平成 28 年度 北海道小学校長会地区活性化支援事業【実践事例レポート】 1 報 告 地 区 :十勝地区 2 事例報告学校名 :新得町立富村牛小中学校 3 報 告 者 :校長 中村 俊緒 4 キーワード :小中連携・一貫,地域連携 1 はじめに 本校は,山村留学を含め小学生6名,中 学生8名が在籍する小中併置校であり,学 校経営には地域住民との連携・協働が不可 欠である。そのため,今年度の目指す学校 像は, 「地域とともにあり,小中が一貫して 育てる学校」としている。 併置校であるからといって小中一貫が自 然に進むわけではない。そこには目に見え ない垣根が存在していた。 「小学生は小学校の先生が」 「中学生は中学校の先生が」と いう意識である。そのため,職員には,小中連携・一貫教育の必要性を説き,地域に は「地域とともにある学校」「小中が一貫して育てる学校」を目指すことに理解と協 力を求めている。その結果,地域住民は学校経営に対して,これまで以上に協働する 姿勢を示すとともに,職員間の意識の垣根も徐々に払拭される中で,小中一貫を基盤 とした社会に開かれた教育課程の改善にもつながっている。 2 実践内容 (1) 小中一貫した総合的な学習の時間における教育活動の充実 本校では,これまで も地域資源を活用した 総合的な学習の時間等 の特色ある教育活動を 実践してきたが,小中 のつながりが薄く,系 統性が課題であった。 そのため,教務部が系 統図を作成し,小中そ れぞれが目の前の子ど もたちだけを見て取組 を進めるのではなく, 双方の活動を知ること で, 「中学校につながる 内容」 「 小学校で身に付けた力を基盤にした内容」という意識が高まってきている。 また,今年度は,地域人材や食材を活用した「とむらバーガープロジェクト」に 取り組むなど,ふるさと学習の充実を図っている。この活動を通して,子どもたち は,生産者,製造者,保護者の思いに触れ,食への感謝の気持ちを高めるとともに, 協力いただいた地域住民・保護者からは,「地域の環境を生かした活動を増やす中 で,今後も子どもたちの学習に協力していきたい」という声が寄せられている。 (2) 小中一貫した柔軟な指導体制 ① 中学校教員による乗り入れ授業の充実 今年度は,中学校教員が5名配置 (国・数・社・理・英)されているた め,全員が小学生の授業も担当してい る。そのため,小学生は教科によって 複式が一部解消され,単式による個に 応じた指導の充実を図っている。 また,この指導体制をとることによ り,小学生の学力向上だけではなく, 小学生の授業を担当することによる中 学校教員の教科指導力の向上,子どもの実態把握などにも成果が現れている。 ② 少年団・部活動の柔軟な指導体制 本校は,全員がバドミントン少年団(小学生)・部活動(中学生)に加入して いる。今年度の指導体制を検討する際,小学校教員の配置が2名だったため,中 学校教員1名が少年団を担当する体制とした。このことは,職員の固定的概念を 払拭する役割も果たした。また,小学校高学年は,少年団活動がない日などは, 中学生の部活動に参加できる柔軟な体制もとっている。 (3) 小中一貫した校内研修の充実 本校では, 「思考力・表現力を育てる学 習指導の研究」~小・中の発達段階に応 じた言語活動の充実を通して~と主題を 設定し,小中合同で校内研修を推進して いる。仮説検証の手だてとして,低学年 から中学3年までの各段階における「目 指す子ども像」,言語活動を充実させる具 体的手だてや場面の系統表に基づいて研修を進めている。小中合同で指導案検討や 研究授業などに取り組むことは,双方の教員の指導力向上に大変効果が大きい。 3 成果と課題 〇 小中一貫や地域との連携・協働の一層の推進により,多くの大人が子どもたちに 関わることで,子どもたちの学びの充実だけではなく,小中の滑らかな接続や教員 の指導力向上,地域住民の参画意識の高まりにも成果が現れている。 〇 義務教育最終段階の「目指す子ども像」を共有した系統的な教育活動により,ゴ ールを意識した指導の充実や社会との関わりを深めることを意図した教育資源の 活用を図ることができている。 ● 小中一貫を基盤とした社会に開かれた教育課程の充実を図るためには,育成すべ き資質・能力を地域と共有し,人的・物的資源の有効活用と教科横断的な視点を重 視したカリキュラム・マネジメントの構築が課題である。 ● 学力向上のみならず,道徳教育においても小中連携した重点項目の設定や系統的 な指導の充実を図ることが課題である。
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