皮質脊髄路

 ○錐体路系(いわゆる運動の実行系)
皮質脊髄路 (狭義の錐体路)
皮質核路
○錐体外路系(運動の企画/調節系)
運動制御系
錐体路(皮質脊髄路)
上位運動ニューロン
外側皮質脊髄路
(四肢の遠位筋肉制御)
前皮質脊髄路
(体幹の筋や四肢の近位筋肉制御)
一部は交叉しない
(前皮質脊髄路へ)
内包出血(内側/外側線条体動脈、特に
外側線条体動脈)による内包性片麻痺
(運動麻痺)。
下位運動ニューロン
人体の正常構造と機能
日本医事新報社
大脳皮質→内包後脚→大脳脚(中脳)
→橋縦束→錐体(延髄)→錐体交叉
→脊髄側索(外側皮質脊髄路)
→脊髄前角運動ニューロン
皮質核路
人体の正常構造と機能
日本医事新報社
錐体路系
皮質脊髄路(錐体路)
大脳皮質→内包後脚→大脳脚(中脳)
→橋縦束→錐体(延髄)→錐体交叉
→脊髄側索(外側皮質脊髄路)
→脊髄前角運動ニューロン
皮質核路
大脳皮質→内包膝→大脳脚(中脳)
→橋縦束→脳神経運動核
一般に皮質脊髄路とは異なり両側性が多い
動眼神経核、滑車神経核、三叉神経運動核、
外転神経核、顔面神経核、疑核、舌下神経核
人体の正常構造と機能
日本医事新報社
1
錐体外路系(運動の企画/調節系)
錐体路系を除く運動路の総称
小脳の形態と回路
運動の調節系を上位からコントロール
しているのが小脳と大脳基底核
小脳の機能をシンプル
に記載すると
運動調節に
関与する小脳
外界や内部状況(入力)
に応じて、運動の大きさや向き
を調整/修正する。
スムーズな運動や熟練した運動。
運動に関連する皮質下の回路の
働きを小脳皮質が抑制制御。
運動学習に重要。
運動の意図のモニターや
実際に運動のモニター、
意図と実際に運動(や
前庭器の情報)を比較
してフィードバック信号を
送る
箸を持つ、ピアノ、自転車など
小脳の体積は脳全体の10%程度であるが、脳全体の神経細胞の半分以上
の数を含有していることからも重要性が伺える。
大脳横裂と小脳テントにより大脳から分離される。
上小脳動脈、前下小脳動脈、後下小脳動脈
人体の正常構造と機能 日本医事新報社
神経解剖カラーアトラス 医学書院
基本的に虫部と小脳半球からなる
小脳の構造 1皮質、2髄質、3髄質内の小脳核
1虫部、2半球部
人体の正常構造と機能
日本医事新報社
小脳活樹
○前庭小脳(又は原小脳)(片葉小節葉)、魚類
○脊髄小脳(又は古小脳)(虫部、中間部)、爬虫類や鳥類
○橋小脳(又は新小脳)
*これら3つの小脳区分に関して互いに線維連絡はない。 人体の正常構造と機能
日本医事新報社
2
小脳脚
上小脳脚(結合腕):中脳とつながる。主に遠心性線維
中小脳脚(橋腕):橋とつながる。求心性線維
下小脳脚(索状体と傍索状体):延髄とつながる。主に求心性線維
小脳脚
1 上小脳脚(結合腕):
小脳核から起こる中脳、間脳に向かう遠心性線維のほとんど。小
脳赤核路や小脳視床路(こちらが圧倒的に多い)。前脊髄小脳路
や視蓋、網様体からの求心性線維も一部含まれる。
2 中小脳脚(橋腕):
橋小脳路が中心。皮質橋路と共に、大脳皮質ー橋ー小脳系を形
成し随意運動が正確に行われるように調整。
3 下小脳脚(索状体と傍索状体):
3-1 索状体(求心性線維):オリーブ小脳路、後脊髄小脳路、前庭
小脳線維など
3-2 傍索状体(求心性と遠心性):前庭神経核との連絡など
神経解剖カラーアトラス
医学書院
その他、セロトニン線維やノルアドレナリン線維も小脳に至る
小脳皮質の3層構造と構成細胞
小脳皮質を構成する5種類のニューロン
小脳表層から
1、分子層
星状細胞、バスケット細胞が
散在する。
2、プルキンエ細胞層
プルキンエ細胞
が一列に並ぶ。
3、顆粒細胞層
脳科学辞典 田中 進介、平野 丈夫 DOI:10.14931/bsd.839
ゴルジ細胞、顆粒細胞
を含む。
マーティン神経解剖学(西村書店)
小脳皮質を構成する神経細胞は5種類
小脳に観察される
神経細胞
(プルキンエ細胞)
4対の小脳核
1、歯状核
2、栓状核
3、球状核
4、室頂核
小脳は熟練した
