『「絵本」や「ものがたり」を通じて「魂」に触れる~続編~』講義概要 第1回(平成 28 年 9 月 1 日) 授業のオリエンテーション。臨床心理学の観点から、 「絵本」 や「ものがたり」について読み取ることについて。意識と無意識の話。 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授 発達支援インスティテュート心理教育相談室副室長 伊藤 俊樹 この授業は、臨床心理学の観点から「絵本」や「ものがたり」を読み取るということ をテーマにしているので、初回のオリエンテーションでは、まず「臨床心理学とは何か?」 ということからお話ししたいと思います。更に、臨床心理学で重視されている「無意識」 という考え方についても具体的なお話をして、 「絵本」や「ものがたり」を読み解く際に、 この「無意識」という考えがどのように有効かについてもお話ししたいと思っています。 第2回(平成 28 年 9 月 15 日)新美南吉の『ごんぎつね』『でんでんむしのかなしみ』 を通して人間と動物の魂の交流、戦争、孤独、死についてご一緒に考えていきたいと思 います。 京都文教大学 臨床心理学部 准教授 松田 真理子 新美南吉の『ごんぎつね』は漁師が病気の母親のために苦心して採ったウナギを、ご んがわざと逃がしてしまい、母親はウナギを食べることができないまま、亡くなります。 その事実を知ったごんは贖罪のために毎日漁師のもとにキノコや木の実を届けますが、 ごんが悪戯をしたと思った漁師はごんを撃ってしまいます。罪悪感と贖罪がうまく相手 に伝わらないもどかしさとすれ違い、不条理に対するやるせなさは私たちが生きていく 上で味わうものです。人間と動物の魂の交流、戦争、孤独、死について『ごんぎつね』 『でんでんむしのかなしみ』を軸にご一緒に考えていきたいと思います。 第3回(平成 28 年 9 月 29 日)L.M.モンゴメリの「赤毛のアン」を臨床心理学的に読み 解く。作者の人生が作品に与えた影響について考え、作者の「魂」のメッセージに触れ る。 神戸海星女子学院大学 現代人間学部心理こども学科 准教授 中植 満美子 今から 100 年以上も前に出版された「赤毛のアン」は、世界中で愛されている作品で す。わが国でも、 「赤毛のアン」を題材にした様々なジャンルの出版物が後を絶ちません。 つい最近、その翻訳者の村岡花子氏の生涯を描いた『アンの揺りかご』がドラマ化され 話題となりました。現代に生きる我々の心をも魅了してやまない「赤毛のアン」の作品 と時代背景、作家の生涯について臨床心理学的に読み解き、その魅力の要因と、L.M.モ ンゴメリからのメッセージについて考えていきましょう。 第4回(平成 28 年 10 月 6 日) 長谷川義史『いいからいいから』を読み、ユーモアの奥に ある心の深みを探る 大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科 准教授 川部 哲也 長谷川義史氏の作品には、ユーモアが満ちあふれています。独自のタッチで世界を描 いていることも魅力ですが、 「そうきたか!」という意外な発想に驚かされることが多い のもまた魅力です。この作品には、人間界に存在しないものとの関わりがユーモラスに 描かれています。その面白さはもちろん、その奥に秘められた作者のおおらかな世界観 や優しさについて、皆さんと考えていく時間になればと思っています。 第5回(平成 28 年 10 月 13 日) 「美女と野獣」を読んで「魂」に触れる 自分の価値 は何か?という疑問をとく鍵について考えます。 大阪樟蔭女子大学学芸学部 准教授 坂田 浩之 アニメ映画やミュージカルで有名な「美女と野獣」は,美醜をめぐり人間の価値につ いて教えてくれる,感動的な物語です。 なぜ私たちはこの物語に感動するのでしょうか? 実は,この物語が,心の奥底にある,思春期の頃に体験した魂の変容の記憶に響くか らだというのが,私の解釈です。 特に現代人の心に響くディズニーの「美女と野獣」をとりあげて,この物語に隠され た,自分の価値は何か?という疑問をとく鍵を一緒に見つけたいと思います。 