慢性心不全患者が減塩方法を外来で習得し継続するための取り組み

慢性心不全患者が減塩方法を外来で習得し継続するための取り組み
発表者:○西田路子 高山美佳
和地美知子
鈴木洋子
施設名:自治医科大学附属病院
住所:栃木県下野市薬師寺 3311-1
電話:0285-44-2111
小川里美 半田知子
Ⅰ.はじめに
当院は病床 1132 床を有する特定機能病院であ
り、診療科は 46 科を開設している。第 2 外来は、
口構造や家族構成などの社会環境の変化に伴い、
複合的な問題を抱えている医療依存度の高い患
25 科の診療科を 7 つの看護チームに分け看護活
動を行っている。第 2 外来の診療科を受診する患
者は 1 日平均 2000 名おり外来看護師は、各診療
者が増加している。そのため、患者とその家族が
安心して在宅療養が送れるよう包括的な支援が
求められている。平成 27 年度から外来で固定チ
科の特有の診療・検査や処置の介助、生活指導等
ームナーシングを導入し、継続した在宅支援を実
を実施している。また、慢性疾患患者の増加、人
践したため、その成果を報告する。
平成 27 年度 外来固定チーム概要
対象診療科(25 科)
チーム
A チーム:循環器内科、心臓血管外科、呼吸器内科、呼吸器外科
D チーム:乳腺科、麻酔科
E チーム:皮膚科、形成・美容外科
総合診療内科、感染症科
B チーム:消化器・肝臓内科、消化器外科、神経内科、脳神経外科
F チーム:泌尿器科、腎臓内科
血液科、内分泌代謝科、緩和ケア科
腎臓外科、耳鼻咽喉科
C チーム:アレルギー・リウマチ科、整形外科、眼科
G チーム:産婦人科・生殖医学センター
図1:組織図
師長
組織図
主任
主任
主任(CN)
A
B
C
リーダー
リーダー
リーダー
主任
主任
主任
D
E
F
G
リーダー
リーダー
リーダー
リーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
サブリーダー
メンバー3名
メンバー3名
メンバー3名
メンバー3名
メンバー3名
メンバー3名
メンバー4名
メンバー2名
メンバー2名
メンバー4名
メンバー4名
【A】慢性心不全患者の在宅支援、術前・治療継続の看護、緊急受診患者の対応、HOT 導入患者の酸素管理や生活指導
看護の特 徴
【B】がん患者の術前・治療継続の看護や終末期の在宅支援、緊急受診患者の対応、在宅医療処置が必要な患者の指導
【C】硝子体注射を受ける患者の看護、失明の不安を抱いている患者の精神的支援、生物学的製剤の自己注射指導
【D】乳がん治療を受ける患者の看護、慢性疼痛のある患者の処置介助・指導
【E】形成術・悪性腫瘍・診断確定に必要な外来手術を受ける患者の看護、在宅で処置・自己管理が必要な患者の支援
【F】間欠自己導尿・泌尿器カテーテル留置中の患者の指導と継続的な在宅支援、頭頸部がん患者の術前・術後の看護
【G】婦人科がん患者の看護や終末期の在宅支援、不妊・不育症患者の生活指導、妊娠性糖尿病患者の精神的支援
部署・チーム目標
【部署】在宅療養を見据えた継続看護を実践するため、多職種・他部門と連携し、外来での在宅支援体制を整備する。
【A】1.慢性心不全で再入院を繰り返している NYHAⅡ以上の患者が、減塩方法を習得できるように支援する。
【B】1.骨髄移植患者が皮膚症状に合わせたセルフケアを
【C】1.硝子体注射を受ける患者が、治療を受容できるように初回の
継続できるよう支援する。2.糖尿病患者が足病変を理解し
治療から継続的に支援する。2.自己注射を受ける患者が、必要な管理
て対処法を実践し、QOL を維持できるように支援する。
方法を理解し、自己注射を継続することができるよう支援する。
【D】1.乳がんと診断された患者に対して、「生活のしやす
【E】1.手術に対する不安がある患者が安心・安全に手術を受けられ
さに関する質問票」を記入してもらい面談する。
る。2.水疱症患者が在宅で継続して処置が行えるように支援する。
【F】1.清潔間欠自己導尿患者の現状を把握し、外来スタ
【G】1.婦人科がんの終末期患者が、療養場所を意思決定できるよう
ッフが統一した継続看護を提供する。2.治療目的で入院す
支援する。2.妊娠成立および妊娠継続に対する健康課題を明らかに
