最近の静岡県金融経済の動向 2016年10月

当資料は当店ホームページに掲載しています
2016 年 10 月 12 日
http://www3.boj.or.jp/shizuoka/
日本銀行静岡支店
最近の静岡県金融経済の動向
本稿は、16/8 月を中心とした金融経済統計、および直近の企業ヒアリング
をもとに取りまとめている。
(概況)
県内の景気は、基調としては緩やかに回復しつつある。この間、9月短観で
みた企業の業況感は、非製造業を中心に幾分慎重化している。
最終需要の動向をみると、設備投資は大・中堅企業の製造業を中心に一段
と増加しているほか、住宅投資は緩やかに増加している。また、個人消費は、
一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境が緩やかに改善する中、全
体として持ち直しつつあるほか、公共投資は下げ止まっている。他方、輸出
は、先進国経済の回復は続いているものの、新興国経済の一段の減速の影響
等から、やや弱めの動きとなっている。
こうした下で、企業の生産は下げ止まり感が窺われる。
雇用・所得をみると、労働需給はタイトな状況が続いているほか、所得面
は、一部に足踏み感がみられるものの、全体として緩やかに改善している。
消費者物価(除く生鮮食品)は前年を下回っている。
1.需要項目別の動向
(1)個人消費・・・一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境が緩や
かに改善する中、全体として持ち直しつつある
百貨店売上高は減少しているほか、県内の旅館・ホテルの宿泊客数や観光
施設の入込客数は増勢がやや鈍化している。
一方、スーパー売上高は緩やかに持ち直しているほか、旅行取扱額は国内
旅行を中心に持ち直している。また、乗用車新車登録台数をみると、軽乗用
車はなお弱めの動きとなっているものの、普通・小型乗用車は緩やかに増加
している。この間、家電販売は、住宅投資が緩やかに増加する中、緩やかに
持ち直しつつある。
1
(2)公 共 投 資 ・ ・ ・ 公 共 工 事 請 負 金 額 は 下 げ 止 ま っ て い る ( 前 年 比 :
16/7 月▲7.1%→8 月+14.8%)
(3)設備投資・・・大・中堅企業の製造業を中心に、生産性向上関連や研究
開発関連の投資がみられるなど、一段と増加している。ただし、中小企業で
は慎重なスタンスを維持している(設備投資額前年度比<短観>:15 年度実
績+9.6%→16 年度計画+6.6%)
(4)輸出・・・先進国経済の回復は続いているものの、新興国経済の一段の
減速の影響等から、やや弱めの動きとなっている(輸出額前年比:16/7 月
▲11.7%→8 月▲8.9%<速報>)
二輪車等は持ち直しつつあるほか、自動車部品は、欧州・中国向け等の増
加から、下げ止まりの兆しが窺われる。
一方、自動車は、新興国経済の一段の減速や海外生産シフトから、減少し
ている。また、一般機械、電気機械は、欧州向けの緩やかな増加は続いてい
るものの、新興国経済の一段の減速等から、やや弱めの動きとなっているほ
か、楽器は持ち直しの動きが足踏みしている。
(5)住宅投資・・・緩やかに増加している(新設住宅着工戸数前年比:
16/7 月+23.5%→8 月+14.3%)
2.生産、雇用・所得、物価の動向
(1)生産・・・下げ止まり感が窺われる(鉱工業生産指数<季節調整済>前