第6回(平成 28 年 10 月 20 日) 「工藤直子の世界」を通じて、 「魂」に触れる。詩人、童 話作家として有名な工藤直子の世界に触れて、 「生きる」ということについて、考えます。 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授 発達支援インスティテュート心理教育相談室副室長 伊藤 俊樹 詩人、童話作家として有名な工藤直子の不思議な絵本「てつがくのライオン」を取り 上げ、この絵本が語ろうとしているのは何なのか、ということについて考えたいと思い ます。また、この講座のテーマから少し離れますが、工藤直子のとても分かりやすい言 葉で書かれた有名な詩をいくつか取り上げ、その詩についても「魂」という観点から語 りたいと思います。 第7回(平成 28 年 10 月 27 日) 「上橋菜穂子の世界」を通じて「魂」に触れる。国際ア ンデルセン賞受賞作家でもある、児童文学作家 上橋菜穂子の世界に触れて、現実を超 えた世界について考えます。 戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授 発達支援インスティテュート心理教育相談室副室長 伊藤 俊樹 児童文学作家 上橋菜穂子の初期の代表作である「精霊の守り人」を読んで、現実を 超えた世界、ファンタジーの世界について考え、そこに人の「魂」がどのように描かれ ているのかを考えます。この作品は長いものなので、受講生の皆さんには前もって読ん でおいてもらいたいと思います。新潮文庫から 800 円程度で出版されていますので、作 品を読んだ上で受講していただければと思います。 第8回(平成 28 年 11 月 10 日) グリム童話「みそさざいと熊」 「きつねと猫」等と、それ に続く若者の物語の創作から、こころの中で対立と統合を生み出す「魂」の働きについ て考える。 大阪樟蔭女子大学学芸学部 准教授 奥田 亮 グリム童話の中には、いわゆる訓話的な物語だけでなく、随分乱暴で、読む人をギョ ッとさせる惨いお話もあります。それは、心のある「真実」を顕わにしていると言えま しょう。私たちは、このような「真実」に屈することもあれば、それに抗い対立する力 が心に生まれ、混沌に伏した後に、新たな魂の次元へと拓かれることもあります。本講 義では、グリム童話を素材に若者たちが創作した物語を紹介し、 「対立と統合」を生み出 す魂の働きについてお話ししたいと思います。 第9回(平成 28 年 11 月 17 日)L.M.モンゴメリという作家の人生について考える。様々 な作品紹介を交えながら作者の「魂」のメッセージに触れる。 神戸海星女子学院大学 現代人間学部心理こども学科 准教授 中植 満美子 9 月 29 日の「赤毛のアン」を臨床心理学的に読み解く、の続編です。L.M.モンゴメ リは「赤毛のアン」以外にも「可愛いエミリー」等のエミリーシリーズ、 「ストーリー・ ガール」、 「果樹園のセレナーデ」、 「銀の森のパット」、 「もつれた蜘蛛の巣」、 「丘の家の ジェーン」等、多くの作品を生み出しています。「赤毛のアン」以降の作品に、作家自 身の在り様に近いものがより多く投影されているとも言われています。時代背景や作家 の置かれた状況の変化によるモンゴメリの心の移ろいを、作品を通して一緒に体験して 参りましょう。 第 10 回(平成 28 年 11 月 17 日)授業のまとめ。小グループになって全体を振り返って ディスカッション。意見、感想の発表。 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授 発達支援インスティテュート心理教育相談室副室長 伊藤 俊樹 9 回までは、参加者同士の交流がほとんどありませんので、最終回で小グループに分 かれて、参加者の方同士で交流して頂きたいと思っています。この講座全体を通しての 皆さんの率直な感想を話し合っていただき、グループごとに発表してもらった結果に対 して、私がコメントし、更に皆さんとの間でこの講座についての想いを深めていければ と思います。最後に講義全体のまとめをして終了します。
© Copyright 2024 ExpyDoc