VOL.70 平成28年9月号 (年6回発行) 一般社団法人 三重中小企業経営者協会 〒510-0001 三重県四日市市八田1丁目13-17 TEL : 059-334-7807 FAX : 059-334-7808 ホームページ : http://www.mie-keikyo.jp/ E-MAIL:info@mie-keikyo.jp 『健康保険・厚生年金の制度改正』と『ストレスチェック制度』に関して Ⅰ.今回の内容 今回の協会通信は、9月13日に実施した当協会のセミナーの内容をまとめましたので、 セミナーに参加ができなかった方もよく確認してください。 Ⅱ.健康保険・厚生年金の制度改正(平成28年10月1日より) 1.被保険者基準の明確化 従来の被保険者の定義は通達で「1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日 数が常時雇用者のおおむね4分の3以上」と定められていましたが、その判断は不明確で 各県の年金事務所で取り扱いが異なることがありました。今回は法律で「1週の所定労働 時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上」と明確に定義されました。 ただし、この場合でも施行日(平成 28 年 10 月 1 日)において、新たな 4 分の 3 基準を充 たしていない場合であっても、施行日前から被保険者である方は、施行日以降も引き続き 同じ事業所に雇用されている間は、被保険者となり、資格喪失届は必要なりませんので、 ご注意ください。 2.短時間労働者に対する適用拡大 特定事業所に勤務する短時間労働者も被保険者となりますので、保険料の納付が必要に なります。 ①特定事業所とは 事業主(法人番号が同一)の適用事業所の被保険者数(短時間労働者を除き、共済組合 を含む。)の合計が1年で6ヶ月以上、500人を超えることが見込まれる事業所です。 ②短時間労働者とは 特定事業所に勤務する「勤務時間・勤務日数が、常時雇用者の4分の3未満で、後述の 「短時間労働者の要件」イ~ニの全てに該当する者」です。 イ)週の所定労働時間が20時間以上であること 雇用保険と同様に、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべ き時間が20時間以上であること。 ロ)雇用期間が1年以上見込まれること 仮に、雇用期間が1年未満であっても、雇用契約書に契約が更新される旨または更 新される可能性がある旨が明示されている場合や同様の雇用契約により雇用された者 について更新等により1年以上雇用された実績がある場合も含みます。 ハ)賃金の月額が8.8万円以上であること 週給、日給、時間給を月給に換算したものに、各種手当等を含めた所定内賃金が、8. 8万円以上である場合となり、時間外や休日労働等の所定外賃金は含みません。 ニ)学生でないこと ③在職老齢年金受給中の短時間労働者の年金額 すでに老齢厚生年金の受給権を有している短時間労働者については、従来は老齢厚生年 金額の調整はありませんでしたが、短時間労働者も被保険者資格を取得することになる ので、当然老齢厚生年金額の調整が始まります。 特に、44年以上の長期の厚生年金加入者に関しては、従来は被保険者でない場合は 長期特例として定額部分と報酬比例部分さらに加給年金が支給されていましたが、被保 険者資格を取得すると定額部分と加給年金が停止されることになります。 今回の、法律の施行に関しては、特例的に10月1日の施行時に長期特例が適用されて いる方は、そのまま今後も長期特例が適用され、定額部分や加給年金は支給されること になりそうです。ただ、報酬比例部分は調整されます。 一方で、施行日以降に長期特例に該当する方は対象外になるので注意してください。 ④在職老齢年金受給中の短時間労働者の年金額改定 新しく厚生年金に加入することになるので、今後納付する保険料に対応する年金額の改 定は、退職時及び65歳到達時に改定されます。 3.厚生年金保険の標準報酬月額の下限の改定 平成28年10月1日より、厚生年金の現在の標準報酬月額の等級表に1等級として、 88,000円が追加されますので、給与計算時にご注意ください。 Ⅲ.ストレスチェック制度(平成27年12月1日施行) 1.ストレスチェック制度の概要 ○ 常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握する ための検査(ストレスチェック)を実施することが事業者の義務となります。 (労働者数 50 人未満の事業場は当分の間努力義務です) ○ 検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意な く事業者に提供することは禁止されます。 ○ 検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指 導を実施することが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な取扱 いは禁止されます。 ○ 面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じること が事業者の義務となります。 2.主な注意点 ①実施者は医師や保健師など法律で定められている。(外部委託の場合も含む) ②実施者を補助する事業所内の実施事務者に関しては、従事できる者が定められており、 労働者の解雇、昇進または移動に直接の権限を持つ監督的地位にある様な人事権がある 者は従事できない。 ③医師等の実施者は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者 の検査の結果を事業者に提供してはならない。 ④高ストレス者とされた従業員が面接指導を受けることを希望するとの申出は、書面や電 子メール等で行い、事業者は、その記録を残すようにすること。 ⑤面接等による医師からの意見聴取は、遅くとも面接指導を実施してから概ね1月以内に 行うこと。なお、労働者の心理的な負担の程度等の健康状態から緊急に就業上の措置を 講ずべき必要がある場合には、可能な限り速やかに行うこと。 ⑥事業者が労働者に対して面接指導の結果に基づく就業上の措置を決定する場合には、あ らかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じてその労働者の了解が得られ るよう努めるとともに、労働者に対する不利益な取扱いにつながらないように留意しな ければならないものとする。 ⑦ストレスチェック結果のみを理由とした不利益な取扱いや、労働者が受検しないこと等 を理由とした不利益な取扱い、さらに面接指導結果を理由とした不利益な取扱いを行っ てはならない。 ⑧常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な 負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の2)を所轄労働基準監督 署長に提出する必要がある。 以上
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