1 少子化社会と学校保健 石 田 央 我が国の人口が継続して減少する始まりの年、 の運営が財政的にも困難となって来た。等々 所謂「人口減少社会・元年」は2008年であると言 数え上げればいとまがないのである。 われている。それに先立つこと1975年、即ち第二 勿論、文部科学省も手をこまねいているわけで 次ベビーブーム(1971年~ 1974年)が終わるこ は無い。学校保健安全法や学校保健安全法施行規 ろから新生児の出生数は多少の増減はあるものの 則の改正(平成26年4月)でその都度対応はなさ 現在まで減少傾向が続いている。1974年(第二次 れて来ている。例えば学校と地域医師会や地域中 ベビーブームの最終年)に約200万人あった出生 核病院との連携、専門医の学校保健への参加など 数は1984年には150万人を割り込み、1991年以降 を奨励しているのはこの現れである。しかし残念な は増加と減少を繰り返しながらも緩やかな減少傾 ことにこの事に特化した予算措置などはなされてい 向が続き、2011年には105万人に減少している。 ないようなので実効性には疑問も残るところである。 この現象は直接児童・生徒数に連動するのである 学校健診においても座高測定や虫卵検査は必須 から、学校に及ばす影響には測り知れないものが 項目からはずされた。それに変わって、 身長曲線・ ある。因みに1981年に約1,200万人いた小学生は 体重曲線の活用を示唆するなど児童・生徒の発育 2015年には650万人(約46%減)にまで減少して により個別の対応を促しているものと考えられ いる。それに伴い、小学校数は1980年に2万5千 る。また新たに加えられた「四肢の状態」は発育な 校在ったものが2014年には2万1千(16%減)校 らびに運動器の状態に注意する事となっており、 に減少し、学級数も35万学級から27万学級(22% より個別的な「野球肘」や「しゃがみこみ試験」な 減)となっている。因みに教員数は47万人から42 ど運動の二極化に注意する内容となっている。今回 万人(11%減)である。以上のような状況及び時代 「保健調査」の実施時期が見直され小学校から高 の変遷による疾病構造の変化などから学校保健の課 等学校に至るまで全学年に行う事となった。保護者 題も複雑化してきている。要約してみれば大まかに も含めた個別対応に重点を置いたものと考えられる。 下記のような問題が上げられるのではないだろうか。 最後に生徒数の減少により、生徒数や学校数・ 1)少子化社会を迎え児童・生徒の健康や安全が 学級数に応じた拠出金で運営されている「学校保 より重要で注目される課題となった。 健会」等の外郭団体の財政の問題もある。日本医 2)保護者や教師の健康課題の関心は集団として 師会「学校保健委員会」も学校保健推進の仕組み の児童・生徒から、より個人のそれへと移行 を「ハシゴ」にたとえ、その左右の支柱(文科省 してきた。 から県や市町村教育委員会への流れ及び日本医師 体の健康と共に心の問題も重要課題となった。 3)身 会から県、郡市医師会への流れを二本の支柱に例 4)学校現場でも児童・生徒の個々の健康問題に えている)を結合させる踏み桟(足をかけるとこ 対し、より専門的な関与が要求されるように ろ)としての「学校保健会」の役割を重視してい なった。 るがこのままでは存続すら危うい状況である。 「学 ディアの氾濫などで児童・生徒を取り巻く環 5)メ 境問題がより健康にも影響を与えるようになった。 6)少子化による影響で学校保健会等の外部団体 校保健会」の存続・充実には国や県による援助の 強化が望ましいと考える。 (県医理事) 新潟県医師会報 H28.10 № 799
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