null

1-1
半導体⼯学
名城大学 理⼯学部 材料機能⼯学科
岩谷 素顕
講義内容  イントロダクション
 講義概要
 バンド構造
 状態密度
本講義の位置づけ・到達目標
• 電⼦統計(半導体の電気的特性を理解する)
真性半導体の考え⽅を理解する
不純物半導体の考え⽅を理解する
• ⾦属と半導体の接触について理解する
• pn接合に関して理解する
• ダイオード、バイポーラトランジスタ、電界効果トラン
ジスタなど電⼦デバイスの動作の原理を理解する。
• 発光ダイオード、レーザダイオード、フォトダイオード、
太陽電池など、半導体光デバイスの動作機構を理解する。
1-2
半導体産業の位置づけ
1-3
http://techon.nikkeibp.co.jp/NEAD/special/sirij/01.pdf
主要先端製品・部材の売上と世界シェア
1-4
技術系(⾃動⾞・機械・電機・材料等)の仕事
研究・開発
生産(管理)
営業
1-5
企画、人事
総務、経理
大学院修了生
が多い
技術系の職場
(材料機能⼯学科出⾝者)
次のイノベーションの重要性
1-6
講義の位置づけ
1-7
この講義をマスターすれば、ダイ
オード、トランジスタ、LED、太
陽電池を⾃由⾃在に使いこなせる。
講義の位置づけ
新しい材料、システムを開発
する基礎⼒を⾝に付ける
1-8
1-9
具体的にはどうなって
ほしいのか?
紫外発光素⼦(LED・レーザ)
1.0
InN
0.3
0.4
格⼦定数(nm)
窒化物半導体のポテンシャルと
発光デバイスの実現領域
300
エキシマ
KrF
名城大学
浜松ホトニクス
日亜化学
Cree
Pala Alto Lab.
UV-C
YAG(4th)
エキシマ
XeCl
UV-B
実現
未踏
1240
波長 [nm]
620
250
YAG(5th)
HeHg
HeCd
UV-A
2.0
413
可視
3.0
GaN
未踏
310
4.0
半導体レーザ
248
光の波⻑ (nm)
5.0
207
紫外
6.0
200
AlN
赤外
バンドギャップエネルギー(eV)
紫外半導体レーザの実現のインパクト
350
400
2000
2010
2020
年
紫外半導体レーザの開発の経緯
研究ターゲット
1-10
1-11
紫外半導体レーザの実現のインパクト
• 半導体レーザの実現波⻑の拡⼤ (赤外⇒ 可視(赤⇒⻘)⇒ 紫外⇒ 深紫外)
• “ガスレーザ”・“固体レーザ”→“半導体レーザ”へのパラダイムシフト
具体的な応⽤例
医療・バイオ
微細加工・表面加工
殺菌・DNA識別
タンパク質・DNA/RNAの波⻑分散
その他の応用:
半導体露光・化学分析・薄膜作製など
1-12
AlGaN/AlN上の紫外レーザ
h+h+h+ h+h+h+p-AlGaN
h+h+h+ h+h+h+ h+ h+
Laser emission
AlGaN-based MQW
e-e-e- e-e-en-AlGaN
e-e-e- e-e-e- e- e-
n-GaN
レーザ実現の必要要素
① 光学利得
② 光共振器
③ キャリアの注入
1-13
AlGaN材料のポテンシャル
120k
RT
400 nm
(GaInN系)
80k
280 nm
(AlGaN系)
60k
10
名城大
他グループ
1
0.1
0.01
250
300
350
400
Wavelength [nm]
光励起による発振波⻑と閾値パワー密度の関係
40k
2
RT
20k
光源: YAG 4 th
0
0
222 kW/cm
2
188 kW/cm
2
148 kW/cm
2
117 kW/cm
2
99 kW/cm
2
45 kW/cm
光強度 [arb.units]
積分光強度 [arb.units]
100k
光励起
Threshold power density [MW/cm2]
350 nm
(AlGaN系)
レーザ実現の必要要素
① 光学利得 ⇒ OK
② 光共振器 ⇒ OK
③ キャリアの注入⇒?
50
100 150 200 250
励起光パワー密度 [kW/cm2]
240
280
320
波長 [nm]
360
Appl. Phys. Lett. 84, 3567 (2004)
Appl. Phys. Lett. 70, 1650 (1997)
Applied Physics Express 4 092101(2011)
Appl. Phys. Lett. 102, 171102 (2013)
Appl. Phys. Lett. 96, 141112 (2010)
1-14
紫外レーザ研究の⽅向性
Laser emission
h+h+h+ h+h+h+p-AlGaN
h+h+h+ h+h+h+ h+ h+
