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議会の評価
平成 27 年度決算審査
施
策
評
価
多 摩 市 議 会
施策評価について
多 摩 市 で は 、 第 五 次 多 摩 市 総 合 計 画 に お い て 、「 み ん な が 笑 顔
のちにぎわうまち
い
多 摩 」 を 将 来 都 市 像 と し て 定 め 、こ の 将 来 都 市 像
を 実 現 す る た め に 6 つ の「 目 指 す ま ち の 姿 」を 掲 げ ま し た 。こ の「 目
指 す ま ち の 姿 」を 実 現 す る た め に 1 3 の 政 策 と 政 策 を 具 体 化 す る 3 8
の施策を定めています。
多 摩 市 議 会 で は 、平 成 2 7 年 度 決 算 審 査 に お い て 、 こ の 3 8 の 施 策
の う ち 以 下 の 4 つ の 施 策 を 取 り 上 げ 、4 常 任 委 員 会 を 単 位 と し た 4 つ
の分科会(総務・健康福祉・生活環境・子ども教育)で評価した後、
予算決算特別委員会全体会の場で評価を確定しました。
施
策
名
観光の視点からのまちの魅力づくりの推進
頁
1
ライフステージに応じた健康支援と市民自ら
2
取り組む健康的な生活習慣
低炭素・省エネルギー社会の構築
3
多様な交流と共生によるまちづくり
4
※施策評価指数について
評価A
政策の実現に近づいているので、このまま推進する
評価B
政策の実現に近づいているが、さらに施策の改善・見直しが必要
評価C
政策の実現に近づいていないので、分析と見直しが必要
評価D
政策の実現に近づいていないので、抜本的改善が急務
施
策
名
施策評価指数
観光の視点からのまちの魅力づくりの推進
C:政策の実現に近づいていないので、分析と見直しが必要
施策評価のための評価対象事業及び優先順位
1
観光事業
上位
施策実現と政策実現に向けた今後の提案
今回の評価では、多摩センター地域活性化とパルテノン多摩の関係性に着目し、
「市民と事業者が協働
して、地域にある資源や個性を活かした街の魅力づくりを実践するなど、様々な活動が活発に行われて
いる」かどうかを検証した。
聖蹟桜ヶ丘地区活性化事業では、事業開始間もないにも関わらず、限られた財源の中、地域市民の主
導性と拡がりが見られた。一方、多摩センター地区活性化事業では、イベントや防犯・防災、一部のま
ちづくりの取り組みなど、多摩センター地区連絡協議会との協働に一定の成果はあるものの、イベント
中心では限界がある。多摩センター地区連絡協議会が実施主体である「ガーデンシティ多摩センター子
どもまつり」や「ハロウィン in 多摩センター」ほか5つの事業では、集客数を大きく伸ばすなど成果を
上げているが、今後は、平時での集客や来訪者増加を促す仕掛けや観光資源の発掘、創出と活用を、庁
内はもとより広範な市民・事業者を交え検討すべきだ。
市は、パルテノン多摩を含む中央公園、グリーンライブセンター、図書館本館、旧富澤家など、丘の
上プラザ前の十字路以南のぺデ・施設を活用した活性化の取り組みを描き、示す必要がある。パルテノ
ン多摩大規模改修においては、地域活性化や集客の視点に基づく提案を積極的に生かしてもらいたい。
また、パルテノン多摩での催しを観光資源として位置づけていく発想や大胆な取り組みも必要だ。
観光事業では、
「多摩センター地区活性化事業」
「聖蹟桜ヶ丘地区活性化事業」
「フィルムコミッション
事業」
「観光情報発信等事業」がサブカルテに掲載されているが、事業全体における各事業の位置付け、
相互の関係性、有機的な連携が不明確であり、全体としての目標や成果指標の設定が求められる。また、
集客と経済効果の実態の多面的な分析、施策への活用も必要である。
観光事業のレベルアップは本来、地域の市民や事業者主体で進められることが望ましく、市は観光と
いう視点から全体を捉え直し、バックアップ役を果たしてほしい。パルテノン多摩の大規模改修を機に、
多摩センター地域の活性化に向けた環境づくりと気運をいかに高め、進めていけるのかを追求していく
べきだ。
-1-
施
策
名
施策評価指数
ライフステージに応じた健康支援と市民自ら取り組む健康的な生活習慣
B:政策の実現に近づいているが、さらに施策の改善・見直しが必要
