社会歯科学Ⅱ - 九州歯科大学

社会歯科学Ⅱ
環境と健康
岩崎正則
九州歯科大学地域健康開発歯学分野
平成26年版歯科医師国家試験出題基準
-歯科医学総論総論Ⅱ 健康管理・増進と予防[約9%]
大項目
中項目
ア 環境と適応
イ 地球環境の変化・健康影響
ウ 環境汚染の発生要因・健康影響
エ 公害の健康影響と対策
オ 環境汚染の評価と対策
13 環境保健
カ 廃棄物処理
キ 大気・水と健康
ク 放射線と健康
ケ 騒音・振動と健康
コ 住居と健康
小項目
環境の概念
外部環境
社会,経済,文化なども含め人
聞を取り囲むすべての条件(広義)
人間の生存に影響するすべての
外的条件(健康との関連)
内部環境
皮膚を境とした生体内の環境
健康は内部環境が一定であるこ
とで維持されている。
外部環境の変化は,生体にとっ
ての負荷(ストレス)となる。
外部環境の変化に対して内部環
境を正常範囲に維持するための
恒常性(ホメオスターシス)維持機
構を持っている。
順応と適応
外部環境の変化
(標高が上がる・低酸素)
↓
恒常性を保とうとする機能が働く:順応
(呼吸数,心拍数の増加)
↓
外部環境の変化が長期間にわたり,その順応が恒常的なものとなる:適応
(血中ヘモグロビン量に関連する遺伝子の変異)
環境の概念
外部環境
社会,経済,文化なども含め人
聞を取り囲むすべての条件(広義)
人間の生存に影響するすべての
外的条件(健康との関連)
内部環境
皮膚を境とした生体内の環境
健康は内部環境が一定であるこ
とで維持されている。
※外部環境の変化が大きく,順
応あるいは適応の範囲を越えるよ
うな場合は,健康障害が起き,種
は絶滅する。
↓
環境を保全することは健康を維
持するためにも重要である。
地球規模の環境問題
• 地球温暖化
• オゾン層の破壊
• 森林の減少
• 砂漠化
• 酸性雨
地球温暖化
太陽光により暖めら
れた地表は,熱を宇
宙へ放散させることに
よってその気温を保っ
ている。温室効果ガ
ス(二酸化炭素,フロ
ン,メタン)により,地
表から放散された熱
が吸収され,再び地
表に向けて放射され
ることで地表の気温
が上昇する。
出典:温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センター
ウェブサイト(http://www.jccca.org/)
出典:温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センター
ウェブサイト(http://www.jccca.org/)
出典:温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センター
ウェブサイト(http://www.jccca.org/)
オゾン層の破壊
オゾン層保護に向けた対策
年度
名称
1987
主な内容
モントリオール オゾン層を破壊するおそれのある物質の特定
議定書
とその規制措置を規定
1988
オゾン層
保護法
オゾン層を破壊する物質である特定物質の製
造,排出の規制
1998
家電
リサイクル法
冷蔵庫,クーラー,洗濯機から排出されるフロ
ン類の回収
2001
フロン回収
破壊法
ビル空調,業務用冷蔵庫などから排出される
フロン類の回収破壊
2002
自動車
リサイクル法
カーエアコンから排出されるフロン類の回収
オゾン層は地表から10-50kmの成層圏に存在し,太陽光線に含まれる波長320nm以下の
有害な紫外線(UVB)の大部分を吸収している。
フロン類, トリクロロメタンなどの物質によりオゾン層が破壊され,地表に降り注ぐ紫外線が
増加することで,皮膚がんや白内障などの健康被害,生態系への悪影響が生じることが懸念
されている。
森林の減少
世界の森林面積変化(地域別)
(万ha/年)
世界計
アジア
アフリカ
ヨーロッパ
北中米
南米
オセアニア
400
224 200
88 68 0
‐29 ‐60 ‐1 ‐4 ‐70 ‐200
‐400
‐407 ‐600
‐341 ‐421 ‐521 1990‐2000年
‐800
‐400 2000‐2010年
‐832 ‐1,000
出典:林野庁
世界の森林は,2000年から2010年までの10年間に,植林等による増加分を差し引いて,年
平均で521万ha(我が国の国土面積の約14%)減少している。
地域別にみると,アフリカと南米では,主に熱帯林の伐採により,それぞれ年平均300万ha
以上の大規模な減少が起きている。一方,アジアでは,主に中国における大規模な植林により
年平均224万haの増加がみられる。
持続的でない森林管理や気候変動,森林火災等による森林の減少・劣化は,地球温暖化,
生物多様性の損失,砂漠化の進行等,地球規模での環境問題を更に深刻化させるおそれが
ある。このため,我が国では,各国政府や国際機関,NGO(非政府組織)等と協力して,持続可
