ポストセレコレ 株式会社エレベータ研究所 ポストセレコレとは? • • • • • • セレクティブコレクティブ(セレコレ)は、運転方向と同一方向で前方の呼びだけに応答する乗合方式で上昇運転 と下降運転を交互に繰り返して一周運転を繰り返す方式であるが、建物が高層化すると平均一周運転が長くな り、待ち人数が増えるために乗車人数が増加して停止回数が増加して平均一周時間が長くなるという悪循環に 陥って大きな定員のかごが必要になるため、高層ビルでは高層大容量で大型の巻き上げ機が必要になるという 欠点がある。 そこで、ポストセレコレでは、 (1)乗り場行先階登録釦方式にして、残りのサービス時間を正確に予測できる利点を活かして停止回数を削減 すると共に平均待ち時間を最小化できるSRTF(Shortest Remaining Time First)の原則に則った乗合制御を行う (注) (2)貫通二方向型出入り口のかごを利用して乗客は乗車した順に降車できるように乗車順序を案内誘導制御す るので、乗客は乗車側扉から乗車し、降車待ちの乗客の最後尾に並び、降車側扉から乗客が降車する毎に降 車側扉の前へと前進すれば良く、乗客が降車する時点では自分の前には同じ階で降車する乗客しか残っていな いので前の乗客の降車に続いて降車することになるので、人をかきわけることなくスムーズに降車することがで き、乗降が同時にスムーズに行えるので乗降時間も短縮でき、1回の停止で乗降が同時にでき停止回数が減る こととも合わせて平均一周時間が短縮する。 また、乗車人数が多い場合でも、乗客はかご内で方向転換する必要もなく、他の乗客をかきわけたり押し合いし たりすることがないので、お年寄りや身体の不自由な人でも転倒する危険性は低く安全であり、安心してエレ ベータを利用することができる。そして、方向転換の必要がないので、車椅子兼用エレベータとしても利用するこ とができる。 (注)残りのサービス時間が正確に予測できる場合は、SRTFサービスが平均待ち時間を最小化できる戦略であ り、そうでない場合は先着順サービスの方が平均待ち時間が短くなると言われている。 セレコレとの比較 • 3階から5階に行く呼び3→5と3階から1階に行く呼び3→1と1階から5階に行く呼び1→5がある時、 • セレコレは、1→3→5→3→1と5回停止して応答するが、 • ポストセレコレは、3→1→5と3回停止して応答する。 • この場合、 (1)3階では、最初に3→1を乗車させ次に3→5を乗車させる。 (2)1階では、3→1が降車し3→5が降車側扉の前に進み、同時にその後ろに1→5が乗車側扉から乗車して並ぶ。 (3)5階では、降車側扉が開いて3→5が降車し、続いて1→5が降車する。 このように、乗客は、乗車した順序に従って降車することができる。 また、セレコレよりも待ち人数が少なくなり、定員を小さくできるので、巻上機を小型化でき、省エネになる。これは、セ レコレが平衡条件を満たす原理が、乗客数が大きくても停止回数はサービス階数より多くなり得ないのでRTTは必ず 飽和するから、単位時間の輸送人数を大きくして平衡条件を満たすために定員を大きくすることが常套手段であり、 長いRTTを群の設置台数を多くして補うことになる。一方、ポストセレコレが平衡条件を満たす原理は、行先階や出発 階が一致する乗客を乗合させることによって、乗客1人当たりの停止回数を低減させるものであり、定員の小さなかご で少ない乗客数で短いRTTでも平衡条件を満たすことができる。 セレコレは運転方向を維持できる呼びに優先的に応答するが、ポストセレコレは、かごのいるセクタで乗降する乗客 の呼びに優先的に応答する。1階から5階を低層セクタ、6階から10階を高層セクタとして、かごが3階にいる時に、1 →5と1→8と5→8がある時に、 セレコレは、3→5→8→1→5→8と5回停止して応答するが、 ポストセレコレは、3→1→5→8と3回停止して応答する。 ポストセレコレは、同一セクタ内で乗降する乗客が方向に関係なく乗合するので、セレコレでは乗合しない「逆呼び」や 「背後呼び」も乗合する。 方向維持を優先するセレコレは出発階が近い同一方向の呼びに優先的に応答する方式だったのに対して、乗車順降 車方式でSRTFであるポストセレコレは、行先階が近く停止回数が増加しない呼びに優先的に応答する方式である。 