円形脱毛症患者の脱毛部からの白髪出現におけるオートファ ジーの役割の解明と予防法の確立 中村元信 (共同研究者 ○尾本大輔) 産業医科大学皮膚科 円形脱毛症患者の脱毛部から毛が再生する場合、白髪が伸長してくることが多い。しかし、 そのメカニズムはいまだ詳細は不明で、予防法、治療法も確立していない。近年、 Genome-wide association study (GWAS)が円形脱毛症にも応用され、IL-21、CTLA4、 HLADRA、 などさまざまな免疫関連の分子のほか、オートファジーや脱色素に関係する STX-17 遺伝子が円形脱毛症発症に関与している可能性が示唆されている。 本研究はまず、人の円形脱毛症患者組織のオートファジー関連蛋白に対する抗体を用い た免疲組織学的検査により、人の円形脱毛症における白髪の出現におけるオートファジーの 役割を明らかにしたい。ついで、円形脱毛症モデルマウス C3H/HeJ マウスにオートファジー 調節物質を投与し白髪出現の予防あるいは治療効果があるかどうか検討する。 産業医科大学皮膚科に初診の 21 名の円形脱毛症患者につき、治療後の白髪伸長の有無 の確認と、脱毛部からの生検組織の免疫染色を行った。患者内訳は、性別・年齢(男性:7 名 (32 歳-50 歳)、女性:14 名(25 歳-70 歳))、分類(多発型:7 名、全頭型:9 名、汎発型:5 名)、 重症度(S1:4 名、S2:8 名、S3:4 名、S4:4 名、S5:1 名)、AD 既往(あり:4 名、なし:17 名) であった。18 名に脱毛症の改善を認めた。治療により脱毛症重症度に改善が見られなかった 3 名も含めた検討で、13 名に脱毛部より白髪伸長が認められた。 免疫染色の結果について、NKG2D 活性化リガンドである MICA、ULBP3 では、すべての 症例において表皮および付属器上皮成分の細胞がびまん性に染色された。今回の免疫染色 結果からは、MICA、ULBP3 染色にては有意な所見が得られなかったと判断した。オートファ ジー関連蛋白である ATG7、LC3 について検索したところ、ATG7 については有意な所見は 得られなかったものの、LC3 については検体により染色に差異が認められた。そこで、LC3 に より選択的に分解される基質である p62 についても免疫染色を行った。p62 による染色結果か らは、p62 が外毛根鞘あるいは内毛根鞘に発現していることと、脱毛症改善後の白髪伸長とに は相関が認められた。これまで p62 はオートファジー活性の低下と相関すると報告が多い。 p62 は酸化ストレス誘導性があり、Nrf2 が活性化する条件下において増加するとされており、 今後は慎重に検討を重ねていきたい。 図(脱毛症改善後に白髪伸長した例。本例では LC3 陽性、p62 陽性)
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