月比:16/6 月+2.3%→7 月▲0.6%<速報>)
一般機械は、一部海外需要の減退等から、横ばい圏内の動きとなっている
ほか、楽器、織物は持ち直しの動きが足踏みしている。また、紙・パルプ、
加工鋼材はやや弱めの動きとなっている。
一方、電気機械、缶詰、木材等は緩やかに増加しているほか、二輪車・同
部品、飲料、生コンクリート・セメントは持ち直しつつある。また、家具は
下げ止まりつつあるほか、自動車・同部品は、内外需の弱さなどはみられる
ものの、在庫調整の進捗から、下げ止まり感が窺われる。
(2)雇用・所得・・・労働需給はタイトな状況が続いている。所得面は、一部
に足踏み感がみられるものの、全体として緩やかに改善している(有効 求人
倍率:16/7 月 1.36 倍→8 月 1.34 倍)
2
有効求人倍率、新規求人倍率はともに高い水準を維持しており、労働需
給はタイトな状況が続いている。
常用労働者数は緩やかに改善している。一人当り名目賃金、雇用者所得は、
一部に足踏み感がみられるものの、全体として緩やかに改善している。
事業主都合による解雇者は前年を下回った。
(3)物価・・・消費者物価(除く生鮮食品)は前年を下回っている(指数・
前年比:16/7 月▲0.6%→8 月▲0.7%)
3.企業倒産、金融面の動向
(1)企業倒産
企業倒産(16/9 月、負債総額 10 百万円以上)をみると、件数(22 件<前
年比:▲18.5%>)、負債総額(23 億円<同:▲30.7%>)ともに総じて落ち
着いている。
(2)預金
預金は、法人、個人とも引き続き増加している(前年比:16/7 月末+2.3%
→8 月末+2.7%)。
(3)貸出
貸出は、法人、個人とも引き続き増加している(前年比:16/7 月末+2.7%
→8 月末+2.7%)。
(4)貸出約定平均金利
地元地銀・第二地銀 4 行ベースの貸出約定平均金利(総合、ストックベース)
は前月比低下した(16/7 月 2.155%→8 月 2.154%)
。
以
上
本件に関する問い合わせ先
日本銀行静岡支店営業課
TEL 054-273-4106、FAX 054-275-0001
3
静岡県内主要金融経済指標
計表1
個 人 消 費
百貨店売上高
前年比%(注1)
県
16/
内
▲ 2.5
▲ 5.1
6月 ▲ 3.4
7月
1.1
8月 p ▲ 4.9 p
9月
n.a.
4月
5月
全
国
スーパー売上高
前年比%(注1)
県 内
全
国
乗用車新車登録台数
(含む軽)
前年比%
県 内
▲ 3.6
1.9
0.8
0.1
▲ 4.8 ▲ 0.1 ▲ 0.8 ▲ 3.9
▲ 3.6
0.9 ▲ 0.3 ▲ 5.3
▲ 0.2
0.5
1.1 ▲ 4.2
▲ 6.0 p ▲ 2.3 p ▲ 2.6
2.1
n.a.
n.a.
n.a. p
2.0 p
資料出所
全 国
県 内
全 国
県 内
2.2
▲ 1.4
▲ 5.6
▲ 2.2
2.9
▲ 0.7
10.8
6.6
3.0
▲ 2.3
3.5
2.6
8.4
7.3
3.6
▲ 0.6
5.5
3.8 p
▲13.1
▲17.7
▲16.7
▲ 7.2
0.2
1.2 p
▲ 9.1
▲17.3
▲23.4
▲ 5.7
▲ 2.1
▲ 9.1
▲ 1.6 p
1.6
4.8 p ▲ 7.6
3.7 p ▲ 2.2
0.1
n.a.
3.8
n.a.
n.a.
n.a.
