臨床体温 赤ちゃんを発達障害・SIDSから守るために

環境温度が赤ちゃんの体温調節機構 に及ぼす影響 について
一赤ちゃんを発達障害 。SIDSか ら守 るために一
久保 田 史郎
医療法人 久保田産婦人科麻酔科医院
〒810111114 福岡市中央区平尾 2‐ 12‐ 18
E mall:kllbotallpOmbyoCIl nejp
臨 床 体 温
第 23巻 1号
2X15年 8月 発行
日本臨床体温研究会
r
︲
20
臨床体温 -23巻 1号
2005年
環境温度 が赤ちゃんの体温調節機構 に及ぼす影響 について
一赤ちやん を発達障害 。SIDSか ら守るために一
久保 日史郎
医療法人 久保田産婦人科麻酔科医院
〒 8100014 福岡市 中央区平尾 212「 18
E■ m』:珈」
取ル士uaコユ
byЮ αuFjp
要 旨 :人 間は,生 命ある限 り『熱』 を産生 し続 ける 通常 の環境温度下では,そ の産熱量 に対 して放熱量
を調節 (末 梢血管の収縮/拡 Dす る事で体温 を恒常 に保 って いる しか し,震 えや汗 をか く様な極端な
低温/高 温環境 に直面 した時,放 熱量の調節 に加えて,産 熱完進/産 熱抑制 という体温調節機構が働 く
例えば,出 生直後の赤ちゃんは,身 を縮め,手 足は冷た く,筋 緊張 を高め,産 声をあげ る
これ らの行
動は,出 生直後の低体温か ら恒温状態に安定す るための体温調節機構そ のもので ある 手足が冷た い理由
は,放 熱を防 ぐための末梢血管収縮 による 産声は全身の筋肉運動 (喘 Dに よって熱産生を克進す るた
め とも考 え られ る
しか し,そ の産熱克進 には多 くのエネルギ ‐を必要 とするが 母乳哺育では最初 の 3
日間の母乳分泌量は極少量 のため,熱 産生は主 に褐色脂肪細胞 の分解 によって行なわれる その結果,遊
離脂肪酸が血中に増え,ビ リル ビン代謝を障害 し重症黄疸の原因 となる 我国の重症黄疸
度
(ビ
リル ビン濃
18鴫/d以 上)の 発症率は 5∼ 20%前 後 と考え られるが,そ の頻度は施設つ まり哺育法の違 いによっ
て様 々で ある
であった
当院で出生 した約 10000人 の新生児 における重症黄疸 の発生頻度 は僅か 9人
(01%)
当院で重症黄疸が全国平均 に比べ 少な い理 由は,生 後 2時 間 の保温 と超早期混合栄養 によっ
て,栄養不足 の改善 と胎便排泄の促進が間接 ビリル ビンの上昇を防 いだ結果 と考え られた
一方,赤 ちゃんを高温環境に収容すると,汗 をかき,手 足を広げ,顔 色はビンク,筋 肉は弛緩,睡 眠状
態が続 く
+産 熱抑制)の 作用 による 我
(睡 眠 +筋 弛緩 +呼 吸運動抑制)を 強
これ らの行動は,体 温上 昇を防 ぐための体温調節 (放 熱促進
国で病気 と考 え られて いる乳幼児突然死症候群は,児 が産熱抑制
い られ る育児環境 に遭遇 した時 に発生す ると考え られた
キーワー ド :環 境温度,重 症黄疸,消 化管機能,初 期嘔吐,新 生児,生 理的体重減少,体 温調節,超 早期
混合栄養法=低 血糖,発 達障害児,7t幼 児突然死症候群
I:結
赤ちゃんは寒 い・ 暑 いな どを言葉で訴えることが出
言
来な いばか りか,そ の不快 な環境か ら逃げ出す こと
環境温度は新生児 にどの様な影響 を及ぼすのかに
も出来ない 我国で通常 に行なわれ ている分娩室 の
ついて述べ る 寒過 ぎ・暑過ぎの不快な環境温度に
温度は,大 人 にとって快適 な 24∼ 26℃ に調整 さ
遭遇 した時,我 々大人は震 えや汗が出る前に衣服や
れている つま り,分 娩室 の温度は子宮内温度 (約
空調器機で環境温度 を調節し快適 に過 ごす
38℃ )に 比 べ約 13℃ も低 く,我 国 の空調 され た
しか し
,
臨床体温 -23巻 1号
2005年 21
分娩室 の温度は羊水で濡れた裸 の赤ちやん にとって
るために,低 血糖症や重症黄疸などの原因をつ くり
快適か どうか,昔 か ら疑間の多 い ところであった
脳 の神経細胞 の発育 に不利益 となる 以上の様な寒
出生後 の温度管理によって,新 生児の糖代謝や ビリ
冷刺激 のメリッ ト・ デ ィメ リッ トを考えた場合,早
ル ビン代謝が どの様 に変化するのかについて述べる
期新生児 にとって どの程度 の環境温度 の設定が望 ま
一方,睡 眠中の赤ちゃんに帽子 靴下
しいのかについての研究が待たれて いた
布団な どを
着せ過ぎると衣服内温度は上昇す るが,そ の高温環
境 の中で赤ちゃんは どの様 にして体温調節をするの
かについて
SIDSの 病因論を含めて解説する
(1)環 境温度の設定
出生直後 の赤 ちゃんは,生 後 1時 間以内 に約 2
∼ 3℃ の体温下降 を認める° 体温下降 の主な理 由
として,早 期新生児は “フルエ"な どの物理的熱産
■ 体温計の進歩
生能 に乏 しい,体 表面積が大人 に比べ広 い,皮 下1旨
子宮内か ら子宮外生活 へ の移行期 におけるヒ ト新
肪が少な いな ど,大 人に比べ体温調節機能が未熟な
生児の体温調節の機序は,古 くか ら多 くの関心 を集
ことが挙げ られている 体温下降 の程度れ
めてきた■ しか し 今 まで の研究 は主 に直腸温 の
生児の適応過程にどの様な影響 を与えるかについて
間欧的な測定によるものであったため,い ろいろな
の詳 しい研究が進んでいないために,出 生直後の児
環境温 に対する新生児の体温調節 の適応過程が十分
の体温管理 の方法は各施設で異なる そ こで,我 国
に記述 された もの とは言えない 近年,熱 流補償法
で行 なわれて いる分娩室 の温 度 (24∼ 26℃ )が
を応用 した深部体温計の開発 によって,中 枢 と末梢
裸 の赤ちやん にとうて真 に快適か どうかを調べ るた
の深部体温が環境温に影響されることなく連続的に
しか も同時 に測定す る ことが可能 となった力 中
めに,低 温環境 lcool群 )と 高温環境
枢 と末梢 の温度較差,両 者 の離開 と収束, さらに中
降か ら恒温状態へ移行するまでの過程 を観察 した
枢深部体温 に運動 した末梢深部体温 の リズ ミカルな
室温 を 24∼
