私たちにできることって?

体力、環境、経済などの
さまざまな変化が訪れる親世代
日々の慢性的なストレスが
感情的になって現れることも
代、 代とミセスも年を なってきたという実感、退職
重ねていけば、当然ながら親 や子どもの巣立ちなどで、社
も年をとっていきます。介助 会的役割がなくなったことに
を 必 要 と し な い 元 気 な 親 に よる喪失感や寂しさ。体だけ
も、
﹁ 人 の 話 を 聞 か な く な っ ではなく、取り巻く環境、経
てきた﹂
﹁最近怒りっぽくなっ 済状況など、さまざまな変化
て き た﹂ と い っ た ち ょ っ と し を 乗 り 越 え て い か な け れ ば な
た変化が起こり、親の老いを らないのが親世代です。そし
《 年を重ねた親に今思うこと 》
親が老いていく姿を認めたくない気持ちもありますが、きちん
と受け止めてサポートしたいと思います。親を気にかけているこ
とを伝え、子どもの意見に耳を傾けてもらえるようにしたいと思
います
(C・S/ 50歳、父76歳、母73歳)
自分の要望だけを押し付けてくることもある親に、時々腹が立
つこともありますが、自分を育ててくれた親は親。親の変化を受
け入れて、見守りたいと思っています
(K・O/ 39歳、母71歳)
もなると加藤さんは分析
ュニケーションをできる Sを出せなくなってしま
子どもが親に深い愛情を
また、子どもに心配を
持って生きてきた証拠で かけまいと﹁親のことは
然 な こ と で す。 そ れ は、 必要です﹂
。
ことが大切です﹂
。
めたくないと思うのは自 ことは、お互いのために 勢を日頃から見せておく
かりし頃とは違う姿を認 ょう。適度な距離を保つ 気にかけているという姿
対的存在だった両親の若 するよう心がけてみまし つ で も 声 を か け て ﹄ と、
くれた強いお父さん。絶 親のいいところを見て接 は、子どもの方から﹃い
ん、いつも家族を守って れるなどして、なるべく いのです。そうした親に
﹁ 太 陽 の よ う に 家 族 を だけとり、イラっとして う上、子どもも心の準備
照 ら し て く れ た お 母 さ しまうならその場から離 をしておくことができな
です。
もにとっても難しいこと るといいでしょう。コミ と、本当に辛い時にSO
度をとってしまい後悔し ﹁ お 互 い に 年 を と り、 します。
たり⋮。親の老いを認め 親子の関わり方を少しず ﹁
﹃気にしないで﹄ など
受け入れることは、子ど つ変えていく時期と捉え と親が先に言ってしまう
まったり、そっけない態 はアドバイスします。
い 強 い 口 調 で 注 意 し て し あ り ま せ ん﹂ と 加 藤 さ ん け 入 れ づ ら く す る 原 因 に
目の当たりにすると、つ り、焦ったりすることは るものの、親の老いを受
ても、実際に親の変化を くても、罪悪感を感じた に一時的な安心感を与え
親も老いていくという もあります。親の老いを 気にしなくてもいい﹂と
ことを頭では理解してい すぐには受け入れられな 言う親の姿勢は、子ども
親の老いを受け入れ難いのは自然なこと
焦らず、親を尊重し、適度な距離で見守りを
※この特集は、リビングネットワークのサ
ンケイリビング新聞社が発行する「リビン
グ仙台」の原稿を元に再構成しています
※アンケートは 4月28日∼ 5月10日リビングファンに実施。有効回答数72
感じたことがある人は少なく て、 そ う し た 老 い に よ る 変
ないでしょう。
化を認めたくないのも、他な
そ う し た 親 の 変 化 に は、 らぬ親自身なのです﹂
︵加藤さ
徐々に進んできた視力や聴力 ん︶
。
の低下、ひざ関節などの痛み、 ささいなことで怒りやすく
免疫力の低下、注意力や集中 なったり、ガンコになったり
力の欠如といった、加齢によ するのは、そうしたさまざま
