ヒルジンを抗凝固剤とした好中球アルカリホスファターゼスコア測定の

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ヒルジンを抗凝固剤とした好中球アルカリホスファターゼスコア測定の有用性
◎髙木 良輔 1)、前田 翔太 1)、山内 唯 1)、百田 裕香 1)、菊池 亮 2)
熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科 4 年生 1)、熊本保健科学大学 2)
【目的】
EDTA 血とクエン酸血では好中球の破壊が顕著
好中球アルカリホスファターゼ(NAP)の
でスコアリングが困難であった。一方、ヒル
活性発現には Mg イオンを必要とするため、キ
ジン血ではカウントに支障なく 10%未満の減
レート作用のある EDTA 塩やクエン酸塩を抗
少に留まった。なお、クエン酸血とヒルジン
凝固剤とした血液では NAP スコアは偽低値と
血の 1 時間静置後の普通染色標本で血小板小
なる。よって、耳朶血などの抗凝固剤無添加
凝集塊を認め、自動血球算定装置で血小板数
血での測定が推奨されている。
が減少した。
しかし EDTA 血を代用している施設も少な
【考察】
くない。ヘパリンは NAP 染色の色調が変化す
ヒルジン血では採血後 24 時間まで NAP ス
るため適切ではない。
コアは無添加血とほぼ同値であり、かつ
そこで我々は、ヒルジン(Hirudin)の
NAP 染色性にも支障はなく、NAP 測定用抗凝
NAP スコア測定用抗凝固剤としての有用性を
固剤としての有用性が示唆された。また普通
検討した。ヒルジンはトロンビンと 1:1 で結
染色標本による他の血球形態観察も支障はみ
合して抗トロンビン作用により抗凝固作用を
られなかった。ただし、1 時間放置後に血小板
示し、血小板への作用も少ないといわれてい
小凝集塊がみられたため、ヒルジン血での血
る。
球数算定は不適当と思われる。ヒルジン血は
【試料及び方法】
NAP スコア測定に有用な抗凝固剤と考えられ、
健常者 8 名の末梢血をシリンジ採血し、直
今後患者血液での検討を加えたい。
ちに塗抹して抗凝固剤無添加血(以下無添加
【連絡先】
血)とした。次いで EDTA ・ 2K 採血管、ヒル
[email protected]
ジン採血管、クエン酸採血管に指定量の血液
直通:096-275-2137
を分注し、直後(10 分以内)、1 時間静置後、
および一部の例で 24 時間後に塗抹して 30 分
以内に固定した。NAP 染色液は自家調整の反
応液を用い、NAP スコアの算出は朝長法に準
じた。
【結果】
採血直後の無添加血の NAP スコアを基準に
すると、EDTA 血は採血直後から NAP スコア
は低値となり、1 時間静置後は 10~40%低値
となった。クエン酸血は 1 時間後に 5~15%程
度低値となった。ヒルジン血では 1 時間後も
無添加血とほぼ同じスコアであったが、1 例に
おいて 10%低値であった。24 時間後の