当日配布資料(384KB)

空中で非接触でできる超音波
イメージング
秋田大学
工学資源学研究科
教授 今野 和彦
1
研究背景
1970年代 菊池,河西,中鉢(東北大)ら
圧電振動子の過渡応答解析
等価回路の考案
1980年代初 大谷,大槻,奥山ら 過渡音場の解析,実験
1980年代半ば
奥山,今野ら インパルス音場の観測とイメージング
いずれも水中で反射・透過像
1990年初め
今野
1990年末∼2000年中頃
単極性パルスによる凹面振動子の音場計測
等価回路解析による中間層,バッキングの
検討
コンポジット材料による整合層(水中,空中)
2
はじめに
一般に
超音波を用いたイメージング
トランスデューサから超音波を水
中などの音場媒質中に送波し伝搬
させる
対象物からの反射波を受
波する
水浸法を例に挙げると・・・
試料の劣化,腐食および短絡の恐
れがある電子機器などに適用でき
ない 対象物が制限されてしまう
トランス
デューサ
反射波
対象物
音場媒質
(水など)
空気中で,かつ非接触でイメージングが行なえれば多くの対象物を測定できる
3
新技術の基となる研究成果・技術
圧電振動子の過渡応答特性の解析と実験 特に,
電源インピーダンスと振動特性
圧電振動子の過渡応答を利用した過渡音場の解析と実験
短い超音波パルスの発生と検出
板波(レーリー波,ラム波)の伝搬特性と振動解析
光学的な観測方法の利用
4
圧電振動子の振動
音響放射面から
振動波形
端から
端から
背面から
振動子表面(音響放射面)の振動だけでなく,振動子端・背面からも
振動が発生する
振動子端および背面から発生する振動が影響して,振動子表面の振
動は一定でなくなる
通常の共振を用いた駆動では,平面波が得られない
edge波,裏面からの音波が到達する前に得られる同位相同振幅の振動を用いる
5
平面波(直接波)の伝搬路中に対象物を置くことで,
音圧振幅の差でイメージングが可能
しかし
これも伝搬媒質中(水など)に超音波を
送波し,対象物からの反射波または透
過波を受波してイメージングが行なわ
れる
研究目的
空気中における非接触イメージング法
を提案
空気中では超音波は減衰が大きく,超音波
を送波して対象物から反射波の受波が困難
超音波の送波と受波でなくレーザドップ
ラ振動計により圧電振動子の音響放射面
と対象物表面の振動速度の差と時間差を
測定してイメージングを行う
振動速度を
検出
レーザ光
対象物
トランスデューサ
まわりは空気
6
伝送線路モデル
(b)超音波送波系の伝送線路モデル
(a)超音波送波系
バッキング
(空気)
l
h
圧電振動子
試料
音場媒質
(空気)
Z0
-C0
C0
電源
共振周波数
26.5KHz
Z0:駆動電源インピーダンス [Ω]
C0:圧電振動子の制動容量 [F]
Φ:電気機械振動変換比 [N/V]
l:圧電振動子の厚さ [m]
h:試料の厚さ [m]
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測定システム
Trigger
Function
Generator
PC
GP-IB
Oscilloscope
Reflect Mirror
Laser Doppler
Vibrometer
Bipolar Amplifier
sample
駆動条件
発振器
繰返し周波数:100 Hz
電圧:70V
方形波パルス
パルス幅:1 μs
Transducer
XY stage
8
測定結果(受波波形)
(c)伝搬時間15 μsまで
(b)伝搬時間100μsまで
(a)駆動波形
50
0
直接波
2
Velocity [mm/s]
Velocity [mm/s]
Input Voltage [V]
100
0
20
40
60
80
Propagation Time [μs]
100
0
20
40
60
80
Propagation Time [μs]
100
直接波
edge波
0
-2
-2
0
2
背面からの振動
0
5
10
Propagation Time [μs]
15
・1μs付近に駆動電圧波形と時間的に相似なパルス振動速度(直接波)が確認できる
・直接波以降の波形は,圧電振動子の音速(4300 m/s)から圧電振動子端部(edge波)およ
び背面からの振動
・本研究では,圧電振動子端および背面からの振動の影響を受けない時間である直接波
の振動速度振幅値の情報を用いる
9
0
-1
-4
-2
0
2
4
Propagation Time [μs]
6
解析結果
(b) τ/Tp=0.58
1
Normalized Velocity
(a) τ/Tp=0.1
1
Normalized Velocity
Normalized Velocity
τ/Tp変化による波形変化
0
-1
-4
-2
0
2
4
Propagation Time [μs]
(c) τ/Tp=1.3
1
0
-1
-4
6
-2
0
2
4
Propagation Time [μs]
6
0
-1
-2
0
2
4
Propagation Time [μs]
6
(b) τ/Tp=0.58
1
0
-1
-2
0
2
4
Propagation Time [μs]
6
Normalized Velocity
(a) τ/Tp=0.1
1
Normalized Velocity
Normalized Velocity
実験結果
(c) τ/Tp=1.3
1
0
-1
-2
0
2
4
Propagation Time [μs]
6
10
測定結果(振動速度分布特性)
-30 mm
0 mm
測定範囲
圧電振動子
(b) 振動速度分布特性
30 mm
Normalized Velocity [m/s]
(a) 測定範囲
1
0.5
0
-30
-20
-10
0
10
Distance [mm]
20
30
・圧電振動子表面では振動速度がほぼ一定である
ただし,圧電振動子の端に近い部分ではedge波の影響により一定でなくなる
・イメージングは振動速度が一定となる圧電振動子中心部分に試料を配置する
edge波および背面からの振動の影響を受けずに試料と圧電振動子表面の振動
速度差が得られる
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イメージング測定範囲
8 mm
8 mm
10 mm
試料
1mm
1mm
4mm
3mm
0.6mm
3mm
0.2 mm間隔で
8 mm正方形内を測定
圧電振動子
12
測定結果(振動速度差を取ったイメージング結果)
y方向[mm]
8
0.4
6
4
2
0
0
2
4
x方向[mm]
6
8
-0.4
[mm/s]
・試料部分は振動速度が大きく文字部分は振動速度が小さく検出されて
おり,対象とした文字(U.S)をイメージングできている
・0.6 mmφの穴をイメージングできていることから,本手法の空間分解能
は0.6 mmより高いと考えられる
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測定結果(伝搬時間差によるイメージング結果)
(b) 伝搬時間差イメージング結果
(a) 受波波形
1
8
0
6
-1
-1
0
1
2
3
4
文字部分
5
1.5
4
2
1
0
0
0
-1
-1
y方向[mm]
Velocity [mm/s]
アルミニウム部分
0
1
2
3
4
Propagation Time [μs]
2
4
x方向[mm]
6
8
1.0
[μs]
5
14
分解能の検討 (ピンホールの穴の振動速度分布)
200 μm
1
0.8
0.6
-0.2
-0.1
0
0.1
Dictance [mm]
0.2
0.3
1.2
Normalized velocity
1.2
Normalized velocity
Normalized velocity
1.2
0.4
-0.3
60 μm
100 μm
1
0.8
0.6
0.4
-0.3
-0.2
-0.1
0
0.1
Dictance [mm]
0.2
0.3
1
0.8
0.6
0.4
-0.3
-0.2
分解能はレーザ光のスポット径?
