【事実1】【事実2】【事実3】を読み,【設問1】

民法
次の【事実1】
【事実2】【事実3】を読み,【設問1】【設問2】に答えなさい。
【事実1】 2014 年 11 月初旬,A は東京近郊の田園地帯に所有する庭付き木造二階建
て住宅(以下「甲建物」という。)を,都心から郊外への転居を希望していた B に,
一切の家具調度品付き(目録あり)で賃貸し引き渡した。賃貸期間は 2 年,敷金は 30
万円,月額賃料は 15 万円であった。なお,甲建物は最近 1 年半ほど借り手がなく空
き家であった。
【事実2】 2015 年 1 月中旬,B はガールフレンド C の歓心を買うため,甲建物内の
家具調度品の一つである A 所有の装飾用置物(目録に記載あり,以下「乙置物」とい
う。)を,自らが海外旅行先で見つけ購入した掘り出し物と偽り,旅行土産として C
に贈与し引き渡した。しばらくしてこの乙置物の贈与引渡しを知った A は,同年 2 月
下旬,C に乙置物の返還又はその価格の返還を求めた。そのとき AC 間には次のよう
なやり取りがあった。
A「それは B に預けてあった私の大事な品物だから返してほしい。」
C「前はあなたの物でも,今は B からもらって私の物です。返す必要なんてあり
ません。」
A「一銭も身銭を切ることなく他人の物をわが物にして,これから先そのままで
済むと思っているの。世間の常識や公平観は,そんな不当なこと決して許しま
せんよ。」
C「あなたにそんな説教をされる覚えはありません。文句があるなら B に言うべ
きでしょ。
」
【事実3】 2015 年 3 月中旬,B は実際に住んでみて甲建物が気に入ったので,これ
を 4000 万円で A から購入し,敷地所有者 L から借地権譲渡の承諾を受け,所有権移
転登記も経由した。ところが,夏に近づき気温が上昇するにつれ,どこからともなく
異臭がするようになった。同年 7 月下旬,たまりかねた B がその原因を業者に調べさ
せたところ,甲建物の屋根裏が野生のコウモリの巣になっており,その排泄物が異臭
を放っていることが判明した。建物本体にまでこびりついた排泄物の厚さからして,
コウモリがすみつき始めたのは遅くとも甲建物が空き家になった 1 年半前ころではな
いかと推測された。そこで,B は屋根裏からの巣の一掃,屋根裏及びその周辺部分の
消毒,脱臭,補修を業者に依頼し,工事代金として 300 万円の支出を余儀なくされた。
同年 10 月上旬,B が A に対してこの工事代金相当額の支払いを請求したところ,BA
間には次のようなやり取りがあった。
B「コウモリが巣くっている家を売りつけるなんてひどいじゃないか。」
A「この辺りじゃ屋根裏にコウモリがすんでいる家は珍しくないですよ。」
B「周りと比べてもこの臭いはひどすぎる。とても住めたものじゃない。」
民法
A「今さら言いがかりをつけるのはやめてほしいですね。あなたも買う前にちょ
っと天井裏をのぞけば分かったはずでしょう。」
【設問1】 上記【事実1】
【事実2】につき,A は法律上 C に対して乙置物の返還又
はその価格の返還を請求できるかどうかを検討しなさい。【事実3】は無視すること。
【設問2】 上記【事実1】
【事実3】につき,B は法律上 A に対して 300 万円の支払
いを請求できるかどうかを検討しなさい。【事実2】は無視すること。
(120点)