維持透析患者の貧⾎コントロール 2008年版⽇本透析医学会『慢性腎臓病(CKD)患者における腎性貧⾎のガイドライン』では,維持⾎液透析患者の⽬ 標Hb値は10〜11g/dlが推奨されている。逆に12g/dl以上ではエリスロポエチン製剤(ESA)は休薬基準である(死亡 率が逆に増える事が報告されている)。 当センターにおける維持⾎液透析患者は⾼齢者が多く,また⼼⾎管合併症も複数有する患者が多い。ESAに対する⾻髄 の反応性が不良(エリスロポエチン抵抗性)で,保険診療範囲内でESAを⽤いてHb値>11g/dlを維持出来る患者・維 持すべき患者の割合が増えることは現実的とは考えられない。 4⽉ 84% 82% 5⽉ 6⽉ 90% 7⽉ 90% 92% 8⽉ 90% 9⽉ 94% 10⽉ 92% 11⽉ 96% 12⽉ 94% 1⽉ 2⽉ 92% 3⽉ 92% 91% H27年度(N=598) 73% 参考値* 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 当院値の定義・算出方法 分⼦: Hb値>10g/dl(週初め:前透析中2⽇後採⾎)の維持透析患者数 分⺟:全維持透析患者数(⼊院患者を除く) 参考値* 2012年全国平均値 ※グラフ中のN数は分⺟の値を⽰しています。 解説(コメント) 当院の維持⾎液透析患者の貧⾎コントロール状態を把握し、適切な腎性貧⾎治療を⾏う。 ⽇本透析医学会による慢性腎臓病患者における腎性貧⾎治療のガイドライン(2015年版)では成⼈の⾎液透析患者の 場合、維持すべき⽬標Hb値は週初めの採⾎で10g/dL以上12g/dL未満とし、複数回の検査でHb10g/dL未満となった 時点で腎性貧⾎治療を開始することを推奨している。 当院は、2015年度4⽉と5⽉はやや低めで推移していたが、以降は改善が得られ、2012年の全国の平均結果 (73%)、また最近の他施設の結果報告に⽐べても常に⾼い数値を維持出来ていた。 貧⾎の是正が透析患者のQOLや⼼⾎管合併症の改善に繋がることは多くの研究結果から明らかである。 改善策について QI上は⾼い数値を維持出来ている。 腎性貧⾎治療は輸⾎、ESAの使⽤のみならず、他の薬物使⽤、透析条件などにも左右される。また腎性貧⾎の治療に加 え、貧⾎の的確な鑑別診断が重要である。 引き続き⾼額なESAの使⽤・増量のみの選択を⾏うのではなく、個々の患者の背景やADL、合併症などの状態に応じた 最適な腎性貧⾎治療を継続する。 ⽂責:腎臓内科主任部⻑ 野⽥ 律⽮
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