講演ダイジェスト 第349回 技術サロン 日本下水道事業団における ICT(情報・通信技術) の 活用について 富樫 俊文 日本下水道事業団情報システム室長 ICT活用の目的 現在,日本の下水道のストックは,処理場約2,200 カ所,ポンプ場約3,600カ所に及んでいます。老朽化 した施設や設備の長寿命化・改築更新が今後の主流に なっていきますが,設備管理の基本となる設備台帳の 電子化率・入力率は半分以下といった状況です。 JSでは,地方公共団体等の委託に基づき,計画の策 定および技術援助や施設の設計,建設,維持管理を行っ てきました。JSの業務拠点はほぼ全国にあるものの, 人員は東京や大阪に集中しています。当然ながら,現 場は全国各地に存在するため遠隔地の状況の迅速な把 3D化したデータで処理場を把握 握や円滑なコミュニケーションが求められています。 その一方で経営への寄与も求められており,フロント インターネット上にあるサービスを利用するために ローディング等,質を維持・向上させつつ,業務の円 あらゆるモノをインターネットに接続することがIoT 滑化や平準化,効率化を実現させていかなくてはなり です。例えば「自分のペースで仕事をする」「同時に ません。 仕事をする」ために活用します。JS-INSPIRE(JS版 JSではBIM/CIMやIoT等,業務の円滑化・平準化・ 情報共有システム)は,国交省情報共有システムをベー 効率化につながるようなICTの活用を考えています。 スにしたもので,受発注間での工事書類の確認や保管 BIM/CIMとIoT をインターネット上で行うものです。インターネット に接続できれば工事書類の提出や確認ができるので, BIM/CIMはコンピュータを使って設計をするだけ 自分のペースで仕事をすることができます。また,電 でなく仮想的に建設してしまおうという取組みで,2 子納品の手間の削減や期間の短縮ができる機能もあり 次元図面ではなく3次元モデルを構築するものです。 ます。さらに,同時に仕事をするという点では,イン 例えば, 「遠くにある処理場を把握する」「素早く計画 ターネット経由で接続できるモバイルTV会議システ を立てる」ために活用します。処理場がデータ化され ムやウェアラブルカメラを利用した映像・音声共有シ ているので状況把握が容易になり,素早くプロジェク ステムにより委託団体や現場との打ち合わせが可能に トを計画することができます。 なります。 そのためにはAMDB(設備台帳)やPURE(プロジェ 従来,システムは開発するものでしたが,今は利用 クトマネジメントシステム)とのデータ連携が必要に するものと考えています。例えば点群処理ソフトや なってきます。そのほか,施工管理をシンプルにでき BIM/CIMソフト,TV会議システムはそのまま利用 たり,速やかに積算,発注したりすることが可能とな しています。情報システム室ではIoTについては,ま ります。 ずはパソコン+αからスタートと考えています。 18 —— 下水道機構情報 Vol.11 No.23
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