AlGaN-based MQW
-3
p-AlGaN中の室温での正孔濃度 [cm ]
e-e-e- e-e-en-AlGaN
e-e-e- e-e-e- e- e-
n-GaN
レーザ発振に必要な注入キャリア密度
1018cm-3~ 1019cm-3
⇒正孔濃度>1017cm-3必要
(n型は電子濃度>1018 cm-3が実現可能)
1019
1018
1017
1016
1015
1014
1013
10120.0
レーザ発振に必要
0.2
0.4
0.6
0.8
AlxGa1-xNのAl組成x
1.0
通常のp型AlGaNの正孔濃度のAl組成依存性
1-15
電⼦線励起型のレーザの提案
Electron beam
e-
e-
e- e
ee
e- - e - e- ee- - ee- e-e - - e - e e e- e e- e- e e- e- e e-e
e
e
e-
Laser emission
AlGaN
GaInN/GaN MQW
応用⽅法
AlGaN
GaN
mercury lamp
460kW/cm
280kW/cm
2
170kW/cm
380
382
384
386
2
2
Integrated light intensity[arb.units]
世界初・電子線励起型窒化物半導体レーザ
Light intensity [arb.units]
2016年
X-ray tube
Pulse
20 ns, 3 MHz, duty 6 %
150k
100k
50k
0
0
200 P =~280 400
th
Electron beam power density [kW/cm2]
388
Wavelength [nm]
Sample structure
200k
Spectrum
Light intensity-Electron
beam power
Light intensity [arb. units]
15k
応用物理学会でSpotlights論⽂に選出
2
P=470kW/cm
10k
TE
TM
5k
0
380
382
384
386
Wavelength [nm]
M2:千賀 M2:永田
M1:林 B4:池田
16
388
1-17
分極ドーピング:半導体物理の新⼿法
p型半導体
n型半導体
+
+
+
+
+
電子
+
+
-
+
-
+
+
-
-
-
+
①通常の半導体(不純物添加)
不純物を添加することによって固
定電荷(正/負イオン)と⾃由電
⼦/⾃由正孔を形成
-
-
-
+
+
+
+
-
正孔
-
-
-
-
-
-
組成傾斜p型AlGaN
高Al組成
制御された
分極固定電荷
誘起された
⾃由電荷(正孔)
紫外線センサの応用分野
低Al組成
電荷
n型及び発光層
電⼦エネルギー
②新⼿法
分極ドーピング
D3:安田
+
バンド
ギャップ
+ + + + +
- B4:川瀬
伝導帯下端
フェルミ準位
価電⼦帯上端
1-18
深紫外光のアプリケーション
深紫外LED/レーザ + 紫外光センサ → 発光/受光デバイス
LEDとセンサを組み合わせることで新規デバイスの創出が可能
1-19
紫外線センサー
2次元電⼦ガスを用いた超高感度ディテクター
10
6
5
10
4
10
3
10
2
10
1
10
0
受光感度 [A/W]
10
本研究
本研究
Si APD
Si pin photodiode
2013年卒:⽯⿊(中嶋)
トヨタ⾃動⾞
*IWNで招待講演
*応物講演奨励賞
*⽇本結晶成⻑学会
発表奨励賞
-1
10
300 450 600 750 900
波長 [nm]
通常のSi系のセンサーに比べて
数ケタ高感度
2012年卒:池田(貴田)
トヨタ⾃動⾞
*ICNS Best
presentation award
1-20
動作原理
Light source
Anode
(Ti/Al/Ti/Au)
p-GaN
Cathode
(Ti/Al/Ti/Au)
Depletion layer
u-Al0.2Ga0.8N
10 nm
e
E
h
 The feature of this sensor is to obtain high
photo current via 2DEG layer.
 Low dark current is obtained by the p-type
GaN depletion the 2DEG layer.
2DEG
u-GaN 3.0 μm
 The electron hole pairs in the channel layer
is generated with light irradiation, and
taken out as current by high electric field is
