【21】AIA-CL2400を用いたTSHレセプター抗体測定試薬の基礎的検討

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AIA-CL2400 を用いた TSH レセプター抗体測定試薬の基礎的検討
◎黒木 恭紀 1)、山本 晶子 1)、松田 いずみ 1)、矢野 美沙紀 1)
医療法人 野口記念会 野口病院 1)
【はじめに】
で若干異なる傾きを示した.ECLIA の測定値
TSH レセプター抗体(TRAb)は,甲状腺機能亢
が 20IU/L 以下では,相関係数 r=0.97,回帰直
進症であるバセドウ病の鑑別診断や薬物治療
線 y=0.71x+0.1 となった.
の指標として用いられる.今回,化学発光酵
5)疾患別分布:各甲状腺疾患および健常者にお
素免疫測定法(CLEIA 法)を測定原理とする
ける TRAb の測定値の分布は,バセドウ病
TRAb 測定試薬の基礎的検討を行う機会を得た
(44 例) 1.4~>40IU/L,無痛性甲状腺炎(34 例)
ので,その結果を報告する. <0.9~1.1IU/L,亜急性甲状腺炎(34 例) 【対象・試薬】対象は当院受診の患者 112 例,
<0.9IU/L,健常者(114 例) <0.9IU/L であった.
および甲状腺機能が正常な当院職員 114 例と
6)カットオフ値:未治療バセドウ病患者 44 例
した.測定機器は AIA-CL2400(東ソー株式会
に対し,健常者 114 例を陰性群として ROC 解
社),試薬には AIA-パック CL TRAb(以下
析より求めたカットオフ値は 0.9IU/L で,この
CLEIA)を用いた.比較対象には
時,感度は 100%,特異度は 100%であった.
cobas800〈e602〉(ロシュ・ダイアグノスティ
また破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎・亜急性
ックス株式会社),エクルーシス試薬 TRAb(以
甲状腺炎)68 例を陰性群として求めたカットオ
下 ECLIA)を用いた.
フ値は 1.1IU/L で,この時,感度は 100%,特
【方法および結果】
異度は 100%であった.メーカー参考基準範囲
1)再現性:3 濃度のプール血清および 2 濃度の
2.0IU/L をカットオフ値とした場合,感度は
東ソーコントロールを用いて求めた同時再現
91%,特異度は 100%であった.
性(n=20)の CV は 2.2~11.9%,日差再現性
【まとめ】
(n=15)の CV は 2.3~12.7%であった.
本試薬は基礎的性能が概ね良好で測定時間も
2)実効感度:低濃度域の 16 検体を各 2 重測定
約 25 分と短く,診療前検査としてバセドウ病
で 10 日測定し,precision profile にて CV10%値
の鑑別診断や薬物治療の指標に有用である.
を求めたところ,1.46IU/L であった.
今回の検討結果では,バセドウ病と破壊性甲
3)共存物質の影響:2 濃度プール血清で干渉チ
状腺炎の鑑別におけるカットオフ値は 1.1~
ェック・ A プラス,干渉チェック・ RF プラス
1.3IU/L に設定することが妥当と考えられる.
を用いて測定した結果,ビリルビン F
また,本試薬は 1 テスト毎に凍結乾燥状態で
20mg/dL,ビリルビン C 19.8mg/dL,溶血ヘモ
包装されており,試薬やキャリブレーション
グロビン 510mg/dL,乳ビ 1500FTU,RF
の有効期限も長いため,依頼検体数の少ない
550IU/mL まで影響を認めなかった.また健常
施設での運用にも適していると思われた.
者赤血球由来の溶血ヘモグロビン液において
も 600mg/dL まで影響は認められなかった.
4)相関:CLEIA (y)と ECLIA(x)との相関
(n=173)は,相関係数 r=0.96,回帰直線
y=0.90x-1.4 であったが,低濃度域と高濃度域
連絡先:0977-21-2151(内線 2400)