受持ち看護師の役割意識の向上を目指して

受持ち看護師の役割意識の向上を目指して
「私の患者さま」意識の芽生え
IMS(イムス)グルー プ板橋中央総合病院
消化器外科・呼吸器外 科病棟
Keyword:固定チームナー シング、受 け持ち
看護師
当科は経験年数の浅い看護師が多く、 約 7
Ⅰ .はじ めに
割が 3 年目以下とな っている。若いス タッフ
斎藤今 日子
1.対象:調 査時 2 年目以上の看 護師
Ⅳ . 取り組みの実際
平成 27 年 6 月 15 名、10 月 12 名
平成 28 年4月 17 名(3 年目以上:
5 名/29%、3 年目以下 12 名/71%)
を育成していくために、昨年度固定チー ムナ
2.期間:平 成 27 年 6 月~平成 28 年 4 月
ーシング再構築への取り組みを行った。 現在
3.受持ち看 護師、日々受持ち看護師の 役割
できていることと、不十分であることを 明確
10 月、平成 28 年 4 月/計 3 回)と結果 の
にしていく中で、受持ち看護師としての 役割
業務の認識不足が挙げられた。そこで、 役割
業務についてチェックシートを活用し「 見え
と業務チェッ クを実施(平成 27 年 6 月、
4.勉強会実 施:平成 27 年 8 月
フィードバッ ク
る化」していくことで、業務を理解し行 動す
・用語の定義 、各役割・業務
る事ができれば、受持ち看護師としての 役割
・カンファレ ンス開催方法、内容と
認識があがるのではないかと考えた。再 構築
の取り組みにより、受持ち看護師の役割 、業
務の認識の向上がみられたためここに報 告す
る。
すすめ方
5.ショート カンファレンス、ケースカ ンフ
ァレンス導入 ・記入用紙の作成
6.固定チー ムナーシングマニュアルの 見直
しと改訂
Ⅱ. 概要
診療科:消化器外科、呼吸器外科
患者年齢:60 歳以上 72.7%
男女比:7 対 3
平均稼働率:79.9% 在 院日数:13.6 日
Ⅳ. 結果
ケースカンファレンスを定期的に行える
ように開催の 方法、内容、すすめ方等に つい
手術件数:474 件/年
て説明した。 導入に伴い誰もが分かり情 報を
治療:外科的手術療法、化学療法、
共有できるカ ンファレンス用紙を作成し た。
放射線治療、内視鏡的治療、緩和ケア等
(平成 26 年 4 月~平成 27 年 3 月)
ショートカン ファレンスは時間を決めて 毎日
看護師数:看護師 25 名
行えるよう日 々リーダーに働きかけを行 った。
(師長 1 名、主任 1 名)
看護助手 1 名
医師数:外科 13 名、呼吸器外 科 4 名
平成 27 年 6 月と平 成 28 年 4 月の結果を比
較。改善がみ られた項目は③入院時の受 持ち
その他:クラーク 1 名、薬剤師 1 名
情報の追加修 正⑤チームカンファレンス で受
当科経験年数:1.8 年 ( 平成 28 年 8 月時点)
正・評価⑥看 護計画の患者参画⑨退院に 向け
看護方式:固定チームナーシング 2 チーム
は⑦多職種連 携であった。全体的に改善 がみ
看護師経験年数:3.4 年
勤務体制:2 交代
け持ち患者の 看護問題の確認や計画立案 ・修
ての支援・指 導であり、改善しなかった 項目
られたが、3 年目以下が② ③⑤⑥⑦⑨の項目
が出来ておら ず、受持ち患者の全体像を 把握
し情報を多く持ち、必要に応じて他部門 との
務を理解し行 動できたことが、役割認識 を深
連携を図ること、退院指導・支援をする こと
めることにつ ながっていったのではない かと
ができていなかった。役割に関しては、 全体
考える。
的に評価があがった。3 年目以下では 、④の
ケースカンフ ァレンス、ショートカンフ ァ
受持ち患者の看護の質を高めるためのリ ーダ
レンスの導入 により、受持ち患者の看護 問題
シップを発揮することができていないと いう
を取り上げる ようになり、受持ち患者や 家族
結果であった。
と話す機会も 増えた。退院支援に取り組 むこ
チェックシー トの業務の項目評価が上が っ
とで、リハビ リや薬剤師と関わるように なっ
たこと並行して、受持ち看護師の役割の 項目
た。西元はカ ンファレンスで仲間からの 情報
評価に上昇がみられる結果となった。
追加や助言が 得られれば、ケア計画に新 しい
図1
1
①
②
③
④
⑤
受持ち看護師の役割と業務チェックシート 6 月
受け持ちナースの役割
受け持ち患者の看護に責任を持つ
受け持ち患者の情報管理を行う
受け持ち患者のよい変化の願い行動する
受け持ち患者の看護の質を高めるためにリーダーシップを発揮する
受け持ちナースの役割を理解し、自己の看護観を明確にする
2
受け持ちナース業務
5
アイデアが加 わり問題解決に繋がるヒン トに
4 3 2 1
1 3 8 3 0
0 3 8 4 0