-0.1
0
0.1
Dictance [mm]
0.2
0.3
10μm
15
おわりに
圧電振動子を定電圧でパルス波駆動して発生する振動面の同位相同
振幅の平面振動を利用し,圧電振動子の超音波放射面と対象物表面
の振動速度差を用いたイメージングに関して検討を行った
振動速度差と時間差の検出により対象とした試料のイメージングが可
能であることが明らかになった
本手法は空気中における非接触イメージングの一方法として使える可
能性がある
今後の課題
・方位分解能の決定要因
・非破壊検査試験への応用の検討
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従来技術とその問題点
超音波映像法は既に医用分野では確立したようにみえるが材料
評価の分野ではまだ改良と新しい方法の開発の余地がある.
水浸法の場合
音波の送受波
材料を水に漬ける必要がある
波動の回折により空間分解能が低下
(良くても波長程度 波をプローブとしている
のでこの問題は避けられない)
提案した方法は物体表面の振動速度を測定しているので空中
で映像化できる.また,波動の回折がないため空間分解能は
レーザー光のスポット径(数μm∼)で決まり,高分解能が実現
できる.(従来法では100MHz以上の超音波顕微鏡に相当)
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった、水浸法を用いずに空中で超音
波映像を可能にした。
• 従来は振動子の共振周波数付近で音波を送受していたが本
法では非共振で定電圧駆動により同位相同振幅の振動を発
生し画像化に用いている。
• 検出を光学的に行っているため音波の回折問題がない。
• 本技術の適用により、電子デバイスや材料の映像化ならび
に内部欠陥が容易に検出できること期待される。
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想定される用途
• 本技術の特徴を生かすためには、素材・材料
の品質検査に適用することで水浸法でなく空
中でイメージングができる。
• 薄膜,フィルムなどの品質検査。
• 電子デバイスや電子部品
基板の欠陥,層剥離,亀裂等)の検査に利用
でき,非破壊試験の分野や用途に展開するこ
とも可能と思われる。
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想定される業界
• 利用者・対象
素材・材料製造メーカー
製品の非破壊検査(剥離,ボイド,クラック,組成の変性)
• 市場規模
振幅と位相(遅れ時間)の情報をベクトル化して3次元
表示が可能で,さらに現在も進化の途中
導入:超音波顕微鏡のような精密な機械システムや
高周波回路が不要のため安価。導入がすすめば超
音波非破壊イメージング,超音波顕微鏡の市場に匹
敵する規模???
20
実用化に向けた課題
• 現在、金属,プラスチックの板状資料について
空中で非破壊的に内部欠陥,不均一の検出が
可能なところまで開発済み。しかし、ドップラー
装置の走査ができない点が未解決である。
• 今後、電子デバイスなどについて実験を行って、
製品検査に適用していく場合の問題点の解決
をはかる。
• 実用化に向けて、振幅,時間差の検出精度を
1桁向上できるよう技術を確立する必要がある。
21
企業への期待
• レーザードップラーの走査は現在は1点ごとに
制止して行っているため時間がかかっている.
スキャンタイプのドップラー振動計の導入によ
り克服できると考えている。
• 金属,プラスチック等の材料開発、電子デバイ
ス等の非破壊評価を希望する企業との共同
研究を希望。
• また、新材料を開発中の企業、製品分野への
展開を考えている企業には、本技術の導入が
有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称
• 出願番号
出願人
• 発明者
:振動速度を用いた超音波イメージング
:特願2010-274143
:秋田大学
:今野和彦
産学連携の経歴
•
•
•
•
•
•
奥山ボーリング
TDK(株)
オムロン(株)
関西ペイント
あきた産業振興機構
日本板硝子材料工学助成会
超音波による地下水位計測
超音波接合に関する研究
粘度センサに関する研究
塗膜評価に関する研究
超音波による超高精度変位計測
有限振幅超音波による閉口亀裂の検出に関する研究
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お問い合わせ先
秋田大学産学連携推進機構
産学官連携コーディネーター
特任准教授
佐藤 博
TEL 018−889 − 2712
FAX 018−837 − 5356
e-mail staff@crc.akita-u.ac.jp
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