施策評価のための評価対象事業及び優先順位
1
健康づくり地域活動推進事業
中位
2
成人保健対策事業
上位
施策実現と政策実現に向けた今後の提案
本施策がめざすのは、市民がライフステージに応じて自ら健康診査をはじめ各種がん検診などを受診
して疾病の早期発見につなげ、また、日々の生活の中で健康づくりを意識した食事や運動などを実践し
ている姿である。
現状では健康無関心層と言われる市民への働きかけなどが十分にできておらず、政策の実現にはさら
なる努力が必要である。現状の施策の改善に留まらず、高齢化の進展や若年層の健康を取り巻く社会状
況の変化なども踏まえてしっかりと現状分析も行う必要がある。
市では費用対効果の観点から20代の健康診査を廃止した経緯がある。しかし、昨今の非正規雇用の
増加や正社員といえども会社の福利厚生が十分でない状況を考え、また、健診受診の習慣化の観点から、
若年層の健康チェックの機会確保について改めて検討すべきではないか。
また国民病とも言われるがん対策は喫緊の課題であり、受診率のさらなる向上を図らなければならな
い。乳がん、子宮頸がんの受診勧奨の工夫は評価できるので、継続してほしい。さらに働く世代など忙
しい現代人が効率的に受診できる環境整備が必要である。たとえば、特定健診と同時に他の検診がオプ
ションとして受けられるしくみや、集団検診だけでなく個別の医療機関での受診を可能にすることで受
診の間口を広げることを検討してほしい。また有所見者の精密検査受診率の向上は事業目的達成のため
にも力を入れるべきである。今後受診率の向上をめざすと検診委託費の増加は避けられないため、国や
都への要請も含め持続的な財源確保策を求める。ただし、自己負担導入に際しては市民が受診を躊躇わ
ないように配慮すべき。
食育は健康所管だけの取り組みではないが、食育フェスタや推進ロゴマークの普及などの啓発から具
体的な食の改善につながる実践へと進めていく必要がある。特に健康無関心層も含めて意識しなくても
食を通して健康になれる街ぐるみのしかけを考えてほしい。たとえば、足立区が飲食店に協力を求めて
客が注文した食事を提供する際の順番をまず野菜からとすることで、血糖値の上昇を抑え、糖尿病対策
として効果を発揮した例などは参考になる。家族形成期以前の青年期の食生活については将来の生活習
慣病の入り口ともなり得るので実態の把握に努め対策を検討する必要がある。また、高齢者の増加に鑑
み、フレイル(虚弱)予防の重要性の認識と有効な対策の検討も必要。中高年までのメタボ対策と同様
に高齢期はフレイル予防の観点で取り組むこと。
高齢者を中心に認知症への不安が大きいが、長寿社会の現実として認知症への正しい理解を広げ、社
会全体で支えるしくみを確立していくことが、生涯にわたっていきいきと暮らせるまちづくりの重要な
要素である。そこで、認知症に対して自らのこととしてはまだ関心が薄い世代にも関心を持ってもらう
ために簡易チェックサイトなどの新たなツールの活用も含めて検討を。
-2-
施
策
名
施策評価指数
低炭素・省エネルギー社会の構築
C:政策の実現に近づいていないので、分析と見直しが必要
施策評価のための評価対象事業及び優先順位
1
地球温暖化対策事業
上位
施策実現と政策実現に向けた今後の提案
本施策の中心である地球温暖化対策事業は平成27年度に新たに事業化したが、目標があいまいであ
る。また、予算に対して執行額が低く、事業化した意味の是非が問われる内容であった。その主な原因
の太陽光発電補助事業については、ニーズも減っていることから、予算額を見直し、今後は新しいエネ
ルギーの取り組みを強化すべきである。
そのためにも、平成28年度からスタートした住宅用創エネルギー・省エネルギー機器導入補助金事
業をさらに強化し、市民が新たなエネルギー時代の到来を感じるくらい進めていただきたい。
また、太陽光発電の推進のために始めた屋根貸し事業については、既に設置が図られた屋根貸し事業
の持続可能性も担保しながら、万が一に備え市の対応を検討しておく必要がある。
次にグリーンカーテン、省エネチャレンジコンテストやクールシェアについてだが、これらの事業は
市民からも好評で、さらに推し進めていただきたい。
ただし、クールシェア事業については、平成26年度3ヶ月間であった開催期間が見直され、平成2
