PPP の組織力

PPPニュース 2016 No.14 (2016 年 10 月 25 日)
PPP の組織力
PPP の官民一体となった組織力の形成とは、単に指揮命令の体系を明確にし、組織図を通じた権
限と責任の割り振りたる「組織の形成」を行うことではない。組織力の形成とは、自治体経営の実践
力を組織として養うことである。第 1 に組織が求めている目的や状態の意味を明確に表明・共有する
ことである。また、第 2 に組織の使命の達成は PPP の「集団」として実現するものであり、トップ
も含め特定の人材の資質やパフォーマンスで達成できることはなく、常に人的ネットワークの中で機
能し、そのネットワークの中で組織が社会全体に対して持つ価値の共有を図ることである。こうした
流れの形成は、組織としての注意、意味、そして信頼の実践力形成の前提条件であり、PPP の組織文
化を形成するコアであると同時に、最終的に PPP 組織の文化を形成する原点でもある。トップやミ
ドルの能力が単独としていかに有能であったとしても、組織全体との連携による価値の共有に努める
ことができなければ、組織全体としての資質を高めることはできない。
以上の価値の共有を組織として形成し PPP として進化するには、官民双方はもちろんのこと、PPP
を担う組織のトップから若手に至るまでの「開かれた学習の場」を形成することが鍵となる。なぜな
らば、PPP 組織の価値観形成の最大の障害は、個々人が良いアイデアを持っているかまたは状況を変
えることができる何かを知っているのに、官民双方の組織や閉鎖的・前例踏襲的な人的体質が「聞く
ことを望まない」という姿勢に固執することにある。こうした体質は、PPP の進化を止める大きな要
因とならざるを得ない。社会経済構造の変化を認識せず、官民ともに程度の差はあっても自らの枠組
みを固定的に意識することで、新たな思考や環境の形成等を排除する体質の克服の場を形成すること
が「開かれた学習」の重要な目的となる。積極的に環境の変化や揺れを受け入れ、学習姿勢を開放す
る組織の形成が PPP の硬直的な構図や情報共有の劣化を克服する要因となる。継続的に成長し、変
化し、適応し、新しいことを学習すべきであり、これが実現しない場合、PPP の組織の活力は停止し
担ってきた公共サービスの質も劣化する。
PPP の組織を活力ある状態にする最大の要因は、組織を動かす特別な挑戦または刺激的なアイデア
を官民双方とも特定の枠組みや価値観に拘束することなく、広く情報交換し総合的に創造性を高める
場を形成することである。PPP の仕組みの進化は、リスクや間違いを犯すことを「成功の本質的部分」
であるとみなし、失敗を「不適切な方法が分かった」として受け止め、積極的に蓄積することで生ま
れる。行政評価を通じた自覚的フィードバックの形成も失敗や未達成を否定的批判(根拠に基づかず
単に、目標達成等がないことで批判する姿勢)の場ではなく、創造的批判(根拠に基づき、目標達成
だけに着眼するのではなく次にどう対処して行くかを積極的に考えて行く姿勢)として次のイノベー
ションの資源であると理解する姿勢が重要となる。その上で、問題が生じた時に1人1人やひとつの
部門に問題を押しやるのではなく、異なった立場から眺める仕組みを形成することで解決策や新たな
方向性が提示される。また、開かれた学習の場では、悪い情報を予期し耳を傾けようとする自発性な
意識が必要であり、悪い情報を組織や他者の責任にして転嫁し、自らの問題としない姿勢を克服する
場ともなる。
具体的に、指定管理等においても、開かれた学習の姿勢は不可欠となる。行政側と受託者である民
間側が形式的に連携するのではなく、常に現場で生じている情報や課題の共有をリアルタイムに近く
展開する仕組みの形成を意識し実現することが重要となる。また、指定管理の発注担当部局までは、
仮に情報がフィードバックされても、行政組織として部局横断的に一元化し、民間化のノウハウの共
有・応用や質の改善に向けた集積化を意図して展開する必要がある。PPP において情報化は、極めて
重要な要素となる。PPP における情報化は、効率的に PPP の人間関係の権限と責任の体系化を図る
ことであり、PPP のガバナンス構造の中核的要素ともなる。
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