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氏名
斯波持次
学位の種類
博 士 ( 医 学 )
学位記番号
第 4
3
5
4号
学位授与年月日
5
年 3月2
5日
平 成1
学位授与の要件
学位規則第 4条第 2項該当者
学位論文名
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(バルーン閉塞下内視鏡的胃静脈癌硬化療法の安全性とその効果について
一前向きランダム化臨床試験一)
論文審査委員
主 査 教 授 荒 川 哲 男
副主査教授井上佑一
副主査教授平川弘聖
論 文 内 容 の 要 旨
【目的】胃静脈癌は、ひとたび出血すれば大量出血をきたすため予防的な治療は重要である o 我々は、胃
静脈癌治療において、 I
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yの長所と内視鏡的硬化療法の長所を併せ持つ新しい試み
としてバルーン閉塞下内視鏡的胃静脈癌硬化療法(以下B
O-EIS)を考案しこれまでに報告してきた 1。 一
方、バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(以下B-RTO)は、胃静脈癌治療として広く行われている。今
の効果と安全性につい
回、我々は、 BO-EISとB-RTOとの前向きランダム化臨床試験を施行し、 BO-EIS
て検討した。
【対象と方法】
1
9
9
6
年から 1
9
9
8
年に当科にて内視鏡的に胃静脈痛が確認された 2
0症例を対象とし、 BO-
群と B-RTO
群に無作為に割り付けた。術前に内視鏡的胃静脈痛形態、胃静脈癌の供排血路および血
EIS
管径、血流速度、肝機能等を測定し、術後にはこれらに加えて平均観察期間、食道胃静脈癌形態変化、硬
化剤の使用量、合併症等を観察し比較検討した。
【結果】 B-RTO
群の
l症例以外の 1
9
症例は、 BO-EIS
およびB-RTOにて治療し得た。術後の食道静脈癒
形態変化に関しては、 BO-EIS
群では術後に食道静脈癌が増悪した患者は認められなかったが、 B-RTO
群においては 9例中 4例 (
4
4
.
5
%
)に食道静脈癌の増悪が認められた (
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)。 ま た 、 胃 静 脈 癌 治 療 に 用
いる硬化剤の使用量は、 B-RTO
群に比し BO-EIS
群では有意に少なかった (
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5
)。
【結語】 BO-EISは
、 B-RTOと比較して硬化剤の使用量が少なく、硬化剤に伴う合併症のリスクが軽減で
き、また、食道静脈癌の増悪も認められなかったことから有効な胃静脈癌の治療法であると考えられた。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
胃静脈痛の破裂は致死的であり、予防的治療は重要である。確立された方法はないが、バルーン閉塞下
逆行性径静脈的塞栓術 (
B-RTO)がよく行われている o しかしさまざまな難点も指摘されている o そこで
著者らは、胃静脈癌治療において、 I
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yの長所と内視鏡的硬化療法の長所を併せ持
つ新しい方法としてバルーン閉塞下内視鏡的胃静脈癌硬化療法 C
BO-EIS)を考案した。本研究は B-RTO
とBO-EISとの前向きランダム化臨床比較試験により、 BO-EIS
の効果と安全性を検討したものである。
1
9
9
6
年から 1
9
9
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年に当科にて内視鏡的に胃静脈癌が確認された 2
0症例を対象とし、 BO-EIS
群と B-RTO
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群に無作為に割り付けた。術前に内視鏡的胃静脈癌形態、胃静脈癌の供排血路および血管径、血流速度、
肝機能等を測定し、術後にはこれらに加えて平均観察期間、食道胃静脈癌形態変化、硬化剤の使用量、合
併症等を観察し比較検討した。
群では術後
その結果、効果は両者で同等であったが、術後の食道静脈癌形態変化に関しては、 BO-EIS
に食道静脈痛が増悪した患者は認められなかったのに対し、 B-RTO
群においては 9例中 4f
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4
4
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%
)に
食道静脈痛の増悪が認められた (
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5
)。また、有害事象を生じやすい硬化剤の使用量も、 B-RTO群に
比し BO-EIS
群では有意に少なかった (
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O
.
0
5
)。以上より、 BO-EISはB-RTOより、有用性の高い胃静
脈癌治療法であることが明らかになった。
この成績は、治療困難とされてきた胃静脈癒に対して、著者らが考案した新しい治療法の有用性を証明
したものであり、今後の胃静脈癌治療に大いなる貢献が期待されることから、著者は博士(医学)の称号
を授与されるに値するものと判定した。
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