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B-山下
経済産業研究所・上席研究員
キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹
農学博士 山下 一仁
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B-山下
FTA(TPP)
WTO
関税
サービス
SPS
国内補助金
TBT
TRIP
政府調達
貿易と労働
貿易と環境
貿易円滑化
競争
国営企業(SOE)
投資
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B-山下
貿易促進(輸入規制廃止)
食の安全(輸入規制)
科学的根拠があれば輸入規制できる
(国際基準)
(各国の基準)
健康等の保護水準
高い保護水準設定可能
国際機関による科学的分析
(毒性の強さ、摂取量等考慮)
各国による科学的分析
国際基準(例えば危険物質の最大
残留濃度)の決定
1.0PPM
国際基準よりも高いレベルの措置
決定
0.1PPM
国会の農林水産委員会は、コメ、麦、牛肉・
豚肉、乳製品、砂糖の農産物5品目を関税撤
廃の例外とし、できない場合は脱退も辞さな
いと決議
 コメ、麦、砂糖は関税維持+コメ、麦は輸入
枠の拡大、牛肉・豚肉、乳製品は関税の引き
下げ+セーフガードで対応という方向で、合
意という報道。
 2015年TPA(ファスト・トラック)法案が成立、
妥結か?(アメリカ議会構成の変化・共和党
支配+選挙なし)しかし、白紙委任ではない。

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B-山下


91年に輸入数量制限を止めて自由化、関税は当初
の70%から、ほぼ半分の38.5%に削減。牛肉生産
の大宗を占める和牛の生産は拡大(2003年度137
千トン⇒2012年度171千トン)。
2012年から為替レートは50%も円安。2012年に
100円で輸入された牛肉は38.5%の関税をかけられ
て、138.5円で国内に入っていた。その牛肉は今の
為替レートでは150円で輸入される。関税がなくなっ
ても、2012年の状況よりも有利。
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

牛肉を自由化して以降、牛肉業界は、和牛と乳牛の
交配牛を作って肉質をよくする工夫。交雑種の生産は
75千トン。さらに、和牛受精卵移植が普及。和牛や交
雑種は、輸入牛肉とは競合しない。
国内牛肉生産のうち数量では3分の1の乳用種は、
影響を受ける可能性。その価格は和牛の4分の1、交
雑種の半分程度なので、生産量に価格を乗じた生産
額は、4,600億円の牛肉生産額のうち500億円。3分
の1価格が低下しても150億円の財政からの直接支
払いで済む。
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B-山下
(1960年から現在まで)
65歳以上高齢農業者の比率:1割→6割。
 農地面積:609万ha→455万ha
・アメリカ生産額1986~88年1,429億ドル→2008
年 3,215億ドル。
日本1984年11兆7千億円→ 2009年8兆円。(一
番保護してきたコメが減少)
農業衰退の原因はアメリカや豪州にあるのではな
く、国内に存在。
なぜ、アメリカ・EUでできる改革が日本ではできな
いのか?

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億円
品目別農業総生産額の推移
45000
40000
35000
畜産
30000
25000
20000
15000
10000
米
野菜
5000
0
1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
B-山下
農産物販売金額の内訳
販売農家戸数の内訳
その他
4%
酪農・
肉用牛
果樹類
4%
11%
その他
稲作
21%
露地・施設野菜
11%
畑作
酪農・肉用牛
15%
稲作
66%
畑作
24%
4%
果樹
9%
6%
野菜
25%
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農家一戸あたりの経営面積
日本
アメリカ
オーストラリア
2.27ha
169.6ha
2970.4ha
1
:
75
:
1309
確かに、規模は重要だが、
①土地生産性=作物や単収の違いを無視
(世界最大の農産物輸出国アメリカもオーストラリ
アの18分の1、オーストラリアの小麦単収は英国
の5分の1以下)
②もっとも重要なのは品質の違い
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B-山下
380 円
150 円
100 円
中国産一般
ジャポニカ米
中国産
コシヒカリ
カリフォルニア産
コシヒカリ
日本産コシヒカリ
240 円
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