applied to the depletion layer.
(0001) Sapphire sub.
It’s possible to extract the high photocurrent and obtain high
rejection ratio only when the light is irradiated.
Previous report
This study
p-GaN 100 nm
p-GaN 100 nm
u-Al0.1GaN-10 nm
2DEG
u-Al0.6GaN-35 nm
2DEG
u-Al0.5GaN-320 nm
u-GaN-1.8 μm
u-AlN-1.8 μm
(0002) Sapphire sub.
(0002) Sapphire sub.
ISGN: Best Young Scientist Award 受賞
窒化物半導体研究会発表奨励賞受賞
応用物理学会講演奨励賞受賞
1.E+05
1x105
D2:吉川
Photosensivity, S(A/W)
Al0.2Ga0.8N/GaN[1]
1.E+04
1x104
Peak λ=250 nm
1.E+03
1x103
Wavelength sift
1.E+02
1x102
Cut off λ=410 nm
<103
M1:牛田
窒化物半導体研究会
発表奨励賞受賞
1.E+01
1x101
Al0.6Ga0.4N/Al0.5Ga0.5N/AlN
1.E+00
1x100
1.E-01
1x10-1
200
Cut off λ=280 nm
250
300
350
400
Wavelength, λ(nm)
500 B4:齋田 B4:坂田
450
通常のSi系のセンサーに比べて数ケタ高感度⇒将来的には単光⼦の選別まで狙う
1-22
太陽電池
現在実用化されている太陽電池は下記の3種類
単結晶Si太陽電池
効率:約20%
多結晶Si太陽電池
効率:約15%
アモルファスSi太陽電池
効率:約10%
構成されている元素はSiで全く同じ
問題は効率で、太陽エネルギーの10~25%程度しか
電気エネルギーに変換できない
発電コスト:
太陽電池:46円/kWh
⽯油⽕⼒発電:15円/kWh
原⼦⼒発電:7円/kWh
1-23
高効率化の課題
この分のエネルギーがロスになる
電⼦
Eg=1.85eV
伝導帯
SiのEg=1.1eV
光のエネルギー
:hν
Eg=1.4eV
価電⼦帯
正孔
1光⼦につき、1個の電⼦・正孔対が生成
⇒このエネルギーを電⼒として取り出す
Eg=0.67eV
報告されている構造:効率35%
1-24
窒化物半導体のポテンシャル
GaN
GaInN
InN
Eg=3.42eV
太陽光スペクトルの
ほぼ全域をカバー
→変換効率60%を超
えることが実現可能
Eg=0.65eV
J. Wu et al: J. Appl. Phys. 94, 6477 (2003)
GaInNは太陽電池として有望な材料である
講義の位置づけ
1-25
既存のデバイスの動作原理を理解したうえで
新しい材料、システムを開
発する基礎⼒を⾝に付ける
講義で必要なもの
1-26
筆記用具
関数電卓
ファイル
特に電卓は、関数電卓が必要です
成績評価
1-27
レポート点20点、定期試験80点
レポート内容:講義に関する課題・演習問題を
設定予定
講義スケジュール
回数
1-28
項目
内容
1
電⼦統計1
次元の制御と状態密度 真性半導体
2
電⼦統計2
不純物半導体 n型 p型
3
電気伝導
移動度 ホール効果 拡散係数 アインシュタイン関係式
4
ダイオード1
ポアソン⽅程式 バンドダイヤグラム 空乏層 空間電荷層
拡散電位 階段接合 キャリア寿命
5
ダイオード2
傾斜接合 接合容量 逆⽅向飽和電流 温度特性 電⼦雪崩
6
バイポーラトランジスタ1 エミッタ効率 ベース輸送効率 ベース接地電流増幅率
7
バイポーラトランジスタ2 エミッタ接地電流増幅率 アーリー効果
8
バイポーラトランジスタ3 周波数特性
9
サイリスタ
ターンオン条件 GTO
10
⾦属と半導体の接触
ショットキー障壁 オーム性接触 リチャードソン定数
11
FET1
MESFET 静特性 高周波特性
12
FET2
MOSTFETのバンドダイアグラム 静特性 Nチャネル P
チャネル
13
FET3
エンハンスメント ディプレッション CMOS
14
IMPATT、PD、太陽電池
LED、LD
衝突イオン化、光吸収、量⼦効率、フィルファクター、タン
デムセル 直接遷移、間接遷移、発光色とバンドギャップ、
反転分布、キャリア閉込、光閉込、ファブリ・ペロー共振器
TTL
今⽇の予定
回数
1-29
項目
内容
1
電⼦統計1
