して、外装材表面温度と屋外側環境温度の差 を小さくし、外装材表面から屋外環境へ伝達される熱流を最小化 • 室内側通気層に室内排気を流して、室内仕上げ表面温度と室内環境温度の差 を小さくし、室内仕上げ表面から室内環境へ伝達される熱流を最小化 【ダイナミックストレージ:DS】 • 室内側通気層には、さらに蓄熱材を配して、それら未利用エネルギーの時間 差利用を図り有効利用 【ダイナミックストレージシステム:DSS】 • 蓄熱材は、通気方向の法線方向厚を極力薄くし、低温度差の熱エネルギーの 有効な蓄熱を図る (蓄熱容量を確保するためPCMを利用) 11 3-1.成果 12 実験棟 実物件に設置したDI壁の実測より、熱損失量の低減効果を確認 実物件に設置したDI窓の実測より、熱損失量の低減効果を確認 DS部材を実物件に設置し、蓄熱効果を確認 集熱版を実物件に設置し、集熱性能を確認(冬季用) PCM設置状況 3-2.今後の展望 2.1 提供する製品・サービス ① DSS部材 (DI部材、DS部材、通気制御部) ② 営業・設計・施工ノウハウ (営業ツール、設計・施工マニュアル等) 2.2 DIボード (DI部材) 事業化スケジュール DSボード (DS部材) 年度 H28年度 H29年度 H30年度 H31年度 研究開発項目 ○継続測定 ○設計・施工マニュアル作成 ○防火認定など取得 ○営業・販売体制確構築 ○普及説明会 ○販売 ○収益発生 2.3 価格競争力 ・一般的な全面断熱改修に対し、DSSの導入によってかかる追加費用は150万円程度 ・ DSSの性能向上により、従来技術から相当なコストダウンが望める ・追加費用が発生するものの、暖房に掛かるランニングコストは年間約15万円程度低減 ・PCMの蓄熱効果により壁、床、天井の表面温度が最適化され、室内における快適性向上 H32年度 3-3.省エネルギー効果 14 2018年 国内 2030年 国外 国内 国外 指標A(効果量)[kl/世帯] 1.53 - 1.53 - 指標B(導入量)[世帯] 3,250 - 16,300 - 省エネルギー効果量 [万kl/年] 0.50 - 2.49 - ● 暖冷房負荷計算による消費エネルギー削減量 ・寒冷地(Ⅱ地域)の暖房負荷の削減効果:(DI) 83.6 - 32.6 = 51.0 61.1[GJ/年・戸] 合計 (DS) 83.6 - 73.5 = 10.1 冷房負荷の削減効果:(DI) 7.2 - 4.1 = 3.1 [GJ/年・戸] ・温暖地(Ⅵ地域)の暖房負荷の削減効果:(DI) 51.3 - 16.3 = 35.0 (DS) 51.3 – 42.7 = 8.6 合計 43.6[GJ/年・戸] 冷房負荷の削減効果:(DI) 24.1 - 14.0 = 10.1 (DS) 24.1 - 23.11 = 0.95 合計 11.05[GJ/年・戸] ● 採用した換算値(参照:エネルギー源別標準発熱量(別表1)) ・原油の換算値:38.2[GJ/kl] ...(1) ・受電端電力熱量:9.63[MJ/kWh] ...(2) ・電力消費時発生熱量:3.6[MJ/kWh] ...(3) ・冷房時の成績係数(COP):3[-] ...(4) ● 暖房時の原油換算値 寒冷地において 61.1 [GJ/年・戸]の暖房負荷削減の場合、(1)を用いて、 61.1 [GJ/年・戸] / 38.2 [GJ/kl] = 1.60 [kl/年・戸] 温暖地において 43.6 [GJ]の暖房負荷削減の場合、(1)を用いて 43.6 [GJ/年・戸] / 38.2 [GJ/kl] = 1.14 [kl/年・戸] ○ 指標 A ・寒冷地の省エネ効果量(原油換算値):1.60 + 0.07 = 1.67 [GJ/年・戸] ・温暖地の省エネ効果量(原油換算値):1.14 + 0.24 = 1.38 [GJ/年・戸] 平均:1.53 [GJ/年・戸] ● 冷房時の原油換算値 寒冷地において 3.1 [GJ/年・戸]の冷房負荷削減の場合、(1)~(4)を用いて、 3.1 [GJ/年・戸] / 3.6 [MJ/kWh] / 3 × 9.63 [MJ/kWh] / 38.2 [GJ/kl] = 0.07 [kl/年・戸] 温暖地において 10.1[GJ/年/戸]の冷房負荷削減の場合、(1)~(4)を用いて、 10.1 [GJ/年/戸] / 3.6 [MJ/kWh] / 3 × 9.63 [MJ/kWh] / 38.2 [GJ/kl] = 0.24 [kl/年・戸] ○ 指標 B 本システムの導入量は単位を戸として以下の通りである。 ・2021 年 3,250 棟(累計) ・2030 年 16,300 棟(累計)
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