平成28年度 東京都小学校理科教育研究会 研究の取組 研究部 1 都小理の研究における基本方針 ○理論だけに偏ることなく、実践的な授業研究を中心に研究をすすめていくこと。 ○観察・実験を中心に据えた授業づくりを行っていくこと。 ○提案性のある指導計画、教材・教具を工夫していくこと。 ○児童の実態に基づいた授業を展開していくこと。 2 平成28年度の研究について (1)研究主題 自然と向き合い、多様な考えを受け入れ、主体的に問題を解決する理科学習 科学的に問題を解決するために必要な資質・能力の育成 ①「自然と向き合う」とは 理科教育では、生活にかかわる自然の事物・現象(以下、自然事象)について、観察及び実験を通じ、 科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うことを目的としている。 (学校教育法第21条第6項) そのため、児童にとって身近な自然を対象とし、科学的な手続きを経て概念を構成することが求め られることになる。児童は、出会った自然事象を、自らの生活経験や既習内容を基盤に培ってきた見 方(「理科の見方・考え方」の「見方」)を用いて捉えようとする。この見方には思い込みを含めて個 の印象として培ってきたものも含まれることから、出会った自然事象をうまく説明できないことも少 なくない。しかしその一方で、児童がそこ「なぜ」 「どうして」の疑問をいだくことも可能となる。 このことから、児童の自然の見方を掌握した上で、疑問が生じるよう児童が自然事象と向き合う場面 を意図的に設けることは、問題を設定し解決していく必然を児童の中に生み出すために重要となる。 ②「多様な考えを受け入れる」とは 現在、ノーベル賞をはじめとする国際的な科学研究の功績は、科学者が単独で築ける時代ではなく なっている。様々な専門性、国と地域、人種、宗教等の垣根を超え、共通する科学的な手続き(実証 性、再現性、客観性を包含)を経て、複数の科学者が力を合わせて一定の知見を導いているのである。 小学校理科での問題解決においても、科学的に解決する資質・能力を育成するには、問題の答えと なる結論を科学的な手続きで導く必要があり、その過程で実証性、再現性、客観性を保障することが 重要となる。実証性と再現性については、仮説の検証となる観察・実験の場面で保障できるが、客観 性については、それらに加え、多くの人々によって承認され、公認されることが必要となるので、 「結 論を導出する場面」で保障する必要がある。このことからも、自然事象について話し合って問題を設 定する場面や、観察・実験の結果を考察し、導いた考え(仮説を振り返ることで得られた概念)を材 料に話し合って結論を導出する場面では、自分には無い他者の多様な考えも受け入れながら話し合う 態度の醸成が不可欠となる。このことにより多面的・総合的に妥当性のある推論を進め、より多くの 人々によって承認され、公認される、真の科学的な概念を構築することができる。 ③「主体的に問題を解決する」とは 主体的な問題解決を喚起・保持するには、児童1人1人が自分の意志・判断に基づいて解決する必 然性を問題解決の活動の中で絶え間なく継続し、協働のもと取り組めるようにすることが大切となる。 児童が主体的に問題解決を行うには、次の2つの視点が重要になる。 ・問題や仮説にこだわり、最後まで責任をもって自力解決をする自己責任を貫く問題解決の徹底 ・協力したり他者と理解し合おうとしたりしながら問題を解決する学習や、人とのかかわりを含め積 極的に動くことで問題を解決する学習の構築 (2)研究の内容 中央教育審議会は、本年度8月に次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめを公表し、学習 指導要領改訂の方向性として、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」のキー ワードを示した。都小理ではこれらの3つに基づいて、研究の内容を次のように整理した。 