次元の制御と状態密度 真性半導体
2
電⼦統計2
不純物半導体 n型 p型
3
電気伝導
移動度 ホール効果 拡散係数 アインシュタイン関係式
4
ダイオード1
ポアソン⽅程式 バンドダイヤグラム 空乏層 空間電荷層
拡散電位 階段接合 キャリア寿命
5
ダイオード2
傾斜接合 接合容量 逆⽅向飽和電流 温度特性 電⼦雪崩
6
バイポーラトランジスタ1 エミッタ効率 ベース輸送効率 ベース接地電流増幅率
7
バイポーラトランジスタ2 エミッタ接地電流増幅率 アーリー効果
8
バイポーラトランジスタ3 周波数特性
9
サイリスタ
ターンオン条件 GTO
10
⾦属と半導体の接触
ショットキー障壁 オーム性接触 リチャードソン定数
11
FET1
MESFET 静特性 高周波特性
12
FET2
MOSTFETのバンドダイアグラム 静特性 Nチャネル P
チャネル
13
FET3
エンハンスメント ディプレッション CMOS
14
IMPATT、PD、太陽電池
LED、LD
衝突イオン化、光吸収、量⼦効率、フィルファクター、タン
デムセル 直接遷移、間接遷移、発光色とバンドギャップ、
反転分布、キャリア閉込、光閉込、ファブリ・ペロー共振器
TTL
1-30
本⽇の講義内容
シリコン原⼦の電⼦状態から、
シリコン半導体内部の電⼦の状態が形成されるまで
キーワード:
結晶構造、ブロッホ関数、クローニッヒ・ペニーモデル
半導体の分類⽅法:太陽電池の例
1-31
半導体材料の分類
1-32
構成元素の違いによる分類
材料
Si系半導体
Si,SiGe
半導体
化合物半導体
GaAs、InP、GaN
など
応用例
LSI、太陽電池、PD
など
HEMT(高速デバイス)
LED、LD
Siでできないデバイス
など
1-33
材料の違いによる半導体の分類
IV族
IIIーV族
半導体材料
半導体材料の分類⽅法
結晶構造の違いによる分類
下記の3つは太陽電池のパネルです。
違いが分かりますか?
構成されている元素はSiで全て同じです
1-34
この違いは何か?
1-35
単結晶
単結晶
原⼦が規則正しく並ん
でおり、結晶のどの位
置であっても、結晶軸
の⽅向が変わらないも
のをいう
多結晶
多数の微小な単結晶す
なわち微結晶から構成
されているものをいう
アモルファス
非晶質と訳され、近距
離秩序はあるが、結晶
のような⻑距離秩序が
ない
この違いは太陽電池の性能に影響しないのか?
実際の結晶の原⼦配列はどうなっているか?
ダイオードの中身を、顕微鏡でのぞいてみる。
アモルファス
ダイオードの中身:シリコン半導体の透過電子顕微鏡による格子像
単結晶
1-36
Si原⼦を使った太陽電池の性能
種類
単結晶
多結晶
アモルファス
1-37
特 徴
・発電効率に優れる:20%
・比較的高価
・色は⿊系
・単結晶とアモルファスの中間:15%
・色は⻘系
・効率が低い: 10%
・大⾯積化容易
・衝撃や折り曲げに強い
・比較的安価
・色は赤系
http://chukakunet.pref.kagoshima.jp/home/jyutakuka/kankyo/themes/taisaku/051.html
同じ元素で構成されていても、元素の配列に依存
講義の進め⽅の⽅針
本講義では特に断りがない限り
• Si半導体
• 単結晶
を中心に説明していく。
産業では
• Si単結晶でできることはSi単結晶を使う
• Siができないこと(例:LED、レーザ、通信、パワー
デバイス、高温動作など)は化合物半導体を使う
• コストを下げるために多結晶・アモルファスを使う
1-38
原⼦間距離と電⼦のエネルギーの関係
1-39
sp3混成軌道同士の共有結合
1-40
ひとつのsp3混成軌道に着目
ダイヤモンド構造結晶の単位立方格子
シリコン結晶について
1-41
ダイヤモンド構造
単位格⼦中の原⼦数:8個
最近接の原⼦数:4個
充填率:34%
ここに注目!
斜め下から
シリコンの結晶構造(ダイヤモンド構造)
Si原⼦に注目
1-42
Si原⼦の電⼦配置:(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)2
内殻電⼦ 化学反応、電気
伝導には寄与せず
最外殻電⼦ 化学反応、
電気伝導に寄与
シリコン結晶中の電⼦の状態
2s
2s
(3sp3)
エネルギーE
エネルギーE
エネルギーE
3p
3p
3s
3s
1-43
2p
2p
1s
1s
2s
2p
1s
3sp3軌道の場合
シリコン原⼦の電⼦配置
結晶中ではsp 混成軌道とな
Si:(1s)2(2s)2(2P)6(3s)2(3p)2
3
る。
Si結晶中の最外殻電⼦
(3s)2(3p)2
正四⾯体の角度
109.5度
