私が彼の担当編集をするのはまちがっていない。 ID:103285

私が彼の担当編集をするのはまちがっていない。
kaiza─
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DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
私の名前は山田 美海。高校を卒業すると同時に小説家としてデ
ビューした比企谷 八幡の担当をしている。
デビュー ││││││││││││││││││││││││
小説家 │││││││││││││││││││││││││
1
目 次 周りの反応 │││││││││││││││││││││││
4
休日 2 ││││││││││││││││││││││││
そして休日にて │││││││││││││││││││││
彼女たちとの話。 ││││││││││││││││││││
大学にて ││││││││││││││││││││││││
人見知りを克服しよう。 │││││││││││││││││
時間を大事に │││││││││││││││││││││
8
11
15
19
23
27
31
小説家
私 の 名 前 は 山 田 美 海。○ ○ ○ 文 庫 に 勤 め て い る 編 集 者 だ。小 さ
いころから本を読むことが大好きな私は高校を卒業後、専門学校に通
﹂
い、編集者として必要な知識や技能を学び、かねてから希望していた
この会社に就職した。
﹂
美海。例の子がきてるから、早く行ってくれ
すぐに行きます
﹁おーい
﹁はい
!
た。
﹁あの。比企谷 八幡さんですよね
?
﹁先日電話でもお話しましたが、最優秀作の作品は文庫として発売さ
﹁ありがとうございます﹂
﹁まずは最優秀作の受賞。おめでとうございます﹂
比企谷さんは名刺を受け取ると、小さく自分の名前を口にした。
﹁比企谷 八幡です﹂
に渡した。
部屋に入り、椅子に腰掛けた後、私は名刺を取り出し、比企谷さん
した。山田 美海です。よろしくお願いします﹂
﹁遅れてすみません。比企谷 八幡さんの担当を務めることになりま
私は比企谷さんを奥の部屋に案内した。
﹁お待たせしました。ではこちらへどうぞ﹂
てくるゾンビのようだった。
その男性の第一印象は死んだ目をしており、まるでホラー映画に出
﹁はい﹂
﹂
私は急いで入り口に向かうと、男性が入り口のソファーに座ってい
なった作家の担当を務めることになった。
ようという話が上からあり、最優秀作を受賞しデビューすることに
この会社に入社して一年が立ったころ、そろそろ私にも担当をつけ
!
!
れることになります﹂
1
!
﹁それって近いうちに小説家としてデビューできるってことですよね
﹂
?
今すぐにでも⋮⋮﹂
﹁時期は半年後になりますが、会社の方針としてはデビューさせたい
とのことでした﹂
﹁何で半年後なんですか
﹂
﹁はい。そんな風に考えてます﹂
れに比企谷さんは進学希望ですよね
﹂
ほうが読者から注目を集め、本が売れる確立は格段にあがります。そ
思いますし、それに何もしないまま、すぐに発売するよりはこちらの
﹁先といっても3ヵ月後ですからね。時間はそれほど長く感じないと
もだが、読者が本を手に取ってくれると思う。
で、多くの読者から関心を集め、発売されると同時に最初は少ないか
それまでの間にツイッターなどで大きく宣伝をし、注目を集めること
違いなく負けてしまう。一方3月はそこまで大きな作品も出ないし、
1月、2月は他文庫から有名作品が沢山出る。ここで勝負したら間
﹁3月ですか。結構先ですね﹂
と、3ヶ月後ですね。なので3月発売予定になります﹂
ツイッターやHPなどにて小説の宣伝、ならびに販売戦略を含める
﹁作品の手直しや挿絵を担当することになるイラストさんへの依頼。
﹁それはなんとなくわかりますが⋮⋮それだったらいつぐらいに﹂
ると思います﹂
新人。読者としてはルーキーの出した作品よりも有名作品を手に取
﹁今月、来月は他社で有名作が出ます。比企谷さんの立場はあくまで
﹁どういうことですか
﹁気持ちはわかりますよ。ただ、今出したら間違いなく売れません﹂
ようだ。
比企谷さんは今すぐにでも自分の作品をデビューさせたい意向の
?
﹁挿絵のイラストについては事前に確認できますよね
﹂
受験に失敗したなんてことになったらえらいことだから。
まずは学業をしっかりと確立させてほしい。こちらに専念してて、
で﹂
多くないですし、挿絵の担当についてもこちらのほうで手配するの
﹁だったら、まずは受験を乗り越えましょう。本の手直しはそれほど
?
?
2
?
﹂
﹁はい。確認してもらうつもりです。挿絵の担当の方は新人の方か、
もしくは有名な方。どちらがいいですか
﹁出来れば有名なほうで﹂
﹁わかりました。では有名な人に頼んでみます﹂
﹁お願いします﹂
﹂
何だろう。お互いに年が近いことからかあまり距離を感じない。
﹁あの⋮失礼ですが、山田さんって今いくつですか
﹁今年で22です﹂
﹁あんまり年の差を感じないですね﹂
﹁うわぁ。それはいやだ﹂
ますからね﹂
としての生活もですけどね。社会人になったら、社蓄ライフが待って
﹁残り少ないですが、高校生活を楽しんでください。その先の大学生
けど、青春を味わうことなく卒業しちゃったからなぁ。
それにしても高校生っていいなぁ。私も数年前までは学生だった
もいいかもしれませんね﹂
﹁それは私も思ってました。年が近いから、もっとフランクに接して
?
それからは次に話し合いをする日を決めてから、今日の話し合いは
終わった。
3
?
デビュー
そして、冬の寒さが本格差を増し、各地では雪が降り、ニュースで
はスキーやスノボーといった物で遊んでいる人たちを映している。
﹁うう、寒い﹂
吹き抜ける風の冷たさで私はコートに包んだ自分の体を寒さで震
えるのを感じた。
私は待ち合わせのカフェに向かうと、待ち人は先に来ていたよう
だ。
﹁すみません。お待たせしました﹂
﹁いつも俺のほうが先ですね﹂
﹁すみません。仕事を先に片付けてきたので⋮⋮﹂
私は店内に入ると、比企谷さんが座っている席の反対側に腰を下ろ
した。
﹂
定が埋まっている人が多く、空いている人を見つけて、それぞれにイ
ラストを書いてもらったんですけど、私の目からしたらどれもよく
て、一度比企谷さんに見てもらって、その上で決めたほうがいいのか
なって思いました﹂
私はかばんの中から3枚の絵を取り出した。その絵をわかりやす
いように、左、真ん中、右に分けておいた。
﹁左の可愛い猫の動物を書いたのが有名なイラストさんです﹂
4
﹁まずは合格おめでとうございます﹂
﹁ありがとうございます﹂
比企谷さんは希望していた大学に無事に受かったそうで、私はその
連絡を受けたとき、まるで自分のようにうれしかったのを覚えてい
る。
﹂
﹁小説のほうなんですが、予定通り3月で行こうと話になりました﹂
﹁そうですか。それで挿絵のほうは
﹁俺にですか
﹁それなんですけど、比企谷さんに決めてもらおうかなって思って﹂
?
