DNAナノマテリアル・ナノメディシンの Structure-Based Design 上智大学 理工学部 物質生命理工学科 准教授 近藤 次郎 1 DNA で「ものづくり」をしています • すべての生物が遺伝情報として持っている物質 生体適合性 高 化学的・生化学的安定性 環境負荷 高 低 • 合成が簡単な高分子化合物(ポリマー) 化学的合成 ⇒ DNA自動合成機 生化学的合成 ⇒ 酵素合成法 2 DNA で「ものづくり」をしています • 比較的単純な生体高分子である DNA ・ 4種類(A, T, G, C)の塩基で構成 タンパク質 ・ 20種類のアミノ酸で構成 ⇒ DNAはデザインすることができる *タンパク質工学も試みられているが難しい 3 Structure-Base Design のアプローチをとります • 医薬品開発に用いられている手法 (1990年台∼) • X線結晶解析によって得られる立体構造情報を 利用して、新しい医薬品をデザインする • 旧来の帰納的な手法(ハイスループットスクリー ニングなど)に比べて合理的で、短期間・低コス トでの医薬品開発が可能である 4 Structure-Base Design のアプローチをとります • Structure-Based Designの手法を、 ナノマテリアル・ナノメディシンの開発に応用 • ブロックを組み立てるように分子をデザイン Jaeger & Chworos, 2006 Curr. Opin. Struct. Biol. 5 Structure-Base Design で実現できること • 新規のDNAナノマテリアル・ナノメディシンを ゼロからデザイン • 既存のDNAナノマテリアル・ナノメディシンを 立体構造を見て改良 ナノスケールのDNAを 実際に目で見ながらデザインできる ⇒ 確実性・安心感を提供 6 Structure-Base Design を可能にする技術 7 当研究室の構造解析の実績 • Protein Data Bank に登録されている立体構造 (2016年7月末現在) タンパク質 タンパク質-核酸複合体 DNA RNA • 100,906件(93.5%) 5,277件( 4.9%) 993件( 0.9%) 671件( 0.6%) DNAとRNA(核酸)の構造研究は、タンパク質 の構造研究に比べて著しく遅れている 8 当研究室の構造解析の実績 • 当研究室で解析した立体構造 (2016年7月末現在) ・ Protein Data Bank 登録済 DNA 993件中 26件 (2.6%) RNA 671件中 42件 (6.3%) ・ Protein Data Bank 未登録 DNA 約10件 RNA 約30件 9 当研究室の構造解析の実績 • DNAとRNA(核酸)に特化したX線結晶解析を 行っているのは、国内では当研究室のみ DNA 八重らせん構造 DNA 非らせん構造 10 DNA の結晶化技術 • DNA 結晶化スクリーニングキットを独自に開発 ・ タンパク質結晶化キットとは異なる配合 ・ 96条件を基本としたスクリーニング条件 ・ 極めて高いヒット率 • 結晶化に適した DNA 配列の設計方法 • 最適化された DNA の精製プロトコル X線結晶解析の可否を決定づける DNA 試料の高純度精製の方法として活用できる 11 DNA の構造解析技術 • DNA 構造決定法を独自に開発 (Kondo et al., 2008 Acta Crystallogr.) • 新しい DNA 構造決定法を開発中 ・ 高エネルギー加速器研究機構 Photon Factoryと共同開発中 (AMED 創薬等支援技術基盤プラットフォーム採択課題) • 従来の構造決定法(分子置換法・重原子法)の 最適化 X線結晶解析の成功率を向上させる 12 DNA のデザインのノウハウ • DNAに対する一般的な認識 ・ 二重らせん構造をとる ・ A-T、G-Cが塩基対をつくる 13 DNA のデザインのノウハウ • DNAに対する我々の認識 ・ 複雑な立体構造をとる 複雑な形のDNAをデザイン 14 DNA のデザインのノウハウ • DNAに対する我々の認識 ・ 約150種類の塩基対をつくる A-A 塩基対 A-C 塩基対 • 塩基対の分類法およびデータベースの開発 (Nucleic Acid Databaseと共同研究) 様々な塩基対を組み合わせてDNAをデザイン 15 DNA のデザインのノウハウ • DNAに対する我々の認識 ・ 各種リガンドと擬塩基対をつくる 塩基とアミノ酸の擬塩基対 塩基と糖の擬塩基対 • 擬塩基対の分類法およびデータベースの開発 (Nucleic Acid