Si原⼦
sp3混成軌道を形成
1-44
水素分⼦の軌道生成
原子間の電子の存在確率が向上
⇒安定な軌道である
1-45
原子間の電子の存在確率が減少
⇒不安定な軌道である
※波動関数の絶対値の2乗が存在確率
水素分⼦の形成とエネルギー
1-46
電子と原子核の相互作用
2つの原子核を近づける方向に
力を及ぼしている
結合性軌道
σ1s
2つの原子核を引き離す方向に
力を及ぼしている
*:反結合性軌道
反結合性軌道
σ*1s
σ結合:結合軸方向を向いた原子軌道同士による結合
Siの場合:sp3混成軌道同士の共有結合
反結合
1-47
原⼦が離散
した状態
エネルギー
3p
3s
強結合近似
(タイトバインディング近似)
⇒電⼦は強く束縛されていて、隣り合う軌
道へ⾃由に移動できないとする近似
結合
原⼦間距離
電⼦はどのような状態を取るのか?
1-48
Si原⼦の電⼦配置:(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)2
1原⼦あたり4つの最外殻電⼦が存在する
ダイヤモンド
ゲルマニウム
C:(1s)2(2s)2(2p)2
1原⼦あたり4つの最外殻電⼦が存在する
Ge:(1s)2(2s)2(2p)2(3s)2(3p)2(3d)10(4s)2(4p)2
1原⼦あたり4つの最外殻電⼦が存在する
IV族(14族)元素の場合、最外殻電⼦は4つ
• (仮定) 絶対零度で考える
⇒熱エネルギーが0(非常に小さい)と考える
共有結合状態での電⼦位置
1-49
• 原⼦1個に4つの最外殻電⼦が存在する
• ダイヤモンド構造の最近接の原⼦数:4個
⇒最近接原⼦と共有結合をつくる
この原⼦に注目
ダイヤモンド構造
共有結合状態での電⼦位置
1-50
Si1個に対して最外殻電⼦が4個存在する
(3sp3)
エネルギーE
電⼦の状態は8つ
2s
1s
2p
電⼦のエネルギー
T=0[K]では空
Si原⼦1個に対して
4個の状態
原⼦間距離
3p
3s
Si原⼦1個に対して
4個の状態
sp3混成軌道
3sp3軌道の場合
T=0[K]では4つ入る
(充満:全ての状態が満たされる
こと)
1-51
エネルギーバンド構造
結晶中の電⼦の状態
⇒エネルギーバンドを形成する
1-52
結晶中の電⼦が受けるポテンシャルエネルギー
結晶を1次元で考える
内殻電子による遮蔽により
通常の原子価とは異なる
エネルギー
Si原⼦からのクーロン引⼒によるポテンシャルエネルギー
Z ′e 2
−
4πεr
原⼦核
原⼦核
原⼦核
原⼦核
原⼦核
結晶の誘電率
位置
エネルギー
近似
r:距離
e:素電荷
ポテンシャルエネルギー
を単純化する。
位置
結晶中の電⼦の波動関数に関して考える
1-53
結晶内電⼦の波動関数:ブロッホ関数の利用
原子間距離
L
結晶周期性を有する。
振幅項:u(x)
×
=
位相項:ejkx
波動関数:ϕ(x)=u(x)・ejkx
電⼦の存在確率P(x)はポテンシャルの周期性に従うが、電⼦波の位相は平⾯波的と考える。
→振幅は周期性あり。位相は平⾯波的。
→波動関数としてブロッホ関数φ(x)を用いる。
φ(x)=u(x)・exp(jkx)
u(x):振幅項
振幅項の条件:u(x)=u(x+L)
exp(jkx):位相項
結晶を構成する原⼦数が多いことの数学的表現⇒周期的境界条件
原⼦の合計G個とする→現実にはGは極めて多数
1
・・・・
2
G
G
L
周期的境界条件の導入
1
a
端と端をつけてしまえば無限
→Gが多数ということの数学的表現
φ(x)=φ (x+G・a)
2
3
φ(x)
=u(x)・exp[jkx]
=u(x+G・a)・exp[jk(x+G・a)]
=u(x)・exp[jk(x+G・a)]
k・G・a=2nπ
振幅項はもとも
と周期的
k=
2π
×n
G ⋅ a (= L)
1-54
結晶中の電⼦の波動関数の数学的記述
1-55
⾃由空間での電⼦の波動関数
平⾯波波動関数:φ(x)=A・exp(jkx)
結晶中での電⼦の波動関数
周期的ポテンシャル内の電⼦の波動関数
ブロッホ関数:φ(x)=u(x)exp(jkx)
u(x):振幅項
振幅項の条件:u(x)=u(x+L)
exp(jkx):位相項
クローニッヒ・ペニーモデルの解法
電⼦のエネルギー
V0
領域II
領域I
-b 0
a
電⼦のエネルギーEはV0より小さい場合を考える。
ポテンシャルエネルギーはV(x)=V(x+L)
周期:L=a+b
x
1-56
クローニッヒ・ペニーモデルの解法
1-57
1. シュレーディンガー⽅程式を⽴てる
領域Iでのシュレーディンガー⽅程式
2mE
d 2u I ( x )
+ α 2u I ( x ) = 0 α =
2