体温変動 を観察することによって,環 境温度 に対応
名 を cool群 ,出 生直後 よ り生後 2時 間 まで保育器
した体温調節のメカニズムが詳 しく分かる様 にな り
体温調節 に関す る研究は大 きく前進 した゛
内 (34∼ 30℃ )に 収容 し,そ の後 に新生児室 (24
,
'
,
早期新
0ル別
m群
)
の二つの異なった環境温度を準備 し,両 群 の体温下
26℃ に保 った分 娩室で管理 した 11
∼ 26℃ )に 移 した 10名 を wam群 とした 体温
測定 にはテルモ社 の直腸体温計 と電子深部体温計 を
Ⅲ 低温環境が早期新生児の適応過程 に及ぼす影書
用 い,分 娩直後か らの中枢深部体温 (Celltlal dccp
body掟 輌 国 ratF:C DBTl
について
と末 梢 深 部 体 温
lPenpheral deep tt tenlperatttre:P DBTl
胎内 (38℃ )と 胎外 (24∼ 26℃ )の 環境温度
を 30秒 毎 に 同時 に測定 した
ODBTは 児 の前胸
差は,出 生直後 の新生児 にとって “
寒冷刺激"と し
部 ,PIIIITは 足底部 に深部体温計プ ロー プを装着
て呼吸を促進す る上で重要な役割 を果たす事が報告
した
されているヽ しか し,寒 冷刺激が強過 ぎた場合
,
児は体温下降 を防 ぐため皮下 の末梢 血管 を収縮 させ
放熱を防 ごうとす る
この末梢血管 の持続的な収縮
は皮下 にとどま らず消化管 にも及ぶ そのため消化
(2)低 温環境が早期新生児の体温調節 に及ぼす影
響
mは腱
1)
cool群 にお け る体 温 変 動 を上段 に示 した
0
管機能 に支障を与え初期嘔吐などの哺乳障害の原因
DBT(直 腸温)は 生後 42分 で最低
をつ くる さ らに,母 乳 のみにカロリー摂取 を依存
20℃ の体温下降 を認めた そ の後,体
温は次第 に上昇 し平均 4時 間 27分 で恒温状態 に移
することは,熱 産生に多 くのエネルギーが消費され
とな り,約
(平 均
362℃ )
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2005年
一方 ,足 底部 の PDBTは 出生直後 よ り急
た■ 一方 ,P IIBTに は cool群 にみ られた著 しい
激な体温下降を示 し 生後 1時 間 20分 で最低 (平
体温下降は認め られず.ま た,中 枢 と末梢の体温較
行 した
DIITは C EIIIT
に運 動 し次第 に上 昇,平 均 6時 間 57分 で恒温 状態
差 も少な く,ODBTに 運動 した リズ ミカルな体温
に移行 した■ 出生直後 の体 温下 降か ら恒温状 態 に
体温変動は,寒 冷刺激 に対す る熱産生の増加や 熱
至 るまで の体温調節 は,褐 色脂肪組織 の分解 によ る
刺激 による発汗 を伴わない環境温度,つ まり末梢血
化学的熱産生が寄与 して いる ことが一 般的 に知 られ
管 の収縮 と拡張 によって体温調節が巧妙 に制御 され
て いるが ,体 温が 上昇す る過程 にお いて ∝d群 で
ている快適な環境
は哺泣 な どの筋 肉運動 による物理的熱産 生 と末梢血
中枢 と末 梢 の体 温 較 差 は産 熱 量 を意 味す るが
管収縮 による放熱 防止機構 が体温調節 に重 要 な役割
warln群 では ool群 に見 られた著 しい体温較差 が
を果た して いる ことが分か つた
少ないことか ら,産 熱 に要す る消 費エネルギーは少
均
298℃ )と な った
そ の後 ,P
出生直後 の嗜泣は
変動がよ り早期か ら観察 された
この リズ ミカルな
(中 性体温帯)を 表わ している
,
t・
また,w・ lrln群 における P EIBTの リズ ミカ
肺呼吸 の確立 に役立つが,そ れ以上に熱産生に重要
ない
な働きをす る 寒 い時,大 人は震えるが,赤 ちやん
ルな体温変動は,末 梢循環動態が良好 な ことを表わ
は激 しく泣 くことによって熱産生を増 し,外 界 の低
して いる 以上の体温変動 の観察か ら,大 人にとっ
温環境に巧みに適応 してい く (Flare 2)
て快適 な環境温度 lcool群 )に 設定 されて いる分
wam群
にお ける体温変動 を下段 に示 した
DBTは 生後 28分 で最低
(平 均
0
娩室は,裸 の赤ちゃんにとって寒過ぎると思われた
372℃ )と な り
,
約 ■0℃ の体温下降を認めた そ の回復は早 く,平
均 2時 間 49分 で恒温状態 (373±
(3)低 温環境が消化管機能
025℃ )と なっ
(初 期嘔吐)に 及ぼす
影響
胎児 を超音波断層装置で観察す る と,妊 娠 4ヵ
月頃か ら羊水を飲み.J卜 尿 を繰 り返 している 妊娠
10ヵ 月にな ると約 500溜 日の羊水 を飲んで いる
と報告 されている 胎児は消化管閉鎖な どの特別の
異常がないかぎ り,子 宮内で吐 くことはな い
lWam群
し,出 生後 12時 間以内で は,嘔 気
)
しか
嘔吐は約 30
%の 児にみ られ哺乳障害の原因となって いる その
ため,嘔 吐による肺への誤飲 を予防する ことを 目的
に,24時 間 の飢餓時間を置 くことをルーチ ンとし
環境温度が新生児早期の体温 におよぼす影響
た時代があつた
しか し,飢 餓は低血糖症や重症黄
疸 の頻度 を高 くす るとの反省か ら,最 近では生後 6
∼ 8時 間 目の早期授乳が 一般的である
早期新 生
児 の初期嘔吐は生理的現象 と考え られて いるが 嘔
吐のメカニズムは解明されて いない そ こで,Fc
l■
elに 示 した COOl群 ,Wam群
の行動 (吸 啜反射
の体温変動 と児
嘔気・ 嘔吐)の 観察か ら初期 1日
吐の原因を探 ってみた
∝d群 (Flalre l)に 注 目す る と, 吸啜 反 射
lsuckn■ g
図2
分焼直後か らの体温変動 と行動の観察
lenexlは 出生直後 の低体温 の時期 では
乏 しく,低 体温から恒温状態へ と体温が上昇するに
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つれて そ の反射が強 くなる傾 向が認 め られ た
