自社の企業活動に「マイナス」は 15.1%で全国トップ

2016/10/12
松本・長野・飯田支店
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特別企画:イギリスの EU 離脱に関する長野県内企業への影響調査
自社の企業活動に「マイナス」は 15.1%で全国トップ
日本経済全体に「マイナス」は 53.4%と半数を超える
はじめに
6月 24 日(日本時間)
、イギリスは国民投票で EU(欧州連合)からの離脱(Brexit)を選択し
た。当時、
“リーマン・ショック級”とも称された Brexit の影響は、イギリスや EU 域内に進出し
ている企業にとどまらず、広範囲に及ぶ可能性が懸念され、その後為替が円高に振れたこともあ
って、マインドを冷え込ませた日本企業は少なくない。
また、現在交渉が進む「日 EU 経済連携協定」についても、EU の混乱に伴う合意の遅れは避けら
れず、対 EU 貿易や EU 市場参入などにおいて、広く日本企業に影響が出ることが不安視されてい
る。特に長野県内には、海外経済と密接に関係する機械系メーカーなど輸出関連企業が多数存在
し、地元経済の牽引役を担っている。
帝国データバンクでは今回、
イギリスの EU 離脱に関する企業への影響について調査を実施した。
調査期間は8月 18 日~31 日で、調査対象は全国2万 3700 社、長野県 498 社。有効回答企業数は
全国1万 508 社(回答率 44.3%)
、長野県 232 社(同 46.6%)
。なお、本調査は TDB 景気動向調査
(8月調査)と同時に行っている。
調査結果(要旨)
■県内企業の1割弱がイギリスまたは EU 加盟国へ進出
有効回答企業 232 社のうち、イギリスまたは EU に進出しているのは 9.1%。1割弱の企
業が、直接・間接いずれかの形で進出していることが判明した。このうち、直接進出して
いるのが 1.7%、間接進出しているのが 7.8%。一方、進出していない企業は 86.6%に達
している。
■EU 加盟国への進出では「ドイツ」が最多、次いで「イギリス」
イギリスまたは EU 加盟国に進出している企業 21 社のうち、進出国(地域)としては「ド
イツ」
(47.6%)
、
「イギリス」
(28.6%)
、
「スウェーデン」
(19.0%)の順。
■自社の企業活動に「マイナスの影響」は 15.1%、47 都道府県別で最大
イギリスが EU から離脱することで日本経済全体に「マイナスの影響がある」と考えて
いる企業は 53.4%と半数を超えた。自社の属する業界に「マイナス」は 22.0%、自社の
企業活動に「マイナス」は 15.1%。自社の属する業界に「マイナス」と回答した企業の構
成比は、47 都道府県別で3番目に高く、自社の企業活動に「マイナス」と回答した企業の
構成比は全国で最も高かった。
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特別企画:イギリスの EU 離脱に関する長野県内企業への影響調査
1.イギリスまたは EU へ直接進出している企業は 1.7%、間接進出は 7.8%
現在、自社がイギリスまたは EU(欧州連合)加盟国に進出しているか尋ねたところ(複数回答)、
有効回答企業 232 社のうち、直接的な進出(生産拠点・販売拠点・資本提携・現地法人の設立)
を行っている企業は 1.7%、間接的な進出(業務提携・業務委託・直接輸出・間接輸出・直接輸入・
間接輸入・その他)を行っている企業は 7.8%だった。各項目の中で最も多かったのは「間接輸出」
の 4.7%。直接・間接のいずれかの形で進出している企業(直接進出・間接進出の内訳項目の少な
くともいずれか1項目を選択した企業の割合)は 9.1%となり、1割弱の企業がイギリスまたは
EU 加盟国と関わりを持って事業を行っていることになる。
全国企業を対象とした調査では、直接進出しているのが 1.9%、間接進出しているのが 7.5%、
いずれかの形で進出しているのが 9.2%。長野県の進出状況は、全国とほぼ同水準である。
2.進出先の内訳は「ドイツ」
「イギリス」の順
イギリスまたは EU 加盟国に進出している企業は、実際にどこ
の国(地域)に進出しているのだろうか。県内の進出企業 21 社
の内訳で最も多かったのは「ドイツ」
(47.6%)
