紙から液晶を作り、フルカラーイメージングに成功!!

<記者用説明文>
紙から液晶を作り、フルカラーイメージングに成功!!
東京理科大学大学院 総合化学研究科
学会発表番号
古海誓一・鈴木花菜
1PC12
<研究成果のポイント>
●紙の主成分であるセルロースを原料にして、鮮やかな反射特性を示す液晶を作り出す
ことに成功しました。
●このセルロースは反射特性で赤緑青色の「光の三原色」を表現でき、光を照射するこ
とで「多種多様なフルカラーイメージング」を実現できました。
<研究成果の概要>
紙や綿の主成分であるセルロースは私達の日常生活において身近な高分子であり、人
体にも優しいので医薬品や食料品の添加物に使われています。本研究では、セルロース
を原料にして簡単な化学反応で、鮮やかな反射特性を示す新しい液晶を作り出すことに
成功しました。このセルロース液晶は反射特性により赤緑青色の「光の三原色」を表現
でき、しかも、光を照射すると「多種多様なフルカラーイメージング」を実現すること
ができました(右図)
。本研究により、不要になった紙などをリサイクルして安心安全
なカラー表示材料に応用できるので、今日、直面している省資源・環境問題に貢献でき
ます。
図
紙の主成分から作った
液晶による様々なフルカラ
ーイメージング.
<研究成果解説文>
紙から液晶を作り、フルカラーイメージングに成功!!
第 25 回ポリマー材料フォーラム
予稿集
著者名: 鈴木花菜 1・石﨑拓郎 1・石田
古海誓一
P71
豪 1・
1*
著者所属
1. 東京理科大学大学院 総合化学研究科
* E-mail: [email protected]
セルロースはデンプンと同様にブドウ糖(グルコース)
が直鎖状に重合した高分子であり(図 a)、紙、綿、木材
ル・リユースができません。そのまま廃棄すれば、将来
的に公害・環境問題になる可能性があります。
の主成分であるので、古くから私達の日常生活において
一方、本研究で発明した液晶材料は天然高分子のセル
身近な材料です。水と二酸化炭素の光合成によって植物
ロースを原料としているので、不要になった紙などをリ
が生産してくれるセルロースは人体に優しく、医薬品や
サイクルして安心安全なカラー表示材料を調製できます。
食料品の添加物にも使われています。
資源の乏しいわが国にとって貴重な石油資源を使わなく
本研究では、環境や人体に優しく安価に入手できると
いうセルロースの特徴に着目して、独自の分子デザイン
によって、鮮やかな反射特性を示す新しい液晶材料を簡
単に作り出すことに成功しました。このセルロース液晶
は、温度変化で「光の三原色」である赤色、緑色、青色
のカラフルな反射色を示すことができました。しかも、
紫外線を照射すればセルロース同士が化学結合を形成し、
任意の反射色を維持した「多種多様なフルカラーイメー
ジング」を実現することができました(図 b・図 c)
。こ
のフルカラーイメージは、セルロース液晶を 180 °C まで
加熱しても永続的に維持できることも発見しました。
現在の液晶ディスプレイは、石油資源を原料として人
工的に化学合成した液晶材料を採用しており、有害な物
質です。しかも、2 枚の透明電極に挟まれた液晶材料を
選択的に抽出することは極めて困難であり、リサイク
て済み、今日、直面している省資源・環境問題に貢献で
きます。