能な森林経営を推進するとともに,開発途上地域における森林の整備・保全に協力している。
砂漠化
砂漠化:乾燥地域,半乾燥地域,乾燥半湿潤地域における気候上の変動や,人間活動を含
む様々な要素に起因する土地の劣化
干ばつ・乾燥化などの気候的要因のほか,過放牧,過度の耕作,過度の薪炭材採取による
森林減少などが主な原因となっている。
出典:環境省 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書
酸性雨
O2やH2Oと反応
→H2SO4・HNO3
pH5.6以下に低下
化石燃料の燃焼
→SOx・NOx
• 湖沼・河川の酸性化による魚類の減少
• 森林破壊
• 眼・喉の痛み(人体への影響)
出典:http://www.uitech.jp/ecokids/1/3_01.html
環境汚染と健康
経済生活に伴い環境に放出される化
学物は,自然界に本来存在しない物質
も多い。
こうした難分解性・高蓄積性・慢性毒
性の物質が小動物より大動物に至る食
物連鎖の過程で生体内に著しく濃縮さ
れていく現象を生物濃縮という。
有害重金属
生物濃縮を起こす物質
名称
人への影響
メチル水銀
(アルキル水銀)
視野狭窄,言語障害,知覚障害,運動障害
※水俣病の原因物質
鉛
神経系への中毒(脳障害,疝痛),腎障害,
造血器系への中毒(へム合成阻害,貧血)
カドミウム
腎障害,肺水腫,肺気腫
※イタイイタイ病の原因物質
有機塩素化
合物
PCB(ポリ塩化ビフェニル)
DDT
β-BHC
肝薬物代謝酵素誘導,色素沈着,
クロルアクネ(痤瘡[にきび]様発疹)
脂肪,肝臓,腎臓などの慢性中毒
ヒ素
角化症,色素沈着,黒皮症,皮膚がん,
末梢神経障害,末梢循環器不全
セレン
発がん性,経口慢性毒性
マンガン
精神症状,神経症状
ダイオキシン類
発がん性,催奇形性,神経毒性
公害
イタイイタイ病(1922年~)
発生源
鉱山排水
原因
カドミウム
鉱山排水中のカドミウムが川水の飲用,農作物への蓄積など
によって体内に取り込まれ,腎機能を障害(カルシウム再吸収
阻害)。妊婦に多発。1968年,公害訴訟。
発生機序 ・歯牙にカドミウム黄色環
・肺気腫,気管支炎
・腎障害(Fanconi症候群)
・腎性骨軟化症(多発性骨折)
新潟水俣病(1964年~)
発生源
工場排水(昭和電工)
原因
メチル水銀
発生機序 水俣病を参照。
新潟県阿賀野川流域
富山県神通川流域
三重四日市
熊本県,鹿児島県
水俣湾
四日市喘息(1962年~)
発生源 四日市石油コンビナート
原因
二酸化硫黄(SO2)を含んだ煙への曝露
隣接地区住民,特に若年者と中高年者を中心とし
発生機序
て,気管支端息,慢性気管支炎が多発した。
水俣病(1953年~)
発生源 工場排水(チッソ水俣工場)
原因
メチル水銀
メチル水銀が生物濃縮され,汚染魚介類を長期大量に経口摂取することで発症した神経系疾患。知覚障害,運動
障害と精神症状を示す。また.母体のメチル水銀が胎盤を通して胎児に移行し先天性の知能障害などを示す胎児
発生機序
性水俣病も発生した。
・ハンター・ラッセル症候群:感覚障害,運動失調,視野狭窄,聴力障害
環境基本法
第2条 公害の定義
環境の保全上の支障のうち,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲に
わたる大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染,騒音,振動,地盤の沈下,悪臭によって,
人の健康または生活環境に係る被害が生ずること
典型7公害と規制法令
1. 大気汚染→大気汚染防止法
2. 水質汚濁→水質汚濁防止法・海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
3. 土壌汚染→土壌汚染対策法
4. 騒音→騒音規制法
5. 振動→振動規制法
6. 地盤沈下→建築物用地下水の採取の規制に関する法律・工業用水法
7. 悪臭→悪臭防止法
第3~5条 基本的な理念
• 環境の恵沢の享受と継承
• 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築
• 国際的協調による地球環境保全の積極的推進
環境基本法
第6~9条 各主体の義務
国,地方公共団体,事業者,国民には,環境保全に関する施策の策定,実施,協力な
どの責務がある
第15条 環境基本計画(次スライド)
政府は,目的を達成するため,環境の保全に関する基本的な計画(環境基本計画)を定
めなければならない
第16条 環境基準
政府は,大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音に係る環境上の条件について,人の健
康を保護し,生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として環境基準を定