また
値は急激 に低下 し,通 常では分娩後約 1∼ 2時 間目
∼50mノ dと なる910 しか し
中枢 と末梢 の深部体温差が大 きいは ど嘔気 :嘔 吐が
ごろが最低値
強 く,生 後
5時 間 目にな って も P DBTが 320℃
“
生直後 の血糖値の推移
は,寒 冷刺激 の強 さ,授 乳開
以下 の症例では吸啜反射 の低下,嘔 気が観察 された
始 の時期,新 生児仮死の有無な どに大きく影響 され
一 方,wam群 で は,生 後
30分 以 内 には 吸啜反射
る 血糖値が異常 に低下すると痙攣や無呼 吸発作 を
が ほぼ 全例 に認 め られ た
生後
1時 間 目の糖 水
,
お こす とされている
(症 候性低血糖症)力
',通
常は
4,7時 間 目の人工乳 に対 す る初期嘔吐 の頻度
は,50例 の観察 でわず か 一 例 に初期 嘔吐 を認 めた
症状に乏 しい無症候性低血糖症が多 い 血糖値の下
にす ぎない (Fletre 3)
すかは不明であるが,最 近 の学会発表では,脳 の保
生後
第2回 〈
生後4時 間)
第3口 (生 後7峙 口)
5%薔 水
人工乳
人工■
護 のためには この最低値が 40 1ng/dlよ り低 くな ら
ないこと力`
重要 としている'° そ こで 出生直後 あ環
境温度が早期新生児の血糖値 に及ぼす影響について
,
一
錮吐
初嘔
♀ 紛
η 紛
η 構
舶
国3
KFlalre 4)A群 :通 常
の室温管理 (cool群 ),B群 :生 後 2時 間 の保温
(wam群 ),C群 :生 後 2時 間の保温 (wam群 )
+超 早期混合栄養法である A群 ,B群 の栄養法は
生後 8時 間 目に 5%糖 水 20 nll.C群 の超 早期混
合栄養法 は生後 1時 間 日に 5%糖 水 2011t そ の
,
硼職
η 鴛
一
一 一
一一♀ 総
一
.・ 一
撃 絆
畑吐
初嘔
P 紺
T 器
?
次 の 3群 で比較検討 した
一m
一
蒻讚讚
晰晰鮨晰蒻
人
S0
生後 1時 間)
第 1回 〈
降 の程度と時間が どれ くらい続けば脳 に後遺症 を残
後 4,7時 間 目に人工乳 20mを 経 口摂取 させた
超早期混合栄養法 における初期嘔吐
血糖値 は A群 で最 も大 き く下降 し そ の後 の上昇
消化管 の嬬動運動は主 に自律神経系 によってコン
は生後
9時 間 目まで認 め られなか った
B群 は生
トロール されるが,低体温状態ではその機能は不安
後 2時 間 の保温 のみで血糖値低下 の抑制効果 を認
定であ り,恒 温状態 (P DBTの リズ ミカルな体温
めた
変動)と なつては じめて正常 に働 くと考 え られる
恒温状態 に至るまでの産熱 に要 した消費エネルギー
丸 山 らは0,新 生児早期 の体温が腸管 の血流量 にお
A群 と B群 の血糖値低下の相違は,両 群 の
量,つ まり出生時の環境温度 の違 いに影響 したもの
さ らに A群 は生後 8時 間 目に 5%
よぼす影 響 について,上 腸間膜動脈 の血流速度 を超
と考 え られ る
音波パルス ドップラー法にて測定 し,血 管抵抗 と血
糖水 20mを 摂取 した に もかかわ らず血糖 値 の上
流速度 の関係か ら 生後 4時 間か ら 12時 間の間に
昇 を認めなかったが,保 育器 内に収容 した B群 ,C
上腸間膜動脈 の血管抵抗 の減少,つ ま り血流量 の増
加が生 したと報告 している 当院で初期嘔吐が見 ら
れな くな った理 由は,生 後 2時 間 の保温 よつて消
A幕
:●
oo毒 α‐15)
(通 ●の菫]管 理)
国辟 :wam群 (N‐ 11)
(生 後2時間の保
疇 :wam●
=)
化管血流量がよ り早 く改善され,嬬 動運動などの腸
管 の機能が正常に保たれたため と考 え られた
この
ことは,後 で述べ る胃内容 消失時間が短縮 した こと
などによって裏付け された
く
0低 温環境が糖代謝 (血 糖値)に 及ぼす影響
出生時の清帯血 中の血糖値 は母体血 中の 70∼ 80
%に 相 当する 出生後,情 帯 を切断された児の血糖
図4
早期新生児 における血糖値の変動
1"
"‐
24
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群では,糖 水
人工乳摂取後 にす みやかな血糖値 の
現状では,正 常成熟児に対 して血糖検査 をルーチン
上 昇 を認 めた
この ことは cool群 と wam群 にお
に行なっている施設はほとん どない
ける分娩直後 か ら恒温 状態 に至 るまで の体温調節 の
■体温調節機能に異常を認めた無症候性低血糖症の
違 い,つ ま り A群 の P IIIITの 持続 的な低下 ,B群
1例 ■
の リズ ミカル な体温 変 動, この体温変動 の違 いが消
新生児の体温研究を始めた時期 に偶然 にも遭遇 し
化管機能 に影響 を与 えたた め と考 え られ る
A群 は 中枢 と末 梢 の 体 温 較 差 が 著 し く,
た 「無症候性低血糖症Jの 症例である lFlalre 5)
即ち
P
DBTの 低下 が長 時 間 に及 んで いる ことか ら,A群
は
また
B群 に比 べ 消化 管血 流量 が 少 な い こ とが予測 さ
れる
つ ま り消化管 血 流量 の良,不 良が,両 群 の消
化 /吸 収/蝙 動運動な どの消化管機能 に違 いをもた ら
A群
母親 に糖尿病な どの合併症 もな く,児 は 3036gの
正常正期産児である 分娩中・ 分娩直後 の低酸素血
症 もない
児 は通常 の室温 (24∼ 26℃ )で 管理
し,分 娩直後か ら中枢/末 梢深部体温 ,心 拍数 をモ
ニター した
この症例 の異常は,生 後 2∼ 6時 間 目
昇が見 られ なか つた理 由は,糖 水 の 胃内容消失時間
P DBTが 並行 して下降 して
いることである 生後 4時 間 目に C IIIITは 36℃
が A群 は B群 よ り長時間 を要 した ためで ある
そ
以下 になったにもかかわ らず.産 熱売進や放熱抑制
の 根 拠 は , 両 群 の 胃 内糖 水 の gぉ 嵐 c elllpplg