﹁最初の希望の有名な挿絵を書く方がうちが確保している人たちが予
?
﹁真ん中の大人の女性を書いたのが新人さんです﹂
﹁右の少し大胆な表現を書いたのは同じく新人さんですが、とてもい
いイラストを書く人です﹂
実際に生きていると感じる猫に比べると、他の二つは少し劣るが、
どれも私からしたらすごくいいとおもい、私一人で決めることが出来
﹂
ず、上司に相談した所、小説家と相談して決めたらどうだといわれた。
﹁左の猫のやつで﹂
﹁わかりました。ちなみに何でそれを選んだんですか
﹁俺はそれが一番いいなと思ったので﹂
選んだ理由としてはすごくシンプルなものだったけど、作家がいい
と感じた物に嘘はないだろう。
﹂
﹁わかりました。その人とはかなりつめの所まできてるので、後は小
説の原稿を見てもらうだけですね﹂
﹁すべての手直しが終わったものを見せるんですよね
﹁はい。完成版を見せます。その上で小説に合う挿絵を書いてもらう
つもりです﹂
時間的にはまだ余裕があり、その方に小説の一部を見せた所、かな
りの好印象+すぐにイラストが書きたいという返事ももらっている。
﹂
﹁ただその方がかなりの人見知りなんですよ﹂
﹁人見知りというと、どれくらい
話すのが苦手みたいで、会話があまり続きません。心配なところがあ
るとしたらそこらへんですね﹂
﹄とい
その人と一度だけ顔合わせということであったことがあるのだが、
会話が長く続いたことがなく、会話がとまると、
﹃何よ。悪い
わんばかりにこちらをにらんできた。
?
少し意外です﹂
まり感じないので﹂
5
?
?
﹁私も一度会っただけなので、あまり深くは知らないんですけど、人と
?
﹁俺もあまり人と話さないので、その人とはあうかもしれませんね﹂
﹂
﹁そうなんですか
﹁何でですか
?
﹁今、こうして私と普通に話せているので。人と話すのが苦手とはあ
?
そういえば、ボッチで過ごしていることが多いと前に聞いたけど、
ボッチというよりはリア充に近いものを私は感じていた。
﹁アラサー⋮⋮学校の先生にいろいろ面倒を見てもらったので、そう
見えるんだと思います﹂
一瞬アラサーという言葉が聞こえてきたけど、学校の先生でアラ
サーという愛称の先生がいるのかな。
﹁いい先生だったんですね﹂
﹁まぁ⋮いろいろありますが、いい先生だと思います﹂
いろいろということに意味深だけど、あまり気にしないほうがいい
かもしれない。
﹂
﹁小説のタイトルは﹃俺の異世界生活は間違えだらけだ﹄でいいですよ
ね
﹁はい。それで大丈夫です﹂
﹁決めたほうとして、こんなことをいうのはあれですが、タイトルだけ
ですごいですね。中身はファンタジーという﹂
﹁まぁ。いろいろ考えた結果、こうなったので﹂
最初に会ってから、数ヶ月がたち、その間にも電話にてやり取りす
る機会はあり、お互いのことも少しずつ理解し始めてきたので、そろ
そろ敬語をはずしてもいいかもしれない。
﹂
﹁あの⋮⋮タメで話してもいいですよ﹂
﹁え
﹁お互いに年も近いですし、最初にいったじゃないですか。お互いに
年の差を感じないって。だから敬語はなしでいいですよ。私は仕事
﹂
上、この話し方でいきますけどね﹂
﹁それでは、迷惑になるのでは
しいのはなしでいきましょう﹂
﹁それじゃあ⋮⋮なんて呼べばいいですか
?
﹁じゃあ、山田さん。これからもよろしく﹂
比企谷さんは少し考えるそぶりを見せた後。
﹁普通に名前でいいですよ﹂
﹂
﹁私は別に気にしません。それにお互いに長く付き合うためにも堅苦
?
6
?
?
﹁はい。よろしくお願いします。比企谷さん﹂
そういって、私たちは握手を交わした。
7
周りの反応
俺 の 小 説 が 本 屋 で 発 売 さ れ て か ら 一 ヶ 月 が 経 過 し た。俺 は ペ ン
ネームは使わずに本名で活動している。周りの反応はというと。
ライトノベル
光る本なの
これで有名人の仲間入りだね
そ
ごめんなさい。私にはよくわから
﹃あら。小説家としていきていくのね。どんな内容なのかとても楽し
みだわ。ラノベ
ないわ﹄
﹃ヒッキー、デビューおめでとう
れで本屋さんに買いに行ったけど、ライトノベルって何
﹄
?
?
のようで同じ大学に受かったことが奇跡だと思うレベルである。
この二人とは同じ大学に通うのだが、相変わらず由比ヶ浜はあれの子
雪ノ下と由比ヶ浜はそもそもライトノベルを知らなかったらしい。
本屋さんじゃなくて、電気屋さんに売ってるのかな
!
?
!
?
﹃せんぱーい。小説家としてデビューおめでとうございます。小説家
え
女性
彼氏もいない
しかも年がちかい
?
してない
その方は結婚してるんですよね
?
?
すみません。その方の話を詳しく教
?
?
さんって担当がつくみたいですね。その人はもちろん男性ですよね
え
?
前半はいつものようにあざとさ全開の一色だったが、後半からなぜ
ところで八
プロとして意
さすが我の盟友
かくろはすになり、女性という単語が出た所でブラックいろはすにメ
ガ進化した模様です。
﹃ふふふ。我が野望を先に達成したか
幡よ。小説家になるための何かアドバイスはないか
見を求む﹄
!
山田さんに見てもらうことも考えてやる。
!
﹄
!
は親父と俺だけだが、俺が売れたとしたら、うちに残っているごみは
小町よ。お兄ちゃんはそう簡単に処分できないぞ。家にいるごみ
守ってあげる。あ。今の小町的にポイント高い
れでお兄ちゃんを処分できるね♪でも、売れなかったときはそばで見
﹃ごみいちゃんが、まともなおにいちゃんにランクアップしたよ
こ
材木座。お前はちゃんとしたものを書き上げろ。内容によっては
?