めるものとする
施策を実施していく際の行政目標である
環境基準とは別に排出基準が設定される
ダイオキシン類は「ダイオキシン類特別措置法」で規定されている
出典:環境省
出典:環境省
出典:環境省
出典:環境省
大気汚染対策
わが国では,大気環境を保全するため,1968年に「大気汚染防止法」が制定された。こ
の法律は,大気汚染に関して,国民の健康を保護するとともに,生活環境を保全すること
などを目的としている。
制度の概要
人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として,「環
境基準」が環境基本法において設定されており,この環境基準を達成することを目標に,
大気汚染防止法に基づいて規制を実施している。
大気汚染防止法では,固定発生源(工場や事業場)から排出又は飛散する大気汚染物
質について,物質の種類ごと,施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められており,大
気汚染物質の排出者等はこの基準を守らなければならない。
大気汚染防止法による規制物質
•
ばい煙
物の燃焼等に伴い発生する硫黄酸化物,ばいじん(いわゆるスス),有害物質をいう。
•
揮発性有機化合物
大気中に排出され,又は飛散した時に気体である有機化合物をいう。トルエン,ベンゼン,トリクロ
ロエチレン,ジクロロメタンなど。
•
粉じん
物の破砕やたい積等により発生し,又は飛散する物質をいう。このうち,大気汚染防止法では,人
の健康に被害を生じるおそれのある物質を「特定粉じん」(現在,石綿を指定),それ以外の粉じんを
「一般粉じん」として定めている。
•
有害大気汚染物質
低濃度であっても長期的な摂取により健康影響が生ずるおそれのある物質のことをいい,科学的
知見の充実の下に,将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるよう施策を講じること
とされている。
該当する可能性のある物質として248種類,そのうち特に優先的に対策に取り組むべき物質(優先
取組物質)として23種類がリストアップされている。
有害大気汚染物質については,十分な科学的知見が整っているわけではないが,未然防止の観
点から,早急に排出抑制を行わなければならない物質(指定物質)として,1) ベンゼン,2) トリクロロ
エチレン,3) テトラクロロエチレンの3物質が指定され,それぞれ排出抑制基準が定められている。
大気汚染に関わる指標
物質
環境上の条件
測定方法
二酸化硫黄
(SO2)
1時間値の1日平均値が0.04ppm以下で
あること。
溶液導電率法又は紫外線蛍光法
一酸化炭素
(CO)
1時間値の1日平均値が10ppm 以下で
あること。
非分散型赤外分析計を用いる方法
浮遊粒子状物質
(SPM)
1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下
であること。
濾過捕集による重量濃度測定方法又はこの方
法によって測定された重量濃度と直線的な関係
を有する量が得られる光散乱法,圧電天びん法
若しくはベータ線吸収法
二酸化窒素
(NO2)
1時間値の1日平均値が0.04ppmから
0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下で
あること。
ザルツマン試薬を用いる吸光光度法又はオゾン
を用いる化学発光法
微小粒子状物質
(PM2.5:粒径
25μm以下)
1年平均値が15μg/m3以下であり,かつ, 微小粒子状物質による大気の汚染の状況を的
1日平均値が35μg/m3以下であること。
確に把握することができると認められる場所にお
いて,濾過捕集による質量濃度測定方法又はこ
の方法によって測定された質量濃度と等価な値
が得られると認められる自動測定機による方法
大気汚染に関わる指標
物質
主な発生源
健康影響
二酸化硫黄
(SO2)
工場,火力発電所,自動車
硫黄分を含む石炭,石油の年少
慢性気管支炎
気管支喘息
眼・皮膚刺激
※四日市喘息や酸性雨の原因
一酸化炭素
(CO)
自動車,喫煙
低酸素状態
中枢神経系の機能低下
頭痛・めまい
浮遊粒子状物質
(SPM)
工場,火力発電所,自動車
肺線維結節変化
肺がん
アレルギー
二酸化窒素
(NO2)
化石燃料の燃焼
慢性気管支炎
肺気腫
閉塞性細気管支炎
サイロ病
※酸性雨,光化学スモッグの原因物質
微小粒子状物質
(PM2.5:粒径
25μm以下)
工場,火力発電所,自動車
肺線維結節変化
肺がん
アレルギー
※PM2.5は肺の深部に達するため呼吸器への影
響が大きい。
PM (particulate matter) 2.5
降下ばいじん
粒径10μm以下の
浮遊粒子状物質(SPM)
大気中の