のための体温調節が見 られない 心拍はサイ レン ト
ulleを 超 音 波 断 層 装 置 で 観 察 す る と ,B群 の
en■ pWllag tmeは 1時 間以 内で あ り,A群 の 胃内
であ り晴泣・ 体動もない静かな状態が持続 している
糖水量 は 1時 間経過後 もほ とん ど減少 して いなか っ
体温変動 と似ている 体温 の異常 に気づ き血糖値 を
B群 の糖水摂取後 に血糖値が速や か
測定すると 8 mg/dlと 極 めて高度 の低血糖症であっ
に上昇 した理 由は,糖 水が 胃か ら小腸 に短時間 に移
た 速やかな治療 によ り,児 は後遺症 を残す ことも
動 した ことを物語 って いる
な く回復 した 体温測定 中でなければ異常 に気付か
した と考 え られ る
たか らである
の糖水 摂 取後 に血糖 値 上
以上 の成績か ら,当 院の超早期混合栄養法 lC群 )
に見 られ る C DIITと
このような体温変動は中枢神経系を欠 いた無脳児の
ず,脳 に重篤な後遺症を残した可能性が高い症例で
は,早 期新 生児 の低 血糖症 をほぼ 完全 に予 防 し得 る
ある 無症候性低血糖症が恐 い理由は,痙 攣などの
しか し,未 熱児 で もな い正常成熟児
症状がなく,見 えないところで低血糖が静かに進行
に対 して超早期混合 栄養法 の必要性 について 異論が
するからである 授乳によっていずれ低血糖は正常
│IHO/tlMCEFの 母 乳 育 児 を
成功 させ るた めの 10カ 条 の第 6条 は,医 学的 な必
要がな いのに母乳以外 の もの,水 分 ,糖 水 ,人 工乳
を与 えない こと (完 全母乳栄養 )力 =謳 われ,我 国 の
に回復したとしても,障 害を受けた脳神経細胞の回
ことを示 した
な いわ けで もな い
復は望めない
■低血糖 と発達障害■
1960年 代.新 生児早期の低血糖が原因と考えら
厚生労働省 もこの 10ヶ 条 を後援 して いるか らで あ
るの1。 しか し,完 全母 乳哺育 を実地 して いる産科
病棟 にお いて は,血 糖値 40 mg/dl以 下 の低血糖症
が在胎
37週 で 出生 した新 生児 の 91%に 発 生 し
,
その全例 にブ トウ糖 の持続点滴が必要で あつた と報
告 され て いる
1°
無症候性低血糖症 の児 の予後 につ
いて,聴 性脳幹反応 の延長や精神運 動発達 に遅れ を
認 めた とい う報告 もあ り,完 全母乳哺育 をす る場合
は経時的な血糖検査 を行な って低血糖症 の発見 と治
療 を早期 に行な う必要が ある として いる
しか し
,
図5
体温調節機構に異常を示 した低血撻症 の一例
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2005年 25
れる脳障害が報告 されて以来
1う
0,そ の防止 のために
注意して黄疸を軽 くする必 要があると報告 している
早期授乳がさけばれ今 日に至 つている Con■blaul
(1976年 )は 1つ ,健 康 成熱児 の 2∼
3%が 生後 6
新 生児 の血清総 ビリル ビン値 の上 限は米 国では
13111g/dl.わ が国では 18111g/dlと されて い る
時間までに低血糖 を示 し低体温ではその頻度がさらに
即ち,我 国では総 ビリル ビン値 18 1ng/dl以 上が重
増す ことを指摘 して いる Kolllヽ や C● nlblam19
症黄疸 と診断され,脳 障害を防 ぐために光線療法を
は,よ り進歩 した 中枢神経系 の機能検査法 を用いる
始めるのが一般的である 25111g/dl以 上では,核
ことで中等度 の低血糖症 血 糖値が 25ん 35 mg/dll
黄疸 (脳 性マ ヒ)を 防 ぐために交換輸血 をする場合
で も異常 を招 き得 る ことを指摘 し,血 糖値 を 40 mg
が多 い
/dl以 上 に保 つ ことが重要であると報告 して いる
ビン値 20 mg/dl以 上では,聴 力障害 を遺す危険性
wnd♂ 0ゃ 政 、 は動物実験 によ り以下のよ う
2つ
“
に報告 している ①出生後:早 期 に低栄養 にさらさ
しか し,核 黄疸 にな らないまで も, ビリル
があると指摘す る報告がある"2°
生理的黄疸 の重
症化の原因には謄帯結葉時間,哺 乳開始時期,摂 取
れると脳 への影響 は大きく,栄 養学的 リハ ビリテー
カロリー不足2の ,胎 使排泄時間,そ して完全母乳哺
シ ョンによっても回復する可能性が低 い,② 低栄養
育か どうかな ど,数 多 く影響因子 として挙げ られて
は神経細胞間のネ ットワー ク形成 を障害す る.③ 低
いるがその真相はまだ明 らかでない 最近では,新
栄養 の影響が顕者に現われるのは神経細胞の増殖が
生児 の体重減少 の著 しい児 に重症黄疸が強 く見 られ
盛んな部位で,栄 養学的 リハ ビリテーシ ョンによっ
るとい う発表 も多い そ こで,早 期新生児 の哺育管
ても細胞数 の減少が持続す る,④ グ リア細胞は低栄
理法に注 目し 重症黄疸の原因 と予防法 について述
養 に敏感 に反応 し,髄 鞘化 の遅延 .脳 重量 の減少が
べる
見 られ る
また, ヒ ト新 生児 にお いて も,生 後 6
日完全母乳栄養児 と超 早期混合栄養児 における血清
ヵ月未満の栄養不足 (飢0は
神経系の細胞数
,頭 囲の減少,中 枢
(脳 DNA量 )の 減少 を引き起 こし
発達遅滞 をもた らす危険性が極めて大 きい, と新生
児早期 の低栄養 に対す る注意 を促 して いる2°
(5)哺 育管理法の違 いが新生児贅疸に及ぼす影響
■新生児黄疸 について■
新生児黄疸 とは,胎 児期の赤血球が壊れ る際 にで
ビリル ビン濃度 の違 い■
我国の母乳栄養 のみで管理を行なっている施設 に
お けるビ リー
ル ビン濃度 の推移 は,生 後 5日 目に最
128■ 36111g/dl)を 示 し,ビ ー ク
ビリル ビン濃度 15 1ng/dl以 上の頻度は 28∼ 42%,
18 1ng/dl以 上は 5∼ 10%で あった と報告 されて
も高値 (平 均
いるa