運動や多数の筋肉
の強調運動の調整に
重要な
役割を果たしている。
*2と3はヒト以外の下等脊椎動物では、
まとめて中位核と呼ばれる
人体の正常構造と機能 日本医事新報社
3
シナプス可塑性と運動学習
人体の正常構造と機能 日本医事新報社
入力は苔状線維と登上線維の2系統、小脳皮質の出力はプルキンエ細胞の軸索でほとんど
は小脳核(一部前庭神経核)に終止。顆粒細胞は平行線維を形成してプルキンエ細胞と興
奮性シナプスをつくる(マウスでは顆粒細胞1に対してプルキンエ細胞300)。ゴルジ細胞は
顆粒細胞に負のフィートバック。バスケット細胞や星状細胞は平行線維からの入力を受け、
プルキンエ細胞を抑制。登上線維の場合、成熟個体では、基本的にプルキンエ細胞は一本
の途上線維から入力を受ける(ただしシナプスは多い)。
平行線維からプルキンエ細胞への
シナプス伝達効率が、登上線維の
入力に依存して長期抑圧(LTD)
を引き起こす。 つまり、運動結果
に誤りがあるとそれを誤差信号と
して登上線維がプルキンエ細胞
へ伝え、誤りを発生させた平行線維
ープルキンエ細胞シナプスの伝達
を抑圧する。これを繰り返すことに
より、正しい働きをするシナプス
Hirano et al., 2013 J. Neuroscience
のみが残存するようになる。
一方で、下オリーブ核神経細胞の活動は、
星状細胞とプルキンエ細胞間の抑制性シナプス伝達を持続的に
増強することも知られており、脱分極依存性増強 (RP)Rebound potentiation)と呼ばれ、これも運動学習に関与する。
○前庭小脳(又は原始小脳)
(片葉小節葉、前葉)
:内耳前庭器(半器官や耳石器)から平衡覚の
入力を受け、頭部や外眼筋のコントロールに
より身体の平衡を保つ。
小脳による運動制御
前庭小脳、脊髄小脳、新小脳
○脊髄小脳(又は古小脳)(虫部、中間部)
:全身からの体性感覚(特に深部感覚)が入る。体幹や四肢の筋緊
張をコントロールして姿勢の維持等に働く。
○橋小脳(又は新小脳):橋核を介して大脳皮質からの強力な入力、
大脳皮質の発達に伴って、新小脳も発達。運動のプログラム化、円
滑化に働く(大脳ー小脳連関)。
原小脳(前庭小脳)
(平衡、体軸の維持)
(前庭 ー下小脳脚
前庭器ー 神経核)
小脳回路
原小脳
プルキンエ細胞
小脳核(室頂核)
人体の正常構造と機能 日本医事新報社
古小脳(体幹や四肢の筋調節)
体性感覚
深部感覚 ー 下小脳脚(後脊髄小脳路)
上小脳脚(前脊髄小脳路)
フィートバック
信号など 小脳回路
前庭神経核
古小脳
プルキンエ細胞
小脳核(主に室頂核、
中位核)
下小脳脚(傍索状体)
*下小脳脚のほとんどは
求心性であるが
前庭脊髄路
前庭神経核ー 網様体脊髄路
網様体
外眼筋運動核
上小脳脚 中脳(赤核) ー赤核脊髄路
網様体、視床 網様体脊髄路
4
小脳による運動調節(高度に熟練を要する早い運動)
新小脳(大脳ー小脳連関)
小脳回路
新小脳
大脳皮質ー 橋核ー中小脳脚ー
プルキンエ細胞
下オリーブー下小脳脚ー 小脳核(歯状核)
1、運動野から橋核を介してインパルスを受ける(運動意図をモニター)
2、深部感覚や平衡覚を受け(実際の運動のモニター)脊髄小脳路へ
3、運動の意図と遂行された運動を比較する。
4、意図と遂行に相違があれば、フィートバック制御を行う。
(視床から大脳皮質に加えて直接に脳幹の運動核)
小脳は持続的の誤差修正を行う。脳内運動モデルの構築
(伊藤ら)
平行線維からプルキンエ細胞への
シナプス伝達効率が、登上線維の
入力に依存して長期抑圧(LTD)
を引き起こす。 つまり、運動結果
に誤りがあるとそれを誤差信号と
して登上線維がプルキンエ細胞
へ伝え、誤りを発生させた平行線維
ープルキンエ細胞シナプスの伝達
を抑圧する。これを繰り返すことに
より、正しい働きをするシナプス
のみが残存するようになる。
上小脳脚
ー視床 ー大脳皮質
上小脳脚を構成する 一部赤核 ー下オリーブ
線維にうち、大部分は
コレ 大脳-小脳ループ
(運動プランニング?)