!
8
?
?
えてください。場合によっては結衣先輩と雪ノ下先輩にも話すので﹄
?
親父だけだと思うと、マジで社蓄にはなりたくないわー
﹄
﹃そうか。小説家として生きていくのか。当然大学はいくんだろうな
これで大学をやめるとなったら、どうなるかわかっているよな
?
八幡の書いた小説は絶対に買うね。
指を鳴らしながら、こちらに圧力をかけていた平塚先生。ほんとだ
小説家なんてすごいね
れかもらってあげて
﹃八幡
!
!
たらいいなと思いますが、6月までの売り上げの状況を見ながら、今
﹃理想としては一巻が3月に発売なので、二巻は9月ごろに発売でき
ている時間に小説は進めていきましょう﹄
でもらいます。今は大学生なので学業を優先してもらいます。開い
﹃石の上にも3年という言葉があります。だから一年目は経験をつん
くれている気持ちだけは伝わってきた。
戸部、三浦、海老名さんに関してはいつもどおりだったが、祝って
﹃これで公式にはやはちを想像できる∼﹄
しょ﹄
﹃や っ べ ー。ヒ キ タ ニ 君。ま じ す ご す ぎ っ し ょ。も う 神 レ ベ ル っ
ないわ。とりあえずおめでと﹄
﹃へ∼。ヒキオが小説家ねぇ。あーしは本は全然読まないからわから
葉山は自分のやり方で俺を追い越すといった。
俺のやり方で君を追い越す﹂
いぶんと差をつけられたな。悪いが君には負けられないんだ。俺は
﹁まさか、君が小説家として生きていくとはな。驚きだよ。それにず
来の姉という設定がついている。
陽乃さんに関しては相変わらず行動が読めない。いつの間にか、将
度見せてね。将来のお姉ちゃんとの約束だぞ∼﹄
ちゃんから話は聞いたよ∼。どんな内容を書くのかな∼出来れば一
﹃ひゃっはろー。比企谷君。小説家デビューするんだってね∼。雪乃
瞳をうるうるさせながらいわれると勘違いしちゃうじゃないか。
戸 塚 よ。ま だ 有 名 に な る と は 決 ま っ て な い ぞ。そ れ に な ん だ ⋮⋮
大学は違うけど、僕らはずっと友達だよ﹄
!
後の方針を決めていきましょう。先ほどの話に戻るのですが、比企谷
9
?
さんには3年の間に小説家として必要な力を身につけてもらいます。
ただ人によって、成長できる速度は違うので、成長のレベルに応じて、
じっくりと段階を踏んでいこうと考えてます﹄
﹃私もまだまだ足りないところがあるので、比企谷さんと一緒に成長
できたらいいなと思います。つらいことも楽しいこともあるとは思
いますが、共に乗り越えられたらいいなと思ってます。一緒にがん
ばっていきましょうね﹄
本の発売の前の日に山田さんからお祝いメールと題して今後の方
針が書かれた内容が送られてきた。
このメールの文面から察するに俺はこの人に相当期待されている
のを感じた。
10
時間を大事に
比企谷さんの小説が発売されてから3ヶ月が経過したころのこと。
﹁多少の手直しは必要ですけど、大体の内容はこれでいいと思います﹂
私は原稿を受け取った後、電話にて比企谷さんと話していた。
小説のほうは最初のうちはまずまずの出だしでスタートし、事前に
用意した宣伝の効果と販売計画が少しずつ実を結び始め、本の内容が
﹂
とてもすばらしいことから、読者の間で話題にあがっている。
﹁発売は9月ごろになるんだよな
することもできる。
﹁山田さんは大学に行かなかったのか
﹂
﹁大学はいろいろなことがあるから、楽しそうです﹂
なんというか少しだけ彼との距離が近くなったと私は思った。
こうして比企谷さんはタメ。私は仕事上敬語で話しているのだが、
﹁高校との違いを感じ始めたところだな﹂
﹁大学生活のほうはどうですか
﹂
こうやってある程度時間に余裕を作ることで、学業のほうにも専念
ればいいかなと考えてます﹂
﹁はい。3月。9月。そして来年の一月。それくらいに一冊ずつでき
?
わないためにもです。失った時間は戻ってきません。大人になって
﹁はい。私の経験からきているものです。私のような失敗をしてもら
⋮⋮﹂
﹁も し か し て、俺 に 今 の 時 間 を 大 切 に し て ほ し い と い っ て い る の は
技能を高める。そればかりが頭にありましたから﹂
で、他人と恋愛ごとをしている暇はなかったですね。ひたすら自分の
﹁私 の 場 合 は こ う い う 業 界 に 進 み た い と い う 明 確 な 目 標 が あ っ た の
わうことはなかった。
私の場合は夢に一直線で進んでいったので、青春の甘酸っぱさは味
で﹂
能を学べるし、何よりも早くこの業界に入ることができると思ったの
﹁私は専門学校に行きました。専門のほうが、少ない時間で多くの技
?
11
?
後悔してももう遅い。だから今、沢山のことを学んでほしかったんで
す。甘酸っぱい青春は今でしか味わえませんから﹂
今になってわかる。もう少し楽しんでおけばよかったと少しだけ
後悔している。私のように真っ直ぐに進むのもある意味正しいのか
もしれない。ただ、その道筋の中で大切な物を失ってしまうこともあ
る。
﹂
﹁それに比企谷さんには可能性を感じているんですよ﹂
﹁可能性
﹁は い。最 初 の 作 品 を 見 た と き に 私 は す ご く 引 き 寄 せ ら れ た と い う
か、読者目線で呼んでましたから﹂
﹁担当ってそういうものだと思うが﹂
﹁そうなんですけどね。担当という立場ではなく、一人の読者として
この作品はすごくいい。私は一人でも多くの人にこの作品を読んで
ほしい。そしてこんないい作品を書く人の担当をやってみたいって
思ったんです﹂
上司からの命令で比企谷さんの担当をしているが、それがなかった
ら、私は自分でこの人の担当をやらせてくださいと志願していたと思
う。
﹁本の内容もかなりいいし、国語力がかなり高いと思うので、順調に成
﹂
長したらいい作家になるんだろうなって私は思います﹂
﹁それはお世辞か
﹁何だ
﹂
﹂
﹁そ、それでひとつだけ私から提案があるんですけど﹂
違いなく話を聞いていられないと思う。
私の場合は人にほめられることが少なかったので、逆の立場なら間
﹁あはは⋮⋮私も逆の立場ならきっと顔が真っ赤になってます﹂
﹁そうか⋮はっきりいわれると、さすがに恥ずかしい﹂
になると思うから。
これは決してお世辞ではなく、私の本心。この人は将来すごい作家
﹁いいえ、本音です﹂
?