_方 ,当 院で 出生
(経 瞳分娩)し た超早期
混合栄養群 の 4674名 (1986∼ 1995年 )の 成績で
生後 4日 日に最高値 (平 均 &6■ 28111g/dl)
きるビリル ビンによって皮膚な どが黄染す ることを
は
言 う 通常 ,生 後 3∼ 4日 目に可視黄疸 と呼ば れ
を示 し,重 症黄疸 (18 mg/dl以 上)は 8人 であっ
る 目に見える皮膚 の黄染が顔 に見えは じめ,次 第 に
た
全身 に拡 が り 生後 5∼ 7日 目頃 をピー クと し自
生 した 4199名 の 生後 4日 目の ビ リル ビン値 15
然 に消失する
しか し,何 らかの理由で ビリル ビン
(Flpe 6)1996年 か ら 2004年 の期
111g/dl以 上 の頻度 は
値が高 い状態 (高 ピリル ビン血症=重 症黄疸)が 続
中,18
けば,脳 の神経細胞が障害され発達障害児 の原因と
であった
なる
動物実験では生後 7日 前後 にビリル ビンが
小脳 に侵入す る と神経細胞 の分裂停止,呼 吸反応 の
lに 出
r・
03%(11/4199人 ),そ の
mg/d以 上が 1人 ,19111g/dl以
上は 0人
当院で重症黄疸が減った理 由,そ の機序
について述べ る
日重症黄疸の発症 メカニズムについて■
低下,神 経伝達物質 の減少な どを起 こして小脳 の発
育がほとん ど停止す る という2° 力 この ことか ら人
つま り新生児早期 の栄養不足が重症黄疸 の発症 に強
で も脳が ビリル ビンに強 く影響 される時期には特 に
く関与 していると考え られる 栄養不足が黄疸を強
重症黄疸は生下時か らの体重減少の強い児 に多 い
26
±8
5 kcal′
臨床体温 -23巻 1号
kノぬ ェ 2日 目 70
2005年
kca刀 ヽノて
ぃ ぅ 3日
目 90 kca17kg/davと 増加 したが ,そ の 傾 向は A
群 とほぼ 同様であった1そ の後,母 乳分泌が増す に
つれて人工乳の摂取量は次第 に減少 した
B群 と C
群 の人工乳摂取量 の違 いは,初 産婦は経産婦 に比べ
母乳分泌が遅れることを意味 している
ところで完
全母乳哺育法では,特 に初産婦 の母乳分泌は生後 3
日間は極めて少なく,出 生初 日の母乳か らのカロリー
1 2345`78,lo口
摂取 はほ とん ど期待 できず ,生 後 3日 目で も基礎
代謝量の約 1/3と 報告されているの 教科書 によれ
12,3141,16,ア 131,
綸 ビリル ビン値 (m/dD
ば,成 熟新生児が正常の成長発育 を得 るために必要
図 6 生後 4日 目の総 ビリルビン値の分布
とする 1日 のカロリー摂取量は 120k"短
児が
くす る主な理 由として,次 の こと力報 告 されて いる
生きるため最小限 に必要 なエネルギー量 (基 礎代謝
0 即 ち.完 全母
量)は 50 kt・alagと されて いる。
①飢 餓状態で は,エ ネルギ ー源 として脂肪組織 の分
乳栄養法 , とくに初産婦児 にお いて は生後 3日 間
解 が促 進 す るた め に遊 離脂 肪 酸
増加す る
合 過程 が
そ の結果 ,肝 へ の ビ リル ビンの摂取や抱
FFAの 増加 によって 障害 され
ル ビン濃度 が上昇す る
れ易い
lFFAlが 血 中 に
間接 ビ リ
は極度 の栄養不足の状態にあることが分かる
この
ことは,次 に述 べる血 中遊離脂肪酸の増加,体 重減
少が著 しい ことによって説 明できる
②飢鍛状態では赤血球 が壊
o完 全母乳栄養法では,特 に生後 0∼ 3日
間は母乳分泌が極めて少ないために胎便排泄力撻 れ
,
胎便 申に含 まれ るビリルビンを腸管か ら再吸収 錫
肝循環)し 血中ビリル ビン濃度が増加す る 即ち
,
重症黄疸 を防 ぐには 母乳分泌 に乏 しい生後数 日間
の栄養不足を改善 し,血 中遊離脂肪酸の上昇を抑え
,
胎便排出を促進する ことが重要 と考え られる
日当院の超早期混合栄養法がカ ロリー摂取量・ 血中
遊離1旨 肪酸・ 胎便排出におよぼす影響 ロ
①カ ロ リー摂取量 について
超早期混合栄養法 とは,生 後 1時 間 目に糖水 10
1111/kgを 経 口摂 取 させ,そ の後
乳
(直 母)を
3時 間年 に直接母
した後 にカロリー不足 を人工乳で補 う
混合栄養法である 完全人工乳栄養 となった新生児
図7
初産婦児および経産婦児 における人工乳摂取量
(平 均値)の 違い
②遊離脂肪酸
CFA)へ の影 響
早期新生児 に栄養不足が生 じると脂肪ffl織 の分解
(A群 :120名 )と ,超 早期混合栄養 を行 った初産
婦児 lB群 :50名 )と 経産婦児 C群 :50名 )の
栄養 開始時期 の違 いによる FFA値 の経時的な変化
3群 において出生初 日か ら 5日 目までの人工乳によ
を調 べ た
るカ ロ リー摂取量 (kca1/kg/日 )の 推移 を比較検
lF10reの と逆のパター ンを示 し,出 生直後よ り
討 した lFlgttre 7)B群 の出生初 日か ら 3日 目ま
上昇 し,哺 乳
で の人工乳 によるカ ロ リー摂取量 は, 1日 目 545
期混合栄養 の C群 では,A群 ・ B群 に比べ よ り早
が促進 し,血 中に遊離脂肪酸が増加す る そ こで
,
(Flaue 8)ヽ A値 の変 化 は血 糖 値
(人 工乳
201111)後 に下降 した 超早
臨床体温 -23巻 1号
2005年 27
く FFA値 の低 下 を認 めた
C群 にお いて 人エ ミル
ク 20m哺 乳後 に FFA値 の下降が見 られた ことは
カ ロ リー摂取 (人 エ ミフ
レク 20m-13
kcal)に よっ
排泄促進 の メ リッ トの 1つ は,重 症黄疸が減少す
ることである 何故な らば,成 熟児 の胎使量は 100
教科書で
g∼ 200gと 言われ,胎 便 中には黄疸の基になるビ
母乳分泌が ほ とん ど見 られな い生後数 日間 の栄
リ,レ ビンが多 く含 まれているために,胎 使排泄が遅
て脂肪 分解 が抑 制 された ことを意 味す る
は
,
を刺激 し胎便排泄 を促 した結果 と考え られ る 胎便
