腎生検における蛍光抗体法院内導入後の現状

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腎生検における蛍光抗体法院内導入後の現状
◎竹田 真子 1)、谷口 康郎 1)、稲田 千文 1)、木田 裕子 1)、稲田 佑太朗 1)
宮崎県立宮崎病院 1)
【はじめに】当院では 2010 年より,腎生検の蛍
ルスライドシステムを利用し,複数の標本をコ
光抗体染色を院内で施行している.それにより、
ンピュータ上で同時に比較検討を行っている.
臨床側の治療方針の決定に貢献することが可能
【結果・考察】検体到着後 2 日以内に全ての染
となった.今回,院内導入の現状についてまと
色標本を病理医に提出する事で,迅速な診断確
めたので報告する.
定が可能となった.更に,院内で得られる情報
【背景】2010 年以前は、院内ではヘマトキシリ
が以前より増加した事で,患者一人ひとりに適
ン・エオジン染色(HE 染色)と特殊染色のみを
した治療法選択の架け橋となっている.また,
施行し,蛍光抗体染色を他施設へ依頼していた.
蛍光抗体染色の院内導入前と比較し,診断の精
しかし,臨床医より依頼検査の標本画像を直接
度が上昇した事から今後も需要が増えていくと
確認できないことによる診断の曖昧さが問題と
考えられる.
して提起され,蛍光抗体染色の院内導入が要望
【今後の展望】現在,凍結切片用検体とパラフ
された.
ィン切片用検体の 2 種類が提出されているが,
【手順】臨床医より未固定検体と,Dubosq-
凍結切片用の検体はパラフィン切片用検体と比
Brazil 液固定された検体が提出される.
べ,大きさも小さく含まれる糸球体数も少ない.
(1)蛍光抗体法用標本作製手順;
未固定検体によ
今後,パラフィン切片用検体での蛍光抗体染色
μm 凍結切片を作製後,自動免疫染色装置
が可能となれば,全ての染色標本において同じ
る2
(ライカ
BONDⅢ)を用い,間接抗体法を原理と
糸球体での比較検討ができると考えられる.
した蛍光抗体染色を行う.一次抗体は IgG,
【まとめ】蛍光抗体染色の院内導入は,病理医
IgA,IgM,C1q,C3c,C4c,Fibrinogen,Kappa-
の診断確定に向けての高精度な情報の提供を可
chain,lambda-chain の 9 種類を用いる.
能にすると共に,臨床医における治療方針の決
(2)光学顕微鏡用標本作製手順; Dubosq-Brazil 液固
定に貢献することができた.
定検体をパラフィン浸透及び包埋後,2 μm 5 枚
連続切片を 2 セット作製する.各セットの切片
を HE,PAS,PAM,Masson-T 染色を行う(1 枚
は予備として保存する).連続切片作製後,更
に深切りを行った切片を 1 枚作製し,HE 染色を
行う.
(3)標本完成後手順;
病理医に提出後,バーチャ
連絡先 0985-24-4181 (内線 2070)