生成文法(初級) 誤植 SeminarHandbookp.15 具体例を通し学ぶ (3-38) 考え方と方法論の基本 a. *IsJohnwho…è *Isthegirlwho… b. IsJohnwho…è Isthegirlwho… Day03 「一致」現象と主要部移動 雪の結晶が大好きで、子供の頃から、写真集や本 などたくさん集め、自分でもスケッチをしたりしたり、 採取をして、珍しい形の結晶を見つけると嬉しく、 雪の結晶に魅了されている è 大学で理学部へ è雪の結晶の研究へ 3.1 前回の質問・コメントから ・生成文法を信じられない方々にとって、生成文法 で扱えない言語現象を切ってしまうことが許せない のと、 そもそも大前提となっている“脳内の言語活 動”を見るすべがない(現在の技術では反証可能 性がつくれない)状態で次々と“理論”を組み立て ている点が、容認されにくいのではないでしょうか。 (榎原実香) ニュートンが「万有引力の法則」と主張した(つまり、 すべての物体に普遍的に当てはまると主張した) 根拠は?他の科学者もそれを認めるに至った根拠 は? ・よく「言語普遍的」ということが言われますが、そ れは何を持って十分な証明と言えるのでしょうか。 「普遍」である以上、全ての言語に当てはまること が必要ですが、実質、証明不可能であり、しかもひ とつの言語でも当てはまらなければ「普遍」の意味 がなくなってしまうように思います。(辻井真太郎) 「証明」という言葉に注意:経験科学 ・ハンドブックp.8にある「頭の中の実際の構造」とい う書き方が気になったのですが、“実際に”頭の中 に2つのコピーがあるというのは、次のページやス ライドにあった子どものエラーやキャスターのisや whichの重複によって保証されると考えてよいので しょうか。(井上彩) ・そもそも実際に発音されない語が「ある筈」という 議論はやや強引ではないか?「ある筈」論がOKなら ば、現実に観測されない事象についても「ある筈」 ということで、かなり恣意的な議論も可能になるの では? (竹谷純一郎) 研究において 「当たり前」や「常識」を疑ってみることは大切だ 多角的な視点を持つことは大切だ 「言語はコミュニケーション向きではない」「言語は コミュニケーションのためではない」 では何のため? (柳原志穂) 「合目的論」に注意:キリンの首はなぜ長い 3.2 言語の多様性と普遍的特性 多様性 a.単語(内容語)は違う b.文法的形態素(機能語)も違う c.同じ概念でも品詞さえ異なる場合も d.語順や発音も違う 普遍的特性 a.創造性を保証する仕組み b.階層構造の存在 c.再帰的併合操作とラベリングの存在 d.文中要素間の依存関係の存在 e.意味概念システムとつながっている f. 外在化(例: 発音)のシステムとつながっている など 3.3 「一致」現象 Iambusy. Youarebusy. Heisbusy. 観察1:述部の左端(主語の直後)の要素が 主語との「一致」を具現 Iwasbusy. Iwillbebusy. Youwerebusy. Youcanbebusy. Hewasbusy. Hecouldbebusy. 観察1:述部の左端(主語の直後)の要素が 主語との「一致」を具現 観察2:述部の左端(主語の直後)の要素が 時制の情報を担う (3-5) 述部の左端に時制と一致を担う要素Tを設定 a. 文 NP He T VP {三単過去} V AP be busy (3-5) 述部の左端に時制と一致を担う要素Tを設定 a. 文 NP He T VP {三単過去} could V AP be busy 助動詞が時制を具現 (3-5) 述部の左端に時制と一致を担う要素Tを設定 a. 文 NP He T VP {三単現} V AP be busy 助動詞ない時は (3-5) b. 文 V-to-T移動 NP He T VP {三単現} be V AP __ busy (3-5) b. 文 NP He T {三単現} be isと発音 VP V AP __ busy (3-5) b. NP He 文 T is 「一致」は常に主語NPと 時制辞Tとの局所依存関係 VP V AP __ busy (3-5) b. 主語NPと「離れる」と 一致は起こらない 文 NP He T could VP V AP be busy 3.4 主要部移動 ・NPは{人称・性・数}の素性を持っている:φ素性 ・Tは時制tenseを持っている 3.4 主要部移動 ・NPは{人称・性・数}の素性を持っている:φ素性 ・Tは時制tenseを持っている ・TはNPの持つφ素性を受け取り形態的に具現: 一致現象 ・Tはお返しに、主語NPに文法格(主格)を与える 文 NP T VP ・TはNPから受け取ったφ素性を具現化するために 単語とくっつく必要あり 方法1:助動詞(must,will,can,could,etc)が直接Tに 方法2: V-to-T be動詞がVからTへ移動する(主要部移動) 英語のYes/No疑問文 (3-10) a. Hemustbebusy. b. Musthebebusy? (3-11) a. Heisbusy. b. Ishebusy? (3-12) Yes/No疑問文形成規則 Tの要素を文頭位置へ移動 ・「文頭位置」の正体は? ? 