dx
2
領域Ⅱでのシュレーディンガー⽅程式 d u II ( x ) - β 2 u ( x ) = 0
II
2
β=
dx
2m(V0 - E)

2.ブロッホ関数をシュレーディンガー⽅程式に代入し一般解を求める
一般解
3.境界条件
u1(x)=A exp {j(a-k)x}+B exp{- j(a+k)x }
u2(x)=C exp {(b-jk)x}+D exp{- (b+jk)x }
x=0でu1(0)=u2(0) u1’(0)=u2’(0)
x=a、x=-b で周期的境界条件を用いる
u1(a)=u2(-b) u1’(a)=u2’(-b)
4.最終解は
β
2
−α
2αβ
2
sinh β b ⋅ sin α a + cosh β b ⋅ cos α a = cos k ( a + b )
クローニッヒ・ペニーモデルの解
E
 2 2 ⾃由電⼦
E=
k
2m
クローニッヒ・ペニーモデルの解
許容帯
禁制帯
許容帯
禁制帯
許容帯
k
2π
π
−
−
a
a
π 2π
a
a
1-58
クローニッヒ・ペニーモデルの確認
原⼦核
原⼦核
原⼦核
電⼦のエネルギー
V0
原⼦核
1-59
原⼦核
周期性がある
⇒考えるのは1周期のみで良い
領域II
領域I
x
a
-b 0
電⼦のエネルギーEはV0より小さい場合を考える。
ポテンシャルエネルギーはV(x)=V(x+L) L=a+b
周期
第1ブリルアンゾーンのみを考える
1-60
E
許容帯
禁制帯
許容帯
−
2π
3π
−
a
a
−
π
π
a
a
2π
a
還元領域表示:実線
点線:クローニッヒペニーモデルの解
3π
a
禁制帯
許容帯
k
クローニッヒペニーモデルの考え⽅
Siの場合
Siの電⼦配置は
1-61
(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)2
最外殻電⼦は、1個の原⼦に対して8個の状態があるが、そのうち4個しかない
クローニッヒペニーモデルの解によれば
→下から順に(上に凸)・(下に凸)のバンドが交互に繰り返される。
→一番上の、上に凸・下に凸のペアが最外殻電⼦
強結合近似の結果を参考に考えると
仮定:絶対零度(熱エネルギーがほぼ0の時)
最外殻のバンドの 上に凸のバンドがすべて電⼦の状態は充満
下に凸のバンドは電⼦は存在しない
結論:
→ 絶対零度ではキャリア(⾃由電⼦・⾃由正孔)は存在しない
電界をかけてもキャリアの移動はない
→ 純粋な半導体は絶対零度では絶縁体
エネルギーバンド構造
1-62
下に凸のバンドを伝導帯、上に凸のバンドを価電⼦帯と呼ぶ
バンド中には電⼦は存在できる。
伝導帯と価電⼦帯の間の電⼦が存在できないエネルギー状態を
バンドギャップと呼ぶ(バンドギャップ中には電⼦は存在できない)
E
伝導帯
最外殻のsp3
混成軌道によ
るバンド
2π
−
a
バンドギャップ
価電⼦帯
−
π
a
0
π
a
2π
a
k
実際の半導体では?
1-63
• バンドギャップエネルギーの大きさは材料固有の
値(元素・結晶構造が決まれば決定する)
• 温度が上がると、熱エネルギーを受け取る
下に凸のバンド(伝導帯)に電⼦が存在し始め、
上に凸のバンド(価電⼦帯)には空きが生じる
• 微小な不純物によって状態が大きく変化する
不純物の違いによってp型・n型半導体を形成する
三次元半導体結晶における状態密度
N個の原⼦からなる
無添加半導体結晶の場合
エネルギーE
伝導帯
禁制帯
バンドギャップ
Eg
T=0 [K]
真性半導体では電⼦はゼロ個
波数k
価電⼦帯
結晶角運動量
電⼦は合計4N個
(3s)2(3p)2→sp3混成:4個
p = k
1-64
材料の電気伝導の考え⽅
1-65
• ⾦属・・・一般には⾃由電⼦モデル
(近似)
• 半導体・絶縁体
⇒基本的には伝導帯には電⼦が存在せ
ず価電⼦帯は電⼦の状態が充満してい
るため動けない
⇒ただし、半導体の場合は、不純物を
添加するもしくは温度の上昇によって
変化する
バンドギャップの考え⽅
1-66
半導体結晶の違いによって、直接遷移型半導体と間接遷移型半導体に分かれる
E
1.43eV
E
バンドギャップ
k
GaAsの例
直接遷移型
1.1eV
バンドギャップ
k
Siの例
間接遷移型
直接遷移型半導体:伝導帯の底と価電⼦帯の頂のk(運動量)が同じ
間接遷移型半導体:伝導帯の底と価電⼦帯の頂のk(運動量)が異なる
1-67
電気伝導について考える
⾃由電⼦・⾃由正孔が電気伝導に寄与する
J: 電流密度[A/cm2]、σ:電気伝導率[S/cm]、E:電界[V/cm]、ρ:抵抗率の関係[Ω cm]
半導体⼯学ではcgs単位系を使う
J = σE =
E
ρ
σ=
⾃由電⼦が電気伝導に寄与する場合の伝導率、抵抗率は
σ = enμ
ρ=
1
ρ
1
enμ
⾃由正孔が電気伝導に寄与する場合の伝導率、抵抗率は
σ = epμ
ρ=
1
epμ
e: 電⼦の素電荷(1.6×10-19C)、n:⾃由電⼦濃度(cm-3)、
p:⾃由正孔濃度(cm-3)、μ:移動度(cm2/Vs)
移動度とは?(電⼦で考える)
電⼦は-の電荷を持っている
電⼦のドリフト速度は外部電界に比例する
移動度の単位は?
[cm2/Vs]
1-68
⾃由電⼦濃度・⾃由正孔濃度は?
エネルギーE
1-69
⾃由電⼦濃度は?
伝導帯に存在する単位体積あたりの電⼦数
∞
n =  Z ( E ) f ( E )dE
伝導帯
Eg
Z(E);状態密度
禁制帯
バンドギャップ
Eg
価電⼦帯
Eg
f(E);フェルミ・ディラック分布関数
⇒半導体中における電⼦の分布関数
0
波数k
⾃由正孔濃度は?
価電⼦帯に存在する単位体積あたりの正孔数
p =  Z ( E ){1 − f ( E )}dE
0
−∞
1-70
フェルミ・ディラック分布関数
半導体中の電⼦の分布を表す
統計⼒学:
相互作用のないフェルミ粒⼦の系において、一つのエネ
ルギー準位にある粒⼦の数(占有数)の分布を与える分
布関数のこと
フェルミ・ディラック分布関数
1-71
ある温度において、電⼦がどのように結晶中のエネルギー
状態(定在波の状態)を占有するか?
フェルミ・ディラックの分布関数
1.電⼦はパウリの排他律に従う
→同一量⼦状態には1つの粒⼦のみ
→それぞれの粒⼦は同一量⼦状態を占有しない
例えば、あるエネルギーにおいて、粒⼦数2、状態数が3のとき、
○
○
○
○
○
○
これだけの可能性がある。
2.粒⼦同士の区別がない。
= B
A
B
A
これらは区別しない。
フェルミ・ディラック分布関数
電⼦の存在確率: f FD ( E )
=
1
 E − Ef
exp
 k BT

