ポートフォリオによる分散投資 − リターンと分散の求め方 今回から数回にわけてポートフォリオについて学習しましょう。 今では、ポートフォリオという言葉もよく見聞きするようになりましたが、そもそもポー トフォリオとは、『債券とか株券をはさむファイル』のことを言いました。 最近では、ポートフォリオとは、株式をはじめとする、いろいろな資産の組み合わせの ことを指します。 ほとんど人は、預金、株式、不動産など、いろいろな資産を組み合わせて所有しています。 つまり、ポートフォリオを所有していることになるんです。 ポートフォリオの第一回目の今回は、二つの株式銘柄からなるポートフォリオの平均と 分散(標準偏差)の求め方を学習しましょう。 最近、『難しい!』とか、『ペースが速い!』という読者の方が多いので、ここはじっくり と、この重要なトピックを学習していきたいと思います。 コカコーラと IBM の株式からなるポートフォリオのリターンと分散(標準偏差)を計算し てみましょう。 セル B7:C16 は、コカコーラと IBM の過去 10 年間のリターンです。 セル B3 と B4 に、50%とあります。これは、コカコーラ株が 50%、IBM 株が 50%のポー トフォリオをあなたが所有しているという意味です。 コカコーラ株の組入れ比率を増加させれば、IBM 株の組入れ比率は減少します。二つの銘 柄の組入れ比率を合計すれば、当然のことですが 100%になります。 それぞれの平均リターン、分散、標準偏差を AVERAGE 関数、 VARP 関数、 STDEVP 関 数を使って求めましょう(セル B18:C20) ついでに、共分散と相関係数も COVAR 関数、CORREL 関数で、求めておきましょう。 (C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載 www.fmodeling.com 1 A B C 1 ポートフォリオ(コカコーラとIBM)の平均と分散 2 50% 3 コカコーラの割合 50% <--- =1-B3 4 IBMの割合 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 コカコーラ 2003年12月 2002年12月 2001年12月 2000年12月 1999年12月 1998年12月 1997年12月 1996年12月 1995年12月 1994年12月 平均リターン 分散 標準偏差 共分散 相関係数 ポートフォリオ 平均リターン 分散 標準偏差 18.12% -5.49% -21.76% 5.99% -12.15% 1.31% 27.86% 43.72% 48.24% 19.54% D IBM 20.50% -35.46% 43.01% -20.83% 17.86% 78.77% 40.46% 73.56% 29.90% 38.87% 12.54% 28.66% <--- =AVERAGE(C7:C16) 4.84% 11.72% <--- =VARP(C7:C16) 22.00% 34.24% <--- =STDEVP(C7:C16) 0.0234 <--- =COVAR(B7:B16,C7:C16) 0.3110 <--- =CORREL(B7:B16,C7:C16) 20.60% <--- =B18*B3+C18*B4 5.31% <--- =B3^2*B19+B4^2*C19+2*B3*B4*C21 23.05% <--- =SQRT(B26) 共分散と相関係数の意味があやふやな人は、バックナンバー第 19 号から第 21 号を復習し てみてください。 ここで、ちょっと散布図を作ってみようなんて、思ったあなたはすでにファイナンス脳に なってきています(笑) 準備が整いました。ポートフォリオの平均リターンを求める式は、 50%×コカコーラの平均リターン+50%×IBM の平均リターンとなります(セル B25) この式を一般化すると、 E (r p ) = x coke E (rcoke ) + x IBM E (rIBM ) = x coke E (rcoke ) + (1 − x coke ) E (rIBM ) (C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載 www.fmodeling.com 2 ここでは、 xcoke と x IBM はそれぞれの株式の組入れ比率を表しています。式は難しそうです が、考え方は単純です。 つまり、ポートフォリオのリターンは、それぞれの株式のリターンの加重平均なんです。 たとえば、ポートフォリオの組入れ比率を、コカコーラ 20%に変更した場合、自動的に IBM の組入れ比率は、80%(=1−20%)になりますよね。 したがって、この場合のポートフォリオのリターンは、 20%×コカコーラの平均リターン+80%×IBM の平均リターンとなります ポートフォリオのリターンの計算はこのように簡単です。難しいのは、ポートフォリオの リスク(分散や標準偏差)です。 ポートフォリオの分散を求める式は、 Var (rp ) = x 2 cokeVar (rcoke ) + x 2 IBM Var (rIBM ) + 2 xcoke x IBM Cov (rcoke , rIBM ) Var (rcoke ) と Var (rIBM ) は、それぞれ、コカコーラと IBM の分散をあらわし、Cov (rcoke , rIBM ) は共分散をあらわしています。 この式がどのように導きだされるのか、を覚える必要はありません。 この式をみながら、セル B26 に式を入力してみましょう。ボートフォリオの分散は、5.31% と計算できます。 標準偏差は、分散の平方根(√:ルート)ですから、SQRT 関数を使って求めてみましょ う(セル B27) 『あー、難しすぎる』というあなたには、もうひとつの方法がお薦めです。 斜線で囲まれた部分(E7:E16)は、ポートフォリオのリターンです。 (C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載 www.fmodeling.com 3 ポートフォリオのリターンは、それぞれの株式のリターンの加重平均であることを思い 出してください。 A B C 1 ポートフォリオ(コカコーラとIBM)の平均と分散 2 3 コカコーラの割合 50% 4 IBMの割合 50% <--- =1-B3 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 コカコーラ 2003年12月 2002年12月 2001年12月 2000年12月 1999年12月 1998年12月 1997年12月 1996年12月 1995年12月 1994年12月 平均リターン 分散 標準偏差 共分散 相関係数 ポートフォリオ 平均リターン 分散 標準偏差 18.12% -5.49% -21.76% 5.99% -12.15% 1.31% 27.86% 43.72% 48.24% 19.54% D E F G H ポートフォリオの リターン 19.31% <--- =B7*$B$3+C7*$B$4 -20.48% 10.62% -7.42% 2.85% 40.04% 34.16% 58.64% 39.07% 29.21% IBM 20.50% -35.46% 43.01% -20.83% 17.86% 78.77% 40.46% 73.56% 29.90% 38.87% 12.54% 28.66% <--- =AVERAGE(C7:C16) 4.84% 11.72% <--- =VARP(C7:C16) 22.00% 34.24% <--- =STDEVP(C7:C16) 0.0234 <--- =COVAR(B7:B16,C7:C16) 0.3110 <--- =CORREL(B7:B16,C7:C16) 20.60% <--- =AVERAGE(E7:E16) 5.31% <--- =VARP(E7:E16) 23.05% <--- =STDEVP(E7:E16) 20.60% <--- =B18*B3+C18*B4 5.31% <--- =B3^2*B19+B4^2*C19+2*B3*B4*C21 23.05% <--- =SQRT(B26) このポートフォリオをひとつの銘柄の株式リターンと考え、セル E18:E20 では、平均、 分散、標準偏差をそれぞれ、AVERAGE 関数、 VARP 関数、 STDEVP 関数で求めていま す。 さきほど、計算した分散や標準偏差と同じになるはずです。 (C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載 www.fmodeling.com 4
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