制御規則の概要 • かごの現在階を含むセクタを「自セクタ」と呼び、自セクタを除くセクタを 「他セクタ」と呼ぶ。乗客の行先階を乗車順に降車待ち行列に記憶する。 降車待ち行列の先頭の行先階を「先頭階」と呼び、最後に乗車した最後 尾の乗客の行先階を「末尾階」と呼び、先頭階の乗客から順に降車する。 • かごの現在階を含むセクタを自セクタとして、SRTFの原則に従って、遷 移呼び(自セクタ→他セクタの呼びと他セクタ→自セクタの呼び)や他セク タ→他セクタの呼びよりも自セクタ→自セクタの呼びに優先的に応答する。 そして、停止回数を削減するために、出発階が一致する呼びを出発階で停 止したまま順次乗車させたり(出発階合致呼び)、行先階を出発階とする呼 びがあれば応答して、行先階で停止したまま同時に乗降させたり(乗降階合 致呼び)、末尾階と一致する行先階の呼びがあれば、その出発階に順次移 動して応答させる(行先階合致呼び)。 具体的な制御規則(1/2) 遷移呼びである自セクタ→他セクタの呼びの出発階とその呼びと乗降階合致する自セ クタ→自セクタ呼びの出発階と遷移呼びである他セクタ→自セクタの出発階とその呼 びと乗降階合致する他セクタ→他セクタ呼びの出発階とを遷移誘導階と呼ぶ。行先階 が遷移誘導階と一致する自セクタ→自セクタ呼びや他セクタ→他セクタ呼びの出発階 も遷移誘導階である。 • (1)未応答の自セクタ→他セクタ呼びが無い場合 ①自セクタで降車する乗客がいるか自セクタ→自セクタ呼びがある時は、 乗客の降車と自セクタ→自セクタ呼びの応答を行う。その際に、自セクタ→自セクタ呼びで 行先階が末尾階と同じ呼びがあれば、乗客の降車よりもその出発階に優先的に順次応 答する。次に自セクタ→自セクタ呼びで出発階合致や行先階合致や乗降階合致する呼び に応答する。次に先頭の乗客から順に降車させる。その際に乗降階合致する自セクタ→ 自セクタ呼びにも応答する。乗客が全員降車後に出発階合致でも行先階合致でも乗降階 合致でもない未応答の単独の呼びに応答する。 ②自セクタで降車する乗客が無く自セクタ→自セクタ呼びもない時は 他セクタで降車する乗客がいるか他セクタを出発階にする呼びがあれば他セクタを自セク タにして(1)に進む。 (2)自セクタ→他セクタ呼びがある場合は、具体的な制御規則(2/2)参照 • 具体的な制御規則(2/2) (2)未応答の自セクタ→他セクタ呼びがある場合 ①自セクタで降車する乗客がいる時は、出発階が遷移誘導階でない自セクタ→自セクタ呼びと 乗降階合致する場合は、乗降階に停止して乗客を乗降させる。出発階が遷移誘導階でない自 セクタ→自セクタ呼びの行先階と行先階合致する場合は乗客を降車させる前に行先階合致す る自セクタ→自セクタ呼びの出発階に順次応答した後で行先階に移動して降車させる。その他 の場合は、降車階が遷移誘導階と異なる場合は降車階に移動して降車させる。 ②自セクタで降車する乗客がない時は、 出発階が遷移誘導階でない自セクタ→自セクタ呼びで行先階が末尾階と一致する呼びがあれ ばその出発階に順次応答して乗車させる。(行先階合致呼び) 出発階が遷移誘導階でない自セクタ→自セクタ呼びで、乗客の降車階で乗降階合致する自セ クタ→自セクタ呼びがあればその出発階に応答して乗降車を行う。(乗降階合致呼び) 出発階が遷移誘導階でない未応答の自セクタ→自セクタ呼びの出発階に移動して乗車させる。 ③出発階が遷移誘導階でない未応答の自セクタ→自セクタ呼びが無くなると、出発階が遷移 誘導階で、乗降階合致する自セクタ→他セクタ呼びの行先階が遷移誘導階でない未応答の自 セクタ→自セクタ呼びに応答する。 ④未応答の自セクタ→自セクタ呼びが無くなると行先階が遷移誘導階でない自セクタ→他セク タ呼びに応答させる。 ⑤未応答の行先階が遷移誘導階でない自セクタ→他セクタ呼びが無くなると行先階が遷移誘 導階の自セクタ→他セクタ呼びにも応答させる。 ⑥未応答の自セクタ→他セクタ呼びが無くなると、具体的な制御規則(1/2)の(1)へ進む。
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