養不 足 の状 態 で は,FFA値 は踏 帯 血値 の 約
28倍
れると腸管か ら胎便中のビリル ビンが再吸収
(腸 肝
に まで上 昇 し,そ の後 次第 に下 降 ,生 後 5日 日頃
循環)さ れ血 中ビリル ビン濃度が高 くなるか らであ
に贋帯血 の値 に戻 る と報告 されて いる'D しか し
3 kgの 新生児が一 日に産生す る ビリル ビン量
は 20 mg前 後 で あ るのに対 し,胎 便 中の ビリル ビ
ン量はその 5∼ 10倍 の量 に相当すると云われ,胎
,
当院 の超 早 期混 合 栄養 法 で は ,生 後
帯血値 の約
には 約
4時 間 目に膳
5倍 の上昇 を認 めた にす ぎず,8時 間 目
2倍 程 度 まで の 下 降 が 認 め られ た
この
る
便排泄 の促進はビリル ビンの腸肝循環 を断ち切 り
,
FDヽ 値 の減 少 は,超 早期混 合栄養 法 によ って児 の
高 ビリル ビン血症 の予防に重要な役割 を果たす こと
栄養不足 が早期 に改 善 した ことを物語 っている
が分か つている
一
母 乳分泌 が不足 した状 態 で は,FFA値 は 生後
方
5日 日頃 に膳帯血 の値 に戻 る と報告 され て いる そ
の こ とか ら推察 す る と,生 後
3∼ 4日 間 は児 は 栄
出生 した約
もうひ とつのメリッ トは,当 院で
10000人 の新 生児 に胎便性イ レウスや
壊死性腸炎が一人 も発症 していないことである 生
後
2時 間 の保 温 と超早期混合栄養法 による胎使排
泄促進は,そ れ らの疾患 を予防する効果 も有 してい
養不足 の状態 であ る と言 える
ると考 え られる
u 櫛 枷 鰤 血 m o わ。
A麻 :∞d群 (N‐ 5)
8
(N‐ 5)
Cll,Wa嗜
(N‐ 5)
N‐
47
■■■ 麟
便
行 使
│"移:乳
新生児早期 における遊暉脂肪酸 (FFA2の 変動
2 9
い 口
口
眸 :wコ 幡
12-24
初回胎便
24‐ ∞ 36-48 48-a
移行便
使
∞トセ 開
乳使の排泄時間
(6)超 早期混合栄姜法が児の体重発 育 に及ぼす影
③胎便排泄におよぼす影響
生後 は じめて排泄す る暗黒色 の胎便 は生後 3日
響
目迄に排泄 され,そ の後緑褐色 の移行便,5日 日頃
超早期混合栄養が児の体重発育におよlF● 影響 を
しか し,当
調べ る 目的で,体 重発育曲線を作成 した:当 院の発
(wam群 )の 保育管理 で
育 曲線 は児 を 250g単 位 で体重別 に群 別 し,生 後
に黄色 の乳便 になるのが一般的である
院 の超 早期経 口栄養法
は,胎 便排泄は 12時 間以内にはとん どが完 了 し
0日 か ら 6日 目までは毎 日の平均体重 を,30日 目
48時 間以後 に移行便か ら乳便 とな り,通 常 の管理
までは lヵ 月健診時で の平均体重 を線で結び 作成
(∞ d群 )に 比べ て胎便排泄 に著 しい促進効果 を認
した (Flare 10)
,
めた
KFlare 9)こ の胎便排泄時間 の促進は,保
①体重発育曲線について
温による末梢血管収縮 の改善 と超早期経 口栄養 によ
我国 の 日常臨床で用 い られている Danclsの 体重
る胃 結腸反射 (gぉ 歓Юmt・ renexlヵ ,嬬 動運動
発育曲線は,大 きい児ほど生下時体重へ の復帰 日数
28
臨床体温 -23巻 1号
2005年
6 ︶ ¨だ03 3
10
Dansi5,」
30
40
50
Age(days)
.0,Connel.& Hol.L.Jr :」 Pediatr.1948
日11 出生後の体●曲線
日10 新生児の体●発青曲線
が 早 い こ とが 特 徴 で あ る
20
lFlpe ll)当
院と
D狐ヽ の発育曲線 を比較す る と,生 下時体重 へ の
復帰 日数,体 重減少率にお いて著 しい相違が認め ら
れ た (Flgtlre 12)ま た. 当院 の満期 産児 4984
名 (生 下時体重 2000∼ 4000 glを 体重別 に 500
g単位で 4つ のグループに分け,体 重発育速度 の違
いについて検討 した (Flgtlre 13)当 院では小 さ
い体重群ほ ど生下時体重への復帰 日数が早 く,体 重
減少率が少な い ことが分かった
即 ち,Dallclsの
体重発育曲線 の特徴は,生 後 日数 とともに拡散.当
院では収束, とい う発育速度に違 いを認めた
この
図12 体菫発育曲線の比較
違 いは体重発育曲線が作成 された時代的背景,つ ま
り早期新生児に対する体温や栄養な どの保育管理法
‖
華
1/
の相違が体重発育 に影響 した と考え られる
②生理的体重減少 について
盛Щお の体重発育曲線 に見 られ る様 に,生 後数
日間の体重減少 を生理的体重減少 と呼●
1/1
//
カ ロ リー
‐ / ‐
: / 1
摂取量 の増加 とともに体重は次第 に回復する 体重
減少 の原因は細胞外液量の減少によるとされ,体 重
減少率 の生理 的な範囲は生下時体重 の -5∼
しか し,最 近
の母乳育児関連 の学会や論文 では,体 重減少率 が
10∼ 15%ま で を生理的 とす る意 見が述 べ られて
一 一
一
内であると教科書 に記載されている
彦
7%以
いる 学会資料 (新 生児誌,1996年 )に よると
)
完全母乳栄養児 の約 22%(30/134名
図13 体重別による増加率の推移
,
少率 -10%以 上 とな り,退 院時
)が 体 重減
(生 後 5日 目)ま
1
2
3
4
5
6日
l■ a日
動
臨床体温 -23巻 1号
2005年 29
でに生下時体重 に回復 した症例は 25%(302名 中)
であった`の
一方,当 院の体重発育曲線は,出 生初
日か ら基礎代 謝量 (50に ″権 )を 摂取 した 場合
の体重発育 を示す ものであるが,そ の減少率は -5
%未 満であった 生理的体重減少率の定義 について
様 々な意見が出されているが,児 にとって少な くと
も最低 限 の栄養 (基 礎代謝量 =50kca1/υ 日)が
図14 新生児の体温目節機構
与えられた場合 における体重減少を生理的とすべきと
考える
-10%以 上の体重減少率を児の栄養不足で