中 教 審 都 小 理 何ができるようになるか どのように学ぶか 何を学ぶか 新しい時代に必要となる資質・ 能力の育成と、学習評価の充実 主体的・対話的で深い学び(「ア クティブ・ラーニング」 )の視点 からの学習過程の改善 新しい時代に必要となる資質・ 能力を踏まえた教科・科目等の 新設や目標・内容の見直し 【提案①】 【提案②】 理科で育成する「資質・能力」 「都小理型 問題解決プロセス を育成する指導の工夫 〔地区研推が設定した「重視す (仮称)」を基盤とした 授業の工夫 る視点」の授業での具現化〕 【提案③】 次期学習指導要領で示される、 「新たな学習内容」の授業開発 【何ができるようになるか】 これまで、理科では「科学的な見方や考え方」を育成することを重要な目標として位置付け、資質・ 能力を包括するものとして示されてきた。しかし、今回の学習指導要領の改訂では、資質・能力をより 具体的なものとして示し、 「見方・考え方」は資質・能力を育成する「視点や思考の枠組み」として全 教科を通して整理されたことを踏まえ、 「理科の見方・考え方」が改めて検討されているところである。 そこで都小理では、今回提案する問題解決のプロセス(習得・活用・探究を見通した学習過程)の中 で、理科の本質に根差した「理科の見方・考え方」を働かせながら、生きて働く知識の習得や、技能を 習熟・熟達させたり、思考力・判断力・表現力等をより豊かなものとしたり、社会や世界とどのように かかわっていくかという態度等の資質・能力を育成していくこととした。 ① 研究の柱(理科で育成を目指す資質・能力)の設定 理科の見方・考え方を働かせて、自然にかかわり、問題を見いだし、見通しをもって観察・実験 などを行い、より妥当な考えを導き出す過程を通して、自然の事物・現象についての問題を科学的 に解決するためには、必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 【研究の柱Ⅰ: 「知識・技能」の育成】 「自然の事物・現象に対する基本的な概念や性質・規則性の理解を図り、観察・実験等の基本的 な技能を養う。 」 ⇒ 自然の事物・現象に対する概念や原理・法則の理解、科学的探究や問題解決に必要な観察・ 実験等の技能などを育成する。 〔評価の項目は「知識・技能」 〕 ○ 自然の事物・現象に対する基本的な概念や性質・規則性について理解し、知識を身 に付けている。 ○ 観察、実験などを行い、器具や機器を目的に応じて扱うとともに、それらの過程や 結果を的確に記録している。 【研究の柱Ⅱ: 「思考力・判断力・表現力等」の育成】 「見通しをもって観察・実験などを行い、問題を解決する力を養う。 」 ⇒ 科学的な探究能力や問題解決能力などを育成する。 〔評価項目は「思考・判断・表現」 〕 ○ 自然の事物・現象の中に問題を見いだし、見通しをもって観察、実験などを行い、 得られた結果を考察し、妥当な考えを表現している。 【研究の柱Ⅲ: 「学びに向かう力・人間性等」の育成】 「自然を大切にし、学んだことを日常生活などに生かそうとするとともに、根拠に基づき判断す る態度を養う。 」 ⇒主体的に探究しようとしたり、問題解決しようとしたりする態度などを育成する。 〔評価項目は「主体的に学習に取り組む態度」 〕 ○ 自然に親しみ、積極的に自然の事物・現象を調べようとするとともに、問題解決の 過程などを通して獲得した知識・技能や思考力・判断力・表現力を日常生活などに 生かそうとしている。 これらの3つの研究の柱に位置付く、理科で育成する資質・能力の育成を十二分に図るため、以 下の点に留意して、カリキュラムや授業のマネジメントを行っていくものとする。 ◆ 観察・実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を充実する。また、日常生活や他教科と の関連を図る。 ◆ 問題解決の能力を育成する学習活動を充実する。 