日本語学(各論) 北﨑勇帆

日本語学(各論)
北﨑勇帆
授業概要
高校の古典の授業では、過去の助動詞は「き」
「けり」、完了の助動詞は「つ」
「ぬ」
「たり」
「り」……と呪文
のように覚えたはずだが、今は過去に起きたことを表す際、
「た」がその機能を一挙に担っている。こうした古
典文法の助動詞は、いつ、どのようにして「た」と入れ替わったのだろうか? 入れ替わったのではなく、
「た」
に変化したのだろうか。はたまた、「き」「けり」と「た」は全くの別物なのだろうか?
本講義は、奈良時代から現代に至る日本語文法の歴史的変遷を扱う、「文法史」の講義である。最初の 2 回
で日本語史を学ぶ上で必要な基礎知識を扱い、残り 13 回を前半と後半に分ける。前半では各時代における文
法の諸相を概説し、後半ではその復習も兼ねつつ、特に重要な文法事項・文法形式の史的変遷に焦点を当てる。
なお、
「文法」と聞くとなんだか嫌な感じがする人もいるかもしれないが、高校の古文の授業のように文法事
項の丸暗記を求めたりするようなことはないので安心してほしい。
授業計画
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第 10 回
第 11 回
第 12 回
第 13 回
第 14 回
第 15 回
第 16 回
日本語史の時代区分と資料①:日本語の歴史を考える際、どのような時代区分を想定するか
日本語史の時代区分と資料②:各時代の言語を観察する際に、どのような資料を用いるか
奈良時代の文法:以降、第9回まで、各時代の文法についての概説
平安時代の文法
鎌倉時代の文法
室町時代の文法
江戸時代前期の文法
江戸時代後期の文法
明治時代の文法
活用の歴史:「起く」から「起きる」へ
テンス・アスペクトの歴史:「き」「けり」から「た」へ
モダリティの歴史:「~む」から「~だろう」へ
条件表現の歴史:「~ば」から「たら」
「なら」へ
待遇表現の歴史:「給へ」から「~て下さい」へ
文法史と方言:方言と文法史(日本語史)の関係性について
試験(筆記試験による)
到達目標
・日本語史資料に関する知識を一通り身につける。
・各時代における文法事項と、各文法事項の変遷を知ることで、日本語文法史の深い理解を得る。
・日常に浮かんだ日本語(に限らない言語一般)の疑問について、自らの手で解決できるようになる。
履修上の注意
・私語・遅刻・途中退室等厳禁。3分の2以上の出席を義務とする。
・古典作品の例については現代語訳を付すよう努めるが、基本的には、高校程度の古文の知識を持っている
ことが望ましい。
・日本語学(概論)と併せて受講することを勧める。
予習復習
・次回のトピックに関して、「○○といったテーマについて考える」程度の予習・宿題を課すことがある。
・復習は特に求めないが、試験前になって困らないように適宜講義内容を振り返っておくこと。
評価方法
① 講義内での講師からの質問に対し、その回答をコメントシートに記入してもらう。
(各回 2 点、計 30 点)
② 小テスト(10 点を 3 回、計 30 点) ③ 期末試験(60 点)
以上の①②③を合計し、上限を 100 点として単位を認定する。
テキスト
講義中に資料を配布するため、テキストの購入は不要。参考書として高山善行・青木博史編『ガイドブック
日本語文法史』(ひつじ書房)
、木田章義編『国語史を学ぶ人のために』(世界思想社)など。