特集/防衛装備移転三原則 〈3〉NATOカタログ制度(NCS)について データクラフト株式会社 代表取締役 NCSアドバイザー 服部 孝男 わが国は防衛装備品の海外移転を積極的に進めて Codification System)と呼ばれる防衛装備品データ いるが、これら装備品に纏わる技術情報等流出防止 ベースを共有している。また、わが国を含めたTier 策や、知財保護戦略の検討も合わせて行うことが、 1(以下、T1)国24カ国はNCSの利用はするが、共 さらに必要であることが、このほどNATOが開催 有はしない、いわゆる片務的な関わり方となってい したカタログ制度の分科会に出席した筆者の考えで る(図1参照)。 あ る。 そ の た め に は、 今 や 世 界 標 準 と な っ た これらNATOとT2(ティアツー)合わせた世界 NATOカタログ制度(以下、NCS)への取り組み の主要39か国は、自国の装備システムの即応性維持 を、より一層強化することが喫緊の課題である。そ のために可能な限りリアルタイムで、保証された装 こで本稿は、初めてNCSを紹介するとともに、NCS 備品情報の運用を行っている。ひとつでも不良情報 の 根 幹 を な すNATOス ト ッ ク 番 号( 以 下、NSN) があればそれが命取りになりかねないからだ。また やT1(ティアワン)やT2(ティアツー)といった コアリション(同盟)体制の下、各国装備品の配備 導入レベルについても、できるだけやさしく記載す 範囲はグローバル・サプライチェーンへと急速に拡 ることにした。 大している。 こういった世界のロジスティクス環境の変化に伴 い、かねてから米国を中心として開発が重ねられて ■防衛装備品の海外移転と知財保護 きたNCSは、NATO諸国はもとより非NATO国を 今や装備品制度の世界標準となったNCSとは何 も含めたグローバルな装備品情報データベース化が か。現在、米英仏などNATO 28加盟国とそのTier 進められてきた。その結果、現在では世界中から 2(以下、T2)と呼ばれる豪韓を含めた非NATO諸 1830万件もの膨大で、かつ詳細な装備品情報の共通 国 の11か 国、 合 わ せ て39か 国 はNCS(NATO 化に成功し、また2700万ユーザもの各国の政府機関 図1 2016.9 No.165 CISTEC Journal 119
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