3年:差異点や共通点に気付き問題を見いだす力 4年:既習事項や生活経験を基に根拠のある予想や仮説を発想する力 5年:質的変化や量的変化、時間的変化に着目して解決の方法を発想する力 6年:要因や規則性、関係を多面的に分析して考察し、より妥当な考えをつくりだす力 ◆ 目的を設定し、計測して制御するという考え方の学習活動を充実する。 ② 理科の見方・考え方 理科で育成する資質・能力である「知識・技能」 「思考力・判断力・表現力等」 「学びに向かう力・ 人間性等」の3つの柱を育成するために中核的な役割を果たすのが、教科の本質に根ざした「見方・ 考え方」である。理科においては「理科の見方・考え方」となるが、自然事象を捉える理科ならで はの「見方」と「考え方(思考の枠組み)」で構成される。 小学校段階では「身近な自然事象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な 視点で捉え、比較したり、関係付けたりするなどの問題解決の方法を用いて考えること」を理科の 見方・考え方に位置付けている。 自然事象を科学的に捉える「視点」のこと。 【4つの領域に共通の視点】 「全体と部分の関係で捉える」 「原因と結果の関係で捉える」など 見 【各領域の固有の視点】 エネルギー 自然事象を主として量的・関係的な視点で捉える 方 粒 子 自然事象を主として質的・実体的な視点で捉える 生 命 生命に関する自然事象を主として多様性と共通性の視点で捉える 地 球 地球や宇宙に関する自然事象を主として時間的・空間的な視点で捉える 考 問題解決のプロセスの中で科学的に探究する方法を用いて、自然事象を考える「方法」のこと え 【科学的に探究する方法】 方 「比較」 「関係付け」など 思 考 の 枠 組 み 【見いだしていく対象】 「関連性」 「規則性」 「因果関係」など ③ 各地区研究推進委員会が位置付ける「学びの重点」 理科では、 「理科の見方・考え方」を働かせながら、研究の3つの柱である「理科で育成を目指 す資質・能力」を育成していくことになるが、単に問題解決のプロセスに機械的に当てはめたパタ ーン学習を行うだけでは、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等からな る理科で育成を目指す資質・能力を、児童が真に身に付けることはできない。1人1人の解決すべ き問題を設定する意識を高め、その問題を解決に導く個々の発想を確実に誘発できてこそ、都小理 が提案する「都小理型 問題解決プロセス(仮称)」の効果が、すべての児童に発揮されることになる。 8つの地区によって学校や地域、地区の実情や児童の実態は異なることから、個々の学びを確実 に深めるには、地区ごとに求められる学びの視点も取り入れて学習を構築することも大切となる。 この各地区が実態に応じて定める学びの視点は、研究の3つの柱と都小理の研究主題「自然と向き 合い、多様な考えを受け入れ、主体的に問題を解決する理科学習」を結び付ける上で極めて重要と なることから、特に大切な学びの視点を「学びの重点」とし、8つの地区で以下のように設定した。 地区研究推進委員会 学びの重点 汎用的な資質・能力 評価方法の改善 大 宿 田 教育課題 渋 杉 板 足 多 谷 並 橋 立 摩 ○ ○ 自己の振り返りとメタ認知 ○ ○ 資質・能力の評価の工夫 ○ ○ ○ カリキュラムや授業のマネジメント ○ ○ ○ 日常生活との関連 得られた知の活用 指導方法等の工夫 世 田 谷 ○ 批判的思考 区分特性による問題設定・活用 指導計画等の工夫 (カリキュラム の工夫) 新 ○ 地域人材や施設活用 ○ ○ ○ ○ ○ 思考ツールの活用 ○ ESD(持続可能な開発のための教育) ○ プログラミング学習 【どのように学ぶか】 「都小理型 問題解決プロセス(仮称)」を基盤とした学習活動の推進 学級全体の活動 次 の 学 習 問 題 へ 1自然事象への働きかけ 3 予想・仮説の設定 2 問題の設定 問題の答えとなる結論が 