12
?
﹁今度の週末ってあいてますか
?
?
﹁一応あいているが、何かあるのか
あった。
﹁そいつって人見知りだろ
﹂
﹂
ころ、今度の休日にどこかに行きたいとイラストさんから申し出が
面識がない。どこかで一度顔合わせの機会を作ろうと思っていたと
私とイラストさんは面識があるけど、イラストさんと比企谷さんは
まして﹂
﹁イラストさんと私と比企谷さんの3人でどっかに出かけようと思い
?
大丈夫かと⋮⋮﹂
﹁ちなみにこいつって男
﹁いいえ。女性です﹂
﹁何かというと
﹂
﹁ちなみにそいつって人見知りのほかに何かある
﹂
男性としては二人の女性と外出するのは少し恥ずかしいのかな。
﹁⋮⋮﹂
﹂
﹁会話は短いですけど、こちらの話には言葉を返してくれるので多分
?
﹁それでどうします
﹁家で待機してるのは
﹁却下です♪﹂
﹂
﹂
﹄と真っ赤な顔をして否定していた。
前にツンデレさんですねと指摘したら、
﹃だ、だ、だれがツンデレよ
わいいとは思いますが﹂
﹁ああ⋮⋮性格はすごくツンデレさんですかね⋮⋮ほめるとすごくか
?
せっかくの休日に家にいるなんてすごくもったいない。
﹁わかったよ、いけばいいんだろ⋮⋮﹂
﹁はい。では今度の休日は楽しみにしてます♪﹂
﹁はぁ⋮⋮できるだけ近くのところで頼む﹂
﹁はい。当日までに行くところは考えておきますね﹂
﹁決まったらメールをくれ。それじゃあな﹂
13
?
﹁ほら。性格が悪いとか﹂
?
﹁何で笑いながらいうんだよ⋮⋮こええよ﹂
?
?
!
その言葉を最後に比企谷さんとの電話は切れた。男性と出かける
ことはあまりなかったから、私は予定を考えるたびに少しだけどきど
きしていた。
14
人見知りを克服しよう。
私が比企谷と出かけるですって
そしてその日の夜のこと。
﹁はぁ
﹂
今では業界内ではすっかり有名人となっている。
﹁もともとは私とみにゃみが出かける予定だったでしょ
!
るのはハードルが高いというか⋮⋮﹂
﹁で、でも⋮比企谷は男子なんでしょ い、い、いきなり男子と出かけ
ている理由としてはそっちのほうが呼びやすいからとのこと。
私は原さんからみにゃみという愛称で呼ばれている。そう呼ばれ
も﹂
﹁いいじゃないですか。そろそろ私以外の人と出かける機会があって
のよ﹂
何で変える
価を得ており、時間の経過と共にその技術はますます磨きがかかり、
イラストさんの名前は原さん。幼少時から描くイラストは高い評
﹁正確には私と比企谷さんと原さんの3人ですけどね﹂
!?
﹁当たり前でしょ
﹂
間違えなく断られていましたから﹂
﹁だから私を加えたんです。二人で出かけてくださいっていったら、
?
﹂
?
﹁なっ⋮⋮
﹂
﹁脅してません。純粋に心配なんですよ。このままでいられると﹂
﹁何よ⋮⋮私を脅してるの
ら、今後の活動に影響が出ますから﹂
﹁人見知りはそろそろ卒業しましょう。人前に出られないようだった
欠点を除いて。
この人の才能はすごい。それは誰もが認めている。ただひとつの
!
この人の場合は自分だけの世界に閉じこもっている。
﹁何でそうなるんですか⋮⋮﹂
うっていう考えなのね。見損なったわ﹂
﹁なによ⋮⋮みにゃみもそうやって、私をその気にさせて、人前に出そ
電話口から驚いた声が聞こえてきた。
!?
15
!?
﹂
﹁私の思いを伝えるので、電話を切らずにいてください﹂
﹁いや﹂
﹁⋮⋮今きったら、怒りますよ
﹁そういうことをさらっというのが怖いのよ。みにゃみは﹂
普段の私とは若干声色を変えて話したのが、原さんには効果があっ
たのか、電話を切らないでいてくれた。
﹁人見知りは大人にもいます。大学生の原さんに今すぐ克服しろとは
いいません。ただ、社会に出るとそんなものは通用しなくなります。
﹂
人前に出られないようなら、間違えなく干されます。実力はあるけど
扱えないやつ。失敗作といわれたいんですか
﹁⋮⋮﹂
ず、相手には反感の気持ちばかりが生まれてしまう。
なのに、一人が付き合いを拒否している時点で信頼関係は生まれ
非常に高い。
働いている以上は今回だけではなく、今後も付き合っていく可能性は
私はあの二人を引き合わせたいというわけではない。同じ業界で
いの間に信頼が生まれていくんです﹂
かけで生まれた関係がその後の仕事でも一緒になることが多く、お互
﹁作家とイラストは長く付き合って行くものです。一つの仕事がきっ
ら。
を勝ち取ることができず、落ちこぼれていった人を見たことがあるか
実際にこの仕事につく前に一つの欠点があることで人からの信用
ていく。
てくる。一つの行動、一つの欠点があることから、人の評価を落とし
はそれで通していたとしても社会に出たら、責任という看板が背負っ
社会に出たら人見知りという甘えは一切通用しない。学生のころ
?
﹂
誰の心に作品を届けることができる
それはきっと作品にもよくない。そんな感情で作り上げた作品を
誰か読みたい
﹁⋮⋮あんたは私を信頼してくれているの
?
﹁だったら⋮⋮﹂
16
?
﹁信頼してます。一人のファンとして応援していきたいですから﹂
?
?
