VS6-6 VS7-2 成人鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下IPOM手術 1 1 1 腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術TAPP法のピットホール 1 1 西森 英史 、秦 史壯 、三浦 秀元 、平間 知美 、 1 1 1 2 鬼原 史 、矢嶋 知己 、岡田 邦明 、北川 真吾 1 1 1 1 星野 明弘 、山口 和哉 、川村 雄大 、小郷 泰一 、 1 1 1 1 久米雄一郎 、奥田 将史 、岡田 卓也 、東海林 裕 、 1 1 3 2 川田 研郎 、中島 康晃 、嘉和知靖之 、中嶋 昭 、 1 河野 辰幸 2 札幌道都病院 外科、 新札幌豊和会病院 外科 【はじめに】成人鼠径ヘルニアに対するIPOM手術は、再発率の 高さから否定的な報告が相次いだが、当時は腹腔内に留置可能 な形状記憶型のメッシュはなく固定の不安定さが再発の一因と 思われる。当施設では2013年2月よりLPEC法によるヘルニア 門閉鎖を併用したIPOM法を施行してきたのでその成績を報告 する。 【手術手技】全身麻酔下、単孔式。EZアクセス留置。LPEC法 でヘルニア門を閉鎖(2-0非吸収糸使用)後、形状記憶型ePTFE 製 メ ッ シ ュ(VentrioTM/ VentrioTMST)で 鼠 径 床 を 覆 い AbsorbaTackTMで腹膜上に固定する。 【結果】成人鼠径ヘルニア122例(112人)に本法を施行。両側ヘ ルニアは10例。Ⅰ−1:7例、Ⅰ−2:83例、Ⅰ−3:7例、Ⅱ −1:10例、Ⅱ−2:11例、Ⅱ−3:4例。年齢は33-93歳(平 均72.4歳)。手術時間は18-89分、平均44.4分。術後合併症と して、漿液腫、慢性疼痛、腸閉塞、大網の迷入を各2例に、排尿 障害を1例に認めた。また平均21か月の観察期間で再発を2例 (1.6%)に認めた。2例ともメッシュの固定不良が原因で、術後 4週間以内の早期再発であった。再手術で再固定を行い、現在ま で再々発を認めていない。 考察と結語:本法は他の鏡視下修復術に比較し、簡便で再発 率の低い術式と考える。またLPECを追加することにより腹壁 瘢痕ヘルニアにおけるIPOM-plus同様、再発率低下、漿液腫 やbulding予防が期待できる。鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下 IPOM法は有用な術式の一つと考える。 1 2 3 東京医科歯科大学 消化管外科学、 日産厚生会玉川病院 外科、 武蔵野 赤十字病院 外科 【緒言】腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)は低侵襲性と優れた 診断能から、消化器癌の腹腔鏡手術の普及とともに、最近急速に広 まりつつある。しかしながら腹腔鏡から見る鼠径部の解剖と特殊な ヘルニアの存在の知識が必要で、再発や合併症を起こさないように 術式の特有のポイントを理解して手術を行うことが重要である。 【対象と方法】2011年5月から2015年5月までに筆頭者が経験した TAPP法287例380病変を対象とした。手術時間において、平均値 +1.96×標準偏差を超えるものを難症例と定義した。 【目的】 難症例を検討し、TAPP法のピットホールを明らかにする。 【結果】片側、両側の手術時間の平均値はそれぞれ61.2、90.5 分、標準偏差は20.0、26.5分であり、難症例は片側100.4、両側 142.4分を超えたもので、片側、両側の難症例数はそれぞれ10、4例。 その内訳は片側例では初期治療例2、巨大鼠径ヘルニア1、用手的 非還納性小腸・大網嵌入2、多臓器合併切除1、他手術併施1、再発1、 大腸癌術後1例、両側例では再発症例2、尿膜管癌術後1、巨大鼠径 ヘルニア1。 【考察】巨大鼠径ヘルニア例では、十分な腹膜前腔剥離と大きなメッ シュ展開が重要。用手的非還納性大網嵌入例は大網の還納操作を愛 護的に行うなどの留意が必要。腹部手術の既往例は腹腔内の癒着を 予測してトロカーの挿入位置を決定する必要がある。 【結語】 難症例に対するTAPPはピットホールに留意が必要である。 VS7-1 VS7-3 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP)におけるPitfall 罹患期間の長い日本ヘルニア学会分類I-3型症例に対する TAPP法のピットフォールと対策 山口 拓也 耳原総合病院 外科 当科では腹腔鏡下ヘルニア根治術を400例あまり経験した。そ の中で術中に再発Sliding herniaなどの手術遂行困難を感じる 症例や術後再発を1例経験した。 