はなく生理的体重減少とする背景には, 1948年 の米
国で作成 された体重発育曲線が今 もなお我国の 日常
臨床で教科書 として用い られている所に問題がある
lV 快適な環境温度下 における体温調節
快適 な環境温 度下 での児 の体温調 節機構 は
DBTに 運動 した P
C
EIBTの リズ ミカルな体温変動
図 15 新 生児の体温調節機構
,
つ まり末梢血管の収縮 と拡張によって放熱量が調節
され恒温状態が保 たれている
PDBTの 上 昇時 に
V高
は,睡 眠/心 拍数減少/筋 弛緩が,下 降時には覚醒
温環境が呼吸,心 拍,行 動 (産 熱量)に 及ぼ
す影響
/心 拍数増加/筋 緊張克進が認 め られ る KFlalre
141 以 上よ り,放 熱機構 には末梢血管 の収縮 と拡
張が,産 熱機構 には筋緊張 (喘 泣 =産 熱売進)と 筋
弛緩 (睡 眠 =産 熱抑制)が 体温調節に重要な役割 を
す影響 について観察 した。 (Flre
している
下では
また睡眠か らの党醒反応 のメカニズムを
環境温度 の変化が ODBT//P EIIIT 心拍数,呼
吸数,経 皮的酸素分圧
C DBTと
KTt・
P02),産 熱量 におよぽ
16)高 温環境
P EIIITは 収 束 し ,P
IIBrの
リズ
調 べ る 目的で,早 期新生児の OD'T/PEIIIT,
ミカル な体 温変動 は消 失 した
心 拍数 ,行 動 (睡 眠 /党 醒 /哺 泣 )を 観察 した
心拍数 は減 少 し 児は手足 を広げ ,顔 色 はビ ンク
(FIFe 15)生 後 3時 間 日頃,
刺激 に対 し反応性 に乏 しく,llRり か ら覚 め,筋 緊
↑印で示 した間歌
この期 間
TcP02
,
的 な哺泣 に一 致 して心 拍数 の急 峻 な増 加 と,0
張 の低下 を認めた
DIITの 僅かな上昇傾向がみ られた その後,児 が
C DBrと P DBTは 離 開 し , 児 は 眠 りか ら覚 め
(覚 醒反 応 ),心 拍数 ,TcPC12 筋緊張 の増加 が観
=
放熱)と 拍数 の安定 (120/分前後)力
られ,0
'見
DBTは 緩 ゃ か に 下 降 し た Cつ BTは P DBT
睡眠状態に入ると,P DIITの 上昇
(末 梢血管拡張
,さ
(368℃ )ま で下降 したが,体温 の逆転現象
(異 常)
察 された
そ の後 ,環 境温 の低下 とともに
これ らの児 の行 動 の観察 か ら,中 枢 と末
梢 の体温較差が大 き くなるにつれて 筋緊張売進 が認
め られ た
つ ま り,C DIllTと
P DBTが 収 東 す る
を察知 した睡眠中の赤ちゃんは突然に激 しく泣 き出
様な高温環境下 にお いて は,高 体温
し,0"Tは 再び 372℃ ⊂ 常り
ぐための放熱促進
まで上昇 した
(う
つ 熱)を 防
(末 梢血管拡張 +発 汗)と ,産 熱
この現象は覚醒反応 の刺激 のひとつに,体 温下降が
抑制機構 (睡 眠 +筋 弛緩 +呼 吸運動抑制)が 作動す
関与 していることを示唆するもの として興味深 い
る
30
臨床体温 -23巻 1号
2005年
上よ り,着 せ過ぎは放熱障害 を招き,放 熱 した熱で
衣服内環境温を上昇 (蓄 熱)さ せ,赤 ちゃんを高体
温
・・・
にす る事がわか った:死 亡後 にもかか
の剖検所見は,児 の衣服内環境が高温多湿であ り
―
∼
屎中
つ鸞
わ らず体が温か い.発 汗が強 いなどの SIDSに 特有
壺 皮的崚撃分圧
濠
(う
,
)
そ の環境が外部 との熱交流がなかった ことを意味す
るものである
久保 日 僣 ,晨 燿人科力 ,V● 1,,N● │(1,"110〕
図16 環境涅度が体温調節
■乳 幼 児突 然死 症候 群 (SIDSlは , うつ 熱時 の
「産熱抑制」力:原 因ロ
①
,DSに ついて
Suttn hal■ t
))と は
Deatll Syldroll■ eぐ 週
,
「それ までの健康状態および既往歴か らその死亡が
予測できず, しか も死亡状況および剖検 によって も
その原因が不詳である乳幼児 に突然の死をもた らし
た症候群Jと 定義 されている0
欧米 では,仰 向け
寝運動 によって発生頻度は減少 したと報告 されてい
るが匈,そ の理由は分かって いない これ迄 の研究
では` 39,螂 の病態は睡眠か らの党醒反応 の遅
延が原因 と考 え られているD
SDSの 特徴は,①
0輌
)
目 17 ■せ過ぎによる衣熙内環境温度の変化
③うつ伏せ寝における体温調節の特徴
うつ伏せ寝にすると腹部側衣服内温は中枢体温より
やや高くなり,同 時に末梢体温の著 しい上昇つまり
l歳 未満 の睡眠中の乳幼児 に発生する,② 着せ過ぎ
OWυ 7DBTの 収東が観察された
③ うつ伏せ寝 に多 い.④ 冬 に多 い,⑤ 剖検所見 とし
うつ伏せ寝では放熱効率の高い腹部側からの放熱が
て死亡後時間が経過 しているにもかかわ らず体が温
妨げられ,衣 服内 仮 部側)に 放熱した熱が布団と
か く発汗が強 い.な どが報告されている
の間に蓄熱 し腹部を加温する うつ伏せ寝にすると
,
疫学調査 のなかに,加 Sの 原 因と結果
これ らの
(剖 検所見)
(Flpe 18)
汗をかき良く眠る理由は,腹 部が温められ放熱促進
産熱抑制機構 (睡 眠 +筋 弛緩)
が潜んでいると仮定すれば,全 てに共通 した環境温
(末 梢血管拡張)と
と高体温 こそが本症 と最 も深 い関わ りがあるのでは
が働くためと思われる うつ伏せ寝力覧 険な理由は
,
な いかと考え られる
②着せ過ぎが衣服内環境温度 に及ぼす影響
睡眠中の赤ちゃんに布団や衣服 (帽子・ 靴下な ど)
を着 せ 過 ぎ た 場 合 に, 衣 服 内 の 環 境 温 度 ,
DBT/P DBTは
(Fl中 に
0
どの様 に 変 化 す る か を 観 察 した
17)衣 服内環境温 は着 せ過 ぎ前では 35
℃ ∼ 36℃ 前後であったが,着 せ過 ぎ後 では上昇 し
続 け,嗜 泣後では ODBTを 上回 り 385℃ まで急
上昇 した
同時 に,PEIBTも 着せ過 ぎ後か ら緩や
か に上昇 し,ODBTと の間 に収東化 を認めた
以
■1,■ │■ ││■