﹁一人のファンとして今の原さんは放って置けません﹂
﹂
﹁ファンだったら、見捨ててくれてもいいのだけれど﹂
﹁見捨てません﹂
﹁みにゃみにとって、それも仕事だから
してませんから﹂
﹂
﹁⋮⋮少しだけなら付き合ってあげてもいいわよ﹂
は言葉を発し、気持ちを理解することができる。
作品は物であって、言葉を発することはできない。その点、私たち
その人の考えを理解することができるんです﹂
手がどう思っていたのかをわからない。少しの時間でもあうことで
﹁作品の中ではその人の人間性までは見抜けない。作品の中では書き
﹁どういういみよ
﹂
﹁お二人はまだ一度も会ってません。あくまで作品の中でしか会話を
だろう。
そこに原さんを連れ出す必要はないと思うのが、一般的な考えなの
﹁だったら⋮⋮﹂
トです﹂
﹁いいえ。今回のことは仕事とは思ってません。あくまでプライベー
?
﹂
別に心配してくれるあんたに感動したとか、今
﹁わかってくれたんですね
﹁か、勘違いしないで
!
の言葉に影響を受けてはいないんだからね
!
﹂
﹂
そ、それに私はツンデレじゃないし
﹂
﹁ツンデレってやっぱいいですね。私、今の言葉で天国にいけそうで
す﹂
﹁なんでよ
﹁否定する人はツンデレみたいですよ
﹁みにゃみって漫画とかアニメが好きでしょ
あのアニメを見てからは喫茶店に通うのがマイブームになってい
にはまりました﹂
の合間に息抜きによく見てます。最近はこころがぽいぽいするやつ
﹁はい。大好きです♪小説も好きなんですけど、漫画やアニメは仕事
!
17
?
原さんはツンデレですね。ごちそうさまです。
!
?
?
!
る。
﹁じゃあ、今度の休日はお願いしますね﹂
﹁はぁ⋮わかったわよ﹂
そこで原さんとの電話は終了した。
18
大学にて
﹂
週末に山田さんとイラストレーターと遊びに行く前日のこと。
﹁ねぇ。ヒッキー、明日って暇
小 説 の こ と な ら 仕 方 な い け ど、家 か ら 出 な い な ん て
﹁ああ。それがどうかしたか
﹂
﹁担当の人って女の人⋮⋮なんだよね
﹂
﹁小説の担当とイラストと出かけるんだよ﹂
嫉妬の視線が俺に向くから
瞳を潤ませながらこっちを見るのはやめなさい。学科内の男子の
私たちと出かけようよ﹂
﹁ね ぇ ⋮⋮ ヒ ッ キ ー。ほ ん と の こ と を 教 え て。お う ち で 過 ご す な ら、
おい。いつから俺の趣味がひきこもりになったんだ。
だから﹂
﹁あきらめなさい。由比ヶ浜さん。彼はひきこもりが趣味のような物
もったいないよー﹂
﹁で な い ん だ
本家から出ないことをモットーにしてるからな﹂
﹁まぁな。小説のアイデアを考えるので忙しいんだ。それに休日は基
俺たちが話していると、同じ学科の雪ノ下も会話も参加してきた。
﹁へぇ。あなたに用事があるなんて意外ね﹂
﹁明日か⋮⋮悪いが用事が入ってる﹂
てきた。
大学での授業を終えた後、同じ学科の由比ヶ浜が明日の予定を聞い
?
?
だから、きっと大丈夫よ﹂
﹁で、でも、一緒に外出だよ
﹁おい。一瞬ヒキコモリっていおうとしただろ﹂
﹁ヒキコモ⋮いえ、比企谷君﹂
なにやら、二人がひそひそと会議を始めた。
﹁⋮⋮﹂
﹂
﹁落ち着きなさい。担当といっても、私生活の面倒は見ていないよう
﹁ゆきのん⋮⋮これはちょっとまずいかも﹂
?
!?
19
!?
比企
ナンパ谷君﹂
﹁そんなことないわ。いよいよ耳までおかしくなったのかしら
谷君﹂
﹂
いい間違えた相手からなぜか罵倒を受ける俺。
﹁その⋮イラストさんは男性なのかしら
﹁いや。女みたいだけど﹂
﹁⋮⋮今度から話すのは減らしたほうがいいかしら
?
わと思ったのだが。
な
﹂
﹁そうだね。後は小町ちゃんに協力してもらえばなんとかなりそうか
り男女の中になることはありえないし﹂
﹁まぁ。少し泳がせてみましょう。この男の性格を考えると、いきな
﹁ゆきのん⋮どうして
﹂
意外にあっさりと雪ノ下は引き下がった。てっきり私も同行する
﹁そう⋮なら無理に誘うのはやめておくわ﹂
﹁まぁいい。とにかく休日は無理だ﹂
だからな。正確には山田さんのほうがナンパの素質があると思うぞ
おい。俺がナンパしたわけじゃないぞ。山田さんが連れてくるん
?
?
なにやらまた二人でひそひそ会議が始まった。何を話しているか
は知らないが、お互いに真剣な表情をしていた。これは俺はさっさと
立ち去ったほうがいいな。
﹁そういうことだ。じゃ、月曜日にな﹂
﹁またね。ヒッキー﹂
﹁また月曜日に﹂
通っている大学の校舎を抜けると、俺はどこにも寄り道をすること
なく、真っ直ぐ家に帰宅した。
☆☆☆☆ 由比ヶ浜視点
将来のお姉ちゃんのためで
ヒッキーが帰った後、私たちはすぐに小町ちゃんに電話をかけた。
﹁小町にできることならなんでもします
すから﹂
私たちはどこか話ができる場所と総武高校から近い喫茶店で待ち
!
20
?
﹁この男の行き先を知るためには、手伝ってもらいましょう﹂
?
合わせることにした。
﹂
﹁なるほど。せんぱいがお出かけですか∼﹂
﹁何で一色さんがきてるのかしら
これはピンチだと思いまし
!
﹂
よね
﹁一色さんは彼が卒業する前にさんざんどこかに連れまわしていたわ
いろはちゃんはほっぺを大きく膨らませた。
て﹂
﹁だって∼せんぱいが女性と外出ですよ
﹁結衣さんとの電話の後にいろはさんに捕まってしまいまして﹂
んを待っていると、小町ちゃんといろはちゃんが二人でやってきた。
あたしたちが先に待ち合わせ場所である喫茶店に到着し、小町ちゃ
?
﹂
よね
デートもしてた
?
でヒッキーの気を引こうとしているから。
?
﹂
?
