マイナス金利政策の採用とその功罪

低金利下での資産運用
マイナス金利政策の採用とその功罪
植 田 和 男
目
1.QQEの効果
2.転機を迎えたQQE
次
3.マイナス金利政策の導入
4.まとめ
日本銀行は2016年2月から日銀当座預金金利をマイナスにする政策に踏み切った。本稿では、13年春からの
いわゆる量的質的金融緩和政策の分析を通じて、マイナス金利政策採用に至った経緯を振り返る。その上で、マ
イナス金利政策に関する欧州の経験と比較しつつ、日本におけるマイナス金利政策の功罪についてマクロ的な観
点から分析する。
日本銀行は2016年1月の政策決定会合で日銀
当座預金(の一部)に支払う利息をマイナス0.1%
1.QQEの効果
にするといういわゆるマイナス金利政策(NIRP:
13年4月にいわゆる「量的質的」金融緩和政
Negative Interest Rate Policy)を決定、2月か
策(以下、QQE)が開始されてから3年半近く
ら実行に移した。これは金利のゼロ制約(ZLB:
が過ぎた。この政策を前もって織り込んで外国為
Zero Lower Bound on Interest Rates) を わ ず
替・株式市場が反応を始めてからは間もなく4年
かな幅にせよ乗り越えた結果となり大きな注目を
である。16年6月現在の消費者物価指数上昇率
集めたが、残念ながら政策導入後半年を経過する
は、除くエネルギー・食料ベースで、全国では
中で、この手段に対する批判は極めて根強い。本
0.4%、エネルギーを含む総合では-0.4%と、長
稿では、日銀がNIRP導入に踏み切った経緯を振
く続いたゼロ%近辺の動きから依然として脱出で
り返るとともに、同政策の功罪についてマクロ的
きていない。当初の目標であった2%のインフレ
な観点から議論してみたい。
率を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだ
け早期に実現する」ことには残念ながら失敗した
植田 和男 (うえだ かずお)
1980年MIT(マサチューセッツ工科大学)
、Ph.D. 。その後大阪大学助教授、日本銀行政
策審議委員等を経て2005年より東京大学大学院経済学研究科教授。
©日本証券アナリスト協会 2016
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