粒子状物質
粒径2.5μm以下の
浮遊粒子状物質
浮遊粉じん(SP)
微小粒子状
物質(PM2.5)
上記以外
大気中に浮遊している2.5μm以下の
小さな粒子のことで,従来から環境基
準を定めて対策を進めてきた浮遊粒子
状物質(SPM:10μm以下の粒子)より
も小さな粒子。
PM2.5は非常に小さいため(髪の毛の
太さの1/30程度),肺の奥深くまで入り
やすく,呼吸系への影響に加え,循環
器系への影響が懸念されている。
髪の毛
(直径約70μm)
PM2.5
(粒径2.5μm以下)
SPM
(粒径10μm以下)
海岸の細砂
(粒径約90μm)
出典:環境省
大気汚染に関わる指標
物質
環境上の条件
測定方法
光化学オキシダント
(OX)
1時間値が0.06ppm以下
であること 。
※0.12ppm以上で光化学スモッグ
注意報
中性ヨウ化カリウム溶液を用いる吸光光度法若
しくは電量法,紫外線吸収法又はエチレンを用い
る化学発光法
ベンゼン
1年平均値が0.003mg/m3以下
であること。
キャニスター又は捕集管により採取した試料をガ
スクロマトグラフ質量分析計により測定する方法
を標準法とする。
トリクロロエチレン
1年平均値が0.2mg/m3以下
であること。
テトラクロロエチレン
1年平均値が0.2mg/m3以下
であること。
ジクロロメタン
1年平均値が0.15mg/m3以下
であること。
ダイオキシン類
1年平均値が0.6pg-TEQ/m3以下
であること。
ポリウレタンフォームを装着した採取筒をろ紙後
段に取り付けたエアサンプラーにより採取した試
料を高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計によ
り測定する方法。
大気汚染に関わる指標
物質
主な発生源
健康影響
光化学オキシダント
(OX)
炭化水素や窒素酸化物などが太
陽光線の作用により反応し,二次
的に生成
※光化学スモッグは夏の晴れた日
の風の弱い正午頃に発生
粘膜症状,手足のしびれ,発熱,頭痛,痙攣,呼
吸困難
※建造物にも影響
ベンゼン
ガソリン,化学工業の原料などの
燃焼により発生
発がん性(白血病),中枢神経作用,皮膚・粘膜
刺激,骨髄毒性(再生不良性貧血)
トリクロロエチレン
化学工業の原料,工業製品の洗
浄,溶剤,ドライクリーニングなど
※容易に蒸発し,雨に溶けて,地
下水や河川を汚染
発がん性(食道がん・肝がん),中枢神経作用
(めまい,協調運動失調),肝障害,腎障害
ジクロロメタン
化学工業製品の洗浄用剤,ウレタ
ン発泡補助剤,塗装剥離剤など
中枢神経作用(麻酔作用),皮膚・粘膜刺激
※動物実験で発がん性
ダイオキシン類
ごみ焼却,喫煙,自動車の排気ガ
スなど
生殖・免疫系への影響,発がん性(白血病),神
経毒性,催奇形性
テトラクロロエチレン
水質汚濁の原因となるもの
•
一般生活廃水などによる河川の水質汚染・水質汚濁
•
工業排水などによる地下水の汚染,河川の水質汚染,海洋の水質汚染
•
産業廃棄物や不法投棄などやし尿による河川水質汚染
•
海上での船舶から流れ出る油の流出,船舶排水による海洋の水質汚染
•
雪や雨などといった空気中の大気汚染物質が含まれていることによる水質汚染
•
農薬による地下水の水質汚染,河川の水質汚染
出典:沖縄県
水質に関する基準
水質に関する基準には,
• 『水道法』に基づく水道水質基準(飲料水),
• 『環境基本法』に基づく環境基準(公共用水域と地下水),
• 『水質汚濁防止法』に基づく排水基準(工場・事業場から公共用水域などへの排水)
の3つがある。『環境基本法』と『水質汚濁防止法』では,それぞれ健康に関する項目(有害物質の規
制)と生活環境に関する項目(水質汚濁の指標)に分けて基準が設定されている。
水道水質基準(水道法)
病原微生物,有害物質,
水の性状に関するものな
ど50項目を規定
大腸菌は検出されない
こととしている
環境基準(環境基本法)
排水基準(水質汚濁防止法)
人の健康の保護に関する
環境基準
健康に係る有害物質
についての排水基準
有害物質の規制
生活環境の保全に関する
環境基準
生活環境に係る汚染状態
についての排水基準
水質汚濁に係る
基準値を設定
有害物質の規制(健康に関する項目)
公共用水域・地下水の有害物質について『環境基本法』の「人の健康の保護に関する環境基準」
により基準値が定められている。また,汚染や廃液を排出する工場や事業場の排水に対しては,『水
質汚濁防止法』により「健康に係る有害物質についての排水基準」が定められている。
生物濃縮が生じうる有害物質として,環境基準・排水基準ともに「検出されないこと」を基準値とし
ている物質がある。環境基準においては全シアン,アルキル水銀,PCBが検出されてはならない。
基準
人の健康の保護に
関する環境基準
健康に係る有害物質
についての排水基準
検出されないこと
全シアン
