サステイナビリティデータブック2016 【ライフサイクルCO 2

er02
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
er02_01
基本的な考え方
純粋にクルマが走行して排出する CO₂、またクルマ製造時に
材料にもこだわった環境配慮設計の取り組みを今後さらに加速
排出される CO₂ だけでなく、クルマの材料製造や廃棄・リサイ
し、
“もっといいクルマ”を追求していきます。例えば、製造時の
クルの段階まで含めて排出される CO₂ をゼロにしようというの
CO₂ の排出量が少ない材料の開発、使用拡大や、材料の使用量
が「ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ」です。
と部品数の削減を進めます。また、廃棄・リサイクル段階の CO₂
例えば、次世代車の中には走行時の CO₂ は減るものの、素材
や車両製造での CO₂ は増えてしまうものがあります。そのため、
排出量を削減するために、リサイクル材などの使用の拡大やク
ルマの解体を容易にする設計を一層進めていきます。
er02_02
製品開発における環境マネジメントの推進(Eco-VAS)
LCA で新型車・フルモデルチェンジ車全 5 車種を評価
「プリウス」の LCA 評価
[ 目的 ]
車両の生産、使用、廃棄まですべてのプロセスを通じ、総合
的な環境性能を評価する Eco-VAS * 1 の中で、素材製造、車両
製造、走行、メンテナンス、廃棄まですべての段階で環境への
CO₂指数
1.0
廃棄・リサイクル
メンテナンス
影響を評価する LCA * 2 を実施しています。
Eco-VAS では、開発初期段階から目標値を設定し、着実に環
ハイブリッド効果
約-45%
0.8
境パフォーマンスを高めていくため、チーフエンジニアが開発
企画段階で環境性能ごとに目標値と達成シナリオを策定し、開
発プロセスを通して目標の達成状況をフォローし、着実な達成
走行
車両製造
素材製造
0.6
を図ります。
* 1 Eco-VAS(Eco-Vehicle Assessment System)
* 2 LCA(Life Cycle Assessment)
:ライフサイクルアセスメント
[ 2015 年度の進捗 ]
新型車・フルモデルチェンジ車 5 車種(
「シエンタ」
「プリウス」
0.4
0.2
「ピクシス メガ」
、レクサス「LX」
「RX(200t、450h)
」
)について
LCA を実施しました。
0
トヨタが乗用車を対象に実施している LCA の
手法は、ドイツの第三者認証機関テュフ ライ
ンランドによる ISO14040/14044 規格に基
づく審査・認証を受けました。
当社2.0L
ガソリン車
「プリウス」
2009年
発売モデル
「プリウス」
2015年
発売モデル
注:自動車の生涯走行距離10万km
(10年)
をJC08モードで走行した場合の
結果です。LCA評価結果は指数で示しています。
073 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
er02_03 への対応
Scope3
Scope3 は、自社および連結会社以外のバリューチェーン
Scope3 で定められた 15 のカテゴリーと排出量比率
(購入した製品・サービス、輸送、出張、通勤、販売した製品の
使用など)からの間接的な温室効果ガス排出量を見える化する
ために設けられた算定基準です。
この基準で算定した排出量の比率を見ると、
「カテゴリー 1.