│││■ 1111
`■
竹 ││
■ 1' ││● ,│
」L仰 :│■ 2∞
2030ぅ
っ
禦
F出 _■ 型
回18 うつ伏せ壌が体温目節 におよばす影響
臨床体温 -23巻 1号
2005年 31
解割学的 に胸部が重力で圧迫 され,特 にうつ熱状態
では筋緊張低下 によって呼吸運動が抑制 され,肺 換
気量が減少するからである 仰向け寝運動で SDSが
減少 した理 由は, うつ熱状態
(筋 緊張低下)力 S改 善
され,呼 吸運動の抑制が軽減 したためと考え られた
④SIDSの 発症機序
着せ過ぎ とうつ伏せ寝は衣服内環境温を上昇させ
睡眠中の乳幼児を容易に高体温
(う
つ熱)と す る
ODBT/P DBTが 収束す る様 な高温環境下 にお い
ては,児 は体温上昇 を防 ぐために放熱促進 に加え産
熱抑制機構が働 く 発熱の際 と違 つて, うつ熱時に
見 られる児の睡眠 筋弛緩・ 呼吸運動抑制 そ して
発汗 は,熱 産生を低下 させ放熱 を促進す るための体
温調節機構そのものである 高温多湿環境下では睡
眠に伴 う体温下降が生じないため 寒 さを感 じない
赤ちゃんは眠 りか ら覚めな い
うつ熱が進む につれ
て睡眠は深 くな り,筋 緊張 の低下 とともに呼吸運動
は抑制され低酸素血症は さらに準行す る 特 に, う
つ伏せ寝 では筋緊張低下が呼吸運動 を抑制 し,肺 換
気量を低下 させるためよ り危険である 一方,心 血
管系にお いては,環 境温 の上昇 とともに末梢深部体
温 の リズ ミカルな体温変動は消失 し,自 律神経機能
混合栄養法 にある 母乳は児 にとって最高 の栄養源
は低下する 即ち,体 温調節 のため に末梢血管は拡
であることに異諭はない
張 したままで,発 汗 による脱水,低 酸素血症 なども
手伝って血圧 は低下 し続 ける SDSの メカニズム
泌 し始 め るまでの生後 3日 間 の極度 の栄養不足 は
を考えてみると,着 せ過ぎ (放 熱障害)→ 衣服 内高
温環境→ うつ熱→ 放熱促進 (交 感神経抑制)+産 熱
ある COn■blad■ は出生直後 の体温下降を最小限 に
止め,血 糖値 を正常 に保持す ることが早期新生児の
抑制機構 (睡 IET筋 弛静 呼吸運動抑制)→ 血圧下降
基本的管理 と述べている 出生直後 の赤ちゃんに快
+低 酸 素血症 ⇒SDSの 仮説 が成 り立つ0‐ 9
適な環境温 を準備 し栄養不足にな らない様 に哺育管
理する ことは,発 達障害児 を未然に防 ぐ意味で医学
1Flg―
llre 19)
しか し,母 乳が十分 に分
生理的範 囲を越 えた厳 しいものである ことも事実で
的 に必要な管理である
lV結
今回,中 枢 と末梢深部体温 を同時に測定する こと
語
によって,児 の体温情報 を詳しく知る ことが出来た
しか し,そ れ
ODBT/P DBTの 体 温較差 は産熱量 の程度 を表 わ
す ものとして注 目に値す る また,低 温/高 温環境
らの治療法は研究 されているが予防法 についての報
下 にお ける持続的 な末梢血管 の収縮/拡 張は, 自律
告は皆無 に等 しい 我国 の発達障害児 の頻度 は 20
神経機能 を損な うものとして注意が必要である 特
人に 1人 といわれ ,年 々増えて いる
その予防策
に,高 温環境下 において何 らかの理 由で血圧低下が
こで述べた早期新生児の体温管理 と超早期
生 じた としても,血 管 を収縮 させ血圧 を上昇させ る
重症黄疸や低血糖症は,昔 か ら発達障害児の最 も
重要な危険因子 として知 られて いる
こそ力
'こ
32
臨床体温 -23巻 1号
2005年
ためのカテ コールアミンの分泌は抑制 されているか
Hollleotlle― l
らである 即ち 人間の 自律神経機能は生命維持装
postdellvered irai n101utored by contlnu
置 の安全性よ りも,体 温 を恒常 に保つための体温調
os and slllltu珈 随Os nl‐ asurelnellt Of
core alld perlpheral l爛 y tempemtuでs
節機構の方 を優先的に作動させているにちがいない
をは じめ,肥 満 (脂 肪 =放 熱障害)に 多 く見
か
られる睡眠時無呼吸症候群0,高 齢者の屋内熱中症
Blol Neol■ te 1988:5479‐ 85
8) 丸 山憲一 ,小 泉武宣 ,藤 生
血 流速 度 の経 時 的 変化
(自 律神経
機能不全)と いう体温調節機構の中に,そ れ らの原
日本新 生児学 会 雑 誌
1998:34815-20
91 森 同一 朗 ,上 谷 良行 :新 生児低血糖症 の概念 と
因が潜んでいる様な気が してな らない 快適な環境
定義
温度,そ して放熱機構が正常 に作動す ることが,生
10) 永井文作
周産期医学
200335863
常 田ひ ろみ,南 部春 生,他 :出 生早
命 の安全 にいかに重要であるかを学んだ 予防医学
期 の直腸温 と血糖値 の推移
に基 いた 当院の体温管理 と栄養法, ヒ トの体温調節
誌 1979;15:468-74
α掟
199●
SIEIS学 会 (2002年 )で 発表 し, 日本小児麻酔学
会 (2003年 ).臨 床体温研究会 (2004年 )で 講演
した ものをまとめたものである
1996;9:301-6
13) 久保 日史郎,佐 野正敏 :重 症黄疸 な どを防 ぐ新
生児 の新管理法 Medlcal A菫 施
中央病 院 にて 在胎
参考 文 献
2)
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16)
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の メカニズムに関心 をもって頂けた ら幸いである
本稿は 日本新生児学会総会 (第 17回 ,第 18回
徹 ,他 :生 後 24
時間以内 にお ける低 出生体重児の上腸間膜動脈
や入浴中の事故な どは,産 熱lnl制 (睡 眠 +筋 弛緩 +
呼吸運動抑制)と 持続的な末梢血管拡張
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