Databaseと共同研究) タンパク質や糖などに結合できるDNAをデザイン 16 DNAナノマテリアル Structure-Base Designの実例 17 DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー(特許出願済) • DNA二重らせん中に銀が縦列したワイヤー • ナノワイヤーの直径は 2 ナノメートル • ナノワイヤーの長さは現状、1 マイクロメートル (半無限長に延伸することは可能) • 世界最細、世界最大レベルのアスペクト比 18 DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー(特許出願済) • 銀介在塩基対によって銀が結合 • 銀はDNAのらせん軸上に1個ずつ縦列 19 DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー(特許出願済) • DNAと硝酸銀を「混ぜるだけ」で合成可能 5'-GGACTCGACTCC-3' Ag(I) A A GGCTCGCTCC GGCTCGCTCC A A A A のりしろ のりしろ A A --C GGCTCGCTCC GGCTCGCTCC GG---C GGCTCGCTCC GGCTCGCTCC GG-A A A A 20 DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー(特許出願済) • DNAの塩基配列・長さを変更可能 • 銀を、金・銅・水銀に置き換え可能 21 DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー −想定される用途− • 透明導電フィルム *既存の銀ナノワイヤーの一般的な用途 (大日本印刷、東レ、日立化成など) • DNAインク *特殊な塩基対を含むDNAの用途 (大日本印刷・タグシクスバイオ) • 微細電子回路 *将来的な用途 • ナノスケールの抗菌繊維 *銀の抗菌性とDNAの生体適合性を利用した素材 22 DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー −実用化に向けた課題− • 導電性についての検証 類似の錯体化合物の導電性は報告されている • 導電性以外の様々な物性について検証 高い熱安定性、電磁波耐性は確認済 • ナノワイヤー合成のスケールアップ 現状、数マイクロリットルの反応溶液での合成 • より効率的なナノワイヤー合成方法の確立 結晶化させると安定的に合成できる ⇒ 溶液中でも安定的に合成可能な方法を確立したい 23 DNAナノメディシン Structure-Base Designの実例 24 核酸医薬品 • Structure-Based Designに利用可能なアンチ センス核酸医薬品の立体構造情報を報告 (Kondo et al., 2015 Chem. Commun.) 25 核酸医薬品 • 核酸医薬品の世界最大手 IONIS Pharmaceuticals 社(旧ISIS社)と アカデミックレベルでの共同研究を展開中 • 当研究室で、既存の核酸医薬品とは異なる性質 をもつDNAシーズ化合物を最近取得 * IONIS社(旧ISIS社)が有する特許を 回避できる可能性あり ⇒ 特許出願を計画中 26 核酸医薬品 −実用化への課題− • 薬理効果、副作用などのデータを得たい *当研究室では、in vitro、in vivoレベルでの実験を行う環 境が整っていない • 第3世代の医薬品として核酸医薬品の開発を 日本主導で進めていくためには、産学連携が 不可欠である。 27 企業への期待 • DNA-重金属ハイブリッドナノワイヤーの実用化 に向けた共同研究 • 核酸医薬品のStructure-Based Designによる共 同開発 • 「DNA Structure-Based Designプラットフォーム」 を上智大学に確立させるための設備面等での ご支援 単結晶X線回折装置・結晶化ロボット・DNA自動合成機な どの共用施設として上智大学を利用(都心の立地を活用) 28 本技術に関する知的財産 • 発明の名称: DNA-銀ハイブリッドナノワイヤー およびその製造方法 • 出願番号: 特願2016-062547 • 出願人: 学校法人 上智学院 • 発明者: 近藤 次郎、多田 能成 29 お問い合わせ先 上智大学 学術情報局 研究推進センター TEL: 03-3238-3173 FAX: 03-3238-4116 [email protected] 30
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