「憧れのベーシックコース」 子安 弘美(68BC・O 修了) テネジーコーポレーション 品質顧問(元松下電器産業(株) ) 1.憧れのベーシックコースの受講 私が BC を受講した時に勤めていた当時の会社では、品質本部が社外研修の受講枠を決めていまし た。受講枠は、各事業所一人ずつであったため、受講したくとも容易には受講できなかったのが、日 本科学技術連盟のベーシックコースでした。 職場では、業務上の問題を抱えて昼間は通常業務を、残業時間は問題の解析検討を、といった日々 でした。そうした中で、ある部品の特性値が、半田付け前後で変化するという問題があり、毎晩、色々 なサンプルを作っては次の日に製造ラインで製造してもらい、残業時間に測定をして原因解析に取り 組んでいました。その様子を見ていた当時の上司が、 「実験計画法を用いてみたら」とアドバイスをし てくれました。しかし、当時の私は、実験計画法を理解出来ていませんでした。本を渡され、参考に しようにも、因子、水準、交互作用、誤差・・・読んでも、読んでも理解できませんでした。 このきっかけで、ベーシックコースの受講を希望したのですが、タイミングが悪く、三年間も待た されました。当時、年功序列の思想もあり、他の人が新任研修で先に受講されて、待ちに待って、よ うやくベーシックコースが受講できたのは、 「68BC・O」でした。 2.おこがましくも、教える立場に 憧れていたベーシックコースの受講が終わりを向かえ、まだまだ実務での手法活用に手間取ってい たので、セミナー終了後はどうしようか、と思っていたところ、最後の打ち上げパーティーで SQC 部会への参加の誘いを頂き、以降、月一回の部会へ出席することになりました。 当時、岩崎日出男先生(近畿大学名誉教授)が SQC 部会長で、ベーシックコースの宿題(演習問 題)の検討をしていました。出題の良し悪し、教育的であるかどうか、質問に対する解答は的確か、 など、その議論を聞くことが凄く良い刺激となり、学ぶことも盛りだくさんで、月 1 回の部会がとて も楽しみでした。そして、半年ほど過ぎた頃、事務局から班別研究会の指導をして欲しいとの依頼を 受け、おこがましくも指導する立場となり、その後、さらに講義までもさせて頂くことになりました。 当時の講義は、大阪の堂島にある中央電気倶楽部の大ホールで行われていました。 (現在は、別コー スの講義で同ホールを使っています。 )そのホールは、松下電器の創業者である松下幸之助が第1回創 業記念式を行い、松下電器の使命が闡明され、壮大な 250 年計画が提示されて全員が興奮し壇上に駆 け上がった、と伝えられている歴史的な場所なのです。松下電器に勤めていた私にとって、そのよう な場所で講義ができるということは、この上ない光栄なことでありました。 3.実務者として 教育者でもない私が、25 年余りも講義をはじめとして、指導をさせて頂きながら、共に学んでいま す。 私は、ST 委員、宿題委員、他のコースの講義、他のコースの運営委員などに携わってきました。 常に考えてきたことは、 「実務ではどうなのか?」 、 「上手く活用するためにはどうすればいいのか?」 、 「実務で役立つ補助資料づくりと講義」 、 「実務で役立つ問題づくり」など、 「過去に自分は、どんなこ とで苦労したのか?」ということです。 そして、いつも自分がベーシックコースを受講したときの気持ちを忘れないようにしています。実 務者として、 「現場で何が重要なことなのか」 、 「注意すべきことは」 、 「転ばぬ先の杖は」と力説してい ます。 全ての講義で共通して言えることは、 1.データは、統計手法を使うためにとるのではない。 2.データ解析は、手法を使って作図するとか、統計解析結果を得ることではない。 3.固有技術を疎かにしない。 と考えています。 実務では、 「データで何を証明したいのか?」 、 「何を言いたいのか?」 、 「解析結果を基に何をどうし たいのか?」 、などの目的があり、統計手法を用います。そして、いずれのデータも、データを得ると きの「生い立ち」が最も重要です。 「言うは易く行うは難し」なのですが、この生い立ちを如何に集め るかが解析結果からのアクションをする一つのキーとなります。これは、固有技術の見地との妥当性 チェックに必要な情報と成り得ることと信じています。 そして、受講生の皆さんが色々な手法、考え方を実務で活用して成果を上げて活躍されることを願 っています。 最後に、とりとめもない内容となりましたが、講義アンケートで「実務でのもっと多くの事例を聞 きたかった」 、 「テキストにない実務の話が聞けて良かった」など、嬉しい結果と、修了生からメール での問い合わせがあったり、近況報告を受けたりして、私も受講生も¨Happy¨を感じることが一番 と考え、今後とも「初心忘るべからず」 、 「学ぶ心」の基本精神で、少しでも品質管理の継続と発展に 貢献できれば幸いと思っております。
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