アルキル水銀
PCB
基準値以下であること
カドミウム,鉛,六価クロム,砒素,
総水銀,ジクロロメタン,四塩化
炭素,1,2-ジクロロエタン,1,1-ジ
クロロエチレン,シス-1,2-ジクロ
ロエチレン,1,1,1-トリクロロエタ
ン,1,1,2-トリクロロエタン,トリク
ロロエチレン,テトラクロロエチレ
ン,1,3-ジクロロプロペン,チウラ
ム,シマジン,チオベンカルブ,
ベンゼン,セレン,硝酸性窒素及
び亜硝酸性窒素,ふっ素,ほう素,
1,4-ジオキサン
アルキル水銀のみ「検出されないこと」としている
水質汚濁の指標(生活環境に関する項目)
生活環境を保全するために,公共用水域(河川,湖沼,海域)ごとに「生活環境の保全に関する環
境基準」による基準値が設定されている。また,工場や事業場などから排出される汚水や廃液につ
いては「生活環境に係る汚染状態についての排水基準」が基準値を定めている。
海域
湖沼
河川
排水基準
環境基準
項目
指標
水素イオン濃度
(pH)
河川水は通常㏗6.5~8.5を示すが,生活排水,工場排水などの人為汚染,夏期における植物プランクトンの
光合成等の要因により酸性にもアルカリ性にもシフトする。
○ ○ ○ ○
水中に溶け込んでいる酸素量を示す指標。
水質汚濁が進むとDO値が低下する。水生生物の窒息死,悪臭を招く。
○ ○ ○
溶存酸素量(DO)
生物化学的酸素要求量
(BOD)
水中の有機物が微生物の働きによって分解されるときに消費される酸素の量のことで,河川の有機汚濁を測
○
る代表的な指標。BOD値が高いほど河水の有機物が多く,汚染が高度。
○
化学的酸素要求量(COD)
水中の有機物を酸化剤で分解する際に消費される酸化剤の量を酸素量に換算したもので,海水や湖沼水質
の有機物による汚濁状況を測る代表的な指標。COD値が高いほど有機物が多く,汚染が高度。
浮遊物質量
(SS)
水中に浮遊または懸濁している直径2mm以下の粒子状物質のこと。SS値が高いほど水が濁っており,汚染
が高度。
○ ○
大腸菌群数
し尿汚染の指標として使われている。
環境基準:河川,湖沼及び海域について,類型ごとに定められている
排水基準:3,000個/cm3以下
水道水質基準:検出されないこと
○ ○ ○ ○
n-ヘキサン抽出物質
含有量(油分など)
全リン含有量
全窒素含有量
全亜鉛含有量
フェノール類含有量
銅含有量
溶解性鉄含有量
溶解性マンガン含有量
クロム含有量
海域の油分による汚染指標。
湖沼,海域の富栄養化による汚染指標
水生生物の保全に係る環境基準項目
利水・水生生物の保全に関する汚染指標(水への異臭味・生物への毒性)
水生生物の保全に関する汚染指標(下等生物への毒性)
利水・水の富栄養化による汚染指標(藻類の発生の促進)
利水面での汚染指標(水の異臭味,配管内への析出など)
地下水・土壌汚染に関連した指標
○ ○ ○
○
○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○ ○
○
○
○
○
○
上水道
水道とは,「導管その他の工作物によって人の飲用に適する水を供給する施設の総体をい
う」(『水道法』)と定義されている。
100
90
水道普及率
= 97.7%(2013年)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1943
1953
1963
1973
1983
1993
2003
2013
上水道の浄化法
『水道法』に基づく水道水基準に適合した水を作るため,沈殿,濾過,消毒という段階を経て
水の浄化が行われている。
•
•
緩速濾過法:原水の流速を落とし,重力による沈殿ののち,濾過砂層表面に形成された生物濾過膜により水
を濾過する方法
急速濾過法:硫酸アルミニウム,ポリ塩化アルミ二ウムなどの凝集剤を原水に加え,凝集塊(Floc:フロック)
の形成により水を濾過する方法。微生物が増えにくく,日本で最も広く採用されている。
消毒方法:消毒には塩素や紫外線,オゾンを用いる。
水道法では塩素消毒のみが義務付けられており,「給水栓における水が遊離残留塩素を0.1mg/L以上保持す
るように塩素消毒をすること」と規定されている。
近年,塩素消毒によるトリハロメタンの発生や,クリフトスポリジウムなどの塩素耐性原虫類による健康被害が
問題となっている。
水道水質基準
水道法第4条に基づいて厚生労働省令によって定められている。「水質基準項目」51項目,水質
管理上留意すべき項目として「水質管理目標設定項目」(26項目),今後必要な情報・知見の収集
に努めていくべき項目として「要検討項目」(47項目)が,それぞれ定められている
水質基準項目
51項目
水質管理
目標設定項目
26項目
要検討項目
47項目
水道水として基準以下であることが求められる項目
水道法により,検査が義務付けられている項目