﹁その人の写真とかないの
﹂
いったいどんな人なんだろう⋮⋮
す﹂
﹁見た目だけでいうと、中学生と間違えられてもおかしくなかったで
﹁その人のスタイルはいいの
もよさそうですし、何よりお兄ちゃんのことを考えてくれてました﹂
﹁小町は数回話した程度ですけど、とても感じはよかったですよ。頭
﹁それで彼の担当の女性はどういった人なのかしら
﹂
いろはちゃんは油断のならない子。あたしたちの知らないところ
そ、それはそれ。これはこれということで⋮﹂
﹁ひっ
﹁お手伝いといって、前に洋服を買いに行ったよね
⋮⋮そ、それは生徒会のお手伝いをしてもらうためで﹂
﹁ひっ
?
?
残っている女性のほうは携帯を取り出していた。
は 話 が 終 わ っ た の か、テ ー ブ ル を 立 っ て 先 に 会 計 を 済 ま せ て い た。
そこのテーブルでは若い男女がなにやら話している。男性のほう
あったのかとそちらに視線を移した。
小町ちゃんが驚いた様子で遠い席を見ている。あたしたちは何か
﹁えっと⋮そういうものはもらってなくて。名前だけしか⋮⋮あっ﹂
?
21
!
!
﹁小町ちゃん
ええ
える。
﹂
あの人がどうかしたの
あの人が担当なの
﹂
?
でもいわれてみると、確かに中学生に見
!?
どうしてここに
たちのほうを見た。
﹁あれ、小町さん
﹂
?
帳を取り出すと、何かを書き込んでいた。
?
う感じだった。
﹁山田さんはこれから時間はありますか
一応今日の仕事は出てくる前に全部終わらせてきたの
?
答えてくれた。
山田さんは時計を確認すると、短い時間なら大丈夫とあたしたちに
なら大丈夫ですよ﹂
で。ただ、上司に今回のことを報告しないといけないので、少しだけ
﹁時間ですか
﹂
山田さんの印象は小町ちゃんの印象とは違い、仕事ができる人とい
るので﹂
﹁それは秘密です♪営業さんにも外には出さないでくれって頼まれて
﹁それってお兄ちゃんに関係あることですか
﹂
山田さんという女性は携帯をポケットに入れ、鞄からスケジュール
いくのがブームなんですよ﹂
﹁はい。営業の帰りです。仕事が一段落すると、ここでいっぷくして
?
?
﹁それは小町のせりふですよ∼。山田さんはお仕事ですか
﹂
小町ちゃんがその人に向かって、呼びかけると少し驚いた表情で私
﹁え
﹁山田さーん﹂
!?
﹁あの人です。お兄ちゃんの担当さん﹂
?
?
22
?
彼女たちとの話。
少しだけなら時間があるので、私は小町さんたちと同じテーブルに
座り、彼女たちと会話を始めた。
﹁はじめまして。比企谷 八幡先生の担当をしてます。山田 美海で
す﹂
そういって、私は同じテーブルにいる人たちに名刺を渡した。
﹁明日。ヒッキー⋮比企谷君と外出されるそうですね﹂
﹁はい。私とイラストの原さんと比企谷さんと出かける予定となって
ますが⋮⋮﹂
﹂
私から見て、真正面の席に座っている髪をお団子状にまとめている
女の子が話し出した。
﹁イラストさんも一緒なんですか
﹁はい。私は二人の顔は知ってるし、性格もどのようなものなのか理
解してるんですけど、比企谷さんと原さんはまだあったことがないの
でも、明
で、この機会に一度会ってみるのもいいかなと思ったんです﹂
もしかして、大学ですでに出かける予定があったのかな
﹂
日は予定はないって比企谷さんはいってたし⋮⋮
﹁もしかしてそれもお仕事の一環ですか
?
ると、精神的に参ってしまうから。
﹁山田さんの仕事は編集作業なんですよね
﹂
?
私には管理しているように感
﹁普段の生活までは管理してません。今回の場合は私から持ちかけた
じます﹂
﹁ならなんで一緒に出掛けるんですか
﹁プライベートを仕切ってるつもりはありません﹂
今度はその隣にいる亜麻色の髪をした女の子が質問をしてきた。
で仕切る必要はないんじゃないですか
小説家のプライベートま
日にこれだけ働いてつかれきっているのに、休日まで仕事のこととな
明日は仕事とは切り離してすごしたいと思っている。さすがに平
です﹂
﹁いいえ。完全なプライベートです。なので明日は仕事とは関係ない
?
?
?
23
?
話ですし、作家さんとイラストさんは同じ業界で働いている間は今回
だけじゃなくて、次もお願いしますって事も考えられますから。その
﹂
時にお互いのことを知っておけば、次の作品にもいい影響を与えるん
じゃないかなと思っただけです﹂
﹁つまり⋮⋮山田さんは比企谷せんぱいに好意は持ってないと
﹁持ってないですね⋮⋮まだその段階にも来てません﹂
﹂
﹁業界内の彼の評判はどんな感じですか
﹂
すけど、その他の活動については未定です﹂
﹁今後のことについては具体的には決まってません。小説は発売しま
聞かれた。
小町ちゃんと一番奥の席に座っている女性から同じようなことを
﹁それは私も聞きたかったわ﹂
くのにあたって、現時点でどういう風にするのか教えてください﹂
﹁お兄ちゃんの今後の活動についてです。小説家として売り出してい
﹁どうぞ﹂
﹁小町からもきいてもいいですか
めるタイプなので相手からはすごいめんどくさいやつと思われそう。
もしも、私と比企谷さんが付き合うとなると、私が事前に計画を決
?
思ったから。
いし、何かこちらで予定を入れてしまうと成長のさまたげになると
今年は目立った動きはしない。今年はいろんなことを学んでほし
の動きはあるかもです﹂
物語の流れはできていると思うので。そこら辺になったら何かしら
で。まずは来年の春。そのころには小説の3巻も出てますし、大体の
﹁そうですね。営業さんからも今年はまだやらないといわれているの
﹁来年というと⋮⋮今年は目立った活動は特になしと﹂
があるかもです﹂
す。今年は現状のままですけど、来年の春あたりには何かしらの動き
﹁本は売れてますし、ネットや小説家の間でも評判はそこそこいいで
?
﹂
24
?
﹁小説が売れるとよく漫画やアニメ化したりしますけど、そこら辺は
どうですか
?
﹁まだその話はないですね。アニメは話の程度によってはある程度の
ストックがないとできませんからね。今のところアニメ化はまだま
﹂
だ先の話になります﹂
﹁じゃあ、漫画は
﹁コ ミ カ ラ イ ズ の ほ う も 同 様 で す ね。こ ち ら の ほ う は ア ニ メ と 違 っ
て、そこまで難しくはないと思うんですが、ある程度注目されるよう
にならないと難しそうですね﹂
アニメ化とコミカライズは今のところは無理というのが営業さん
と私の判断だ。
﹁比 企 谷 さ ん の 書 く ス ピ ー ド が 早 い の で、こ ち ら と し て は す ご い 助
かってますね。この前は2巻の内容+3巻のあらすじが届きました
から﹂
﹂
と心の中で突っ込みを入れたくなりまし
﹁そのときはどう思ったんですか
﹁フライングしすぎですよ
た﹂
?
