水田農業所得の増大のために ◆ Outlook by Takeshi Kanai 展 望 JAの進むべき道 水田農業所得の増大のために 平成25年に政府の産業競争力会 このリスクを最小限とするために 議が提案した「減反廃止」問題から は、販売を起点とした米作りが可能 はじまった生産調整の見直しは、 「い な事業方式に見直し、販売・在庫等 わゆる減反廃止」として、30年産か の情報を生産者に確実に伝え、事前 ら国による主食用米の生産数量目標 契約取引と買取販売を拡大すること の配分を廃止することとなった。 で、主体的な生産調整に取り組み、 この見直しのポイントは、生産調 そして、実需者への精米販売の拡大 整の取り組みを支える麦・大豆・飼 料用米等の戦略作物等への支援措置 金井 健 (JA全中常務理事) で流通コストを引き下げ、1 円でも 高く水田農業所得を増大させる必要 がある。 (水田フル活用対策)を継続したう えで、主食用の米については、国が配分した 水田農業所得の増大が、我々の最大の目標 生産目標数量に基づく生産から、マーケット である。このためには生産者価格を引き上げ インつまり販売を起点とした米作りに生産者 適正かつ安定した価格水準を実現する必要が と生産団体が主体的に取り組み、米の需要と ある。米の価格は需給状況で決定される。政 価格の安定を確保することである。 府は、在庫量180万 t 水準を実現すれば、過 政府は、引き続き、全国の需給見通しを策 去の実績から価格は適正水準を達成できると 定するとともに、産地別の需要実績、販売・ している。 在庫状況などを情報提供するとしている。都 「減反廃止」という言葉が喧伝されたことで 道府県・市町村段階の農業再生協議会は、こ 生産現場には大きな不安が広がっている。今 の情報に基づき行政・集荷業者・JAグルー 回の見直しは、生産者とJAグループの意識 プなどの関係者が一体となって、水田フル活 改革を求めているものであり、30年産以降の 用ビジョンの策定と生産者への生産量の目安 制度の趣旨を生産者に丁寧に説明するととも を提示することになる。 に、JAグループに再度結集することが必要 では、何が変わるのか? 国による配分と である。 あわせて措置されてきた主食用米の生産目標 30年産以降も持続的に水田農業に取り組む 達成のメリット措置である米の直接支払交付 ためには、経営安定対策や過剰米発生時の対 金(7,500円/60kg)が廃止されることであ 応など環境整備が前提であり、とりわけ、制 る。米の需要が毎年 8 万 t 程度減少するなか 度の核となる水田フル活用の直接支払交付金 で、国による配分廃止の影響に加えて、豊作 について、単価を含めて恒久的な維持を実現 や需要減、過剰作付など過剰生産のリスクが することが我々の最大の課題である。 けんでん 高まることが懸念されている。 2016/10 月刊 JA 15
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