成立したときに見られる事象 (考え)を具体的に設定する ① 既習や生活経験で得た見 方や考え方を確認する ② ①で説明できない自然事 象に出会い、働きかける ③ 問題をつくる必然を得る 振り返りⅡ 9 結論の導出 実 生 活 へ の 適 応 主に個々の活動 ○「考察」の結果を材料にして、 問題について学級全体で総合 的・多面的に検討(振り返り)し、 結論を導く 多くの承認・公認を得て 客観性を保障する 観察・実験は、仮説(予想) を検証するために行う 振り返りⅠ 8考察 ○ 「予測した結果」と「実際の結果」 を比べ、仮説を振り返る 「 一致 」仮説は妥当となる 「不一致」観察・実験をやり直 すか、仮説を見直す グループ等の活動 4 検証計画の立案 (観察・実験の方法) 仮説の真偽を確かめるための 観察や実験の方法を構想し、 立案する 5 結果の見通しの把握 (望ましい結果の予想) 仮説が成立するために必要な 観察・実験の結果を具体的に 表す 6 観察・実験 7 結果の整理 (複数の結果をまとめる) 記録した観察・実験の結果を、 表やグラフ等に整理し、まと める 理科の見方・考え方を働かせて、自然にかかわり、問題を見いだし、見通しをもって観察・実験な どを行い、より妥当な考えを導き出す過程を通して、自然の事象についての問題を科学的に解決する ために必要な資質・能力を育成することを目指すことから、問題を科学的に解決するために有効な問 題解決のプロセスを構築し、8つの地区の研究推進委員会における授業づくりの共通の基盤とするこ とが肝要となる。 ⅰ) 「自然事象への働きかけ」~「問題の設定」のプロセスでの工夫 児童が追究活動をスタートさせ、一定の自然事象の解釈をつくる上で、児童が解決を必要とする 「問題」を設定することは重要である。そのため、身近な自然事象と出会い、自ら働きかけること を通じ、そこに「なぜ」 「どうして」といった疑問を児童がもつようにしなければならない。 学習活動は、指導者の意図的、計画的な指導のもとで行われていることは周知のことであり、そ こには学習を通じて変容させる児童の姿で表した目標が存在する。この目標を達成するための活動 をスタートさせる「問題」は、活動のゴールとなる「結論」を見据えたものでなければならない。 そして、指導者が設定した「結論」に対する「問題」を児童が設定したくなるような自然事象への 働きかけの場面を最初の学習プロセスに位置付けることが、主体的な問題解決活動を保障すること になる。 <例> 5年B(2) アにおける「魚には雌雄があること」で、 「自然事象への働きかけ」 「問題」「結論」について、授業を構想する工夫 ① まず、結論を確認する 【9 結論の導出】 「メダカの雌雄は、 ひれの形で 見分けられる」 ② 次に、①の結論が答え となる問題を想定する ③ ②で想定した問題を児童が設定したくなるような 自然事象に働きかける場面を工夫する 【1 自然事象への働きかけ】 メダカに卵を産ませるために 2匹 選んで飼育しましょう メスとオスのメダカが 欲しいけど、 どうやって選べば よいのだろう? メスとオスの違いを見付けなくては! よく観察しようよ! 【2 問題の把握・設定】 「メダカの雌雄は、 どうやって見分けられ るのだろうか」 ⅱ) 「予想・仮説の設定」 「考察」 「結論の導出」のプロセスでの工夫 結論は問題に対する答えに相当するものであり、その導出の場面は問題解決の活動のゴールに位 置づくプロセスであるとともに、次の問題づくりや実生活への適応の基盤となるプロセスである。 この結論を導くためには、その材料となる考え(観察・実験等から得られた概念)を整えること が重要となる。結論を導出するための考えは、 「8 考察」のプロセスで、仮説を確認する中で見出 すことになることから、 「仮説」は結論をつくるときの材料となる「考え(概念) 」を導くものとす るとよいことが分かる。 そこで、指導計画を立てる際は、①「結論」を確認し、②結論が答えとなる「問題」を想定する。 