腎障害

特 集 糖尿病・うつ・睡眠障害による負のトライアングル
II
2ii
II
特 集 糖尿病・うつ・睡眠障害による負のトライアングル
喫煙
Ⅱ.糖尿病における睡眠障害
口蓋扁桃・アデノイド肥大症,慢性副鼻腔炎,
鼻中隔弯曲症,小下顎症,咬合不良など
2 . 糖尿病合併症と睡眠障害との関係
睡眠中の筋緊張低下
による上気道閉塞
腎障害
2ii 腎障害
缶コーヒー
症候群
遺伝,運動不足,過食,
男性ホルモン,加齢
摂食・行動異常
覚醒中の
上気道狭窄
上半身肥満,
内臓脂肪蓄積
GERD
努力性吸気時の胸腔内圧低下による上気道抵抗の増大
夜間頻尿
一過性右室容積負荷
心室中隔左方偏位
眠障害の悪化要因である.
睡眠障害の腎障害への影響では,睡眠時無呼吸なども含まれる睡眠障害により,夜間の安静が阻害されるこ
とから,交感神経系の亢進,夜間の腎血流量の増加など,腎臓への負荷が増加する.
肺動脈攣縮
高 CO2 血症,
アシドーシス
動障害などに影響する.
図1
居眠り事故
高インスリン血症
ナトリウム貯留
発現抑制
発現抑制
血管壁肥厚
低 O2 血症
左室充満制限による
一回拍出量の低下
右室肥大
奇脈
右心不全
末梢血管
抵抗増大
夜間
不整脈
夜間
狭心症
左心不全
呼吸障害以外の病態への影響では,交感神経系以外の鉄代謝を介して,下肢静止不能症候群や周期性四肢運
睡眠障害,
ストレス
交感神経活性増加
カテコールアミン放出
肺高血圧
腎障害の睡眠呼吸障害への影響では,水分の貯留や尿毒素の中枢神経への影響,代謝性アシドーシスなどか
ら呼吸障害へ影響を及ぼす.
肝における糖新生の抑制
インスリン抵抗性
筋に込みの亢進
耐糖能異常
閉塞性睡眠時無呼吸
愛知医科大学病院 睡眠科 睡眠医療センター
糖尿病性腎障害患者において,睡眠呼吸障害を含む睡眠障害は,予後悪化要因であり,また,腎障害も,睡
EDS
メタボリックシンドローム
篠邉龍二郎,小西倫之,塩見利明
脳波上の
覚醒反応
脂質異常症
高血圧
左室肥大
動脈硬化
(虚血性心疾患,脳血管障害)
OSAS の病態生理
糖尿病に対しても睡眠障害は相互に及ぼし合っているため,糖尿病を治療するうえでは,単に血糖コントロー
ルだけでなく,腎機能や睡眠に対しての配慮をすることで,よりよい治療効果が期待される.
は,OSAS 以外に,不眠症,下肢静止不能症候群
(RLS)
,
周期性四肢運動障害(PLM)などであると考えるが,基本
的には,何らかの睡眠を阻害する現象があり,交感神経
OSAS から慢性腎臓病
(CKD)
へ
亢進と糖新生およびインスリン抵抗性が基礎にあり,高血
はじめに
睡眠障害の腎障害への影響
1)
圧,糖尿病などをさらに悪化させ,全身の動脈硬化,腎
OSAS での CKD 合併例は,Chou ら
障害の続発へと進展する.また,交感神経の亢進は,別
呼吸低呼吸指数(AHI)が 30/ 時以上の重症 SAS で CKD
の経路として ACTH・コルチゾール系の亢進・過剰反応
は 18 %に,Iseki ら
が生じ,セロトニン系の低下などが加わって,さらなる不
告されている.筆者らの SAS 疑いで終夜睡眠ポリグラフ
2)
の検討では,無
の検討では,30.5 %にも及ぶと報
糖尿病性腎障害患者において,睡眠呼吸障害を含む
各論で述べられる睡眠時無呼吸なども含まれる睡眠障
眠やうつなどを引き起こす一因となっていると推察され,
検査を施行した 1581 名の検討でも,CKD60(eGFR が
睡眠障害は,予後悪化要因であり,また,腎障害も,
害により,夜間の安静が阻害されることから,交感神経
身体的な影響以外に神経精神的悪影響も起こる.
60 未満の症例)の頻度は,正常群 13/188(6.9 %),軽症
睡眠障害の悪化要因である.このことについて,以下に
系の亢進,夜間の腎血流量の増加など,腎臓への負荷が
群 29/313(9.3 %)
,中等症群 22/302(7.3 %),重症群
概説する.
増加する.
58/504(11.5 %)
,最重症群 28/274(10.2 %)と SAS が
図1
は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の病態
を表すものであるが,動脈硬化,心疾患のところを腎疾患,
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2016/11 Vol.8 No.11
重症化すると増加した.とくに CKD50(eGFR が 50 未満
の症例)の割合が,正常群 3/188(1.6 %),軽症群 8/313
腎障害に置き換えると,理解しやすいかと考える.
(2.6 %)
, 中 等 症 群 3/302(1.0 %), 重 症 群 22/504
睡眠障害のうち,交感神経に影響を及ぼす病態として
(4.4 %)
,最重症群 18/274(6.6 %)と SAS が重症化する
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