「主語」のところで、はっきりさせていきましょう。 「つきがあかるい。」と「つきはあかるい。」では、どうちがうでしょう。考えてみてくだ さい。 ③ 原因をあらわす ・ おおきな津波が、おおくのひとの人生をくるわせた。 ここまで、 いろいろな格助詞についてとりあげてきましたが、いよいよ終盤です。 ・ なでしこジャパンの活躍が、おおくの人々を元気にした。 「人生をくるわせた」り「おおくの人々を元気にした」主体が「津波」や「活躍」だといえますが、 文の中で、中心となるべき「が格」についてみてみます。これまで、「が格」をとりあげなかった のは、「が格」が文の中で主語の部分をになうことがおおく、「主語」についてふれざるをえなかった からです。 これは、「できごとをあらわす名詞」です。つまり、原因をあらわす「できごと」が主語になってい ると考えてもいいでしょう。 こうした使われ方も、なかなかみあたりません。教科書のどの作品で使われているか、ぜひ、さが ちょっとむずかしくいうと、文は「主体ー属性」をいうなかみをもち、ある話題について「さしだ してみてください。 しーのべ」というはたらきをします。基本的には、この「主体」や「さしだし」をあらわす格助詞が 「が格」です。 ④ 感情や能力の対象をあらわす。~主語ではない「~が」 ピーターは英語、日本語、スワヒリ語が話せるそうです。 ① 運動の主体をあらわす。 ・…運動が苦手なので、・・・ 「ポレポレ」 西村まりこ おじいさんが、かぶを うえました。 「おおきなかぶ」うちだりさこ訳 ・…ぼくらは九月が大すきでした。 「リンゴ畑の九月」 後藤 竜二 春のあたたかい日のこと、わたし舟に二人の小さな子どもを連れた女の旅人が乗りました。 「あめ玉」 新美南吉 「おおきなかぶ」では、「おじいさんが」が「うえました」という運動(動き)の主体をあらわしま す。また、「あめ玉」でも、 「旅人が」が「乗りました」という運動の主体をあらわします。これは、 「ウゴキ」をさししめす文の場合です。 述語部分に、能力や感情をあらわす動詞がくると、その能力のなかみや感情の対象を必要とします。 それが、「が格」であらわされることがすくなくありません。文の部分としては、補語です。 「 『~が』は主語です。」とだけ教えたりすると、こういうつかわれかたのときに、子どもたちは混 乱します。大人ならわかることでも、子どもには、わかりにくいことかもしれませんから、気をつけ ておきましょう。 ② 状態や性質や関係のもちぬしをあらわす。 ・つきがあかるい。 ・わたしが次郎のいもうとです。 これは、「ウゴキ」ではありません。「あかるい」状態の「もちぬし」が「つき」です。また、「わ たし」は、「次郎のいもうとです」という関係の「ぬし」です。 「いずみが・・・・、ゆくえふめいらしい。」 「ポレポレ」 西村まりこ こういった「が格」の使われ方は、あまりみられません。それは、なぜなのか? のちにあつかう -1- -2- ところで、ふだんはあまり注目されない ものに、「はだか格」があります。なまえ のとおり、「文字」としての「くっつき」 はありません。が、ちゃんと、関係を表現 しています。 ① よびかけの 独立語になる。 ④ ときの状況語がはだか格であらわれることがよくある。 その翌日、昨日と同じ時刻に、大造じいさんは出かけていきました。 このガンは、二年前、じいさんがつりばりの計略で生けどったものだったのです。 「大造じいさんとガン」 椋 鳩十 「昨日」とか「今日」「明日」「今」「現在」「この前」など、ときをあらわす状況語は、はだか格で つかわれることがよくあります。ただ、 「5時」など時刻をあらわす場合には、はだか格ではなく、 「に ・ ブル-タス、おまえもか! ・ きみ、これを もって いって くれ。 「イタマル、もう、いいだろ。・・・」 格」「から格」「まで格」などの格助詞をつけて、文にえがかれたできごとと「とき」の関係をはっき りさせる傾向が強いように感じますが、できごとがおきた時刻としてつかわれる場合は、はだか格の ほうが多いかもしれません。 「ミッキー、君、のどのかわきをかんじられるの。」 例:夕方6時、大雨のために山陽本線は運転を見合わせています。 「のどがかわいた」ウーリ=オルレブ 夕方6時から、大雨のために山陽本線は運転を見合わせています。 夕方6時まで、大雨のために山陽本線は運転を見合わせています。 これは、主語ではなく、ある感情のこもったよびかけをあらわします。作品のなかでは、どういう 気もちをになっているか、音読するときには、どういうふうに読んだらいいのかを考える対象になり そうです。 ⑤ 会話文では、が格、を格、へ格のかわりにはだか格がつかわれることがある。 「やあい、やあい、くやしかったら、つり橋わたって、かけてこい。」 ② 並立の まえ部分になる。 (ママ、今、何してるかな。早く病気なおらないかな。) ・ 赤、緑、青を光の3原色という。 「おめえ、つり橋わたれたから、いっしょに遊んでやるよ。」 「つり橋わたれ」 長崎源之助 ・ 太郎は小学校、中学校、高校と、男女共学だった。 ミッキーも、今年になって寄宿学校にやってきた子で、ぼく、ダニエル、エルダッドといっしょ の部屋になった。 会話の世界では、しばしば「くっつき」を省略するものです。文意識のない低学年では、よくみられ ることです。 「のどがかわいた」ウーリ=オルレブ むずかしい内容ではありません。ただ、何が並立されて表現されているかをていねいにおさえてお くことが大切です。この並立は、説明文によくつかわれているかもしれません。 それは、日本語の場合、あるいは「はなしことば」の中では、単語の順番によってある程度想像で きるということ、また、具体的な場面がそこにあるので、「くっつき」を省略しても、場面に依存し て、単語と単語の関係が推測できるからです。 そういう世界になれている子どもたちにとって、その文にふさわしい「くっつき」を使用すること ③ 数量名詞や程度名詞のはだか格は、 数量や程度の修飾語になる。 は、簡単なことではありません。会話文で省略された「くっつき」をおぎなうと、表現性は、ずいぶ ・ 転校生が3人きた。 んかわりますが、内容は正しく読みとることができます。必要に応じて、「ここには、どんな『くっ ・ この会社の社員は、大部分、独身である。 つき』がつくかな?」と問うことは必要かもしれません。 くちびるを二、三回静かにぬらしました。 「大造じいさんとガン」 椋 鳩十 ‥しきいに立てかけてあるスキーぐつから、しめっぽい新聞紙の玉を五つ六つ取り出して、手を つっこんでみました。 「わらぐつの中の神様」 杉みきこ 次の下線の部分は、①~⑤までのどのつかいかたにあてはまるでしょう? 「お母さん、わたしのスキーぐつ、かわいてる。あした、学校でスキーの日だよ。」 「わらぐつの中の神様」 杉みきこ これは、「どれくらい」「どれだけ」という修飾語に対応します。はっきりとした数があらわされて いない場合は、 「ていど」をあらわしていると読むべきでしょう。数の正確さは問題ではないのです。 -3- 参考文献:「日本語の文法」高橋太郎 他 ひつじ書房 -4-
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