そして、③結論を導出するために必要となる材料となる考えを想定し、④その考えを導くことにな る「仮説」も想定する。最後に、①で確認した問題から、④で想定した仮説を児童が設定すること になる学習活動を考える。といった、指導計画を構築することが考えられる。 <例> 5年B(1) イにおける「植物の発芽には、水、空気及び温度が関係していること」で、 「問題」 「結論」 「考察」 「予想・仮説」について、授業を構想する工夫 ① まず、 「結論」を確認する ② 次に、①の結論が答えとなる「問題」を想定する 【9 結論の導出】 「植物の発芽には、 水、空気及び温度が 関係している」 【2 問題の把握・設定】 「植物の発芽には、 どのような条件が関係しているのだろうか」 これら6つの考えが明らかになれば、 種子の発芽の条件を確定できる (⇒妥当な結論を導出できる) ③ 観察や実験などで検証が可能な、 結論を導出するために必要な「考え(概念)」を想定する 【8 考察(仮説の確認) 】 ○「水」は植物の発芽に関係している ○「土」は植物の発芽に関係していない ○「肥料」は植物の発芽に関係していない ○「空気」は植物の発芽に関係している ○「温度」は植物の発芽に関係している ○「光」は植物の発芽に関係していない ④ ③で想定した考えが答えとなる「仮説」を想定する 【3 予想・仮説の設定】 植物の発芽に「水」が 関係しているにちがいない 植物の発芽に「土」が 関係しているはずだ 植物の発芽に「肥料」が 関係しているにちがいない 植物の発芽に「空気」が 関係しているはずだ 植物の発芽に「光」が 関係しているにちがいない ⑤ 「問題」を基に、④の「仮説」を 児童が設定したくなるよう、 工夫する(発問、演示等) 袋で保存しているときは、 種子は発芽せずに 硬い種子のままだね これまでの栽培経験から、 どのような条件があると 種子が発芽するか考えよう 植物の発芽に「温度」が 関係しているはずだ ⅲ) 「結果の見通しの把握」のプロセスの位置づけ【重要】 思考力・判断力・表現力の育成には、児童1人1人が自信をもって根拠をもとに思考し、判断し、 その上で妥当な考えとして表現する場面を意図的に設けることが大切となる。そのために効果が期 待される場面として、観察・実験等で得た結果をもとにして、仮説について確認する「考察」のプ ロセスがあり、そこには次のような学習活動を設けることができる。 児童が、観察や実験等の結果をもとに仮説が正しいか、否かの判定を行うには、観察や実験等の 結果を解釈するための見通しをもっている必要がある。この解釈の見通しをもっていると、予想や 仮説と観察・実験の結果の一致も不一致を明確にすることができる。そのためには、自分が支持す る仮説が成立するために必要な観察・実験の結果を見通せることが、なによりも重要となってくる。 仮説が成立するために必要となる結果と、観察・実験を通じて実際に得られた結果を比較し、両 者が一致した場合は、児童は予想や仮説を確認したことになる。一方、両者が一致しない場合は、 児童は予想や仮説を振り返り、それらを見直し、再検討を加えることになる。 そのため、児童が観察・実験等の結果を根拠に仮説の確認を行う「考察」の場面では、予め、自 らが支持する仮説が成立するために必要な結果を見通しとして把握していることが重要となるの である。都小理では、このプロセスを「5 結果の見通しの把握」に位置づけ、児童が主体的に、 かつ、根拠をもとに仮説を振り返ることができるようにすることとした。 <例> 5年A(1) イにおける「物が水に溶ける量は水の温度によって違うこと」で、 仮説ごとに「結果の見通し」を考え、実際に実験結果と比較して仮説の真偽を判定していく 学習の流れをつくる工夫 ① それぞれの仮説について、その仮説が成立するために求められる観察・実験の結果を予想する 【仮説】 『水の温度が高くなると 食塩は多く溶けるようになるはずだ』 【仮説】『水の温度が高くなっても 食塩の溶ける量は変わらないはずだ』 【結果の見通し】自分が支持する仮説が成立する 【結果の見通し】自分が支持する仮説が成立する ために必要な結果を予想する 水の温度が高くなると、 たくさん溶ける場合は、 このグラフになるね 食 塩 の 溶 け た 量 水の温度 ② 観察・実験の結果を整理する 水の温度が高くなっても、 溶ける量が変わらない場合は この様なグラフになるはず 食 塩 の 溶 け た 量 水の温度 ③ 実際の結果と予想した結果を比べ、仮説を振り返る 【結果の整理】 実験で確かめると こんなグラフに 整理できたよ ために必要な結果を予想する 【考察】 予想したグラフの中で 食 これが実験結果のグラフ 塩 の と同じ形だよ 溶 け 食塩は、水の温度が変化しても た 溶ける量が、仮説の通り 量 あまり変わらないんだね 食塩の溶けた量 水の温度 水の温度 【何を学ぶか】 新内容についての授業提案 学習指導要領の改訂の年に全小理の東京大会が実施されることから、東京大会では新たに導入される 内容をどのように指導していったらよいかを知るための参加者が多くなることが予想される。そこで、 8つの会場すべてで必ず新内容や扱いが部分的に変わった内容についての授業を公開するものとする。 次期学習指導要領については12月にパブリックコメントの実施が予定されている。その際に概要が 明らかになることから、公開授業で扱う新内容については、1月以降に調整するものとする。 (3)地区研究推進委員会の研究主題・研究副主題 地区研究推進委員会 新宿地区 大田地区 世田谷地区 渋谷地区 杉並地区 板橋地区 足立地区 多摩地区 主題 研究主題・研究副主題 自然と向き合い、科学的に考え、協働的に学ぶ子供の育成 副主題 問題を解決し、納得を追究する指導の工夫 主題 科学大好きな子どもを育てる 副主題 自分の考えをもち、多様なコミュニケーションを通して、問題を解決する理科学習 主題 探究し 納得解をつむぎ出す理科学習 副主題 主題 考える! つなげる! つくり出す! 自ら考え、学び合い、表現する子の育成 副主題 学びに向かう力を育てる指導の工夫 主題 自然や人、自分と対話し、主体的に問題を解決する児童の育成 副主題 事実をもとに考えを深める子 主題 自分の考えをもち、豊かに表現する、自己肯定感の高い児童の育成 副主題 主体的・対話的で深い学びを通して、汎用的な能力を育てる理科授業の創造 主題 観る・考える・つなげる理科学習 副主題 科学的な視点を生かした深い学び 主題 自ら考え、主体的に問題を解決する児童の育成 副主題 かかわりを大切にして (4)研究の構造 全国小学校理科研究協議会(全小理)東京大会の大会主題(案) グローバル社会を生き抜く心豊かな人間を育てる理科教育 多様な考えを受け入れて合意形成を図ることをグローバル社会への対応の第一に位置付けるとともに、理科教育の根幹を なす、自然と向き合い、主体的に問題を解決する資質・能力も備える児童を育成する理科学習の一層の充実を図るものとする。 東京都小学校理科教育研究会(都小理)の研究主題 自然と向き合い、多様な考えを受け入れ、主体的に問題を解決する理科学習 ~科学的に問題を解決するために必要な資質・能力の育成~ 「自然と向き合う」 これまで培ってきた見方を用いて 自然事象を捉えようとする際、説明が できない状況が生じると、そこに「な ぜ」「どうして」が発生し、問題を必要 として設定することになる。そのよう な自然と向き合う状況を大切にする。 「主体的に問題を解決する」 「多様な考えを受け入れる」 自然事象から問題を設定したり、観察・ ・問題や仮説にこだわり、最後まで責任を もって自力解決をする自己責任を貫く 実験によって得られた結果をから導いた 問題解決の徹底 考えを材料に話し合い、より妥当な考え ・協力したり他者と理解し合おうとした を結論として導出したりするには、自分 りしながら問題を解決する学習や、人 には無い他者の考えも受け入れながら多 とのかかわりを含め積極的に動くこと 面的・総合的に考えるようにする。 