文 NP T VP ・文のタイプを指定する範疇C CP 補文化詞ComplemenYzer C{+Q} 文 NP T VP ____に何を入れますか? (英語各1語) (日本語各1字) a.Idon’tthink___ Johnisright. b.Iwanttoknow__Johnisright. a. (私は) 太郎が正しい __思わない b. (私は) 太郎が正しい __知りたい (3-16) a.Idon’tthinkthatJohnisright. b.IwanttoknowifJohnisright. (3-17) a.(私は) 太郎が正しい と 思わない b. (私は) 太郎が正しい か 知りたい C(ComplemenYzer):that,ifなど a.Idon’tthinkthat[文Johnisright]. 平叙文であることをマーク b.Iwanttoknowif[文Johnisright]. 疑問文であることをマーク 英語では文頭に現れる C(ComplemenYzer):「か」「と」など a. (私は)[文 太郎が正しい]と 思わない 平叙文であることをマーク b.(私は)[文 太郎が正しい]か 知りたい 疑問文であることをマーク 日本語では文末に現れる 英語疑問文の基本骨格 CP C{+Q} 文 NP T VP 従属節Yes/No疑問文の場合 CP C{+Q} 文 NP T VP ifやwhetherが入る 従属節Yes/No疑問文の場合 CP C{+Q} 文 if NP T VP Iwanttoknow[CPif[文Johnisright]] 主節Yes/No疑問文の場合:CがTを引きつける CP C{+Q} 文 NP T VP T-to-C(主要部移動) 主節Yes/No疑問文の場合:CがTを引きつける CP C{+Q} 文 NP T VP [CPIs[文 he__busy]]? [CPMust[文 he__bebusy]]? 助動詞もbe動詞もない場合はどうなる? CP (3-19) a. Youlikeapples. C{+Q} 文 b.*Likeyouapples? 本動詞はTにはない NP T VP しかし 本動詞も主語と一致する。時制も現れる (3-21) Helikesapples.Helikedapples. まとめると まとめると ・「一致」は主語NPとTとの局所依存関係(=(3-8)) ・主節Yes/No疑問文はTをCへ移動 (=(3-18)) CP C{+Q} 文 NP T VP まとめると ・「一致」は主語NPとTとの局所依存関係(=(3-8)) ・主節Yes/No疑問文はTをCへ移動 (=(3-18)) ・本動詞も主語NPと一致する: Tにあるように見える (=(3-21)) ・本動詞はCへは移動しない: Tにはないように見える (=(3-19b)) どうする? 3.5 最後の手段としてのDo-Support 文 NP T VP V …. ・Tは素性の束としての接辞(affix) (主語NPと局所依存関係) 文 NP John T{三単現} VP V …. ・Tは素性の束としての接辞(affix) ・軽動詞は 文 NP John T{三単現} VP V be …. (3-24a) NP John ・Tは素性の束としての接辞(affix) ・軽動詞はTに引き付けられる (V-to-T主要部移動) 文 T{三単現} VP be V …. __ (3-24b) NP John isと発音 される ・Tは素性の束としての接辞(affix) ・軽動詞はTに引き付けられる (V-to-T主要部移動) 文 T{三単現} VP be V …. __ notがあっても NP John ・Tは素性の束としての接辞(affix) ・軽動詞はTに引き付けられる (V-to-T主要部移動) 文 T{三単現} not V be VP AP busy notがあっても (3-25a) NP John ・Tは素性の束としての接辞(affix) ・軽動詞はTに引き付けられる (V-to-T主要部移動) 文 T{三単現} VP be not V AP __ busy (3-25b) NP John isと発音 ・Tは素性の束としての接辞(affix) ・軽動詞はTに引き付けられる (V-to-T主要部移動) 文 T{三単現} be not V __ VP AP busy ・本動詞はVに留まったまま (Tは本動詞を引き付けられない) 文 NP John T{三単現} VP V like …. (3-26b) NP John 文 ・本動詞はVに留まったまま ・隣接条件:Tと本動詞Vが隣接 èTの情報がVで具現 T{三単現} VP V …. like likesと発音される 隣接条件を満たさない場合(i):notの介在 文 NP John T{三単現} VP not V NP likeapples NP John ・動詞はVに留まる 文 (Tは本動詞を引き付 ける力がない) T{三単現} VP not V NP likeapples ・動詞はVに留まる 文 ・接辞Tが 取り残されたまま NP John T{三単現} VP not V NP ホストが隣に いない(汗)! likeapples 取り残された接辞Tを Do-Supportでを救う 文 (最後の手段) NP John T{三単現} VP not ダミーdo V NP likeapples 取り残された接辞Tを Do-Supportでを救う 文 (最後の手段) NP John T{三単現} VP not doesと ダミーdo V NP 発音 likeapples Yes/No疑問文形成規則はT-to-C 軽動詞の場合 CP C{+Q} NP John 文 T{三単現} V be VP AP busy Yes/No疑問文形成規則はT-to-C ・Tが軽動詞を引き付ける CP C{+Q} 文 NP John T{三単現} VP be V AP __ busy Yes/No疑問文形成規則はT-to-C CP C{+Q} T{三単現} be NP John 文 __ ・Tが軽動詞を引き付ける ・C{+Q}がTを引き付ける VP V AP __ busy Yes/No疑問文形成規則はT-to-C CP C{+Q} 文 T{三単現} be NP John isと発音される__ ・Tが軽動詞を引き付ける ・C{+Q}がTを引き付ける VP V AP __ busy Yes/No疑問文形成規則はT-to-C ・隣接条件を満たさない場合(ii):T-to-Cの後 CP C{+Q} 文 NP John T{三単現} VP V NP like apples Yes/No疑問文形成規則はT-to-C CP C{+Q} NP John ・本動詞はVに留まる (Tは本動詞を引き付けない) 文 T{三単現} VP V NP like apples Yes/No疑問文形成規則はT-to-C CP C{+Q} 文 T{三単現} NP John___ ・本動詞はVに留まる (Tは本動詞を引き付けない) ・C{+Q}がTを引き付ける VP V NP like apples Yes/No疑問文形成規則はT-to-C CP C{+Q} 文 T{三単現} NP John___ ホストVが隣に いない(汗)! ・接辞Tが取り残されたまま VP V NP like apples Yes/No疑問文形成規則はT-to-C CP C{+Q} 文 T{三単現} NP ダミーdoJohn___ 取り残された接辞Tを Do-Supportでを救う (最後の手段) VP V NP like apples Yes/No疑問文形成規則はT-to-C Does CP と発音 C{+Q} 文 T{三単現} NP ダミーdoJohn___ 取り残された接辞Tを Do-Supportでを救う (最後の手段) VP V NP like apples 英語の動詞句削除 be動詞の場合 (3-30) a.Maryisbusy,and 文 NP John T{三単現} V be VP AP busy, too be動詞の場合 (3-30) b.Maryisbusy,and 文 NP John T{三単現} VP be V AP __busy, too be動詞の場合 (3-30) b.Maryisbusy,and 文 NP John T{三単現} VP is V AP __busy, too be動詞の場合 (3-30) c.Maryisbusy,and 文 動詞句削除 NP VPを発音しない John T{三単現} VP is V AP __busy, too 本動詞の動詞句削除 隣接条件を満たさない場合(iii): 動詞句削除の後 (3-31) a.Ilikeapples,and 文 NP John T{三単現} VP V N like apples, too 本動詞の動詞句削除 隣接条件を満たさない場合(iii): 動詞句削除の後 (3-31) b.Ilikeapples,and 文 動詞句削除 NP VPを発音しない John T{三単現} VP V N like apples, too 本動詞の動詞句削除 隣接条件を満たさない場合(iii): 動詞句削除の後 (3-31) b.Ilikeapples,and 文 動詞句削除 NP VPを発音しない John T{三単現} VP 接辞Tが取り V N 残されたまま like apples, too 本動詞の動詞句削除 隣接条件を満たさない場合(iii): 動詞句削除の後 (3-31) c.Ilikeapples,and 文 NP John T{三単現} VP ダミーdoで V N Tを救う like apples, too 本動詞の動詞句削除 隣接条件を満たさない場合(iii): 動詞句削除の後 (3-31) c.Ilikeapples,and 文 NP John T VP does V N like apples, too 多様なdoの出現:統一のメカニズム (3-32) do(es)が出てくるのは Tと本動詞が隣接していない時: a. Johndoesnotlikeapples. b. DoesJohnlikeapples? c. Ilikeapples,andJohndoes,too. 