第 7 回 平成 28 年 10 月 22 日(土) 9:00~10:40 『中小企業

第7回
平成 28 年 10 月 22 日(土)
9:00~10:40
『中小企業の海外進出』
なかざわ
た か お
福山大学経済学部税務会計学科 中沢 孝夫 教授
近年の海外進出は、1970 年代繊維、家電、自動車、一般機械などの分野で始まった。
大企業が 1970 年代から 1980 年代に、中堅企業が 1990 年前後から、中小企業が 1990
年頃からというパターンがあり、自動車の例では、経済摩擦を受けてトヨタがアメリカ
の工場を作り現地生産を開始すると、部品調達の必要から日本のトヨタ協力メーカーが
中堅、中小の順にアメリカに進出した。経済摩擦の回避に加え、必要なものを必要な場
所で作る合理性、1990 年代のプラザ合意による円高などがこの動きを促進し、現地の
雇用も生み出す結果となった。
1980 年代には、国際化(輸出入中心)からグローバル化(有利な税制、高度人材、
地政学的な優位性を求めて企業の国境を超える活動)への転換が起こり、例えば金融の
中心であるシンガポールをターゲットにする場合、隣接するマレーシアのジョホールバ
ルに企業が進出した例がある。また、人件費が低く教育レベルが高いベトナムに進出し、
タイの市場を開拓という例もある。
日本企業の海外進出は国内産業の空洞化を招くという指摘があるが、国内の競争が国
外での競争に移っただけで、空洞化とは言えない。海外で生産していても日本で売るも
のは日本企業がデザインしている。
中沢教授
質疑応答の様子
海外進出する企業で働く社員に求められる能力やスキルとしては、知らない所に飛び
込む勇気と伝えたいこと(中味)があるという 2 点が重要である。英語はさほど重要で
はない。例えば、タイのトヨタでは 16 か国の社員が働いているが、タイ人の 2-3%し
か英語は使えず、取引は日本語で行われている。現地の社員は、教育レベル、産業政策
などで能力が大きく異なっており、地理や文化が規定する側面がある。
競争力には、「表層の競争力」と「深層の競争力」があり、前者は消費者に見えるも
ので、マニュアルにより作業をルーティン化できるが、「深層の競争力」は外部から購
入できない性格を持つ。例えば、日本のパート主婦の能力は極めて高く、後者の例であ
る。これからは「人工知能」などが革新をもたらすと思われるが、国内での「能力構築
競争」が決め手となる。
講義後の質疑応答は活発に行われ、まず、英語の必要性と学び方についての質問に対
しては、最初は単語を並べるところから始めるといいこと、次に、能力構築競争におけ
る中小企業の戦略をどう考えるかという質問については、競争には規模は関係ないこと、
サービス業で価値を作り出す能力とはという質問に対しては、日頃から感性を磨くこと
が大事、という回答であった。