7年度は1ヶ月間とされたが、参加人数の減少が目立った。今後、効率よく開催するには、8月のみで
はなく、子どもたちの夏休みに合わせた期間設定をしてはいかがだろうか。また、経済観光課も交え、
商工会議所等のさらなる協力を得て、より一層市民への広がりをお願いしたい。
次に、今後の省エネルギー社会の推進において、照明の LED 化は欠かせない事業である。昨今、LED
の価格も安定してきたこともあり、また、環境面やランニングコストも考え、そろそろ全市的に大掛か
りな、LED 照明への交換が必要と考える。今後、本施策を実現していく為には、LED 化の推進や、新
たなエネルギーの導入など、全庁的な展開を図るべきである。
最後に、今後の事業展開として、公共施設の大規模改修等の機会をとらえ、市自らが、自然の力や新
しいエネルギーを取り入れた設計をもっと市民に見せる必要がある。
さらに、省エネサポートデスクの取り組みがなくなる中で、節電・省エネの啓発については一層の努
力が必要である。今まで省エネサポートデスクが培ったアイデアも引き継ぎ、新時代に合った具体的な
手法を研究し、市民の知の共有財産として、さらなる啓発に取り組んでいただきたい。
-3-
施
策
名
施策評価指数
多様な交流と共生によるまちづくり
C:政策の実現に近づいていないので、分析と見直しが必要
施策評価のための評価対象事業及び優先順位
1
都市交流推進事業
中位
2
国際化推進事業、多摩市国際交流センター補助事業
上位
施策実現と政策実現に向けた今後の提案
「都市交流推進事業」と「国際化推進事業・多摩市国際交流センター補助事業」の2事業は、「多様な
交流と共生によるまちづくり」という施策に沿って行われており、目指す姿は「豊かなこころを育み、
いきいきとしたコミュニティを醸成していくために、世代や地域、国籍等を超えて、お互いを認め尊重
しながら、多様な交流連携」となっている。各事業の実施状況についてヒアリングを行うとともに、補
助金を出し、委託先ともなっている「多摩市国際交流センター(TIC)
」へのヒアリングも実施し、評
価を行った。評価のポイントは、①多文化共生社会の推進に貢献できているか。②多摩市在住の外国の
方々が安心して生活するために貢献できているか。という点である。
「都市交流推進事業」は、ここ数年は、富士見町との交流のみになっている。災害協定などの進展はあ
るが、植栽事業とオッコー祭り参加者移動のバス借上げ料が主な事業費になっており、事業報告も前年
踏襲の記載が多く、形骸化しているのではないか。一方、多摩センターや聖蹟桜ヶ丘等のイベントには、
富士見町関係者が農産物等を持って参加しており、常設のポンテとともに、そば・菓子・花・酒等、市
民には好評で売れゆきもよい。少年自然の家のある富士見町は多くの市民にとって小中学生の時の思い
出の場所となっており、市民がもっと参加しやすい工夫をすれば「友好都市」として効果的な事業にな
る可能性は残されている。しかし、現在の事業の進め方では今後の広がりが期待できない。今年度は交
流 30 周年の節目の年でもあり、さらに友好の輪を広げるとともに、発展の転機の時にすべきではないだ
ろうか。事業名称に照らすと、今後は、富士見町以外との都市交流も視野に入れていくべきである。
「国際化推進事業・多摩市国際交流センター補助事業」に関しては、市として「多文化共生」や「国際
化」に関しての基本的な方針がないことへの問題が複数の委員から指摘された。現在、TICでは、多
くの会員のボランティアで日本語教室や生活相談の取り組みが行われており、学校生活で語学の壁のあ
る子どもたちに個別の日本語教育なども実施していただいている。しかし、評価ポイント②にもあるよ
うに、2,300 人余りの多摩市在住の外国人の方が安心して暮らせる条件を作り出せているかといえば、ゴ
ミの出し方から、医療、教育、防災など生活の基本的な面で不安を抱えている方が多い。特に、災害時
の対応は喫緊の課題である。外国人住民の生命と財産を守る多摩市の役割を果たし、多文化共生社会を
作り出していくためには、
「交流」だけでなく、さらなる「生活支援」の充実が望まれる。市がその方針
を明確にし、TICへの委託や補助がすすめられれば、今の委託では何が充足されていないか等もっと
明らかになるのではないか。
-4-