購入した製品・サービス」と「カテゴリー 11.販売した製品の
使用」を合わせた比率は、約 97%と非常に大きく、その他のカ
テゴリーはおのおの 1%未満となりました。
「カテゴリー 1.購入した製品・サービス」は、自動車を構成
する資材や部品の製造段階であり、
「カテゴリー 11.販売した
製品の使用」は、自動車の走行段階に当たるので、部品の軽量
化や材料選定、燃費向上技術や次世代車技術開発などが排出量
削減に通じる重要な方策になることが分かります。
カテゴリー
排出量比率
1. 購入した製品・サービス
16.0%
2. 資本財
0.9%
3. Scope1、2 に含まれない燃料
およびエネルギー関連活動
0.2% 4. 輸送、配送(上流)
0.1% 未満
5. 事業から出る廃棄物
0.1% 未満
6. 出張
0.1% 未満
7. 雇用者の通勤
0.2%
8. リース資産(上流)
―
9. 輸送、配送(下流)
0.1% 未満
10. 販売した製品の加工
0.3%
11. 販売した製品の使用
81.2%
12. 販売した製品の廃棄
0.9%
13. リース資産(下流)
―
14. フランチャイズ
―
15. 投資
0.1%
注 1:カテゴリー 14 は対象外。カテゴリー 8 は Scope1,2 に含み、
カテゴリー 13 はカテゴリー 11 に含みます。
注 2:排出量比率は、2014 年度の算出値から算定。
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物流活動における輸送効率の追求と CO₂ 排出量の低減
CO₂ 排出量低減活動を継続
2015 年度は、積載率向上活動、モーダルシフト、物流パー
しましたが、遠距離輸送増の影響もあり、排出量は 275 千ト
トナーと一体となった燃費向上活動の継続などに取り組みま
ンとなりました。仕事量(トンキロ)当たりの CO₂ 排出量は、
した。こうした取り組みにより、CO₂ 排出量を 6 千トン低減
108.4g-CO₂/ トン・km となりました。
TMC 物流 CO₂ 排出量の推移(国内)
TMC 物流での CO₂ 把握範囲
(千トン)
450
日本国内
440
400
改善分
▲6
350
298
300
290
ボデー
メーカー
’12
’13
部品
センター
完成車
補給部品
完成車
278
275
’14
’15
当初見込み
276
国内
販売店
(年度)
国内
共販店
ver3.0」
(経済産業省・国土交通省)
などを使用しています。
Web
http://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/
data/conversionfactor.pdf
港
海外域内
注:CO₂換算係数は、
「ロジスティクス分野におけるCO₂排出量算定方法共同ガイドライン
換算係数についてはウェブサイトをご覧ください。
物流センター
(梱包工場)
生産部品 輸入品
お客様
’90
内製工場
(組立ユニット)
物流量増など
5
250
0
直送品
生産部品
サプライヤー
取り組み範囲
現状管理範囲
管理体制充実化を
推進中
074 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
お客様
港
海外
販売代理店
サプライヤー
物流
センタ-
工場
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環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
仕事量(トンキロ)当たりの TMC 物流 CO₂ 排出量の推移(国内)
CO₂ 排出量低減の改善取り組み結果
(g-CO2/トン・km)
改善の
切り口
目標
実績
130
商品
127.2
総輸送距離
の低減
109.6
106.7
106.6
配船変更による
動線短縮など
1.9
生産部品
荷姿の改善、
ルート再編など
3.8
補給部品
積載率向上、
ルート見直しなど
0.3
’12
’13
108.4
100
0
’06
低減量
(千トン)
完成車
120
110
主な改善内容
’15
’14
合計
6.0
(年度)
各国・各地域で CO₂ 排出量把握、低減活動継続
海外については、2007 年度より各国・各地域で CO₂ 排出量
また、2016 年度から、海外で発生する CO₂ 排出量の開示に
把握を開始しました。2013 年度からは、
「グローバル目標ガイ
向け、各国・各地域での CO₂ 排出量の算出方法を調査し、精度
ドライン」を明示し、各国・各地域はそれをベースに目標を設
アップを目指しています。
(公表は 2017 年度版の報告書より)
定し、低減活動に取り組んでいます。
コラム
トヨタカローラ岩手向け車両の岩手工場中継廃止に伴う輸送距離短縮
これまで、トヨタカローラ岩手向けの車両は出荷台数が少なかったため、仙台港で陸揚げされた車両はいったん
岩手工場に運ばれ、そこでロットを形成してから、トヨタカローラ岩手に送っていました。
