家 庭 どんな授業なのか 身近な教材から社会を考え 行動や意思決定の力を育む 石 川 瑛 子 先 生 が家 庭 科 の 授 業 で 目 指 していることの一つは 、周りの 人 や 社 ている 人や 社 会の課 題のための行 動に そうとしてほしい。それが、ひいては困っ 価 値 観 を 教 えるのではな く 、生 徒 自 身 なか、教 師が﹃こうあるべき ﹄とひとつの れぞれ。そうした多 様 な 価 値 観がある 創 造していってほしいのです ﹂ することで、自 分なりの生 活スタイルを が自 分はどう 考え何を選ぶか意 思 決 定 つながればと考えています ﹂︵ 石 川 先 生・ 以下 同 ︶ 家 庭 科では 男 女 共 同 参 画 や 高 齢 化 など社 会 的なテーマも扱うが、 生 徒にと ってはやや遠い話になりがちだ。そこで の 希 望 す る 結 婚 年 齢 と 第 一子 誕 生 時 そのため、授 業では統 計 情 報で 社 会 的な平 均を伝える他 、グループワークを の年 齢 を 挙 げさせる。それを 班で共 有 石 川 先 生は、 リアリティがもてる身 近な 例 えば旬の食 材 をテーマにした授 業 は 、地 球 環 境に配 慮した 食 材 選 びにつ し、合 計 特 殊 出 生 率の統 計や新 聞 記 事 取り入れて 様々な 価 値 観に触れさせて なげたいが、 いきなり食 糧 自 給 率のよう いる。例えば、結 婚 と 出 産 をテーマにし な 数 値から入っても 生 徒は自 分 自 身の も 参 照しながら 、早 婚 と 晩 婚 それぞれ 話 題や教 材から授 業を展 開するよう工 問 題として考えにくい。そこで、まずは う。 のメリット・デメリットについても 話し合 夫している。 近 隣 のJAで 入 手 した 資 料 を 用い、今 いと 思 う 理 由についてグループワークを 認 。そんな 旬の野 菜 を 積 極 的に食べた あり、授 業は盛り上がります。そこから、 均と社 会の平 均の差など様々な発 見が ﹁ 自 分と隣の生 徒の違いや、 クラスの平 た授 業では、まずプリントを使って自 分 が旬の千 葉 県 産の野 菜・果 物について確 行う 。あがってきた﹁ 美 味しいから﹂ ﹁安 いから ﹂などの意 見に対し 、その背 景に 輸 送コストや 環 境 負 荷があることに気 付かせる。 ﹁ 美 味しいものを 選ぶことが環 境 負 荷 を低 減し地 域の振 興にもなると知るこ とで 、肩 肘 張 ら ずに地 元の旬のものを 買う 行 動につながるのではないでしょう か﹂ ﹁ 例えば、調 理 実 習をして﹃ 美 味しかっ を育むことだ。 手 作りにこだわる人 もいれば、忙しさの 活です。でも実 際は食 事ひとつとっても、 ﹁ 教 科 書に載っているのは、平 均 的な生 もう一つ石 川 先 生が目 指すのは、意 思 決 定の力を鍛えることだ。 た ﹄と自 己 満 足するだけでなく 、学んだ なかで 効 率 を 優 先 する 人 もいて 、人 そ 会の誰かのために行 動 する 意 識・態 度 知 識や技 術 を 家 族や仲 間のために生か 左が家事分担について、右が理想の結婚年齢・第一子 誕生年齢・子どもの人数についてのワークシート。 32 2016 OCT. Vol.414 1975年創立/普通科・国際人文科/生徒数1097人 (男子564人・女子533人) /進路状況 (2016年3月実績) 大学177人・短大23人・専門学校119人・就職25人・その他17人 学校データ 知識や価値観を教師が教えるのではなく 体験やグループワークから生徒が学びとる 松戸高校(千葉・市立) 石川瑛子先生 教員歴8年。顧問を務める家庭 科部は、地域のプロフェッショナ ルに料理技術を学んだり、公共 施設で作品を発表するなど校外 でも活発に活動。キャリア教育と 学びを考える会「松ラボ」代表。 「授業」で社会を生きる力を育む 【Report 09】家庭 図1 生徒アンケート結果より ■記憶に残っていたり積極的に 学習できたテーマ(上位7テーマ) ■人の意見を聞くのが好きか 好きではない 3% 普通 41% 好き 56% ※2015年度3学年 1位 車椅子体験 実習 2位 高齢者疑似体験 実習 3位 麻婆豆腐調理実習 実習 4位 出生率のシミュレーション グループワーク 5位 ちばの旬について 6位 糖度の実験 実習 7位 食中毒について 講義 自 分 は 他 の 人 と 違って も 良いというこ 授 業テーマに対 する 関 心が高 まり 思 考 身 近に感じられるリアリティと、多 様な 験で十 分とはいえない﹂と石 川 先 生 。