工学系研究科 HASHIMOTO 先端融合工学専攻 TOKITADA 橋 本 時忠 准教授 「圧力波を利用した治療法」 「粉体注射の基礎研究」 「キャビテーション気泡の積極的利用」 [キーワード] 衝撃波,膨張波,キャビテーション,薬剤導入法,超音速噴流 「 圧 力 波 」・「 微 細 気 泡 」 を 用 い た 新 技 術 研究紹介 ◆研究概要 当研究室は,流体力学をバックグラウンドに医療分野や 産業に貢献できる新しい技術の研究を行っています.例え ば,圧力波や微細気泡を利用する研究では,医工学用とし て,「結石破砕」,「血管新生」,「薬物導入」など,産業界 用として,「微細な切削」,「ピーニング」,「洗浄」などへ の応用・展開を目指しています. ◆圧力波を用いた治療法 圧力波とは「圧力を加える,または,減らすことが出来 る」波のことで,前者を衝撃波,後者を膨張波と呼びます. この圧力波を利用した技術として「体外衝撃波結石破砕装 置」(体内の結石破壊治療)がよく知られています.この 装置は 100MPa 以上の過剰圧を,わずか数 100μ秒間 のみ発生させるため,痛みを感じることなく治療できま す.しかも,外科的手術を必要としません.本研究では, 膨張波(圧力を減らすことが出来る波)を利用する治療法 の検討を進めています (図1).膨張波は体内で 引張の力を誘起する性質 があります.つまり生体 へ適切に作用することが 可能となれば,様々な治 療法への応用が期待出来 ます. ◆粉体注射の基礎研究 衝撃波管とは,衝撃波を利用して音の速さよりも高速な 気流を一瞬だけ発生させる装置で,主に航空宇宙分野で利 用されています.本研究では,一般的には数 10 メートル 級となる装置のサイズを,手のひらに収まるよう設計しま した.このダウンサイジング化した装置から 500 ミクロ ン以下の微細な高速気流を利用して数μm から数 10μm 程度の粉体薬剤を体内へ 経皮的に導入する方法を 研究しています(図2). この方法の最大の利点は 針を使用しないことです. 注射が苦手な人には画期 的であり,廃棄処理(使用 済針)問題の解決策になる ことも期待されます. 図 2 粉体注射器の概要 ◆キャビテーション気泡の積極的利用 キャビテーションとは,減圧状態において液中に気泡が 生じる現象で,沸騰と同様に考えられています.一般的に 流体機器にとって「厄介者」として扱われ,機器の性能低 下や騒音を引き起こすことが知られています.これはキャ ビテーション気泡が崩壊する際に金属壁に損傷を与える ほどの圧力を放出するためです.本研究では,キャビテー ション気泡が有する高い圧力を利用することを目的とし ています.この気泡を, 「任意の場所に」, 「任意の数だけ」 図 1 膨張波発生装置 設置することで,ごく限られた空間に孔をあけたり,エネ 本研究を通じて「薬物に頼り過ぎない」 ・ 「手術を必要と ルギーを与えたりすることが可能となります.また,この しない」という選択肢を確立することは,社会的に大きな 気泡は形状が微小であるため遺伝子分野などへの応用が 期待されます.現在,このキャビテーションの発生方法と 意義があると考えます. 制御方法(時間的および空間的)の研究を進めています. 掲載情報 2016 年9月現在 志願者・本学学生諸君へ 一言アピール 新しいことにチャレンジしたい学生さんを待っています. 産学・地域連携機構より 「圧力波」や「微細気泡」を用いた技術は,今後,応用展開が期待される分野です. 佐賀大学発の研究を一緒に探求する皆さんをお待ちしてます. 佐賀大学研究室訪問記 2016 佐賀大学 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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