16/
3月
4月
5月
6月
7月
8月
設
建築着工床面積
前年比%
前年比%(注3、4)
7.7
16.1
▲ 5.1
▲ 2.7
23.5
14.3
全
国
8.4
9.0
9.8
▲ 2.5
8.9
2.5
資料出所
県
内
全
2.5倍
▲14.4
▲32.6
▲25.2
10.6
2.1倍
県
15年度
16年度計画
資料出所
投
県 内
国
全産業
20.7
15年度
▲23.2
15.0 16年度計画
9.1 資料出所
▲20.6
21.3
4.6
9.6
6.6
製造業
13.8
17.1
13.6
業
収
▲ 3.2
1.8
▲ 1.6
日本銀行静岡支店
益
前年度比%
内
全産業
製造業
1.6
▲ 0.7
▲14.3
2.0
▲ 4.7
▲17.9
全 国
非製造業
▲ 0.1
18.0
▲ 0.7
全産業
製造業
5.9
4.8
▲ 8.1
11.2
▲ 2.9
▲11.8
日本銀行静岡支店
非製造業
2.2
10.8
▲ 5.6
日本銀行
pは速報値、rは改訂値
(注1)店舗調整後ベース
(注2)旅行取扱額の県内は4社ベース
(注3)県内の建築着工床面積は公共と民間の合計のうち非居住用
(注4)全国の建築着工床面積は民間のうち非居住用
(注5)全国企業短期経済観測調査、設備投資は土地投資を含む(リース会計対応ベース)
計-1
前年度比%
全 国
非製造業
全産業
4.3
5.0
1.7
製造業
6.8
9.1
6.1
日本銀行
全
国
日本銀行 国土交通省
静岡支店
資
設 備 投 資 額(注5)
14年度
経 常 利 益(注5)
14年度
備
国土交通省
企
前年比%
県 内
日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会
新設住宅着工戸数
旅行取扱額
前年比%(注2)
全 国
住 宅 投 資
内
軽乗用車新車販売台数
日本自動車販売協会連合会静岡県支部、静岡県軽自動車協会、
経済産業省
県
乗用車新車登録台数
(除く軽)
前年比%
非製造業
3.1
2.9
▲ 0.6
計表2
輸 出 入(注1)
県
16/
輸 出 額
輸 入 額
公共工事請負金額
前年比%
前年比%
前年比%
内
全
▲ 1.7
▲ 3.1
5月 ▲ 4.8
6月 ▲ 7.7
7月 ▲11.7
8月 p ▲ 8.9
県
内
全
国
▲ 6.8 ▲11.0 ▲14.9
▲10.1 ▲21.6 ▲23.3
▲11.3 ▲ 0.7 ▲13.7
▲ 7.4 ▲13.3 ▲18.7
▲14.0 p ▲21.5 r ▲24.6
▲ 9.6 p ▲ 4.5 p ▲17.2
3月
4月
資料出所
国
16/
3月
4月
5月
6月
7月
8月
常用労働者数(注3)
全産業 前年比%
内
県
1.27
1.36
1.35
1.34
1.36
1.34
内
▲ 0.7
28.7
▲19.8
▲ 5.4
▲ 7.1
14.8
5.0
0.3
3.8
0.7
2.9
10.6
4.1
0.5 ▲ 3.2 ▲ 1.7
1.4 ▲ 6.7 ▲ 2.6 ▲ 3.0
0.4
▲ 1.8
2.3
2.3 ▲ 1.5
0.0
▲ 6.9 p ▲ 0.6 r ▲ 0.4 p
2.7 ▲ 2.4
12.0
n.a. p
1.5
n.a. p
0.1
1.30
1.4
1.34 ▲ 0.2
1.36
0.1
1.37
0.2
1.37 p ▲ 0.2 r
1.37
n.a. p
資料出所
物 3月
4月
5月
6月
7月
8月
資料出所
用
・
所
雇用者所得(注3)
全産業 前年比%
県 内
2.1
2.0
2.0
2.0
2.0 p
2.2
全 国
▲
▲
▲
▲
1.4
2.5
1.3 ▲
2.5
1.2 r
n.a. p ▲
価
静岡市
全 国
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
0.6
0.8
0.9
0.9
0.6
0.7
0.3 16/ 6月
9月
0.4
0.4 12月予測