﹁ええ
﹂
﹁家で兄は﹃小町⋮⋮お兄ちゃん、そろそろ過労死しちゃう﹄﹂
く原稿が読みたいです﹂
﹁いえいえ。私としたら、あらすじだけでも面白そうと思ったので、早
そういって小町さんは申し訳なさそうにしていた。
﹁すみません。兄が迷惑をかけたようで⋮⋮﹂
!
ああ。なんとなくわかる。人って追い込まれるときになぜかテン
ションがあがるし、やるきも満ち溢れてるから。
﹁おっと⋮⋮もう戻らないと﹂
携帯の時計を見ると、時間は予定した時刻より少し過ぎており、ど
うやら話し込んだようで、そろそろ編集部に戻らないと、上司からま
た何かを言われるかもしれない。
﹁今日はありがとうございました﹂
﹁いえいえ。こちらも話してて楽しかったです。また今度機会があっ
たら、ゆっくりお話をしましょう﹂
25
?
﹁そういいつつ、とてもいい顔で執筆作業をしてました﹂
!?
﹁はい
﹂
やっぱり同じ年頃の人たちと一緒に話したり、すごしたりするのは
とても楽しい。
彼女たちは比企谷さんの知り合いだと思う。話した感じでは悪い
印象はなく、むしろいい印象が強く残った。
26
!
そして休日にて
そして次の日のこと。
﹁二人とも約束の時間に遅れてくるなんて、私はもうげきおこですよ﹂
﹁ごめん⋮⋮﹂
﹁妹にいろいろと聞かれてて遅れた⋮⋮﹂
待ち合わせの場所であるデパート前にて、私は遅刻者である二人に
対し、頬を膨らませ、私、怒ってますと伝わるようにした。
﹂
﹁比企谷さんの理由はわかりました。昨日、妹さんと少しだけ話しま
したから﹂
﹁小町と会ってたのか
﹂
﹁はい。喫茶店で。小町さんのほかに3人の女性とお話ししました﹂
﹁あいつらか⋮⋮変なことを言ってないよな
﹂
あれですか
﹁いってませんよ。リア充はさっさと爆発してください﹂
﹁待て。俺はリア充じゃない﹂
あれのどこがリア充じゃないといえるんだろうか。
た。
あくまで自分は悪くないといわんばかりに原さんはそっぽをむい
メールを送ろうなんて考え付かなかったんだから﹂
﹁しょうがないじゃない。人と出かけるなんてあまりないし、そんな
にこもってる﹄
﹃ちょっと遅れる﹄というメールを私に送るべきかと﹂
﹁⋮⋮それならそれで﹃約束の場所にきてるんだけど、腹痛で今トイレ
イレに行ってたから﹂
﹁本当は時間前に来てたんだけど、急におなかが痛くなって、それでト
?
﹁はぁ⋮もういいです。お二人の理由はわかりましたし、今後は気を
つけてくれれば﹂
﹁すまん⋮﹂
27
?
﹁原さんは約束の時間の5分後にくるってなんですか
﹂
5分後行動ってやつですか
﹁ち、ちがうわよ
?
?
?
﹁なら納得のいく説明をお願いします﹂
!
﹂
これ以上、この話に時間をとられるわけにもいかないので、私はそ
こで話を終わらせた。
﹂
﹁じゃあ移動しましょうか﹂
﹁結局どこにいくのよ
﹁お二人とも、ボウリングはお好きですか
﹁俺はあんまりやったことがない﹂
﹁私もないわ﹂
どうやら二人はボウリングの経験はあまりないようだ。
﹁いろいろ考えたんですけど、3人で遊べるものといったらボウリン
グ、映画、買い物くらいしか思いつかなくて、買い物は二人でもでき
ますし、映画は今面白いのはやってないですし、消去法で考えるとボ
ウリングということになりました﹂
﹁なんかみにゃみが動きやすい格好で来てくださいっていった理由が
わかった気がする。でも、今日は休日だしどこも込んでると思うわ
よ﹂
今日は休日ということでどこのスポーツセンターも込んでいるこ
とが予想される。もっとも、ボウリング場も同じことかもしれないけ
ど⋮⋮
﹂
﹁うーん。私としたらどっちでもいいですね。比企谷さんはどっちが
いいですか
﹁どっちも体を動かすから楽はできないと思いますよ⋮⋮﹂
なんか比企谷さんを見ていると、前にアニメで省エネで活動するこ
とをモットーとしている男子高校生と比べてしまうのはなぜだろう。
﹁じゃあ、ここのボウリング場にしましょう。ここなら近くに喫茶店
もあるし、遊んだ後にゆっくりできるでしょ﹂
原さんは携帯のマップにて、ボウリング場の地図を出した。
﹂
﹁そうですね。ここなら大丈夫そうです﹂
﹁込んでたら帰るのか
何でそこで帰るということになるのだろうか⋮⋮私たちは目的地
﹁あはは⋮⋮それはその時に考えましょう﹂
?
28
?
?
﹁できるだけ楽できるほうで頼む﹂
?
であるボウリング場に向かって歩き始めた。
歩いている最中、私たちは誰も話すことはなく、何だか気まずい空
気が流れていたから、私は何か話さないと思った。
﹂
﹁もしも、現代に稲生の力が蔓延しているとしたら、お二人はどんな異
いきなり﹂
能の力がほしいですか
﹁何よ
すか
﹂
﹁俺は時間をとめる異能がほしい﹂
﹂
その異能を選んだ理由は何だろう
﹁何でそう思ったんですか
﹂
私は別に何も⋮⋮﹂
﹁原さんはどうですか
﹁私
﹂
﹂
﹁動物とおしゃべりできる異能ですかね
﹁なっ⋮⋮
﹁あれ、もしかしてあたりでした
﹂
?
理由がいかにも比企谷さんらしかった。
﹁理由が最低ね⋮⋮﹂
﹁いや、普通に時間をとめれば楽できるだろ。働かなくていいし﹂
?
?
﹁一度そのことを聞いてみたいなぁって思って。比企谷さんはどうで
?
?
﹂
?