1 6 6 1 1
0 1 6 3 5
0 11 9 5 0
5
4
3
2
なる²⁾と述べ ている。経験年数が低い看 護師
が多いため、 先輩や他のスタッフと意見 交換
し合うことで 、問題解決に繋がっていく と考
1
えられる。患 者の意見を取り入れた看護 計画
① 勤務の日は受け持ち患者に挨拶に行く
② 受身持ち患者・家族の話しを聴く(不安・疑問・要望など)
③ 入院時の受け持ち患者情報の追加修正を記録する(1週間以内に行う)
④ チームメンバーと受け持ち患者情報の共有を行う
⑤ チームカンファレンスで受け持ち患者の看護問題の確認や計画立案・評価・修正を提案する
⑥ 看護計画の立案・評価・修正を患者・家族に説明し記録する(看護計画の患者参画)
⑦ 受け持ち患者情報を多く持ち、必要に応じて他部門との連携をとる(合同カンファレンスの開催)
⑧ 受け持ち患者の全体像を把握してアセスメントできている
⑨ 退院に向けての情報を収集し退院指導している。退院支援している
⑩ 継続医療・看護の役立つサマリーの記録ができる。退院後1週間以内の外来通院に間に合う。
図2
1
①
②
③
④
⑤
2
1
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0
0
0
0
0
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2
受持ち看護師の役割と業務チェックシート4月
受け持ちナースの役割
受け持ち患者の看護に責任を持つ
受け持ち患者の情報管理を行う
受け持ち患者のよい変化の願い行動する
受け持ち患者の看護の質を高めるためにリーダーシップを発揮する
受け持ちナースの役割を理解し、自己の看護観を明確にする
受け持ちナース業務
5
4
3
1
5
2
1
5
3
2
ど、現状だけ ではなく退院後までを含め た看
護について話 し合う事ができるようにな って
きた。各自が 受持ち患者をカンファレン スの
議題に挙げる ようになってきたことは、
「 私の
3 2 1
6 7 1 0
7 7 0 0
6 5 1 0
1 7 4 3
3 10 2 1
4
の立案、方向 性の確認、退院支援の必要 性な
患者さま」意 識が芽生えと言える。
Ⅶ .まと め
役割業務チェ ックシートを活用する事で 業
1
務内容が可視 化され受持ち看護師として 行動
① 勤務の日は受け持ち患者に挨拶に行く
② 受身持ち患者・家族の話しを聴く(不安・疑問・要望など)
③ 入院時の受け持ち患者情報の追加修正を記録する(1週間以内に行う)
④ チームメンバーと受け持ち患者情報の共有を行う
⑤ チームカンファレンスで受け持ち患者の看護問題の確認や計画立案・評価・修正を提案する
⑥ 看護計画の立案・評価・修正を患者・家族に説明し記録する(看護計画の患者参画)
⑦ 受け持ち患者情報を多く持ち、必要に応じて他部門との連携をとる(合同カンファレンスの開催)
⑧ 受け持ち患者の全体像を把握してアセスメントできている
⑨ 退院に向けての情報を収集し退院指導している。退院支援している
⑩ 継続医療・看護の役立つサマリーの記録ができる。退院後1週間以内の外来通院に間に合う。
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0
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1
1
Ⅴ. 考察
本来受持ち看 護師は、受持ち 患者情報の集
する事ができ た。そのことは受持ち看護 師と
しての役割認 識へ繋がり、固定チームナ ーシ
ングの目的に 沿った看護実践に近づく一 歩と
なった。課題 となる退院支援についても カン
ファレンスの 継続と多職種連携を図り、 取り
組みを開始し ているところである。
約、看護過程の展開において責任を持た なけ
受持ち看護師 として「私の患者さま」意識
ればならないが、受持ち看護師として本 来の
と責任を持ち 、役割 と業務を遂行しつつ、
「私
役割・業務が果たせていない現状があっ たと
らしい看護」
「やりたい看護」につなげて いけ
考えられる。西元は、役割は他人に見え ず、
る看護師を育 成していきたい。
理解し合うのはむずかしいが、業務は行 動に
引用文献
出る。適切な先輩からのフィードバック など
1)西元勝子 ・北神洋子:固定チームナ ーシ
があれば理解は深まり、行動できるよう にな
るため、役割・業務のチェック表を作り 、お
2) 西 元 勝 子 ・ 杉 野 元 子 : 固 定 チ ー ム ナ ー シ
互いの理解を深める¹⁾と述べている。チ ェッ
ング-責任と 継続性のある看護のために ,第
クシートを用いて、受持ち看護師として の業
ング入門,p.45,看護の科学社,2013.
3 版,p.115,医学書院,2013.