0.4 資料出所
0.5
0.5
業
況
解雇者
前年比%
県 内
1.5
0.0
0.1
1.4
1.2 p
0.1
▲
▲
▲
▲
全 国
0.0
2.7
1.2
2.3
1.0 r
n.a. p
感
3
1
▲ 3
非製造業
▲ 2
0
▲ 1
7
3
▲ 4
日本銀行静岡支店
総務省
pは速報値、rは改訂値
(注1)県内の輸出入は清水港、田子の浦港、御前崎港、静岡空港の4港合計値
(注2)鉱工業指数は、10年基準
(注3)事業所規模5人以上、10年基準
(注4)消費者物価指数は、15年基準
(注5)全国企業短期経済観測調査
計-2
事業主都合による
(a×b)
業況判断 D.I.(注5)
県 内
製造業
全 国
全産業 前年比%
「良い」-「悪い」回答社数構成比%ポイント
全産業
県 内
得
静岡労働局、静岡県、厚生労働省
消費者物価指数
(除く生鮮食品)
前年比%(注4)
16/
全 国
静岡県、経済産業省
一人当り名目賃金(注3)
全 国
在 庫
全 国
(常用雇用指数 a) (名目賃金指数 b)
季調済 倍
全 国
県 内
前月比%
県 内
雇
県
季調済
生 産
東日本建設業保証、
北海道建設業信用保証、
西日本建設業保証
清水税関支署、財務省
有効求人倍率
鉱 工 業 指 数(注2)
公 共 投 資
全 国
全産業
4
5
2
日本銀行
3.7
2.0
1.9
3.4
3.2
2.0
県 内
全 国
▲18.4
▲15.7
▲15.9
▲12.9
▲44.6
▲16.1
▲ 5.8
▲ 3.9
▲ 8.2
▲ 6.0
▲17.7
▲ 4.1
計表3
倒 産(注1)
件、億円、前年比 %
件 数
16/
4月
5月
6月
7月
8月
9月
資料出所
前年比
12 ▲52.0
35
66.6
31
47.6
36
56.5
19
5.5
22 ▲18.5
負債総額
前年比
17 ▲57.4
87 3.1倍
50 ▲40.7
84 2.1倍
20
8.7
23 ▲30.7
東京商工リサーチ静岡支店
実 質 預 金 (注2)
末残前年比 %、億円
県 内
16/
3月
4月
5月
6月
7月
8月
月末残高
銀 行
1.9
1.8
2.1
1.8
2.0
1.6
4.7
5.9
2.3
2.0
2.7
2.8
217,370 141,298
貸
出 (注3)
末残前年比 %、億円
地 銀・
第二地銀
都 銀
信 金
県 内
銀 行
1.7
2.0
2.2
2.5
3.0
▲ 2.9
2.7
2.8
2.3
2.7
▲ 9.0
3.6
2.7
2.2
2.7
22.2
4.1
2.4
2.5
3.2
▲ 8.2
4.0
2.7
2.7
3.4
▲ 3.6
4.3
2.5
2.7
3.4
18,936 117,122 76,071 135,981 98,502
資料出所
都 銀
地 銀・
第二地銀
信 金
4.4
2.9
1.3
▲ 1.9
3.4
1.4
0.8
3.1
0.7
0.1
3.7
0.8
0.3
3.9
1.0
1.6
3.7
1.1
11,150 86,260 37,478
日本銀行静岡支店
貸出約定平均金利
銀 行 券
億円
(ストックベース)
(注4)
水準 %
地 銀・
第二地銀
16/
4月
5月
6月
7月
8月
9月
資料出所
2.156
2.152
2.153
2.155
2.154
n.a.
信 金
1.646
1.635
1.624
1.617
1.605
n.a.
受入額
支払額
798
1,189
823
839
990
900
1,671
798
1,408
1,264
1,206
1,116
受払(▲)
超過額
▲ 873
391
▲ 585
▲ 425
▲ 216
▲ 216
日本銀行静岡支店
(注1) 倒産は負債総額10百万円以上の合計
(注2)集計値は県内所在店舗ベース、実質預金 = 表面預金(譲渡性預金は含まない)- 小切手・手形
(注3)集計値は県内所在店舗ベース
(注4)地元16行庫の県内所在店舗ベース
計-3