2015 年度は、トヨタカローラ岩手向けの車両輸送が増加したため、仙台港陸揚げ分は岩手工場を中継せず、
直接輸送するルートに変更しました。この変更により、仙台港→岩手工場→トヨタカローラ岩手の輸送距離
188km を仙台港→トヨタカローラ岩手 133km へと 55km 削減することができました。この削減により、年間の
CO₂ 排出量は 37.3 トンから 26.4 トンとなり、年間約 11 トンの低減効果がありました。
改善前
改善後
トヨタカローラ岩手
トヨタ自動車東日本
61km
トヨタカローラ岩手
トヨタ自動車東日本
岩手工場
岩手工場
133km
127km
仙台港
輸送距離
CO₂
排出量
仙台港 ➡
仙台港
岩手
トヨタ
➡
工場
カローラ岩手
127km 61km
37.3トン/年
188km
輸送距離
CO₂
排出量
仙台港
➡
トヨタ
カローラ岩手
133km
26.4トン/年
075 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
効果
133km
55km
-11トン
環境への取り組み| Challenge 2 ライフサイクル CO₂ ゼロチャレンジ
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地域グリッドエネルギーマネジメント技術の展開による地域社会への貢献
地域と工場が一体となった安全で安心なまちづくり「F- グリッド構想」
トヨタは、東日本大震災を契機とするエネルギー課題(セキュリティ性、環境性、経済性)の解決、および東北支援に向けて、
工場を中心とする新しいスマートコミュニティに取り組んでいます。
2015 年 10 月、
「F- グリッド宮城・大衡有限責任事業組合」が、非常時地域送電システムの運用を開始しました。
「F- グリッド」については、P24 も併せてご覧ください。
er02_07
道路交通セクターにおける統合的な CO₂ 低減取組の推進
WBCSD を通じたタイ・バンコク市における渋滞解消プロジェクト「サートンモデル」
WBCSD * で Sustainable Mobility Project を 立 ち 上 げ、
6 都市で実証プロジェクトを推進。トヨタがリーダーである
バンコクでは、トヨタ・モビリティ基金の助成を受け、産官学
と市民の協力で交通需要平準化と交通流改善を進め、渋滞を
緩和するモデルづくりを進めています。
2015 年 11 月には、取り組みに参画する約 70 社のトップ
マネジメントによるリーダーフォーラムを開催し、より多くの
人の参画を得てきました。現在は大規模社会実験をモデル道路
[ 社会実験で実証された施策 ]
パーク&ライド:15 箇所のパーク & ライド駐車場開設。
2016 年 6 月時点の利用者数 504 人/日
シャトルバス:2 学校への導入と企業会員制バスの試験導入
フレックスタイム:11 社、4,410 人への導入
最適交通手段選択支援アプリケーション開発:
アプリケーションダウンロード数 3,308 人
交通流ボトルネック対策:18 施策の実証(最も効果が高い地点では
13% の交通流率向上、27% の旅行速度向上)
交通流マネジメントの実証実験
であるサートン道路にて開始、23 施策の効果を実証。今後、
タイ政府とともこの取り組みをバンコク全域に広げるための
ロードマップ作りを進めていきます。
* WBCSD(World Business Council for Sustainable Development)
Kiss & Go
リバーシブルレーン
(親が子どもを車で送る際、降ろす箇所を分散)(対向車線内、1 車線の流れる方向を変更)
「トヨタ・モビリティ基金」については、P141 も併せてご覧ください。
コラム
サプライヤーとの密な連携による環境保全活動
台湾の生産事業体 国瑞汽車株式会社は、ISO14064 1 により温室効果ガスの排出量を把握しています。今回
新たに ISO50001 を認証取得し、エネルギーパフォーマンスの可視化によって、エネルギー効率の改善に努め
ています。
調達に関しては、サプライヤーと密に連携し、環境保全活動を進めています。主な活動としては、サプライ
ヤーミーティングを毎年開催し、KPI の策定、目標達成に向けた毎月のフォローアップなどを行っています。ま
た、5 年間でコストを 30%削減する TTT30(Team Taiwan Toyota
Cost Reduction 30% during 5 years) に向けた改善活動を推進。
サプライヤー委員会の活動として、CO₂ 削減の指導、改善アイデアの
普及、改善事例の共有、ベストプラクティスの共有を図っています。
そのほか、サプライヤー向けに KPI フォームを作成しモニタリン
グを簡易化したり、CO₂ 削減指導として地方自治体の省エネ活動に加
わり、新規手法の勉強会に全サプライヤーを招いたりなど、調達に
関する徹底した取り組みを展開しています。
076 Sustainability Data Book 2016 環境への取り組み
2015 年サプライヤーミーティング