﹁夢 を 見 る こ と は 大 事 で す よ。そ れ は 子 供 で も 大 人 で も 関 係 な い で
﹁なんか子供みたいね﹂
何が見えるのか。
私たちがいつも見上げている空。その向こう側には何があるのか、
﹁ええ。この広い大空をどこまで高く、遠くまでいってみたいです﹂
﹁空か⋮⋮﹂
﹁私は空を飛んでみたいです﹂
﹁そういうみにゃみはどうなのよ
原さんは顔を赤くして私とは反対方向を向いている。
﹁う⋮⋮はずれではないけど﹂
使っているんだろうなぁと思ったから。
原さんは動物が好きなので、異能が使えるとしたらこういうことに
?
!?
29
?
?
?
す﹂
﹁理想と現実の区別ができないやつみたいだな﹂
私の思い浮かべている物はなぜか二人にはこどもっぽいと思われ
ているようだった。
﹁大丈夫です。ちゃんと現実は見えてますから。ちゃんと一歩ずつ歩
き始めてますから﹂
一歩ずつ前を向いて歩き始めている。今日のこともその一歩にな
ればいいと私は思った。
30
休日 2
﹁あんまり混んではないですね﹂
﹁そうだな﹂
私たちはいろいろなことを離している間にボウリング場についた。
ボーリング場は休日とはいえ、まだ早い時間もあるのかあまりこんで
いなかった。
﹁さっそく手続きに行きましょう﹂
私たちは入り口にて参加する人数と使用するレーン。投げる順番
を紙に書いた後、係りの人に渡した。
﹂
それからシューズを借り、飲み物を購入した後、それぞれ使用する
ボールを選びにいった。
﹁みにゃみはどのポンドにするの
﹁私は8にしようかと。それなら軽そうですし﹂
﹁みにゃみは力がないもんね。私は9にしようかしら﹂
﹂
むむむ。ポンドをきいた上で私の一つ上を選びますか⋮⋮
﹁男性と話すのはまだ無理そうですか
かもですし﹂
﹁自分のリズムでいいのよね
﹂
﹁ゆっくりでいいんですよ。今日は無理でも、次は話せるようになる
かのどっちかだった。
名前を名乗った後は、こちらの会話に相鎚を打つか、私に話しかける
原さんと比企谷さんは移動中でも会話数は少なかった。お互いの
やつと話すのはね﹂
﹁ええ⋮⋮その⋮みにゃみと話すのは抵抗がないんだけど、知らない
?
この二人の場合はそのリズムがどこでできるのか。私はそれが少
しだけ不安だったが、それを口に出すことはなかった。
﹁お∼。比企谷さんは12ですか。さすが男の子です﹂
﹁山田さんは軽そうだな﹂
﹁はい。私はそんなに重いものはもてません。持ったときに腰をやっ
31
?
﹁はい。自分のリズムで話していきましょう﹂
?
ちゃいそうです﹂
﹁どんだけ貧弱体質なのよ⋮⋮﹂
投げる順番、私、比企谷さん、原さんとなっていた。
﹁それでは、山田 美海。記念すべき第一投に行ってまいります﹂
﹁盛大にガーターをする未来が見える﹂
﹁そうね。私もそれしかみえないわ﹂
私が気合を入れて、ボールを手に持つと、後方から私を失笑する声
が聞こえます。
﹁ストライクを取る未来に変えてあげます﹂
﹁いや、ガーターだろ﹂
﹁もしくは一本しか倒れないわね﹂
比企谷さんはなんで私がガーターをする未来しか見えないんです
か⋮⋮
﹁ではいきます﹂
32
私は右手にボールを構え、アドレスという投げる動作に体を移行さ
せた。
﹁お、おい⋮構えがなんからしいぞ﹂
﹁構えだけでしょ﹂
ふふふ。構えだけとは限りません。へたくそと思っているお二人
の度肝を抜いて上げます。
ゆ っ く り と し た 動 作 か ら 勢 い の あ る ボ ー ル が レ ー ン に 離 さ れ る。
﹂
ボールは途中までは直線に転がっていき、勢いのままピンを倒して
いった。
﹁ぎゃー⋮⋮二本残った∼
﹁お、おう⋮⋮なんか悪い﹂
﹁どうです。ガーターじゃなかったでしょう﹂
さい。
倒した本人も困惑しているので、倒し方を誰かレクチャーしてくだ
﹁どうやって倒すのよ⋮あれ﹂
﹁すごい、右と左に一本ずつ残った﹂
無常にもピンは二本残った。
!
﹁ところであれはどうやって倒すのよ
行った。
﹁え
﹂
﹂
﹁そういうのも悪くないと思うけどな﹂
まれた。
聞いたときにそろそろ相手を見つけないとやばいという危機感が生
周りはまだ若いというが、最近同い年の友人が結婚したという話を
人生を歩んでいくんです﹂
です。比企谷さんと違って、私は男性に恵まれないし、このまま社畜
﹁いいです。どうせ私はもてないんです。一生仕事ですごしていくん
﹁なんだよ⋮⋮﹂
﹁ふーん﹂
﹁さっきもいったが、俺はリア充じゃないぞ﹂
いないし、羨ましいとおもったくらいなのに。
彼の周りには女性がたくさんいるじゃないか。私なんて⋮⋮誰も
﹁それをリア充に近い人がいっても⋮⋮﹂
﹁リア充は撲滅すべきだよな﹂
ね﹂
﹁そ う で す ね。近 く で い ち ゃ い ち ゃ さ れ る と な ん か 腹 立 っ て き ま す
たちめ。
周りを見渡してみると、確かにカップル連れが多い。くっ⋮リア充
﹁周りがリア充だらけだな﹂
﹁どうですか
初めてのボーリングは﹂
それから2巡したころ、私は椅子に座っている比企谷さんの元に
た。
注目の第二投は左側を倒し、右側だけが残るという結果に終わっ
﹁どうしましょうね⋮⋮どう考えても、どちらか片方が残る計算です﹂
?
はかなり楽になるからな。高収入で安定した生活が送れるから﹂
理由が最低すぎて何もいえません⋮⋮
﹁あはは⋮⋮その考えはおいておいて、恋愛事でトラブルはお互い避
33
?
﹁一生仕事に尽くしてくれるやつがいると、専業主婦志望の俺として
?
けないとですね﹂
﹁俺は大丈夫だ。危機回避能力だけは高いからな﹂
危機回避能力が高い⋮⋮それは今までの中でいろんなことを経験
してきたからなのだろうか。私はそう思った。
34