る頭頸部がん患者が、口腔ケアの必要性を理解し治療に向
し、患者が主体的に行動変容できるよう継続的に支援する。
けて準備できるよう支援する。
Ⅱ.施設概要(平成 27 年度)
プログラム使用患者は 12 名で、うち 2 名が減
【病院概要】
塩方法を習得できた。3 名が緊急入院で離脱し
病床数:1132 床 診療科:46 科
平均在院日数:13.9 日
たため達成率は 40%とした。現在、離脱者 2 名
も再度介入を開始し、計 9 名の患者に対し、プ
看護職員数:1329 名
ログラムに添って継続的に介入している。
看護方式:固定チームナーシング
【部署概要】
3.プログラムで指導した患者の事例検討会を 3
事例以上実施(実施率 100%)
診療科:25 科 平均受診者数:約 2000 名/日
職員数:59 名(看護師長 1 名、主任 6 名含む)
看護平均年齢:40.4 歳 配属経験年数:7.1 年
3 事例検討会を実施、評価したことから達成率
100%とした。
Ⅴ.事例による評価
看護職経験平均年数:15.9 年
乳がん看護認定看護師 1 名
皮膚排泄ケア認定看護師 1 名
【事例紹介】
患者 A 氏 60 歳代 女性 仕事:農業の手伝い
診断名:多発性骨髄腫 アミロイド―シス
看護補助員:7 名
Ⅲ.チームの特性とやりたい看護
第 2 外来の A チームは、循環器内科、心臓血
管外科、総合診療内科、呼吸器内科、呼吸器外科、
感染症科の 6 診療科の看護業務を担っている。受
診者数は 1 日平均 300 名おり、5 名の看護師で急
性期から慢性期まで幅広い患者の対応を行って
いる。その中で循環器内科の緊急入院患者数は年
間 164 名で、そのうち 75 名(45.7%)が心不全
悪化で入院をしている。心不全が悪化する要因の
NYHA 分類:Ⅲ度(高度な身体活動の制限あり)
要約:短期間で急激に体重増加し、下肢の浮腫、
右胸水貯留、CTR71%と慢性心不全が増悪した。
本人が外来での治療を希望したため、外来でプ
ログラムによる減塩指導が開始となった。
【指導の実践と評価】
1.介入時期の変更
心不全症状が悪化していたことから、2 回目か
ら予定していた栄養指導を早い段階で受講で
きるようプログラムの日程調整をおこなった。
1 つに塩分制限の不徹底があり、昨年から減塩指
導を医師、栄養士と連携して行っている。しかし、
患者に合わせた目標設定ではなかったことや、検
査の項目や実施時期、各職種の介入するタイミン
グにばらつきがみられ、減塩方法を習得するまで
平均 1 年 6 ヶ月と期間を要していた。そこで、患
2.検査内容や身体所見などで総合的に評価
体重、CTR、BNP、EF、推定塩分摂取量(新尿・
食事)、身体所見全て改善し、介入7ヶ月で減
塩方法を習得することができた。
3.個々に合わせた目標設定と目標の共有
介入最終日に、今までの経過を振り返り目標体
者が在宅で実践可能な減塩方法を習得するため
のケアプロセスを可視化した「慢性心不全減塩指
導プログラム」
(以下プログラムと略す)を医師・
栄養士・外来看護師で作成した。
【チーム目標】
慢性心不全で再入院を繰り返している New
York Heart Association 心 機 能 分 類 ( 以 下
NYHA 分類と略す)Ⅱ以上の患者が、減塩方法
を習得できるよう支援する。
Ⅳ.小集団活動の実際(実践・評価)
1.慢性心不全管理におけるプログラムの作成
医師・看護師・栄養士が協働し、プログラムを
作成、運用方法も共有でき、達成率 100%とし
た。
重を超えた時には塩分 6g の食事を継続し、体
重が改善したら塩分7g の食事にすると患者自
身が目標設定をした。
Ⅵ.今後の課題
1.病棟との連携
2.イベント事による食事内容の変化に対する
対応
3.事例検討会を行いプログラムの評価
Ⅶ.参考文献
1) 西元勝子,杉野元子:固定チームナーシング
責任と継続性のある看護のために第 3 版,医
学書院,2012
2) 佐藤幸人:最強!心不全チーム医療,メディ
カ出版,2014
2.介入 1 ヶ月後、2 ヶ月後、4 ヶ月後に医師、
看護師、栄養士とカンファレンスを実施し、
目標の設定及び評価(介入 6 ヶ月で達成率 80%)