 + 1

Ef:フェルミエネルギー(フェルミ準位)
kB:ボルツマン定数
T:絶対温度
フェルミエネルギー(フェルミ準位):Ef
フェルミ・ディラックの分布関数が1/2になるエネルギー
1-72
演習:横軸E、縦軸f(E)として以下の式の概略図を書きな
さい(Tの変化を入れて書くこと)
1
f FD ( E ) =
 E − Ef
exp
 k BT
1-73

 + 1

演習:正孔の分布関数はどのような式になるか? 式および図
で記載しなさい
1-74
1-75
状態密度
Z(E)
単位体積・単位エネルギーあたりに存在する状態数
微視的な状態が
あるエネルギー範囲にどれだけあるかを表す
状態数をエネルギーで微分したものと定義される
状態密度の考え⽅
1-76
パウリの排他律
→ スピンも含めて1量⼦状態に、電⼦は1個のみ
まずは、一次元で考える。
結晶内の電⼦波の存在できる波は?
エネルギー
結晶内
外部
V=0とする
x=0
外部
x=L
シュレーディンガー⽅程式
1-77
フェルミエネルギーは大きく、無限大と仮定する。
 2 d 2ϕ
−
= Eϕ
2
2m dx
d ϕ 2 mE
+ 2 ϕ =0
2
dx