諸家の報告のように再発症例には外鼠径ヘルニアのDenovo型 のヘルニアや後腹膜臓器の脱出をともなうSliding herniaが多 いとされる。対策はその構造(例えば早川らのde novo型I型ヘ ルニア分類など)を見抜くこと。具体的には鞘状突起とSACの関 係をSACを引き出すなどして掴む。次に鞘状突起部分の癒着を くりぬくあるいは受動し、その上で可能なかぎり大きなメッシュ を留置することが有効と考えられます。またSliding herniaで はLapProgripを用いTrapezoid of disasterへの固定と前壁へ の結紮固定などを付加するなどの対策をおこなっている。 ま た 術 中 困 難 例 もSliding typeが 関 係 し て い る こ と が 多 く、 SACをひっぱってみて、鞘状突起はどこか、どの部分が深い層 と癒着しているかを考え、くりぬく、あるいは受動する方針を 立てることが肝要である。メッシュの選択は再発予防の注意点 に準じている。以上のポイントを図示し手術手技のビデオを供 覧したい。 田崎 達也、佐々木 秀、香山 茂平、杉山 陽一、中村 浩之、 上神慎之介、馬場 健太、亀田 靖子、田妻 昌、新原 健介、 今村 祐司、中光 篤志 JA広島総合病院 外科 【はじめに】当科では現在、TAPP法を鼠径部ヘルニア手術の第 一選択としており、2013年9月から2016年7月までに353症例 431病変を経験した。術式を定型化してきたが、定型化術式のみ では対応困難な症例にしばしば遭遇する。困難症例では、解剖学 的誤認から予想外の合併症を引き起こす可能性があり、注意が必 要である。今回、罹患期間の長い日本ヘルニア学会分類I-3型症 例のピットフォールとその対策に関する動画を呈示する。 【術式】通常、内側臍ひだを十分手前に牽引し、精管の内側で腹 膜および腹膜前筋膜深葉を切開することにより、安全にRetzius 腔に入ることができる。しかし、罹患期間の長い症例では、精 管内側の腹膜が硬化しており、この過程が困難なことがある。 今回呈示する症例では、内側腹膜を切開した後、前腹壁側より の腹膜を手前に牽引したため、下腹壁動脈も一緒に手前に牽引 していた。さらに、Cooper靭帯を早く確認したいために、内 側の硬い結合組織を、厚く切断していったため、深い層に入り、 下腹壁動脈であることに気付かずに、何か分からない血管とし て切断、損傷することとなった。以後、このような難症例では、 適宜腹膜を持ち替えること、腹膜、その後にでてくる結合組織、 脂肪を一枚ずつ薄く切るイメージで手術をするようにすること で、下腹壁動静脈、精管、膀胱といった、内側の重要構造物を 損傷することないように心がけている。 - 41 - VS7-4 VS7-6 TAPP法のピットフォールと対策 −手術終了(気腹解除)時の メッシュずれについて− 1 1 1 1 添田 暢俊 、根本鉄太郎 、松井田 元 、押部 郁朗 、 1 2 2 2 竹重 俊幸 、五十畑則之 、隈元 謙介 、遠藤 俊吾 、 1 齋藤 拓朗 1 Ⅰ型鼠径ヘルニアにおけるヘルニア嚢円形離断優先の有用性 1 1 2 福島県立医科大学会津医療センター 外科、 福島県立医科大学会津医療 センター小腸大腸肛門科 当院では2013年よりTAPPを導入し、再発予防を意識して手技の工 夫を行っている。ラパヘルの再発要因には主に1)腹膜前腔の剥離範 囲不足、メッシュのサイズ不足、2)メッシュのずれ、逸脱などがある。 当院では過去に術中メッシュのずれ・捲り上がりが観察された症例 を2例(1.8%)経験した。 【対策】1)ヘルニア門からの十分な剥離(5cm)、大きなメッシュ(15 ×10cm)展開を行う。2)メッシュの確実な固定;吸収性タッカーに よる固定(10∼15発;メッシュ背外側を除く)および吸収糸による メッシュの背外側の固定を行う。なお、背外側の固定では吸収糸に てゆるく浅く1針かけて、かつ、運針時には神経を避けていることを 腹腔鏡にて十分に視認する。3)手術終了(気腹解除)時におけるメッ シュずれ・めくり上がりの確認:気腹時と気腹無し時では鼠径床の 形状が異なるため、気腹解除時にはメッシュの形状もかわってくる。 そのため、腹膜閉鎖後、患側ポートから腹膜前腔沿いに吸引管をす すめ、腹膜前腔内の炭酸ガスを吸引し、腹腔内より腹膜越しにメッ シュを透見し、ずれ・捲り上がりを確認する。さらにゆっくりかつ 十分に脱気をしながら、メッシュのずれ・捲り上がりが無いことを 観察して腹腔内操作を終了する。 【考察】これらの手技は特殊なデバイス・技術を必要としない。手術 終了(気腹解除)時にメッシュのずれ・捲り上がりを確認する手技は 有用と考える。 