「現代形而上学の方法論と概念的基盤:実在論的観点から」 現代の分析哲学における形而上学研究があつかう主題はじつに多様だが、近年 の研究において顕著なひとつの動向として、形而上学の目的・方法や、形而上 学的な問いと論争それ自体の身分にかんする考察に大きな重点が置かれる、と いうことが挙げられる。現代の形而上学研究のあり方をあらためて問い直そう とする議論が、いわゆる分析形而上学の内外を問わずさまざまな観点から提示 され、「メタ形而上学」と呼ばれる領域を形作っている。本講演は、多岐にわ たるメタ形而上学的諸問題のうち、とりわけ伝統的なタイプの実在論的形而上 学——私たちの心と独立な世界の基礎的特徴の探究——の可能性に深く関わるいく つかのトピックに焦点をあて、論争の状況を紹介するとともに、今後の探究が 進むべき方向を提案することを目的とする。とくに、主として以下の(互いに 関連する)論点をとりあげる。 (1)実在論の可能性:形而上学が「世界の基礎的特徴についての探究」であ るとはそもそもどのような意味なのか。また、はたしてそれは可能なのか。結 局のところ形而上学は、私たちと独立の世界それ自体ではなく、世界について の私たちのさまざまな語り方や、そこで用いられる種々の一般的概念の特徴・ 有用性にかんする探究でしかありえないのではないか。 (2)形而上学的基礎づけとは何か:形而上学的探究の概念的道具立てとして 近年注目されている「基礎づけ(grounding)」とはどのような意義をもつもの なのか。基礎づけ、およびそれに関連する諸概念は、形而上学的探究でこれま で用いられてきた種々の様相的概念(付随性など)とどのような関係にあるの か。 (3)形而上学と科学の関係:形而上学の目的・方法は、科学のそれとどのよ うな関係にあるのか。科学とは独立の(あるいは科学に先立つ)自律的な分野 として形而上学を捉えることはできるのか。できるとすれば、その自律性はど の程度のものなのか。 また、こうした論点にかんする検討を通じて、メタ形而上学的探究そのものの あり方や、より一般的なメタ哲学的探究におけるメタ形而上学の位置について も考察する。
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