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Rab40C によるメラニン合成酵素の新規輸送制御機構の解明
○大林 典彦
筑波大学医学医療系 生理化学研究室
チロシナーゼ(Tyr)や Tyrp1 などのメラニン合成酵素は、その機能を発揮するため
に、メラノソームへと輸送される必要があり、正しく輸送されなかった場合、リソソームや
プロテアソームの影響により分解される。この輸送過程には、VPS-ankyrin-repeat
protein(Varp)が重要な役割を果たしており、Varp の発現異常、すなわち Varp の発
現低下あるいは発現上昇により、メラニン合成酵素はその輸送に異常を来すことで分
解される。Varp には 4 つの機能ドメインが存在し(図)、VPS9 ドメイン、ANKR1 ドメイ
ン、VID ドメインを介して、メラニン合成酵素の輸送制御やメラノサイトの樹状突起制御
を行うことが、我々の研究により明らかになっている。一方、ANKR2 ドメインについて
は機能が全く不明であった。そこで本研究では、ANKR2 ドメインに結合することが新
たに見出された Rab40 に着目し、以下の成果を明らかにするに至った。
まず、マウスメラノサイトである melan-a 細胞には Rab40C が内在しており、活性化
型の Rab40C が特異的に Varp と結合することが明らかになった。Rab40 ファミリー分
子は、タンパク質分解に関わる suppressors of cytokine signaling(SOCS)ボックス
を持つことから(図)、次に Varp の発現量に対する Rab40C の機能を解析した。その
結果、興味深いことに、Varp との結合能を持つ Rab40C 野生型あるいは活性化型変
異体 Rab40C(Q73L)を melan-a 細胞に発現させると、Varp の発現量が顕著に低下
すること、一方で Varp との結合能を持たない不活性化型変異体 Rab40C(G28N)や
SOCS ボックス欠損変異体 Rab40CΔSOCS を発現させても Varp の発現量に異常は
認められないことを見出した。また、
Rab40C が Varp のポリユビキチン化
を仲介することでプロテアソーム依存
的な分解を促進することも明らかにな
った(図)。
さらに、Rab40C 野生型あるいは
Rab40C(Q73L)を発現した melan-a
細胞では、Varp の発現量が低下して
いるため、Tyrp1 の輸送が障害される
ことでメラノソームからそのシグナルが消失した。一方、Rab40C をノックダウンすると、
Varp の発現量が過剰に上昇し、Varp の発現異常が生じることで、Tyrp1 シグナルが
メラノソームから消失した。
以上の結果、Rab40C は Varp の分解を厳密に制御し、メラニン合成酵素のメラノソ
ームへの輸送を制御する調節因子であることが明らかになった。