生成文法も認知言語学も、言語変化にどのように 対応するのかわからない。脳のシステムが変わっ てしまうのか?(でもUGの考え方に反する気がする) (小野洋平) 言語変化にどう対応するのか? CP C{+Q} NP John 現代英語:Tは本動詞を引き付けない ElizabethanEnglish: 文 Tは本動詞を引き付ける T{三単現} VP V NP like apples 言語変化にどう対応するのか? CP C{+Q} T{三単現} Does NP John 現代英語:Tは本動詞を引き付けない Yes/No疑問文形成はT-to-C 文 VP V NP like apples 言語変化にどう対応するのか? CP C{+Q} T{三単現} V NP Likes John 文 ElizabethanEnglish: Tは本動詞を引き付ける Yes/No疑問文形成はT-to-C VP NP apples ・主節Yes/No疑問文の作り方:TをCへ Quiz:T(is) が2つある場合は? ・どちらのisを文頭に動かしますか? ・動かす方のisを決める理由は? (3-33) どちらのisを文頭に? Johnisclaimingthatthegirlissmart. ・どちらのisを文頭に動かしますか? ・動かす方のisを決める理由は? (3-33) どちらのisを文頭に? Johnisclaimingthatthegirlissmart. IsJohn__claimingthatthegirlissmart? *IsJohnisclaimingthatthegirl__smart? (3-34) どちらのisを文頭に? ThegirlwhoisbeaYngJohnissmart. *Isthegirlwho__beaYngJohnissmart? IsthegirlwhoisbeaYngJohn__smart? 3.6 規則は構造依存的 Yes/No疑問文を例に 3.6 規則は構造依存的 CP C {+Q} 文 NP he T VP is V CP claiming C 文 that … T… thegirlissmart CP C {+Q} Cは直近のTを 引き付ける 文 NP he T VP is V claiming C that CP … 文 T… is CP C 文 {+Q} NP NP 文 T thegirl is whoisbeaYnghim V VP AP smart CP {+Q}が引き付けるbe動詞の選択; 線的近さで決まるわけではない =>階層構造上の「近さ」で決まる 構造依存的 C 文 {+Q} NP NP 文 T thegirl is whoisbeaYnghim Cは階層構造的に 直近のTを引き付ける AmractClosest VP V AP smart ・3〜5歳の子どもの脳内の規則も 構造依存的 (CrainandNakayama1987) ThegirlwhoisbeaYngJohnissmart? 幼い子供の自然発話では、主語に関係節がつい ている文のyes/no疑問文は出てこない。 どうやって、確かめる? ・3〜5歳の子どもの脳内の規則も 構造依存的 (CrainandNakayama1987) Johnを叩いている女の子の絵を見せながら AskJabbaifthegirlwhoisbeaYngJohnissmart ・3〜5歳の子どもの脳内の規則も 構造依存的 (CrainandNakayama1987) *Isthegirlwho__beaYngJohnissmart? IsthegirlwhoisbeaYngJohn__smart? 3.7 まとめ ・人間言語の共通基盤(普遍的特性)と多様性 3.7 まとめ ・「一致」現象(英語の主語動詞一致を例に) 主語NPとTとの局所的依存関係 a.主語NPのφ素性をTが受け取り 形態的に具現化 b.時制のTが主語NPに主格を付与 3.7 まとめ 主要部移動(英語を例に) a. V-to-T (本動詞は動かず) b. T-to-C Yes/No疑問文形成規則 c. 接辞としてのT d. 最後の手段としてのDo-support Yes/No疑問文形成規則(主要部移動規則の一種) も構造依存的 ガリレオの望遠鏡 視点の転換 (3-45) 地球中心のパラダイム:月、太陽、水、金、火、木、 土の運動の解明を目指す è観察される天体運動現象は大変複雑: 説明理論も大変複雑 (3-46) 太陽中心のパラダイム: è天体運動の説明方法大転換 視点の転換 目に見える言語現象の整理分類というパラダイム è観察される言語現象は大変複雑: 説明理論も大変複雑(例:ダミーdoの出現) 脳内の仕組みを解明しようというパラダイム: è言語現象の説明方法大転換
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