統領選、トランプ が勝利

ベアリングス インベストメント・アップデート
2016 年 11 ⽉ 10 ⽇
⽶⼤統領選、トランプ⽒が勝利
〜「引き籠る⽶国」は世界経済全体の「縮こまり」を象徴
マルチストラテジー債券グループ
円ベース・ポートフォリオ構築グループ
要旨
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共和党トランプ⽒が勝利し、議会上下院とも共和党が過半数を制する予想外の結果

トランプ⽒の主張する保護主義など「引き籠る⽶国」は世界経済全体の「縮こまり」を象徴

共和党主流派との「ねじれ」が「決められない政治」の⽕種に

実現可能な政策に向け議会との対話で安定感を⽰せばトランプ⽒の評価も上昇する可能性

市場では次第に警戒姿勢が強まり、株安・債券⾼の流れへ。12 ⽉の利上げ観測も後退

現実路線への転換なければ、中⻑期的には世界景気停滞やデフレ圧⼒継続か
「決められない政治」が加速する可能性も
求められる議会・国⺠との対話
11 ⽉ 8 ⽇に⾏われた⽶⼤統領選挙では、共和党のト
かつての「強い⽶国」の「強い⼤統領」を⽀えた分
ランプ⽒が勝利を収めました。同時に⾏われた議会
厚い中間層の崩壊が進み、⼀握りの富裕層と没落し
選挙(上院は全 100 議席中 34 議席が改選、下院は
た中間層の利害の対⽴は深刻です。⼤統領のリーダ
全 435 議席が改選)では上院、下院共に共和党が過
ーシップの発揮が、求⼼⼒というよりは遠⼼⼒とし
半数を確保しました。オバマ⼤統領も苦しんだ⼤統
て⽶国社会の分断を鮮明化させることが懸念されま
領と議会の「ねじれ」は解消する格好ですが、選挙
す。新⼤統領には議会や国⺠との丁寧な対話が求め
戦では共和党は暴⾔を繰り返すトランプ⽒との距離
られます。トランプ⽒の主張する保護主義、移⺠排
を置いていたため、トランプ⽒と議会が協⼒体制を
除、孤⽴主義の「引き籠る⽶国」は成⻑の牽引役を
取れるかは未知数です。
⽋く世界経済全体の「縮こまり」を象徴しているも
のかもしれません。
⾮難の応酬にほぼ終始し、政策論争が深まることも
無い異例の⼤統領選を終えて誕⽣した新⼤統領が求
⼀⽅、選挙戦で政策論争が深まらなかった分、実現
⼼⼒のあるリーダーシップを発揮することに多くは
可能な政策に向けてトランプ⽒が議会との対話で安
期待できないものと考えられます。共和党の⽀持⺟
定感を⽰せば、トランプ⽒の評価が意外に上昇する
体でグローバル化・⾃由貿易推進を唱える富裕層や
可能性もあるでしょう。現実路線で議会との協⼒関
⼤企業経営者と、保護主義派のトランプ⽒との溝は
係が得られれば、「強い⽶国」実現への期待も⾼ま
深く、⼤統領の政策の法制化を阻む可能性がありま
ります。
す。オバマ⼤統領がオバマケア、TPP 等の主要政策
課題の決定に⼿間取ったことと同様に「決められな
外交⾯では地政学的リスク拡⼤に留意
い政治」の進⾏が⼀段と加速するリスクもあるもの
と⾒られます。
外交⾯では、⽶国中⼼の孤⽴主義的な政策が打ち出
されていますが、実効性のある具体策は⾒えていま
せん。新⼤統領の出⽅を探るべく、中国、ロシアな
情報提供⽤資料
どが⽶国の姿勢を試すような動きをしてくるようだ
市場は次第にリスクオフへ、12 ⽉利上げ観測も後退
と地域の地政学的リスクが思わぬ⽅向に拡⼤するリ
トランプ⽒の政策や政権運営能⼒が未知数であるこ
スクにも留意が必要です。
とから、株式市場、新興国通貨などのリスク性資産
を回避する動きが次第に優勢になると予想します。
経済⾯でも問題は⼭積
⽶国の 12 ⽉の利上げについても、トランプ⽒の政
経済政策では、⼤規模減税やインフラ⽀出拡⼤など
策が⾒えない段階で急ぐ必要は無いとの理由から⾒
財源の根拠なき拡⼤志向が⾒られます。⾦融街ウォ
送りになる可能性が⾼いものと⾒ています。トラン
ール・ストリートのエリートへの敵意むき出しで中
プ⽒が現実路線に進めば、⼤胆な規制緩和などへの
央銀⾏の独⽴性も危機に晒されそうです。議会との
期待も込めて、ポジティブ・サプライズとして⾦融
予算折衝では、財源の確保や債務上限問題などの難
市場も好感する可能性がありますが、世界経済全体
題が⼭積みです。⾦融政策・財政政策の⽅向性は混
のかかえる低成⻑、所得格差、過剰債務・過剰設備
沌としており予断を許しません。⼀⽅、通商政策で
の問題を⽶国⼀国の新⼤統領だけで解決することは
は保護主義を打ち出し、不公平な関税措置や為替操
難しいことは事実です。世界景気の停滞やデフレ圧
作への監視、是正要求は、オバマ政権以上に厳しい
⼒は容易には払拭できず、先進主要国いずれも⻑期
ものになりそうです。
にわたって緩和的な⾦融環境を維持していくことに
よって景気の腰折れリスクを回避していくことが予
想されます。このため、世界的に⻑短⾦利は上がり
づらい展開が続くものと予想します。
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Date Complied(東京): 2016 年 11 ⽉ 10 ⽇
Ref No. M20164Q29
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