今後,水道水中で検出される可能性があるなど,
水道管理において留意する必要がある項目
毒性評価や水道水中での検出実態が明らかでないなどの理由で,水質基準や水質管理項目目標設定項目に分類できな
かった項目
「必要な情報・知見の収集に努めていくべき」とされている項目
水道水質基準
水道法第4条に基づいて厚生労働省令によって定められている。「水質基準項目」51項目,水質
管理上留意すべき項目として「水質管理目標設定項目」(26項目),今後必要な情報・知見の収集
に努めていくべき項目として「要検討項目」(47項目)が,それぞれ定められている。
区分
病原微生物の指標
無機物質・重金属
一般有機化学物質
項目
一般細菌
大腸菌
カドミウム及びその化合物
水銀及びその化合物
セレン及びその化合物
鉛及びその化合物
ヒ素及びその化合物
六価クロム化合物
亜硝酸態窒素
シアン化物イオン及び塩化シアン
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
フッ素及びその化合物
ホウ素及びその化合物
四塩化炭素
1,4-ジオキサン
シス-1,2-ジクロロエチレン及び
トランス-1,2-ジクロロエチレン
ジクロロメタン
テトラクロロエチレン
トリクロロエチレン
ベンゼン
基準
1mlの検水で形成される集落数が100以下
検出されないこと
カドミウムの量に関して,0.003mg/L以下
水銀の量に関して,0.0005mg/L以下
セレンの量に関して,0.01mg/L以下
鉛の量に関して,0.01mg/L以下
ヒ素の量に関して,0.01mg/L以下
六価クロムの量に関して,0.05mg/L以下
0.04mg/L以下
シアンの量に関して,0.01mg/L以下
10mg/L以下
フッ素の量に関して,0.8mg/L以下
ホウ素の量に関して,1.0mg/L以下
0.002mg/L以下
0.05mg/L以下
0.04mg/L以下
0.02mg/L以下
0.01mg/L以下
0.01mg/L以下
0.01mg/L以下
水道水質基準(続き)
区分
消毒副生成物
色・味
発泡
臭気
発泡
臭気
味
基礎的性状
項目
塩素酸
クロロ酢酸
クロロホルム
ジクロロ酢酸
ジブロモクロロメタン
臭素酸
総トリハロメタン
トリクロロ酢酸
ブロモジクロロメタン
ブロモホルム
ホルムアルデヒド
亜鉛及びその化合物
アルミニウム及びその化合物
鉄及びその化合物
銅及びその化合物
ナトリウム及びその化合物
マンガン及びその化合物
塩化物イオン
カルシウム,マグネシウム等(硬度)
蒸発残留物
陰イオン界面活性剤
ジェオスミン
2-メチルイソボルネオール
非イオン界面活性剤
フェノール類
有機物(全有機炭素(TOC)の量)
pH値
味
臭気
色度
濁度
基準
0.6mg/L以下
0.02mg/L以下
0.06mg/L以下
0.03mg/L以下
0.1mg/L以下
0.01mg/L以下
0.1mg/L以下
0.03mg/L以下
0.03mg/L以下
0.09mg/L以下
0.08mg/L以下
亜鉛の量に関して,1.0mg/L以下
アルミニウムの量に関して,0.2mg/L以下
鉄の量に関して,0.3mg/L以下
銅の量に関して,1.0mg/L以下
ナトリウムの量に関して,200mg/L以下
マンガンの量に関して,0.05mg/L以下
200mg/L以下
300mg/L以下
500mg/L以下
0.2mg/L以下
0.00001mg/L以下
0.00001mg/L以下
0.02mg/L以下
フェノールの量に換算して,0.005mg/L以下
3mg/L以下
5.8以上8.6以下
異常でないこと
異常でないこと
5度以下
2度以下
下水道
役割
• トイレの水洗化
• 居住環境の改善
• 雨水の排除
• 公共用水域の水質の保全
90
80
下水道普及率
= 77.6%(2014年)
70
60
50
40
30
20
10
0
1969
1974
1979
1984
1989
1994
1999
2004
2009
2014
下水道の種類
下水道には,市街地の汚水・雨水の排水・処理を行う公共下水道,河川流域単位での汚水・雨
水の処理を行う流域下水道,主として市街地で専ら雨水の排除を行う都市下水路がある。
出典:新潟県
汚水処理
日本の汚水処理(二次処理)のほとんどは生物処理法である。生物処理法は,浮遊生物法と固着生物法に分けられ,下水処理
場の多くでは浮遊生物法(中でも活性汚泥法)を用いている。
好気性薗を大量に含む活性汚泥を汚水に加える。曝気槽で汚水
を空気と混ぜ合わせ,好気性菌と反応させる。
処理速度,BODおよび細菌の除去率ともに高く,現在日本で最も
広く用いられている。
出典:新潟県
化学物質の影響:内分泌かく乱物質
生物個体の内分泌系に変化を起こさせ,その個体又はその子孫に健康障害を誘発する外因性物質
内分泌かく乱物質と環境ホルモンの違い:
内分泌かく乱物質と環境ホルモンは同じものを意味している。