る体の衰えが大きく影響して な変化による慢性的なストレ
いるとか。東北福祉大学 総合 スが影響しているそう。その
の加藤伸司さんによれば、個 これまでのように思い通りに
福 祉 学 部 福 祉 心 理 学 科 教 授 た め、 親 の 言 動 の 変 化 に は、
人差はあるものの、加齢によ 行動できなくなってきたもど
る体の変化は私たちが想像す か し さ や、 未 来 へ の 見 え な
を、家族も理解しておくこと
る以上に親のストレスになる い不安などが背景にあること
そうです。
﹁ こ れ ま で 簡 単 に で き て い が必要です。
たことが何となくやりづらく
車の運転や料理など、できることはさせる
必要なサポートを必要に応じて行おう
今回実施した読者アンケー やトンネルの運転がしづらい 事 を 作 る の も い い で し ょ う。
ト で は、
﹁ 調 理 中 に 火 を 消 し と感じたり、信号を見落しや また、 歳以上を対象とした
忘れた﹂
﹁店に現金が入ったバ すくなってきます。とはいえ、 高齢者運転講習もありますか
ッグを置き忘れた﹂といった、 親が元気で事故などを起こし ら、そうした講習の受講をま
年齢を重ねた親の行動に思わ ていないのであれば、やみく ずはすすめてみるのも、親本
とするのは、いいこととは言 ります﹂
。
ずヒヤッとしたとのエピソー もに運転免許を返納させよう 人の自覚を促すことにつなが
ドが多数寄せられました。
中 で も 心 配 事 と し て 多 く え ま せ ん﹂ と は 前 出 の 加 藤 伸
車 の 運 転 に 限 ら ず、
〝でき
の声が挙がったのが﹁車の運 司さん。車の運転が本人にと ることはさせる〟ことが、親
転﹂
。 す で に 親 が 運 転 免 許 を って生きがいだったり、通院 の意欲を保ち、役割を与える
﹁運転をしなくなるという
お互いを尊重し、良好な関
歳︶ ことは行動範囲を狭めること 係を築いていくのは時間がか
う。
自 主 返 納 し た 人 も い る 一 方 や買い物など日常生活に不可 ことになるため大切なのだそ
で、
﹁ 返 納 を す す め て も、 な 欠な場合があるからです。
歳、父
かなか聞き入れてもらえな
い﹂
︵M・O/
という人も。事故などの危険 にもなるので、返納をすすめ かるもの。適度に距離を保ち
案する必要もあります。返納 必要な時に必要なサポートを
から親を守るために、私たち るなら代わりの移動手段を提 な が ら、 親 の 様 子 を 見 守 り、
にできることとは?
子どもに近づいてきたように見える母が、とてもチャー
ミングだなと思います
(K・O/ 40歳、母78歳)
40
﹁ 誰 も が 加 齢 に 伴 っ て、 視 をすすめる前に、運転は日中 していく。それがこれからの
力が低下したり視野が狭くな にする、運転は慣れた近所だ 関係をより良い方向に導くコ
読者アンケートで寄せられた悩みの中から、4 つのケースを
ピックアップ。加藤先生にアドバイスをもらいました。
取材協力/加藤伸司さん
東北福祉大学 総合福祉学部 福祉
心理学科 教授、社会福祉法人 東
北福祉会 認知症介護研究・研修
仙台センター センター長
保険会社に保険の更
新を渋られたことも
あり、家族が説得す
る形で父は返納を決
めたようです(K・N
/42歳、
父72歳)
30
ったりするので、夜間の運転 けにするなど、家族間で決め ツかもしれません。
加藤先生が読者の悩みにアドバイス
母はまだ健在ですが、何気ないことにイラだってしまうこともあ
ります。親の姿を通して自分の未来を想像していますが、まだ親の
老化を受け入れられない自分もいます
(S・H/ 36歳、母66歳)
父は目の手術がきっか
け。
父には以前から優良
ドライバーのままでい
てほしいことを伝え、家
族で高齢ドライバーの
運転について話し合っ
ていました(M・O/44
