「日本刀 神の宿りし美術工芸品」実施報告

 江東区古石場文化センター 平成二十七年度秋の講座
たたら・伝統文化推進課長 黒
「日本刀─神の宿りし美術工芸品」実施報告
日に「日本刀 その美しさと魅力―刀
匠と共に」として、講師は上畠誠刀匠
滝 哲 哉 平成二十八年度も、既にこの講座の
開催が決まっております。そこで、本
と筆者が務めました。日本刀の初歩と
れました。
年度以降の講座の更なる発展の礎とす
その制作工程の概論をうけ、上畠刀匠
二十七年度も引き続き行われました。
るうえでも、平成二十七年度の様子を
ただきたく思います。
どなどを、
実演を交え話していました。
が銘切りの実際や刀匠修業の苦労話な
第一回目は平成二十七年十一月十九
は、日々昂進しているよ う で す 。
お伝えし、多くの方々から御理解をい
昨年来のブームを反映 し て 、 一 般 の
方々の日本刀への知的欲求の高まり
催している各種教養講座 の 中 に 「 日 本
った欲求を背景 に 東 京 都 江 東
そうふい
るいし ば
区の古石場文化センターでは、毎年開
刀」という科目を設け、 平 成 二 十 六 年
題して、筆者がたたら操業のビデオを
第二回目は平成二十七年十二月十七
日に「日本刀の源流―たたら製鉄」と
刀装具の講義をする橋本氏
の話を聞くという貴重な機会を得るこ
織り交ぜながら、たたらを概説いたし
受講者は現実に刀を作っている刀匠
平成二十七年度の講座は計五回行わ
研ぎの実演をする神山研ぎ師
度からこれを開催してお り 、 去 る 平 成
たたらの講義をする筆者
とが出来、多くの感銘を受けていたよ
要さを強調し、日本刀は実に多くの技
ました。たたらを支える地下構造の重
うです。
銘切り実演をする上畠刀匠
術や文化によって成り立っていること
を解説いたしました。
これらを受け、第三回目は年明けの
一月十七日に刀剣博物館で展示解説を
行っています。
第四回目は二月二十五日に無鑑査研
ぎ師の臼木良彦氏を講師に迎え、お弟
子さんと実演を行いました。第一回目
に続けての職人技術の見学が出来ると
刀剣美術2016.9
(716号)
24
刀剣博物館だより
ギャラリートー ク 開 催
常以下各金工の特色や、石黒派を鑑賞
説明し、次に石黒派の特徴と、初代政
まずは拵の構成要素や刀装具の役割を
ったこともないとのことでしたので、
まで注目したり、と多彩な視点から
品を低い位置から鑑賞したり、魚子
ャラリートーク終了後には、展示作
ました。それが功を奏したのか、ギ
鐔・柄前・笄の実物を触ってもらい
ことや、臼木氏の気さくな人柄に、多
しれません。しかし、女性職人がいる
見敷居の高いように思われていたかも
職人の世界は、受講生にとっては一
師弟共に多くの質問を受けていました。
の特賞を取った神山氏が実演を行うと、
攻めにあい、特に昨年女性研ぎ師で初
あって、臼木講師は受講生からの質問
する際に注目したい点などについて解
昨今の刀剣ブームの影響からか、
作品を愉しむ様子が見られました。
別展「花鳥絢爛 刀装 石黒派の世
界」に合わせて、八月六日(土)にギ
蔵している人が少なくなってきている
生まれたものですが、自宅に刀剣を所
に収めています。刀装具は道具として
代が %を占めて最多となりました。
結果では参加者の年齢層として二十
参加者は女性が多く、アンケートの
感じられたのではないでしょうか。
くの方が職人や日本刀を身近な存在に
当館の展示は、作品を全てケース内
説しました。
ャラリートークを開催 し ま し た 。 今
刀剣博物館では、現 在 開 催 中 の 特
回は刀装具をテーマに 実 施 し 、 三 十
最終回は、刀装具研究家の橋本晴夫
氏が「華やかなりし刀装具―日本刀装
ない人が多くなってきました。
昨今、その用途や質感、重み等を知ら
ったのが印象的で、時代の移り変わ
トサイトを見て参加された方が多か
また、ホームページやインターネッ
説されていました。
されたあと、数々の名品を一点一点解
飾の世界」と銘打ち、刀装具の概説を
はじめに、刀装具を 見 た こ と や 触
りを感じる参加者層でした。情報発
人以上の方にご参加いただきました。
そこで刀装具の実感を少しでも持っ
刀装具の名品を間近に見ることの出
てもらえたらと、基本的な解説の際に
来る機会など滅多にない受講生が多く、
ったことのある参加者 が い る か 聞 い
信ツールとしてホームページやソー
たところ、ほぼ全員が 見 た こ と も 触
シャルメディア等のインターネット
極めて貴重な機会になったようです。
場限りでなく、場所・時間が替わっ
いただきました。このように、その
色々知りたくなった」という感想を
刀装具に興味がなかったが、今後も
最 後 に な り ま し た が、
「これまで
とと思います。刀剣協会としても、さ
この講座は前述のように本年度も行
われ、さらに多くの参加者を集めるこ
体感できたようです。
術が培われてきたことが、参加者には
ならず、装飾においても伝統と高い技
事の細やかさから、日本刀は刀身のみ
きらびやかさ、そして各刀装具の仕
活用は、今後ますます重要となるで
ても楽しめるギャラリートークが開
らに多くの工夫やバリエーションを加
しょう。
催できるよう、また、今後の刀剣・
え、本講座の発展とともに日本刀文化
惜しまない覚悟です。
の普及発展に尽くすよう、日々努力を
刀装・刀装具ファンが増えるよう、
(協会学芸員 田中宏子)
博物館事業の充実を図りたいと思い
ます。 25 刀剣美術2016.9(716号)
27