広く知られるきっかけとなったNHKの特集番組で使用されたことと馴染みやすさから,一般には環境ホルモン
として知られている。学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会から「環境ホルモン」の用語の
使用について,明確な定義のあるホルモン(内分泌)という言葉をこれと違った概念的な用語として用いることは不
適切であること,また,そのような用語の使用により,生殖腺の異常や精子数の減少,発生の異常や癌の多発等
の原因が未解明であるにもかかわらず,こうした異常はすべて「環境ホルモン」が原因であるかのような誤解と不
安を社会に対して助長する恐れがあること,などの点を考慮すれば,作用が限定され理解しやすい「内分泌かく
乱物質」を使用する方が適切であるとの考えが出されている。
主な作用
抗エストロゲン作用
化学物質
ビスフェノールA(樹脂の原料)ノニルフェノール(界面活性剤,樹脂添加物)フタル酸エス
テル(プラスティック可塑剤)など
ダイオキシン トリブチル錫(スズ)(船底塗料剤) など
甲状腺ホルモン作用
PCB(熱媒体,変圧器油)フタル酸エステル(溶剤,可塑剤)
エストロゲン作用
化学物質の影響:ダイオキシン類
ダイオキシン類は塩化ビニルなどの焼却に伴って発生する極めて毒性の強い化学物質である。発がん性,催
奇形性などの毒性をもち,微量でも生殖・免疫に影響することから,『ダイオキシン類対策特別措置法』が「環境基
準」,「排出基準」,「耐容一日摂取量(TDI)」を定めて規制を行っている。
ダイオキシンはごみ焼却炉,たばこの煙,自動車の排出ガスなどから発生し,大気中から土壌・水質の汚染を
経てヒトへと吸収される。そのほとんどが魚介類の経口摂取によるものである。
総排出量(g‐TEQ/年)
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
1
9
9
7
1
9
9
8
1
9
9
9
2
0
0
0
2
0
0
1
2
0
0
2
2
0
0
3
2
0
0
4
2
0
0
5
2
0
0
6
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
ダイオキシン類一日摂取量
(pg‐TEQ/kg/日)
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1
9
9
8
1
9
9
9
2
0
0
0
2
0
0
1
2
0
0
2
2
0
0
3
2
0
0
4
2
0
0
5
2
0
0
6
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
2
0
1
2
2
0
1
3
循環型社会形成のための
法制度と3R政策
3Rは,環境と経済が両立した循環型社会を形成していくた
めの3つの取組の頭文字をとったもの。3Rは,リデュース,リ
ユース,リサイクルの順番で取り組むことが求められている。
出典:3R推進協議会
廃棄物の分類
廃棄物は,事業活動に伴って生じる産業廃棄物と家庭から排出される生活系ごみを主とする一
般廃棄物に大別される。これら廃棄物の処理方法は『廃棄物の処理及び清掃に関する,法律』(廃
棄物処理法)により規定されている。
廃棄物のうち,爆発性・毒性・感染性など,人の健康または生活環境に関わる被害を生じるおそ
れのあるものを特別管理廃棄物といい,その処理には厳重な規定が設けられている。
感染性廃棄物
「感染性廃棄物」とは,医療行為等により廃棄物となったもののうち,人が感染し,若しくは感染す
るおそれのある病原体が含まれ,若しくは付着し,又はこれらのおそれのあるものをいう。
感染性廃棄物の判断は医療機関など(病院,診療所,衛生検査所,介護老人施設)からの廃棄
物が対象となる。感染性廃棄物処理マニュアルに基づき,廃棄物の「形状」「排出場所」「感染症の
種類」の観点から感染性,非感染性の判断を行う。
感染性廃棄物の判断基準
【STEP 2】(排出場所)
感染症病床,結核病床,手術室,緊急外来室,集中治療室及び検査室において治療,検査等に使
用された後,排出されたもの
【STEP 3】(感染症の種類)
① 感染症法の一類,二類,三類感染症,新型インフルエンザ等感染症,指定感染症及び新感染症
の治療,検査等に使用された後,排出されたもの
② 感染症法の四類及び五類感染症の治療,検査等に使用された後,排出された医療器材等(ただ
し,紙おむつについては特定の感染症に係るもの等に限る。)
非感染性廃棄物
感染性廃棄物
【STEP 1】(形状)
廃棄物が以下のいずれかに該当する。
① 血液,血清,血漿及び体液(精液を含む。)(以下「血液等」という。)
② 病理廃棄物(臓器,組織,皮膚等)
③ 病原微生物に関連した試験,検査等に用いられたもの