旧国(日本)の農業のとうてい土地広き新国(アメリ
カ)のそれと競争するに堪えずといふことは吾人が
ひさしく耳にするところなり。然れども、之に対しては
関税保護の外一の策なきかの如く考ふるは誤りなり
吾人は所謂農事の改良を以て最急の国是と為せる
現今の世論に対しては、極力雷同不和せんと欲す
るものなり。僅々三四反の田畑を占有して、半年の
飯米に齷齪する細農の眼中には、市場もなく貿易も
なし、何の暇ありてか世界の大勢に覚醒し、農事の
改良に奮起することを為さん→構造改革の必要性
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B-山下
米の生産量は1994年1200万トン→2012年
800万トンへ大幅減少。
高い関税で守ってきた国内の市場は、高齢化
と人口減少でさらに縮小。
輸出のためには農業こそ、相手国の関
税を引き下げられるTPPなどの自由貿易
が必要
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項目
国
生産と関連しない直接支払い
環境直接支払い
条件不利地域直接支払い
減反による価格維持+直接支
払い(戸別所得補償政策)
1000%以上の関税
500-1000%の関税
200-500%の関税
日本
アメリカ
EU
×
○
○
△(限定した農地)
○
○
○
×
○
●
×
×
こんにゃくいも
コメ、落花生、
でんぷん
なし
なし
なし
なし
なし
バター、砂糖
(改革により
100%以下に引
下げ可能)
小麦、大麦、バター、
脱脂粉乳、豚肉、
砂糖、雑豆、生糸
(注)〇は採用、△は部分的に採用、×は不採用、●は日本のみ採用
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1兆円の国民負担
減反による供給減少
高い米価の実現
4,000億円の財政負担
3,000億円 減反補助金
1,000億円 減反を条件とする
米の直接支払交付金
米の高コスト構造
・ 高い米価で零細な兼業農家が滞
留して専業農家の規模は拡大せず
・ 減反で面積当たりの収量は増加
しない(カリフォルニアの収量よりも4
割も低い)
6,000億円の消費者負担
食料安全保障への悪影響
米の消費減少
500万トンの米減産、700万トンの麦輸入
(食料自給率の低下)
水田面積の減少
350万ヘクタール
250万ヘクタール
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トン当たりのコスト
コスト/ヘクタール
=
収量/ヘクタール
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B-山下
米の規模別生産費と所得
(生産費:円/60kg)
(米作所得:千円)
18,000
16000
16,000
14000
14,000
12000
12,000
10000
10,000
8000
8,000
6000
6,000
4000
4,000
2000
2,000
0
0
-2000
0
0
1
2
3
5
1
1
2
0
.
.
0
1
5
0
0
.
5
.
.
0
.
0
0
以
上
~
~
~
5
1
.
.
0
1
0
0
0
0
.
5
0
.
0
以
2
所
得
上 0
.
生
0
産
︵
0
)
3
.
(
2
.
︵
1
~
.
0
~
.
0
~
.
5
~
.
5
未
満
︶
費 所
︶
得
技術革新が停滞
• 減反実施により、単収向上が停滞
750
米国は1980年代以降も
単収の伸びが継続
コメの単収の推移
玄米
カリフォルニア州
日本
650
550
450
日本の単収向上
は頭打ちに
350
←1969年:減反試行開始
(本格実施は1970年~)
250
150
1940
1945
1950
1955
1960
資料:農林水産省作物統計、USDA NASSから作成
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
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減反廃止
直接支払い
↓
↓
×→○→◎
兼業
○→×→◎
主業
地代上昇
耕作放棄(現状)
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(円)
中国産買入価格(円/玄米60kg)
25,000
22,296
中国産売却価格(円/玄米60kg)
日本産価格(円/玄米60kg)
20,000
17,254
17,129
5,000
13,576
0,000
16,660
11,897
6,944
4,691
13,665
13,402
12,261
15,731
14,635
15,161
14,560
12,826
14,907
5,000
3,783
16,048
7,844
7,448
17
18
10,344
8,354
12,792
12,378
9,298
9,375
20
21
11,202
8,704
5,506
0
13
14
15
16
19
22
(年産)
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B-山下

人口減少により国内の食用の需要が減少する中で
、食料安全保障に不可欠な農地資源を維持しようと
すると、自由貿易のもとで輸出を行わなければ食料
安全保障は確保できない。人口減少時代には、自
由貿易こそが食料安全保障の基礎。

農業を保護するかどうかではなく、価格支持
か直接支払いか、いずれの政策を採るかが
問題。座して農業の衰亡を待つよりは、直接
支払いによる構造改革に賭けるべき。
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