小脳-赤核-下オリーブ核ループ
(運動リハーサル?)
トートラ人体の構造と機能(丸善)
小脳の障害による症状(小脳性運動失調)
○平衡障害
前庭器からの情報を使って眼球運動や身体にバランスを
調節するのが困難。起立・歩行が難しく、よろめきやすいため
これを補償するために歩幅が広くなる。また、振動性眼振が
出現したりする。
○筋緊張異常
小脳核ニューロンは常に比較的高い頻度で活動電位を発して
いる。障害があると結果的に脊髄運動ニューロンの興奮作用が
減弱し、筋緊張が低下する。
○運動障害
推尺障害、企図振戦(大脳基底核の障害は不随意運動が目立つ)、
指鼻試験
協調運動不能、拮抗運動反復不能、運動解離、話し方は遅く単調で
時に爆発的な発語。
•  小脳の大きな区分(機能区分)が説明できる。
•  小脳脚が説明できる。
•  小脳皮質の三層構造と回路、小脳核との関連
が説明できる。
•  小脳障害の症状の概要が説明できる。
小脳(追加事項)
小脳損傷を持つ患者で、運動障害では説明できない障害を
示す場合がある。意思決定障害や情動障害など。
小脳の高次認知機能 小脳の系統発生的に新しい部位は、
運動制御ではなく、運動の想像、計画、あるいは運動と直接の
関 係のない高次認知機能、例えば、パターン認識、心的操作、
視覚的注意、視覚運動認知、自閉症、言語、 暗算、思考など
とかかわることがわかってきた。 これに関連して、、、
歯状核の最も腹外側部後部の領域は、認知、情動、言語など
の非運動性機能に関与していることが示唆されている。
例)サルの上記歯状核相同部位にトレーサーを注入すると、
視床を経由して前頭前連合皮質へ投射することが報告されている。
加えて一部は頭頂連合皮質後部にも投射しているようである。
大脳基底核の形態と回路
5
大脳基底核・・・大脳皮質下にまとまって存在する神経核群
大脳基底核と関連構造
大脳基底核の機能をシンプルに記載すると
○尾状核
(新)線条体 (終脳由来)
○レンズ核 被殻
淡蒼球(古線条体) (間脳由来)
状況に応じて、適切な行動を選択する。
つまり、目的に応じた運動の促進・抑制のコントロール。
ただし、認知機能や情動制御にも深く関与している
ことが知られている。
*レンズ核に機能的意味はない
○視床下核(間脳)
○黒質(中脳)
淡蒼球と線条体は、大脳皮質の発達していない鳥類以下
の動物では、運動の最高中枢である。ほ乳動物では、最高
中枢は大脳皮質に移る。
人体の正常構造と機能 日本医事新報社
神経解剖カラーアトラス 医学書院
顔面、四肢、体幹の筋肉制御
大脳基底核系の主経路の概略
大脳基底核を通る
4つの並列回路
大脳皮質
線条体(入力部)
視床
淡蒼球内節・黒質網様部(出力部)
ここに視床下核、淡蒼球内節、黒質緻密部が加わり、最終的に
大脳皮質の抑制強化と脱抑制制御を行っている。
(補足)淡蒼球視床路には2種類ある
1、レンズ核束 淡蒼球→フォレルH2野→視床束(フォレルH1野)→視床
2、レンズ核ワナ 淡蒼球→フォレルH野 ↗
1、骨格筋運動ループ
2、眼球運動ループ
3、前頭前野ループ
4、辺縁系ループ
例)コップ一杯の水をとる
1)辺縁系ループ
2)前頭前野ループ
3)眼球運動ループ
骨格筋運動ループ
眼球運動の速度や方向の制御
認知、行動、計画、行動実行制御