で問題を解決する学習の構築の重視 各地区で設定する「学びの重点」 ○批判的思考 ○区分特性による問題設定・活用 ○ESD(持続可能な開発のための教育) ○地域人材や施設活用 ○資質・能力の評価の工夫 ○自己の振返りとメタ認知 ○カリキュラムや授業のマネジメント ○日常生活との関連 ○プログラミング学習 ○得られた知の活用 ○思考ツールの活用 など ○ 研究の3つの柱【理科で育成を目指す資質・能力】 自然事象に対する概念や原理・法則 の理解、科学的探究や問題解決に必要 な観察・実験等の技能など 科学的な探究能力や問題解決能力 【各学年で主に育てたい力】 6年:自然の事物・現象の変化や働きについ てその要因や規則性、関係を多面的に ■自然事象に対する 分析し考察して、より妥当な考えをつくり 基本的な概念や性質の理解 だす力 5年:予想や仮説などをもとに質的変化や量 ■理科を学ぶ意義の理解 的変化、時間的変化に着目して解決の方 ■科学的に問題解決を行うために 法を発想する力 4年:見いだした問題について既習事項や生 必要な観察・実験等の基礎的な技能 活経験をもとに根拠のある予想や仮説を (安全への配慮、 器具などの操作、 発想する力 測定方法、 データの記録 等) 3年:比較を通して自然の事物・現象の差異 点や共通点に気付き問題を見いだす力 主体的に探究しようとしたり、 問題解決しようとしたりする態度 ■自然に親しみ、生命を尊重する態度 ■失敗してもくじけずに挑戦する態度 ■科学的な根拠に基づき判断する態度 ■問題解決の過程に関してその妥当性を 検討する態度 ■知識・技能を実際の自然事象や日常生 活などに適用する態度 ■多面的、総合的な視点から自分の考え を改善する態度 【理科の見方・考え方】 「身近な自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点でとらえ、 比較したり、関係付けたりするなど、問題解決の方法を用いて考えること」 【評価】 【見方】自然事象をとらえる「視点」のこと 【評価】 <エネルギー> <粒子> 量的・関係的な視点 質的・実体的な視点 <生命> <地球> 多様性と共通性の視点 時間的・空間的な視点 「原因と結果の視点」 「定性と定量の視点」 評 価 「知識・技能」 ○自然の事物・現象に対する基本的な概念や性質・ 規則性について理解し、知識を身に付けている。 ○観察・実験などを行い、器具や機器を目的に応じ て扱うとともに、それらの過程や結果を 的確に記録している。 評 価 【考え方(思考の枠組)】 自然事象を考える「方法」のこと 【評価】 科学的に探究する方法である 「比較」「関係付け」等を用い、 事象の中に何らかの 「関係性」「規則性」「因果関係」等を 見いだせるかなどについて考える。 「思考・判断・表現」 ○自然の事物・現象の中に問題を見いだし、見通し をもって観察、実験などを行い、得られた結果を 考察し、妥当な考えを表現している。 評 価 「主体的に学習に取り組む態度」 ○自然に親しみ、積極的に自然の事物・現象を調べ ようとするとともに、問題解決の過程などを通して獲 得した知識・技能や思考力・判断力・表現力を 日常生活などに生かそうとしている。 【小学校 理科の目標となる考え方】理科の見方・考え方を働かせて、自然にかかわり、問題を見いだし、見通し をもって観察・実験などを行い、より妥当な考えを導き出す過程を通して、自然の事物・現象について の問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 ①自然の事物・現象に対する基本的な概念や性質・規則性の理解を図り、観察・実験等の基本的な技能を養う。 ②見通しをもって観察・実験などを行い、問題を解決する力を養う。 ③自然を大切にし、学んだことを日常生活に生かそうとするとともに、根拠に基づき判断する態度を養う。
© Copyright 2024 ExpyDoc