メラノサイト及び皮膚免疫細胞・神経の三次元可視化を通した尋 常性白班病態解明の試み ○本田 哲也 京都大学医学部附属病院皮膚科 尋常性白班は、後天性に脱色素班を呈する難治性皮膚疾患である。その病態形成に は様々な遺伝因子と環境因子が関与し、自己免疫説、神経との関与など複数の発症 機構の存在が推定されている。その病態を解析するうえで、各種細胞の局在について 組織学的に解析することは極めて重要である。従来、組織学的解析法としては、組織 切片を用いた二次元的な解析が主流であった。しかし、複数の機序が平行して関与し、 細胞間相互作用や構造が病態形成に寄与している本疾患を理解する上で、病態の 三次元情報を把握することは極めて重要である。 我々は以前より、多光子励起顕微鏡をもちいた皮膚の三次元構造の解析を行ってき た。多光子励起顕微鏡は、従来の蛍光顕微鏡にくらべ高い観察深度が得られ、また 様々な構造物の自家蛍光を励起できるため、三次元的観察に有用な蛍光顕微鏡で ある。 今回我々は、多光子励起顕微鏡を用いた尋常性白斑病態を三次元可視化の基盤技 術の開発を目標に、以下の 3 点について検討を行った。まず 1 点目はヒト皮膚組織の 透明化である。ヒト皮膚は極めて蛍光の散乱が強いため、そのままでは多光子励起顕 微鏡においても十分な観察深度が得られない。その散乱を抑えるため皮膚組織透明 化の手法を検討し、最適な手法を確立した。2 点目に、透明化した皮膚の三次元的免 疫染色手法の確立を行った。これにより自家蛍光以外の、目的の細胞の観察も可能と なった。3 点目に、神経走行と白斑の出現の関係性を明らかとするため、同手法により メラノサイト及び、神経繊維の染色を行った。その結果、神経とメラノサイが極めて近接 して存在する像が多く観察され、神経とメラノサイトのクロストーク可能性が示唆され た。 以上のように、ヒト皮膚の三次元的観察の基盤技術は十分に確立したと考えられ、今 後この技術を用いて、白斑での変化をさらに解析予定である。
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