2
k2 =
変形すると、
2 mE
とおく
2

周期的境界条件
1-78
結晶における原⼦数:Nの数は膨大
例
原⼦間距離:a~5Åだとすると
N:1cmあたり 2×107個
*ポイント 周期的境界条件を用いて膨大
な数を表現する。
→x=0とx=Lの波動関数は同じ
ϕ(x) = ϕ(x + L)
これを周期的境界条件と呼ぶ
周期的境界条件
波動関数・エネルギー固有値は?
1-79
ϕ ( x ) = A exp(ikx )
波動関数
周期的境界条件を代入すると ϕ( x) = ϕ( x + L)
⇒k・L=2nπ
ただしn=0、±1、±2、・・・・
またL=Na
k=
2πn
L
波⻑は
λ=
 k
  2 nπ 
=


2m 2m  L 
2
E=
2π L
=
k
n
2
2
2
(n=0、±1、±2・・)
存在可能なEとk=結晶内の定在波
1-80
 2  2π  2
E=

 n
2m  L 
2
10
8
6
4
○
:
存在可能な状態
2
-3
-2
-1
1
2
3
n
※nが整数のときに存在可能
k=
2πn
L
三次元(通常結晶は3次元)への拡張
kz =
2π
nz
L
1-81
2π
L
2π
L
2π
L
存在可能な状態
ky =
2π
ny
L
nx,ny,nz=0,±1,±2,±3,…
kx =
2π
nx
L
K空間と呼ぶ。
三次元への拡張
kz =
1-82
2π
nz
L
ky =
2π
ny
L
エネルギーEが一定の状態
kx =
2π
nx
L
2
2
2
2
E=
(k x + k y + k z )
2m
2
 2 (2π )
2
2
2
=
( n x + n y + nz )
2
2m L
k空間での状態数
1-83
スピンを考えると、各交差点に2つの状態があると考えられる。
nとn+dnの間の交差点の数は?
→ n2=nx2+ny2+nz2 の球を考える。
→ 表⾯積×厚さ=4πn2×dn
スピンを考慮して状態数を求めると×2=8πn2dn
これをエネルギーに置き換える。
EとE+dEの間の状態数
 2  2 nπ 
E=


2m  L 
2
なので
 2  2π 
dE =

 2ndn
2m  L 
2
各エネルギーに対する状態密度
8πn dn = 4π
2
2mE  2 L  2m  2 L 
 dE 2  
 π 
 π 
3
2
m  2L 
= 8π 2 3  
 π 
= L3 * 8π 2
 2  2π 
dE =

 2ndn
2m  L 
2
3
 2 (2π ) 2
E=
n
2m L2
E dE
2
3
2
m
h3
2
1-84
E dE
単位体積あたりとすると、L3で割ればよいので
Z ( E )dE = 8π 2
3
2
m
h3
E dE
Z(E):エネルギー状態密度関数
次元が低くなるとどうなるか?
1-85
三次元結晶におけるエネルギーバンドの状態密度は、
以下の式の通り。
8π 2 1.5
2 m 1 .5
Z (E) =
m
E − Eg = 2 3
3
π 
h
E − Eg
この求め⽅を参考にして、二次元の半導体結晶および一次
元の半導体結晶の伝導帯電⼦の状態密度は、エネルギーに
対してどのような依存性があるか?
二次元の場合
ky
2π
L
 2k 2
E=
2m
半径k
2π
L
1-86
kとk+dkの間に、一辺の⻑さ
kx
2π
L
の正⽅形が何個入るか考える。
を用いて、EとE+dEの間の状態数に
変換し、L2で割って密度を求める。
2πkdk
L2
=
kdk
2
2
π
 2π 


スピン
 L 
L2
kdk
1 m
π
2
=
dE
2
π 2
L2
単位⾯積あたりにするため
二次元の場合の状態密度関数
1-87
従って、
1 m
Z (E) =
π 2
(エネルギーEに依存しない。)
一次元の場合
1-88
kx
2π
L
2π
kとk+dkの間に、
L
スピン
2dk L
= dk
2π
π
L
が何個入るか考える。
一次元の場合の状態密度関数
1-89
スピンを考慮し、
 2 k 2 を用いて、EとE+dEの間の状態数に
E=
2m 変換し、Lで割って密度を求める。
2
1
π
dk ==
2m 1
dE
π E
従って
Z (E) =
2m 1
π E
演習 1次元結晶、2次元結晶、3次元結晶における電⼦のエネルギーバンド
の状態密度のエネルギー依存性の概略を図示しなさい。
Z 3D ( E ) =
8π 2 1.5
m
E
h3
Z2D (E) =
1 m
π 2
Z1 D ( E ) =
2m 1
π E
1-90
Z(E)
1次元
3次元
2次元
E
1-91
今日の内容
半導体⼯学の重要性
エネルギーバンド
フェルミ・ディラック分布関数
状態密度