1 1 1 齋藤 賢将 、大畠 慶映 、三浦 智也 、入江 工 、 1 1 2 飯田 聡 、山崎 繁 、中嶋 昭 2 太田西ノ内病院 外科、 日産厚生会 玉川病院 TAPP法は技術的にやや難度が高く、前方アプローチと比較し 手術時間がやや長いとされるものの、解剖学的構造の理解がし やすく教育効果も高い。また、術後疼痛が軽度で回復も早いこ とから導入が拡大している。しかし、ラーニングカーブがやや 長いことは相変わらずであり、とくに非典型的な症例において は長時間となることも多い。難渋例の検討から、特にI型では、 腹膜の切離を行いながら、腹膜前腔の剥離を行うと、ヘルニア 嚢が気腹により足側に牽引されていくことで、剥離や切開の方 向性や方針が混乱してしまっていることが指摘された。そこで、 開始の時点で切離の方向を明確にし、まず腹膜の円状切離(ヘル ニア嚢の離断)を優先し確実に離断することで、気腹による腹膜 の足側への牽引を解除でき、その後の腹膜前腔の剥離操作が定 型化できた。また腹膜縫合においても有利となることが多く、 TAPP法を安全に導入、展開する合理的方法と考える。 VS7-5 VS8-1 メッシュを縫合固定するTAPP法の手技 小児ヘルニアに対する治療戦略:鼠径部切開法からSILPEC (Single-incision LPEC)導入へ 尾形 頼彦、篠原 永光、金村 普史、福田 洋、和田 大助 1,2 1,2 斎藤 麻予 、牧田 智 、平松 聖史 1,3 3 村瀬 成彦 、内田 広夫 高松市民病院 外科 当院では以前から鼠径ヘルニアに対してメッシュを縫合固定す るTAPP法を施行している。縫合固定する場合に使用するメッ シュとして腹膜前腔での挿入展開の容易さ、最小限の固定です むことからリコイルリング内臓メッシュを使用してきた。手技 に習熟してきた現在はリングレスでさらに異物量の少なく5mm ポートから挿入可能なTiLENE extralightを使用している。 【方法】十分な範囲を剥離しメッシュ展開後に通常は腹側3∼4か 所、クーパー靭帯1か所の計4∼5か所固定する。縫合糸で組織 を絞扼しない(Air knot)状態で固定する。腹膜縫合閉鎖後には 細径ポートを用いて腹膜前腔の炭酸ガスを除去しメッシュと腹 膜が接した状態で手術を終える。 【結果】TiLENE extralight を導入後38症例、48病変に対して 全例固定具を使用せずにTAPPを施行した。12mmポート使用 時のような術後創痛がないため術後の追加鎮痛剤投与がほとん どなかった。基本的に手術翌日退院としている。 【まとめ】メッシュの縫合固定手技はコスト面の利点以外に機械 的な組織損傷が最小限で済むことから神経損傷予防にも有用と 考え施行している。運針、縫合固定操作には若干のコツが必 要であるがTiLENE extralightを用いることでさらに低侵襲な TAPP法が施行可能であると思われた。 1 2 1,2 2 、後藤 秀成 、 3 安城更生病院 小児外科、 安城更生病院 外科、 名古屋大学大学院医学 系研究科 小児外科学 【はじめに】小児鼠径ヘルニアに広く行われている鼠径部切開法に 対し、LPECが2000年代になり報告された。さらなる低侵襲性 と整容性を目指し、Single-incision laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure(SILPEC)が開発された(Uchida et al. 2010) 。当科では、2014年4月よりSILPECを導入、待機手術の みならず嵌頓症例にも施行し、われわれはその有用性をこれまで 報告してきた(Murase et al. 2016) 。今回、当科における2014 年以降のSILPECとそれまでの鼠径部切開法とを比較・検証し、 SILPECの術式の詳細についてビデオで供覧する。 【対象と方法】 ’ 12年4月∼’ 14年3月の鼠径部切開法(Potts)を施行 した連続する131例と、 ’ 14年4月∼16年3月のSILPECを施行し た連続する166例を、手術時間、在院日数等について比較・検討 した。 【結果】SILPECから術中判断でPottsへ移行した症例はなかった。 手術時間は、片側例において、Potts:24分、SILPEC:33分であっ た。両側例では、Potts:45分、SILPEC:46分であった。在院 日数に有意差は認めなかった。また、両群とも再発例はなかった。 【結論】SILPECは、臍形成に時間を要するため手術時間が長くな る傾向を片側例で認めた。再発例はなく、在院日数も延長するこ となく、SILPECはPottsと比較し、遜色のない術式である。また、 対側病変の確認が容易であり、LPECと同様、同時に処置するこ とが可能で、その点においてはPottsより有用である。 - 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