。以下、
「イギリ
ス」
(28.6%)
、
「スウェーデン」
(19.0%)などと続く。現在の進
出先から「移転先を検討・予定している」と回答した企業はなか
った。
なお、全国企業の進出先では(母数は 970 社)
、多い方から「ド
イツ」
(35.9%)
、
「イギリス」
(31.5%)
、
「フランス」
(23.3%)
、
「イタリア」
(21.4%)
、
「スペイン」
「オランダ」
(各 11.9%)な
ど。
「移転先を検討・予定している」企業のうち、移転先として
は「アジア地域」が最も多かった。
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特別企画:イギリスの EU 離脱に関する長野県内企業への影響調査
3.イギリスの EU 離脱の影響、
「マイナス」ととらえる企業が全国を上回る水準
イギリスが EU から離脱することにより、日本経済全体や自社が属する業界、また自社の企業活
動にどのような影響があるかを尋ねた。いずれも、
「マイナスの影響がある」と回答した企業が「プ
ラスの影響がある」と回答した企業を大きく上回ったが、
「マイナスの影響がある」の構成比は全
国の調査結果をすべて上回っている。
「日本経済全体にマイナスの影響がある」は 53.4%(全国 51.3%)
、
「自社の属する業界にマイ
ナスの影響がある」は 22.0%(全国 16.3%)
、
「自社の企業活動にマイナスの影響がある」は 15.1%
(全国 9.4%)
。都道府県別では、
「日本経済全体」は 16 番目に、
「自社の属する業界」は3番目に
高く、
「自社の企業活動」では最も高かった。
「自社の企業活動にマイナスの影響がある」と回答したのは、
「大企業」の 15.0%、
「中小企業」
の 15.1%と規模別ではほぼ同水準。一方、主要業界別にみると、
「製造」の 22.4%、
「サービス」
の 15.8 % 、「 卸 売 」 の
10.0%、
「建設」の 3.8%
と大きな差が生じている。
なお、自社の企業活動
に対しては、「影響はな
い」が 49.1%と半数近く
を占めたほか、「分から
ない」も 34.9%に達して
おり、多くの企業が影響
を測りかねている様子も
窺える。
まとめ
イギリスが EU から離脱するという国民投票の結果は、日本経済においても一時的な株価下落や
円高進行が生じることとなった。先行きへの不確実性も高まっており、日本経済や企業活動に対
する影響は長期的な視点で考える必要がある。弊社の「イギリス進出企業実態調査」によると、
イギリスには日本企業 1380 社、長野県内企業 14 社が進出しているが、離脱問題はイギリスや EU
加盟国と間接的に取引している企業や国内における取引先にも影響が及ぶ可能性がある。
今回の調査で、全国企業、県内企業の半数以上が日本経済に「マイナスの影響がある」と見込
んでいることは、今後の経済活動にとって明るい材料になるとは言い難い。現在、イギリスまた
は EU 加盟国に進出している企業は大企業を中心に1割弱にとどまっているとはいえ、自社の属す
る業界、あるいは自社の企業活動に「マイナスの影響がある」とする企業は少なからず存在。特
に長野県は、海外経済との関係が深い輸出関連企業の集積が厚く、海外情勢や為替変動に対し敏
感に反応する企業が多いこともあって、全国と比べ「マイナス」ととらえる企業の構成比が高く
なっている。
EU の運営は従来以上にドイツやフランスが主導することになると予想されている。イギリスの
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特別企画:イギリスの EU 離脱に関する長野県内企業への影響調査
不在で非ユーロ圏の権益確保がますます難しくなるとの見方も広がり、自由貿易の推進に逆風と
なる可能性も否定できない。企業からは「他の EU 加盟国に離脱の動きが波及しないか心配。EU 体
制は理想としては良いが、加盟国間の経済・財政等の格差が大きい中では矛盾もはらんでいる」
といった声も聞かれ、EU そのものの将来への懸念も強い。最低でも2年間が必要とされるイギリ
スと EU との離脱交渉の進捗を見極めながら、自社が取り得る対策を慎重に見極めていくことが肝
要となろう。
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