行動の動機付けや情動に関与
マーティン神経解剖学
(西村書店)
6
GABAを伝達物質
とする抑制性ニューロン
が中心となり構成されて
いるのが特徴。つまり
基本的に常時抑制方向に
働いている。状況に応じて、
抑制強化と脱抑制
でバランスをとる。
入力部
青:直接路(最終的に脱抑制)
黄:間接路(最終的に抑制強化)
出力部
ハイパー直接路
大脳皮質→視床下核
抑制
大脳皮質ー基底核ループ
脊髄との直接連絡はない
出力部
人体の正常構造と機能 日本医事新報社
ストリオソーム(パッチ)とマトリックス
線条体を構成するニューロン
大部分(80%以上)はGABA作動性の中型有棘ニューロン(投射
ニューロン)。ただし、直接路を構成するニューロンはGABA、サブ
スタンスP、ダイノルフィンとドーパミンD1受容体を持ち、間接路を
構成するニューロンはGABA、エンケファリン、ニューロテンシンや
ドーパミンD2受容体を持ち、性質がやや異なる(ドーパミンは直
接路ニューロンに対しては興奮性、間接路ニューロンに対しては
抑制性)。
残りは介在ニューロン。こららは、大型のコリン作動性ニューロ
ンや中型のソマトスタチン、ニューロペプチドY、NOを持つニュー
ロン、中型でGABA、パルブアルブミンを持つものなどに分類でき
る。中でも特にコリン作動性ニューロンは黒質からのドーパミン作
動性ニューロンとの相互作用を介して投射ニューロンの活動調節
に重要であることが知られている。
腹側線条体について
(新線条体は背側線条体とも呼ばれる)
尾状核と被殻が吻側で繋がっている部分
腹側線条体は
側坐核(と嗅結節)に一致
腹側被蓋野 (VTA)のドーパミンニューロンが
側坐核に投射 (A10神経)。脳内報酬系
を構成する重要な回路
ストリオソーム(パッチ)とマトリックス
線条体は明らかな層構造を持たないが、少なくとも2つのコンパートメントに分け
ることができる。線条体内部で斑点部(ストリオソーム)と基質部(マトリックス)。
左:AChE染色、右:エンケファリン染色
マーティン神経解剖学(西村書店)
大脳基底核の疾患
(臨床的では便宜的に錐体外路症候群と呼ばれる症状)
1、運動減少症
パーキンソン病
統合失調症との関連で注目
A10の過剰興奮は
側坐核GABA
神経機能を低下
させ、結果的に
大脳皮質系の
機能異常の重
要な原因
の一つでは
ないか。
○運動減少、筋緊張亢進型
パーキンソン病
自発的運動の減少や筋固縮
出力部(抑制性)の活動亢進による
過度の運動抑制
2、不随意運動を伴う
運動過多症
ハンチントン病、
ヘミバリズム、
アテトーゼ、ジストニア
に分類できる
標準生理学(医学書院)
神経解剖カラーアトラス(医学書院)
7
○運動亢進、筋緊張減少型、
不随意運動
ハンチントン病
出力部の活動低下により
運動抑制が効かなくなる
パーキンソン病
の病態
黒質緻密部
のドーパミン
ニューロンが
脱落すると、、
標準生理学
(医学書院)
神経解剖カラーテキスト
(医学書院)
尾状核
マーティン神経解剖学
(西村書店)
ハンチントン病とヘミバリズムの病態
・大脳基底核及びその関連領域が説明できる。
・大脳基底核系の回路が説明できる(直接路と
間接路)
・大脳基底核系の障害の概略が説明できる。
標準生理学
(医学書院)
8