④ 血液等が付着している鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む。)
※血液等が付着していない鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む)も感染性廃棄物と同等の取り
扱いをする。
感染性廃棄物の保管
感染性廃棄物は,排出の時点で容器に直接分別することが望ましい。
やむを得ず,梱包前の感染性廃棄物を移動する,施設内で移し替えする等がある場合,ふたの
ついた容器に入れて移動し,飛散・流出しないよう十分に注意する。
• 液状又は泥状のもの
血液等の液状又は泥状のものは,廃液等が漏洩しない密閉容器を使用すること。
• 固形状のもの
血液が付着したガーゼ等の固形状のものは,丈夫なプラスチック袋を二重にして使用するか,堅牢
な容器を使用すること。
• 鋭利なもの
注射針,メス等の鋭利なものは,金属製,プラスチック製等の耐貫通性のある堅牢な容器を使用す
ること。
上記3つの性状に応じて分別を行い,バイオハザードマークを付ける。
感染性廃棄物の処理
• 医療関係機関は感染性廃棄物の処理に関して,特別管理産業廃棄物管理責任者(医師,薬剤師,看護師など)を置き,処理計
画を定める。
• 感染性廃棄物は原則として施設内で滅菌・消毒をした後,非感染性廃棄物として処理するが,施設内で滅菌・消毒ができない場
合は特別管理産業廃棄物収集運搬業者および処理業者に委託して処理を行う。
• 委託処理を行う場合,通常の産業廃棄物と同様にマニフェストシステムが適用される。
※医療関係機関等は,法により医療廃棄物の処理を他人に委託する場合,医療廃棄物を引き渡す際に,定められた様式による
産業廃棄物管理票(マニフェスト)に必要事項を記入して交付することが義務付けられている。
生活環境の管理
適切な換気の指標(後述)
空気の成分
アルゴン, 0.93%
人間にとっては酸素が
最も重要で,濃度が下が
ると酸欠症となる(O2濃
度14~16 %で酸欠状態,
12 %で酸欠症発症)。発
酵タンク,下水管内作業
での酸欠事故がしばしば
発生する。また,不完全
燃焼により発生した一酸
化炭素(CO:無色無臭の
空気よりやや軽い気体)
は,赤血球中のヘモグロ
ビンに対する親和性がO2
の250倍以上と高いため
に,低濃度(10ppm)でも
影響が現れ,高濃度
(5,000ppm)では中毒死
する。
二酸化炭素,
0.03%
その他, 0.01%
酸素, 20.94%
窒素, 78.09%
生活環境の管理
気積:屋内作業場で人間1人が必要とする部屋の容積をいう。底面から4mの高さの空
間とその空間に存在する物体の容積を除外した空間容積を在室人数で割って算出す
る。『事務所衛生基準規則』では1人あたりの気積を10m3以上と定めている。
換気:居住環境の快適性を保持すること,作業効率低下の防止を目的としている。適
切な換気の指標はCO2で,通常の室内ではCO2濃度を0.1%以下に保つようにする。
温熱
人間の行動や活動は環境温度により,その効率が大きく変化する。しかし温度が高くても風があると涼しく感じるように,気温の
高低だけが人間の温熱感覚を左右する尺度ではない。 気温・湿度・気流・輻射熱を組合せた不快指数などの温熱指数を用いる。
アスマン通風乾湿計
出典:Shibata Science Technology・日本計量器工業株式会社
アウグスト乾湿計
熱線風速計
カタ温度計
黒球温度計
出典:ヤガミ・OMEGA
シックハウス症候群
•
•
•
住居内での住宅建材(接着剤,壁紙,塗料)や家具から発生する化学物質やカビ・ダニによる室内空気汚染
に由来する皮膚・粘膜刺激症状,不定愁訴などの健康障害の総称。
空気中に揮発し,室内空気汚染の原因となる化学物質を揮発性有機化合物(VOC)といい,シックハウス症候
群の予防対策は室内のVOCの低減が主となる。
建築基準法による対策:居室内において化学物質(ホルムアルデヒド及びクロルピリホス)の発散による衛生
上の支障がないよう建築材料及び換気設備の規制が導入された。
① ホルムアルデヒドに関する建材,換気設備の規制内装仕上げの制限・換気設備の義務付け・天井裏など
の制限
例えば住宅の場合,換気回数0.5回/h以上の機械換気設備(いわゆる24時間換気システムなど)の設置が
必要となった。
② クロルピリホス対策
シロアリ駆除剤等に用いられていたクロルピリホスの使用を禁止している。
化学物質過敏症
微量の化学物質に反応し,非アレルギー性の過敏状態の発現により,精神・身体症状を示す病態とされる。し
かし,その病態や発生機序については未解明な部分も多い。
化学物質による健康被害ということで,シックハウス症候群と混同される。しかし,シックハウス症候群は「建物
に由来する」ことが必須となる健康障害であるのに対し化学物質過敏症の発症は「建物に由来する」物質に限定
されない。