歳、
父71歳)
70
4
3
新しいものを覚えたりする「流動性知能」の衰え
が原因。流動性知能は衰えやすい知能ですが、
運転や一般常識といった過去の経験や学習など
によって記憶する
「結晶性知能」
は衰えにくいと言
われています。ですから「押すボタンにしるしを
付ける」
、
「何度も繰り返しやらせる」など、単純
なことを繰り返し学習することで覚えることは可
能です。ただし、本人が日常生活で使うことが
一番大切。覚えるのに苦労するような最新型よ
りも、使い方がシンプルなもの、以前使ってい
たものに似た使い勝手のものを一緒に選んであ
げるといいでしょう。
加齢に伴う体の不調により、ちょっとしたことで
も気に障り短気になったように感じることはあ
るでしょう。基本的な性格は変わらないですが、
年を重ねると正義感が強い人はより強く、せっ
かちな人はよりせっかちにと、元々の性格の特
徴が強く表れる傾向があるため、そのせいかも
しれません。親の話は否定せずに聞き、時には
受け流すことも必要でしょう。ただし暴力を振
るったり、人に危害を加えたりといった反社会
的な行動、性格が大幅に変わった場合には注意
が必要。前頭側頭型の認知症の可能性もあるの
で、病院を受診しましょう。
新しい電化製品や携帯電話を
使おうとしない
case
怒りっぽい、せっかち…
性格が変わってきたかも?
case
亡き父は交通事故
を何度か起こした
ことをきっかけに
返納しました
(Y・S
/40歳)
父は視力が衰え、運
転 中 に 危 険 を感じ
たようで、自ら返納
しました(R・W/39
歳、
父72歳)
79
親にはできる限りのことをしてあげたいと思っています。親子の
関係は急に築けるものではないと思うので、これまでそしてこれか
らの関わり方から、できることを考えたいと思う。これから必要な
のは、覚悟だと思います
(S・Y/ 42歳、母71歳、義母68歳)
《運転免許を返納したきっかけ 》
43
うまくできないことが増えてきた親は、何かと
わずらわしいと感じるようになります。たとえ
ば、以前は手の込んだ料理を作っていたお母さ
んが、あまり料理をしなくなった場合は、
「お
母さんのあの料理が食べたいから作って」など、
できるだけ具体的に〝私のためにしてほしい〟と
役割を与えてみましょう。
「誰かのために何か
をする」というのは、行動を起こす大きな動機
になります。できないことはサポートしながら、
時には褒めたりおだてたりして、動くきっかけ
を作ってあげることも大事です。
人間の聴力はとても精密で、さまざまな生活音の中
から〝家族の声〟
〝テレビの音〟といった、聞き取りた
い音だけを聞き分ける力があります。ところが補聴
器はそのすべての音量を上げてしまうため、高齢者
は耳障りに感じて落ち着かないのです。音域の中で
も、特に子どもや女性の声といった高音域を苦手と
感じる方が多いようです。ストレスの原因にもなり
ますから、補聴器の使用は無理強いせず、本人の意
思を尊重しましょう。必要に応じて、時間を限って使
うのもいいですね。聞いてほしいことがある場合は、
視界に入り、近づいて低いトーンの大きな声で話すと
高齢者に伝わりやすいですよ。
2
1
考えたい
親のこれから
ちょっとした親の言動の変化に、
「年
をとってきたな∼」と感じることはありま
せんか?「介助は必要ないし、うちの親
はまだまだ元気」という人も、
「そろそろ
心配…」
という人も、確実に年を重ねてい
く親とのこれからを一緒に考えませんか。
私たちにできることって?
一緒に
親のこれから
私たちにできることって?
さまざまなことを
面倒くさがるようになってきた
case
耳が遠くなってきたけれど、
なかなか補聴器をつけようとしない
case
2016年9月24日 土曜日 <20>
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