今 価 値 観との出 合いがポイントだ。その効 後は地 域の人に参 加してもらう 授 業も が深まったことが推 測される。 クの話し合いが多 く 話 題にのぼった︵ 左 卒 業 生に石 川 先 生の授 業について振 り返ってもらっても、やはりグループワー 計 画している。 果 的な授 業を行うには、﹁ 教 員一人の経 コラム︶。大 学や就 職 先では高 校 生の時 とを印 象づけられたらと思います ﹂ 生徒はどう変わったか グループワークで高まる 授業テーマへの関心 例 え ば 、高 齢 者 疑 似 体 験 実 習の後 、 生 徒は歳 をとることにネガティブな 雰 80 よりも自 分で意 思 決 定し行 動すること にしホノルルマラソンに出 場した県 内 在 が求められるなか、ある卒 業 生は﹁ 高 校 住の知 人 を 招き 、その姿や前 向きな 話 昨 年 度 、石 川 先 生は家 庭 科の授 業に 対 する 生 徒アンケートを 実 施した 。印 を今ようやく 実 感できている ﹂と語った。 から 高 齢 者の明 るい面 も 伝 えていきた 囲 気になりがちだ。そこで、 歳を目 前 は実 習 系の授 業だったが、その次は﹁ 出 発 揮される機 会はさらに増えそうだ。 これから 先 の 人 生 で 、家 庭 科 の 学 びが 時 代に言われた意 思 決 定の力の大 切さ 生 率のシミュレーション﹂や﹁ ちばの旬に いという。 ﹁ 外 部の方の力 も 借りて 、少しでもこ ついて ﹂な どグループワークを 組み込ん だものだった。また、人の意 見 を 聞 くこ 今 後行いたい授業 大学生活は高校時代のように待っていれば情報が入ってくるこ とはなく、 自分で考えて行動することの大切さをかみしめています。 元来あまり自分の意見を言わない方だったのですが、家庭科で たくさん話し合い、だんだん積極的に話せるようになりました。今、 大学でも意見を求められることが多くあります。こういう場を生か し、 自分の意見をしっかりもって自ら発信できる人になりたいです。 れからの人 生に希 望がもてるよう な 授 石川 栞さん (聖徳大学1年) 業を行っていきたいですね﹂ 実習で印象に残っているのが、 クファジューシーなどの沖縄料 理の調理実習です。妹が野菜嫌いなのですが、こうしてみじん 切りにすれば妹も食べるかもしれないと思い、家でも作りました。 家族に美味しいと喜んでもらえて嬉しかったです。また、講義の 話し合いでは、人の意見も聞きながら自分自身はどうかを考えま したが、社会人になってその意義を実感しています。今、仕事を 覚える段階ですが、先輩によって教え方が違うので、それらを統 合して自分で解決していこうと思っています。 そ の 理 由 は﹁ 新 しい考 え を 得 られる ﹂ 風間 遥さん (サービス接客業) 地域の人を授業に招き より多様な価値観を伝えたい 石川先生の授業の内容については、 自分たちはどう考えるか、 ど うしたいかを考え、みんなで話し合った記憶が鮮明です。そのテ ーマについて今でも時々考えることがあります。単に教科書の 内容の説明を聞くだけだったら、思い出すこともなかったかもし れません。食材選びや家事分担など、授業がなければ改めて考 えることはなかったので、これから一人暮らしをしたり家庭をもっ たりするなかで生きてくるんじゃないかなと思います。 とについては、過 半 数が﹁ 好き ﹂と回 答 。 森谷ちひろさん (神田外語大学1年) ﹁たくさん学ぶことができる﹂ などだ。グ けた 授業を受 声 生徒の 生) (卒業 ループワークで人の意 見 を 聞 くことで、 石 川 先 生が実 践 する授 業は、生 徒が 県の名産の野菜・果物が地 図で見られるJAの資料や、 県 内の主産地が入った野菜の 旬の時期カレンダーを使用。 身近にある旬の野菜につい て考えた。 象に残っている授 業の上 位にあがったの 旬の食材をテーマにした授業。グループワークでは「なぜ旬の野 菜を食べたいと思うのか」について話し合い、 「 美味しいから」 「新 鮮だから」 などの意見を出した。 グループワーク 取材・文/藤崎雅子 33 2016 OCT. Vol.414
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